2018年6月17日 (日)

Michael Paulo 「Beautiful Day」(2018)

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ハワイ出身のマイケル・パウロは、40年を超えるキャリアのジャズ・サックス奏者。ミドル・ネームは「タツオ」というそうな、日系の人だ。日本でも人気のあったハワイのバンド「カラパナ」の初期のメンバーでもあり、ソロ奏者としてのデビュー作品「Tats In The Rainbow」(1979)は日本のみでリリースしている。その後は、アル・ジャロウのツアー・メンバーを10年に渡り務めたり、リック・ブラウン、ピーター・ホワイト、ジェフ・ローバー、デビッド・ベノワ、ケニー・ロギンス、ボビー・コードウェル、など、多くのビック・ネームと共演。矢沢永吉や、杏里、といった日本のポピュラー・アーティストとの共演も多いから、デビュー当時から知る日本のリスナーは多いはず。最近では、トロンボーン奏者ジェフ・アルパートの「Open Your Heart」(2017)で、客演していたのが記憶に新しい。ソロ名義としては、10年ぶりだそう、この新作は11枚目のソロ作品。5曲のカバーと、8曲のオリジナルからなる全13曲の作品。ポール・ブラウン、デヴィッド・ベノワ、ポール・ジャクソン・ジュニア、レイ・パーカー・ジュニア、らがサポートを務めている。マイケルの人間性が現れているような、ソフトでジェントル・トーンのサックスの音色が心地いい。M5「Your Song」(エルトン・ジョン)や、M8「Fragile」(スティング)、M13「You've Got a Friend」(キャロル・キング)といった、ポップス名曲のカバーで奏でる、「てらい」のないフレージングが美しい。M2「Mr Magic」は、お馴染みのグローバー・ワシントン・ジュニアの名曲のカバー。この人の系譜が、グルーバーはもちろん、デビッド・サンボーンや、果てはポール・デスモンドまでつながっているのが想像できる、ソフトでリリカルな好演奏だ。オリジナル曲のハイライトは、M1「Beautiful Day」で、ギターの客演はポール・ブラウン。R&Bテイストのコンテンポラリーなサウンド、サックスの響きは都会的で、アダルト・オリエンテッドな佳曲。M4「Back with the Funk」は、ポール・ジャクソン・ジュニアのギターが客演した、ディスコっぽいノリがどこか懐かしいオールド・スクールな曲。M6「Who You Gonna Call」もキャッチーな曲、ギターはレイ・パーカー・ジュニアで、打ち込み系のサウンドに、ギターとサックスのファンキーなヴァイブレーションがかっこいい。マイケル・パウロを「昔の名前」で知っている日本のコアなリスナーも、きっと目が覚めるに違いない好感度高い作品。

2018年6月12日 (火)

Michael Franks 「The Music In My Head」(2018)と、マイケル作品のカバー集

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マイケル・フランクスの新作は、前作「Time Together」(2011 )以来、7年ぶり、通算19枚目のオリジナル作品。73歳になるマイケルだが、その歌声には年齢の衰えは感じられない。デビュー当時からのウィスパー・ボイスは健在で、枯れたと言うより円熟度が増した歌声に魅了される。全て新曲の10曲からなる新作は、いつも通りのスタイルが、安心して浸れるマイケルの音楽世界だ。前作はもちろん、過去作品からの延長にある、ジャズやボサノバを下敷きとしたサウンドのフォーマットは鉄板のごとく変わらない。参加しているミュージシャンも、チャック・ローブ、ジミー・ハスリップ、デヴィッド・スピノザなど、マイケルとは長年に渡る仲間たちが固めていて、殊更にリラックスしたムードを作っている。とりわけて、チャック・ローブが客演した、M1「As Long As We’re Both Together」は、必聴の1曲だ。去年早逝した、ギター奏者チャック・ローブは、長年に渡りマイケルの作品に欠かせない盟友だった。このトラックは、チャックがプロデュースして、ギター演奏をした、最後の曲となってしまった。ボッサのリズムに、流れるようなフレーズを奏でる、チャックのソフトなギターの美しいこと。M5「To Spend The Day With You」は、女性ジャズ・ピアノ奏者レイチェルZが参加した曲。明るいボッサのメロディーは、これも常套句的なマイケル節だけれど、レイチェルZのピアノ・プレイは若々しくて、華やいだムードを演出している。M7「Where You Hid the Truth」は、かたや切ないメロディのマイナー・バラード。こういったナイーヴなメロディも、マイケルの得意とするところで、名曲の「Antonio’s Song」や「Vivaldi’s Song」といった代表曲の路線を踏襲する曲。何年か先の次作を心待ちにして、この珠玉の10曲をじっくりと味わいたい。

Leosidran このマイケルの新作リリースに合わせたように、シンガー・ソング・ライターのレオ・シドランがマイケル・フランクスの作品集を出した。こちらも、なかなかの秀作だ。  その新作「Cool School」(2018)は、マイケル作品11曲を歌ったカバー集。レオ・シドランの父親は、ベン・シドラン。ベンといえば、70年代から活躍するピアニストでシンガー。ジャズに限らず、フュージョン、ロックなどクロスオーバーな音楽性は唯一無二のミュージシャンだ。ベンも、マイケルと同世代で、今でも現役だ。そのベンの息子のレオは、学生時代に、「Depleting Moral Legacy」(1999)でソロ・デビューしたシンガー・ソング・ライター。デビュー作から数えて、この新作が6作品目。レオの歌声は、当然ながら、父親ゆずりの歌声なのだが、父親ほどの「ドス」の強さは無いとは言え、時折聴かせる線の太いところがセクシーなボーカリストだ。レオが歌うマイケルの名曲は、若々しく、やや艶っぽい歌い方が魅力的で、原曲をほぼ忠実にした解釈も、マイケルのファンもきっと好感が持てることに間違いなしのカバー集だ。ハイライトは、M6「The Cool Scool」、マイケル自身とのデュエットによるバージョンだ。デュエットなので、オリジナル・バージョンとは趣きが異なるが、2人がブルージーに歌うところが聴きどころ。名曲の、M5「Antonio’s Song」は、白眉なバージョンで、ブラジルの歌手レオ・ミナクスとのデュエットと、ハーモニカの演奏が心地よく、数多ある同曲のカバーの中でもベスト級のトラックだろう。なお、CD盤には、レオ自身のオリジナル曲「Easy」がボーナス・トラックとして収録されている。この曲は、マイケル・フランクスにオマージュしたような、まるでマイケルの新曲のような趣きの佳作、必聴です。

マイケルの曲をカバーするミュージシャンは多いけれど、アルバム丸ごと、マイケルの曲集といえば、この2枚の過去作品も紹介しておきたい。

Veronicanann 女性ジャズ歌手、ヴェロニカ・ナンの「The Art of Michael Franks」(2010)は、マイケルの曲13曲をカバーしたアルバム。ヴェロニカは、90年代からマイケルのツアーや、アルバムでコーラスを担当している人。マイケルのアルバムでもデュエットしているトラックがあって、「Watching The Snow」(2003)収録の「Island Christmas」や、「Time Together」(2011)収録の「My Heart Said Now」、がそう。彼女のこのマイケル作品集は、長年マイケルをサポートしてきた彼女ならではの作品。同様に、マイケルとの共演が長い、ピアノ奏者チャールズ・ブレンジィッグが協力していて、いわば「マイケル・フランクス」ファミリーの作品の趣き。彼女のボーカルは、正統的なジャズ・ボーカルで、アレンジも同様にジャズのアプローチで解釈したマイケル作品集だ。中でも、M7「Leading Me Back to You」は貴重なトラック。オリジナルは、ピアノ奏者ジョー・サンプルのアルバム「Spellbound」(1989)の収録曲。マイケルとサンプル2人の共作で、マイケルがボーカルを務めた曲。このヴェロニカのアルバムに収録されたトラックは、彼女とマイケル本人のデュエット・バージョン。マイケル・フランクスのファンなら、絶対に必聴のバージョン。ヴェロニカは、マイケルの新作「The Music In My Head」でもバックコーラスを務めている。

Gordonhaskell ゴードン・ハスケルの「The Lady Wants To Know」(2004)は、11曲のマイケル作品集。かつてキンング・クリムゾンのメンバーだったこともある、ゴードン・ハスケルは、シンガー・ソング・ライターとして、70年初めから活躍するミュージシャン。彼も、マイケルと同世代のシンガー。このアルバムは、14年前の作品だが、マイケルの中性的な歌声と違って、ゴードンの男性的でシブーい枯れた歌声が痺れます。プロデュースは、ヘイミッシュ・スチュアート(アヴェレージ・ホワイト・バンドの元メンバー)だから、このブルー・アイド・ソウルなムード作りは彼のお手のもの、というところ。「The Lady Wants to Know」や、「Antonio’s Song」、「B’wana He No Home 」、「Monkey See」といった、マイケルの初期のエバーグリーン曲が並ぶセレクションも嬉しい。

2018年6月 3日 (日)

Vincent Ingala 「Personal Touch」(2018)

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スムーズジャズ界の若きスター、ヴィンセント・インガラの待望の新作。10代でデビュー以来、3枚のソロ作品は、新作ごとに成長著しい内容は、目(いや耳だな)を見張るアーティストだ。前作「Coast to Coast」(2015)の洗練されたサウンドは、もうメジャー級のクオリティだったし、その前後に、グレッグ・カルーカスピーター・ホワイトローマン・ストリート、といったトップ級アーティストからゲスト参加に引っ張りだこなことも大きな評価を受けている証だろう。さて、新作は全10曲、ゲストは無しの、サックス、キーボード、ギター、ドラムス、ボーカルなど、全ての演奏を彼一人で作り上げた作品。2曲のカバーを除く全曲も彼のペンによるものだし、プロデュースはもちろん、ミックスまで手がけて、サックス奏者に止まらないマルチ・アーティストの力量を発揮した秀作。M1「Personal Touch」は、キャッチーなポップ・メロディーと、艶っぽさが出てきたサックスのフレージングが白眉なベスト・チューン。M2「My Kind of Day」も、負けず劣らずのキャッチーなポップ・チューン。この曲での、ソプラノ・サックスもリリカルなフレージングを聴かせてくれる。M5「I Think I'm Falling in Love (With You)」では、さりげなくボーカルも披露している。M7「Feng Sway」は、彼のギター演奏が主役のトラック。ニルスを思わせるギター・テクに注目。M9「Snap, Crackle, Pop」のホーン・セクションをバックに、サックスがシャッフルするグルーヴはかっこいい。M4「Dream Girl」は、チル・ムードな曲で、彼のピアノ演奏が主役のトラック。ピアノは、ジョナサン・フリッツェンという感じなのがご愛嬌かな。カバー曲は、M3「Love Zone」がビリー・オーシャン、M6「If You Were Here Tonight」はアレクサンダー・オニール、といういずれも80年代のブラコン・ヒット曲を取り上げている。M8「Can't Stop the Rain From Falling」はチル・ムードの曲で、ポール・ハードキャッスルのような感じで、インガラの今までの路線からすると、ちょっと異色。他の曲でも、シンセやチル・ムードのサウンド・カラーに、ポール・ハードキャッスル「風」な趣が感じられる。ワンマン・バンドで作り上げたということで、ハードキャッスルが「お手本」なのかな。

2018年5月27日 (日)

Jay Soto 「On The Verge」(2018)

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ジェイ・ソトは、2005年のデビュー・アルバム「Long Time Coming」から活躍しているギタリスト。この新作で、通算7枚目だから多作ではないけれど、スムーズジャズ・ファンなら押さえておきたい、ツウ好みのアーティストだ。デビュー作品は、ポップな楽曲が満載で、彼のギターのフレージングは爽快で、ドライビング・ミュージックにピッタリといった趣きの佳作だった。2枚目の「Stay Awhile」(2007)では、ジェフ・ローバーやポール・ブラウンといった一流どころをゲストに迎えて、さらに都会的で洗練されたサウンドを作り上げた秀作で、今聴いても古さは感じない、ベスト級のスムーズジャズ作品。クリアなシングトーンと、アクセントのオクターブのパッセージが、疾走感と清涼感を感じるグルービーなギター。そして、ポップでキャッチーな楽曲がこの人の特徴で、3枚目の「Mesmerized」(2009)も、そのスタイルが発揮されたスムーズジャズの秀作だった。4枚目の「Morning Glory」(2013)は、彼のピアノ演奏による、ニューミュージック・スタイルの異色の作品。残念ながら、ここでは彼のスムーズジャズ・ギターは聴けない。初期の3枚のスムーズジャズ作品からセレクションされたベスト・アルバム(2013)の後、6作目の「Veritas」(2015)は、またも異色な作品で、全編シンフォニックなオーケストレーションをバックに、ナイロン・ギターを演奏した作品。しばらくは、そんな異色の作品が続いたので、初期ようなスムーズジャズ・スタイルの作品を待望していた。さて、この新作は、なんと、彼自身の歌が中心のボーカル・アルバム。全12曲中、インストは2曲で、10曲がボーカル曲。全曲、彼のオリジナル曲で、70年代後半から80年代のAORやソフト・ロックの路線を踏襲するメロディーとサウンドだ。TOTOや、ケニー・ロギンス、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー、といった懐かしい曲想を彷彿とする曲の数々。彼の歌もなかなかで、歌声はバリー・マニロウ似の感じがするが、どうだろう。貴重なインストの2曲、M3「Yours Truly」、とM7「Got Groove」は、必聴のスムーズジャズ・トラック。特に「Got Groove」の、スピードのあるパッセージが素晴らしい。歌もいいけれど、この人のギターをインストで、たっぷり聴きたい。次作は、原点回帰の全曲インストの作品を出して欲しいなあ。

2018年5月18日 (金)

Greg Adams and East Bay Soul 「Conversation」(2018)

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トランペット奏者グレッグ・アダムスは、西海岸のファンク・バンド「タワー・オブ・パワー」のデビュー(1970年)から90年代初めまで中核メンバーであった人。1995年にソロ・デビュー(「Hidden Agendas」)して以来、2006年まで4枚のソロ作品をリリースしている。彼が率いる「イースト・ベイ・ソウル」は、2009年に「East Bay Soul」でデビューした10人編成のバンドだ。その後、「East Bay Soul 2.0」(2012)、「That's Life」(2015)をリリースして、今作が最新アルバム。編成的には「タワー・オブ・パワー」を彷彿とする、ホーン・セクションが中心となったバンドだけれど、パワフルなホーンのインパクトというより、R&Bをベースにした比較的クールなサウンドが特徴だろう。特に、今作は今まで以上にジャズのムードで、洗練されたアンサンブルが秀逸な作品。 M1「Look Book」は、タイトなリズム・セクションがダンサブルで、グレッグ・アダムスの枯れたフレージングが浮遊するファンキーな曲。M2「Conversation」は、レイド・バックしたムードがクールで、ビック・バンド・ジャズのアプローチを感じさせる曲。M7「Possibilities」は、ホーン・セクションが聴きどころの、ハイライト曲。ギター(マツモト・ケイタ)の終始続くカッティング・プレイがなんともファンキーで聴かせてくれる。M8「Send」は、グレッグ・アダムズのフリューゲルホーンを堪能できるキャッチーな曲で、スウィングするピアノ(ニック・ミロ)のアドリブも聴きどころ。 M3「Quiet Scream」は、ストリングスも入るムーディーな曲で、テナーサックス奏者ダリル・ウォーカーが「唄う」ボーカル曲。ダリル・ウォーカーは、テナーサックス奏者としてホーン・セクションにいるのだけれど、いわゆる「二刀流」で歌っていて、AOR的な歌声で、なかなかのシンガーぶりだ。M9「Where Do We Go from Here」の美メロ・バラード曲では、ノスタルジックな歌声で、スタンダード・ポップスのようなドラマチックな歌い方を披露するし、M10「Try a Little Tenderness」は、オーティス・レディングの名曲のカバーで、ソウルフルな熱い歌いっぷりを聴かせてくれる。ファースト・アルバムの「East Bay Soul」は、複数のゲスト・シンガーを迎えた作品で、ウォーカーの歌は1曲だけだったが、以降の作品では彼のボーカルだけをフューチャーして、今やこのバンドのサウンドに欠かせないシンガーになっている。グレッグ・アダムスは、おそらく70歳で、古希になろうかというベテラン・プレイヤーで、いまだに活発な演奏が聴けるのが嬉しい。ちなみに、タワー・オブ・パワーの方も、50周年を迎えていまも活動中で、エミリオ・カスティーヨ(サックス)やステファン・クプカ(バリトン・サックス)といった結成時からのオリジナル・メンバー多数が中心というから、まさにシルバー世代の、レジェンドなバンドだ。彼らの新作アルバム「Soul Side of Town」は、じきにリリース予定、そちらも聴かねばなるまい。

2018年5月 3日 (木)

Chris Standring 「Sunlight」(2018)

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イギリスのギター奏者クリス・スタンドリングの新作は、キャリア20年を祝しての記念碑的な秀作だ。デビュー・アルバム「Velvet」(1988)から数えて、スタジオ作品としては11作目。ほぼ2年にごと、コンスタントに佳作を届けてくれる、スムーズジャズ界の代表的ギタリストで、個人的にもフェバリット・アーティストの一人。アシッドで、ヒップなサウンドと、エレクトリックな音色の浮遊感あふれるギターは、クールなバイブレーションを感じさせてくれる、唯一無二のギタリスト。この新作は、彼のギター演奏、それもインプロビゼーションに比重を置いた内容で、そのクールなグルーヴにたっぷり酔える、素晴らしい作品。いつもの完成度の高い、ポップでダンサブルな曲も、彼の魅力だが、この新作で聴かせてくれるグルーヴ優先のパフォーマンスは、今まで以上にジャズ的で、個人的にはベスト級な内容だ。M1「Static In The Attic」は、レコードのスクラッチ音から始まるところが少し驚かされる曲。スクラッチのノイズと、トークボックスのボイス・エフェクトが絡んだ、ラウンジなムードの背景にファンキーなギターが浮遊するハイライト曲。M2「Aphrodisiac」は、ハンドクラッピングとボイス・エフェクトがヒップな曲。機械的なビートに乗ってスウイングするようなフレージングのなんとクールなこと。ベースとドラムスは、打ち込みではないのに、未来的なビートを感じるリズム・セクションだ。M4「The Revisit」で、ボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノ。M6「God Only Knows」(ビーチ・ボーイズのカバー)で、ジョン・ノベロのアコースティック・ピアノ。M2「Aphrodisiac」では、ミッチェル・フォアマンのフェンダー・ローズ、などのゲスト・アーティストが参加した演奏も光っている。CDを買うと、2曲のボーナス・トラックがダウンロードできる。M9「Do Not Adjust Your Set」は、ブランドン・フィールズ(ザ・リッピントンズのサックス奏者)とピート・クリストリーブ(スティーリー・ダンの「Deacon Blues」でのソロ演奏が有名なジャズ・サックス奏者)、二人のテーナー・サックス奏者によるホーン・セクションがサポートする曲。CD本編のバージョンは、ブランドン・フィールズのソロなのだが、ボーナス・トラックは、ピート・クリストリーブがソロを取るバージョンが聴ける。もう1曲は、本編でボブ・ジェームスが参加した「The Revisit」で、ボーナス・トラックはボブのパートを、Hans Zermuehlenという人がシンセを演奏している。ファンにとっては、「お宝」のようなボーナス・トラックが聴けるのが嬉しい。

2018年4月18日 (水)

Tony Guerrero 「Abrazo」(2018)

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トランペット奏者トニー・ゲレロは、1988年にソロデビュー作品(「Tiara」)をリリースして以来、9枚のソロ作品や、多数のプロジェクトで、演奏のみならず作編曲、プロデューサー、としても活躍するアーティストである。サイドマンとしては、グレッグ・カルーカスや、ブライアン・ブロムバーグ、ブライアン・ウィルソン、ダン・シーゲル、俳優のディック・ヴァン・ダイクなど、多数のアーティストの作品にも参加している。この新作は、ソフトなボサノバやラテンのムードで貫かれた作品。ゲレロは、全10曲でフリューゲルホーンを吹いていて、ほとんどの曲は、ピアノ、ギター、キーボードなど全ての楽器を、彼自身がワンマン演奏しているユニークな作品。ソフトでロマンティックな作風は、イージーリスニングのただずまいで、ヨーロッパの映画音楽のようでもある。ゲレロのフリューゲルホーンの演奏は、ジャズの名手、アート・ファーマーや、チャック・マンジョーネを思い起こして、単なるムード・ミュージックに留まらない聴きどころになっている。4曲のカバー演奏も聴きどころで、アート・ファーマーの「Petite Belle」や、アストラッド・ジルベルトの名曲「Love Is Stronger Far Than Me」、イヴァン・リンスの「Septembro」(クインシー・ジョーンズのバージョンが有名、1989年のアルバム「Back on the Block」)、イタリアのシンガー、ルーチョ・ダッラの名曲「Caruso」(オペラのテノール歌手エンリコ・カルーソーに捧げた曲)を取り上げている。「Petite Belle」は、アート・ファーマーの名演(1965年のアルバム「Sing Me Softly of the Blues」)が有名な曲だし、「Love Is Stronger Far Than Me」は、チャック・マンジョーネがプロデュースした女性歌手エスター・サターフィールドのカバー(1974年のアルバム「Once I Loved」)が有名。いずれも、フリューゲルホーンの「鉄板」のような名曲で、ゲレロの思入れの選曲なのだろう。そんな名曲らに引けを取らない、ゲレロのオリジナル曲もそれぞれ素晴らしい。M1「Abrazo」は、哀愁に満ちたラテン系メロディーが、まるで名画のテーマ曲のようだし。M2「Beso」も、スペイン風のマイナーな旋律が美しい曲で、ピアノとギターの染みる演奏が印象的な曲。M6「She Speaks to Me」は、スロウ・ボッサの曲で、ストリングスを思わせるシンセがドラマチックな演奏。M5「First Date」は、ミディアム・スロウのバラードで、明るくキャッチーなフレージンングはハーブ・アルパートを思わせるし、中盤に出てくる鍵盤ハーモニカ、メロディカの音色が爽快感を醸し出す。全ての楽器をワンマンで演奏したのは、もともとは、ミュージシャンを集める前提のデモ制作だったらしい。最終的には、それを完成させたという経緯だそうだ。フリューゲルホーンの、ソフトでヒューマンな音色と、哀愁を感じるメロディーやフレージングが、心地いい魅力的な作品だ。

2018年4月 8日 (日)

Dan Siegel 「Origins」(2018)

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ダン・シーゲルは、80年代から活躍しているベテラン・キーボード奏者。デビュー作品「Nite Ride」(1980)から数えて、ソロ作品は20を超える。フュージョン全盛期のキーボード奏者、デオダートや、ボブ・ジェームス、ジョー・サンプル、がヒット作品を連発していたのが、80年の前後だった。その後を追うように、デイブ・グルーシンや、ジェフ・ローバー、デイヴィッド・ベノワ、そしてダン・シーゲル、といった面々が出てきた。ジェフ・ローバーを筆頭に、そしてシーゲルも、今も現役としての活躍が聴けるのは嬉しい限りだ。ダン・シーゲルも、2000年以降、リリースのペースは落ちたけれど、5年ぶりのリリースだった前作「Indigo」(2014)に続いて、比較的早いこの新作のリリース。おそらく、60才半ばだと思われるので、これからも、さらに円熟した演奏活動が期待できそうだ。さて、この新作は、ベース奏者ブライアン・ブロムバーグと共同プロデュースした作品。ブロムバーグは、前作や前々作のプロデュースもしているし、シーゲルの近年作品に関わっている気心の合った盟友だろう。シーゲル自身のペンになる全10曲を、彼のアコースティック・ピアノを中心に、ブロムバーグのアコースティック・ベースも聴きどころの、オーガニックなスタイルのコンテンポラリー・ジャズだ。M5「Arabesque」や、M6「Moon and Stars」、M8「Under the Sun」は、いずれもシーゲルらしい、メランコリーなテーマ・メロディーが印象的な、美しい楽曲の数々。全曲で、シーゲルのピアノのキレのいいフレージングも、たっぷりと堪能できる作品になっているのだけれど、聴いていてジョー・サンプルの名作で、個人的にもエバーグリーンの「Carmel」(1979)を思い出してしまった。M4「Lost and Found」での、少しファンキーなアクセントが印象的なフレージングもそうだし、M3「After All」は特に、美しいメロディーもさることながら、後半のピアノ・ソロが白眉で、ジョー・サンプルが思いをよぎる。次作は、エレピも演って欲しいなあ、そう、ジョー・サンプルの「A Rainy Day In Moterey」のように。

2018年3月24日 (土)

Paula Atherton 「Shake It」(2018)

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女性サックス奏者、ポーラ・アサートンの新作は、この人らしいパワフルなサックスが堪能できる秀作。冒頭の曲、M1「Low Rider」は、意表を突かれるカバー曲で、70年代のファンク・バンド、ウォーの代表曲。オリジナルは、1975年のアルバム「Why Can't We Be Friends?」の収録曲。重量級のボーカルが、オリジナルに忠実な構成だが、アサートンのパワフルなフルートが印象的。フルートで、ヘビー・ファンクと来たか。必聴に値します。M5「You Got It」は、ハイライト級のスムーズ・ジャズ・ナンバー。弾けたアサートンのサックスが爽快な演奏。キャッチーなピアノ演奏は、ザ・リッピングトンズのビル・ヘラー。アルバムでは毎回、彼女自身のボーカルも披露するのが定番になっている。M4「Good Love Gone Bad」がそのボーカル・ナンバーで、サックス同様にヘビー・シャウトするブルージーな曲。かと言えば、M7「Say Goodbye」は、ポップなジャンプ・ナンバーで、こちらも彼女のボーカルとサックスが、ノリの良いワンマン・アンサンブル。M8「Shake It」は、ホーン・セクションを従えてリードするサックスと、トランペット奏者シンディ・ブラッドリーの掛け合いが聴きもののファンク・チューン。二人の掛け合いは、同様に、骨太なファンク・ビートのM6「All About the One」でも聴ける。アサートンとブラッドリーは、「ジャズ・イン・ピンク」で共演したり、それぞれのアルバムに毎回ゲスト参加したりと、息のあったところを聴かせてくれる。M9「My Song for You」は、ギター奏者ニック・コリオーネの曲で、彼のギターとアサートンのサックスによるコラボ曲。メランコリーで都会的なメロディーと二人のフレージングが、ハートに沁みるいい曲です。「カリンバ・ミュージック」からのリリースだった前作「Ear Candy」(2015)は洗練された作品だった。今作は「カリンバ」からのリリースではないようだけれど、アサートンの活き活きとしたところが聴けるベスト級作品になった。

2018年3月18日 (日)

Marion Meadows 「Soul City」(2018)

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スムーズ・ジャズは、定義の確立していないジャンルかもしれないが、それはコンテンポラリーな音楽として、時代と共に変容している音楽だからだろう。派生的には、ジャズを始まりとして、コンテンポラリー・ジャズ、クロスオーバー、果てはフュージョンといったスタイルを経たインストルメンタル(演奏中心の楽曲)が中心なので、ジャズのサブ・ジャンルのようなネーミングになったのではないのかな。今や、そのスタイルは、インストに限らず、ボーカル曲であれ、ジャズやフュージョン寄りから、R&Bやポップ・チューンまで様々だ。ちなみに、「Smooth」を付けたネーミングも、スムーズ・ソウルや、スムーズR&B、といった多々の派生形も生まれている。スムーズ・ロックや、スムーズ・ブルース、スムーズ・ラップなんて、あるのかもしれない。それらは、ジャンルというより、文字通り心地いいミュージックの「くくり」ではないかな。それでも、多様な「スムーズ・ジャズ」の中で、そのメインストリームは、ウェル・アレンジメントで構成されたインストメンタル楽曲で、グルーヴがなくてはならない、というのが筆者のこだわりです。さて、スムーズ・ジャズ界のスーパースター、サックス奏者マリオン・メドウズの新作は、いつも通り間違いのないグルーヴを聴かせてくれる作品。豪華なゲスト歌手を迎えて、ボーカル曲が大半をしめる今作は、「スムーズR&B」の秀作だ。M2「Dreamin」は、女性ボーカリストのマイーザを迎えて、ギター奏者ピーター・ホワイトも加わった、ラテン・スタイルのハイライト曲。M5「Time After Time」は、シンディ・ローパーの名曲カバーで、ボーカルは、ピーボ・ブライソン。M8「Samba De Playa」のボーカルは、ウィル・ダウニング。M9「No Wind, No Rain」は、女性ジャズ・ボーカリストのダナ・ローレンが歌うジャージーな曲。ローレンのハスキーなスキャットと、メドウズのムーディーなソプラノ・サックスに、シャープなアコースティック・ピアノの会話が美しい。歌伴でも、メドウズのリリカルなソプラノは魅了的だけれど、やっぱり彼が主役のインスト曲が聴きたい。インスト3曲の中では、M1「Sould City」が光っている。ゲストは、ギター奏者ノーマン・ブラウンと、トランペット奏者のジョーイ・サマービル。3人のインタープレイが聴きものの、スロウ・ファンクな曲。次作は、この路線でインスト・オンリーの作品を期待したい。

«Lin Rountree 「Stronger Still」(2018)

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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2015 Top Recommend (click)

  • Bob Boldwin「MelloWonder」
  • Brian Simpson 「Out of a Dream」
  • Jonathan Fritzen 「Fritzenized」

2014 Top Recommend (click )

  • Greg Manning 「Dance With You」
  • Rick Braun 「Can You Feel It」
  • Michael Lington 「Soul Appeal」
  • Ed Barker 「Simple Truth」

2013 Top Recommend (click)

  • Jeff Golub 「Train Keeps a Rolling」
  • Oli Silk 「Razor Sharp Brit」
  • Patrick Yandall 「Soul Grind」
  • Boney James 「The Beat」

2012 Top Recommend (click)

  • Euge Groove 「House of Groove」
  • Paul Brown 「The Funky Joint」
  • Chris Standring 「Electric Wonderland」
  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
  • Phil Denny 「Crossover」