2017年12月10日 (日)

第60回グラミー賞ノミネート作品

Whatif Spirit Mountroyal Prototype Badhombre

第60回グラミー賞のノミネート作品が発表された。「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」の候補作品は、この5作品。近年、この部門は、コンテンポラリー・ミュージックの多様な演奏作品から選ばれているが、異なるジャンルのハイライト的なセレクションで、それを同じ土俵で評価するのもどうなのかなあ。そして、とても残念なことに、スムーズジャズは「無視」されているがごとく、良作が選ばれることも無くて、ファンとしては腹が立つところ。だが、まあ、認めないなら、勝手にしろや、という感じですなあ。

① 「What If」 The Jerry Douglas Band

ジェリー・ダグラスは、ブルーグラスやカントリーで用いられる通称ドブロと呼ばれるスライド・ギターの名手。14度のグラミー受賞歴を誇り、カントリーに限らずジャンルを越えてアメリカン・ミュージックに影響を与える大物アーティスト。自己名義のバンドのこの作品は、ブルーグラスを下敷きに、ジャズやロックをブレンドして、独自の音楽世界を発揮した意欲作。「Cavebop」は、典型的なブルーグラスと、ジャズが融合したような、クロスオーバーな演奏だし、タイトル曲「What If」の、繊細なフレージングのスライド・ギターの演奏は、ドラマチックで素晴らしい。

② 「Spirit」 Alex Han

アレックス・ハンは、マーカス・ミラーのバンドで活躍する、新鋭のサックス奏者。第58回のグラミー賞ノミネート作品、マーカス・ミラーの「Afrodeezia」(2015)にも参加している。この「Spirit」は、マーカス・ミラーがプロデュースした彼のデビュー作品。タイトル曲の、ハンの静謐なサックスが美しい。未来志向のコンテンポラリー・ジャズの秀作。

③ 「Mount Royal」 Julian Lage & Chris Eldridge

ジュリアン・レイジは、ジャズ・ギター奏者で、わずか15歳で、ゲイリー・バートンのバンド参加でデビューした、ジャズ界の新鋭。片や、クリス・エルドリッジは、ブルーグラスのバンド、パンチブラザーズのギタリスト。パンチ・ブラザーズと言えば、マンドリン奏者クリス・シーリが率いるスーパー・バンドで、ブルーグラスに留まらない多様な音楽世界が魅力のバンド。その二人が共演というだけでも、話題の作品。2人のアコギによるデュオ演奏は、数曲で歌も入るが、ブルーグラスやトラッド・フォークなどをベースにした、大らかなアメリカン・ルーツ・ミュージック。

④ 「Prototype」 Jeff Lorber Fusion

われらが、ジェフ・ローバー・フュージョンの新作。かつて「Hacienda」(2013)が、2014年の56回グラミー賞にノミネートされたこともある。この作品は、ジェフ・ローバーとジミー・ハスリップに、新サックス奏者としてアンディ・スニッツアーを迎えた、「新生」ジェフ・ローバー・フュージョンとしての新作。アンディ・スニッツアーも、違和感なく溶け込んでいるけれど、個人的には、かつてのサックス奏者エリック・マリエンサルがいた「Galaxy」(2012)や、「Hacienda」の、スリル全開なバイヴレーションには及ばないような気がするけれど。

⑤ 「Bad Hombre」 Antonio Sanchez

アントニオ・サンチェスは、ゲイリー・バートン、パット・メセニーや、チック・コリアなどと共演してきた、メキシコ出身のドラマー。アカデミー賞作品の映画「バードマン」のオリジナルスコアを作曲した人。この作品は、彼のソロ・ドラミングによるインプロビゼーションが圧巻な作品。前衛的であり、内省的でもあるが、映像作品のような感動の伝わる鬼才に溢れる作品。

①はブルーグラス、②はコンテンポラリー・ジャズ、③はフォークのフォーマット、④はフュージョン、⑤は前衛的作品、とは言え、いずれもジャンルではくくれない意欲作。かように異なる音楽性の秀作から、ベストを選ぶ基準が分からないが、独断的には、「本命」は①かな。ブルーグラスにジャズやロックを融合させて、伝統的なフォーマットを超えようとする、パッションの伝わる演奏に心を動かされる傑作。グラミー賞の発表は、2018年1月28日です。

第59回グラミー賞ノミネート作品

第58回グラミー賞ノミネート作品

第57回グラミー賞ノミネート作品

第56回グラミー賞ノミネート作品

第55回グラミー賞ノミネート作品

第54回グラミー賞ノミネート作品

2017年12月 9日 (土)

Pieces of a Dream 「Just Funkin' Around」(2017)

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この数ヶ月、ヘビー・ローテーションになって、飽きもせず聴いているのが、このピーセス・オブ・ア・ドリームの新作。タイトル通り、ファンクのバイブレーションが堪能できる傑作。ライブ録音的な演奏で、リアル感溢れるビートにガツンと来ること間違いなし。バンド結成以来のメンバー、ジェームス・ロイド(キーボード)とカーティス・ハーモン(ドラムス)に加えて、サックスのトニー・ワトソン・ジュニア、ベースがデビッド・ダイソン、ギターのランディ・ボーリング、この5人のアンサンブルによる演奏。クワイエット・ストーム的でメロウなスタイルが、このユニットの看板ではあるけれど、それが「静的」としたら、この新作は、骨太なグルーヴが発揮された、「動的」な代表作になりそうな秀作。「ファンク」は、最近のスムーズジャズのキー・ワード。ブライアン・カルバートソンはディープでダンス的なアプローチ、ジェフ・ローバーはハード・フュージョン。このピーセス・オブ・ア・ドリームは、彼らの原点フィラデルフィア・ソウルを下敷きにした洗練されたファンクというところかな。M1「Right Back Atcha」、M2「Just Funkin' Around」、M3「Shaken, Not Stirred」は、そんなファンク・グルーヴに浸れる怒涛の3曲。ジェームス・ロイドのスウィングするキーボードや、最近作品では常連のサポート・メンバーであるトニー・ワトソン・ジュニアのフレッシュなサックス・プレイ、それぞれのフレージングとパワフルなリズム・アンサンブルが爽快。M5「Fast Lane」は、この曲はシンセのオーバーダブを駆使した演奏で、ジェームス・ロイドらしいキャッチーなメロディーの、ヘビロテ間違いなしのポップ・チューン。カーティス・ハーモンの縦横無尽なドラミングが、リアルに録音されているところも、この作品の聴き処です。

2017年12月 2日 (土)

Najee 「Poetry In Motion」(2017)

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ボニー・ジェイムズの新作に、このナジーの新作と、ユージ・グルーヴも最近出たばかり、来年にはブライアン・カルバートソンも出るようだし、いずれも聴き逃せるはずも無い、スムーズジャズ界のスーパースターの新作ラッシュで、何とも嬉しい。特に、このナジーの新作は、R&Bグルーヴがクールで都会的な、ベスト級の作品。プロデューサーは、バリー・イーストモンド。2人のタッグは初めてなのかな。艶やかなナジーのサックスと、アダルトなサウンドを、バリー・イーストモンドが引き出して、傑作の仕上がり。イーストモンドは、キーボード奏者で、R&B系の有名プロデューサー。アニタ・ベイカー、アレサ・フランクリン、ビリー・オーシャンなどの作品を手掛けている。スムーズ・ジャズ系のアーティスト、ポール・テイラーや、エヴァレット・シャープなど共演も多い。最近作では、マイケル・リントンの、「Soul Appeal」(2014)、「Second Nature」(2016)が彼の仕事で、両作品ともガツンと骨のあるリズム&ブルースの傑作だった。比較するなら、このナジーの新作は、クワイエット・ストーム路線の、コンテンポラリーな傑作だろう。M3「Let's Take It Back」は、一曲だけのインコグニートとのコラボのダンス・チューン。グルーヴは、ブルーイ率いるインコグニートと、ナジーのテナーのビートフルなアンサンブルがかっこいい。M4「Noche Romantica」は、ナジーとイーストモンドの共作、ナジーのテナーは、グローバー・ワシントン・ジュニアを彷彿とする艶っぽい音色のベスト・チューン。M1「Stratosphere」は、ソプラノのリリカルな音色で、やっぱりこの人らしい定番のような曲。M5「We'll Be Missing You」は、アル・ジャロウとプリンスに捧げたという曲。ゲストのボーカルは、ウィル・ダウニング。ダウニングのボーカルと、ナジーのソプラノの「会話」が艶っぽくて、何ともセクシーなボサノバ・リズムの曲。クルセイダーズとビル・ウィザースの「Sould Shadows」を、なんとなく思い出す佳曲です。

2017年11月26日 (日)

Peet Project 「The Bad Boys of Budapest」(2017)

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ハンガリーのスムーズジャズ・ユニット、ピート・プロジェクトの新作。バイオリン奏者ピーターが率いる5人組バンドは、見た目はボーイズ・ポップ・バンド風ではあるが、ボーカル曲もインスト曲も自らの演奏でこなす技量と、バンドとしてのまとまりはなかなかのもの。曲は、ダンシング・ビートのポップ・チューン中心で、ダンス・バンドのようでもあるけれど、フレッシュで健康的なグルーヴは、ヨーロッパ風にも聴こえて、新鮮。M6「Rosy Cheeks」は、デイヴ・コーズが客演した、キャッチーなハイライト曲。コーズのサックスと、ピーターのバイオリンの際立った掛け合いが必聴の曲。M4「Bring Me to Life」も、ゲストがジョナサン・フリッツェンのピアノと来れば、こちらもスムーズジャズ・ファン必聴の曲。ビートが堪能できる曲こそ、やっぱりこのバンドらしいところ。M1「Downtown Therapy」、M2「Don't Wanna Know」や、M5「Like a Kid」、M8「Shut the Door」、M11「River Cruise」、M13「Kill Your Monster」といった曲は、ボーカルだろうがインストだろうが、「ウキウキ」なダンシング・チューンの佳曲ぞろい。これが、このバンドの特徴的なスタイルで、いずれも二重丸。いつかそのうち、世界的なヒット曲を出すような「気配」、感じませんか。

2017年11月23日 (木)

Boney James 「Honestly」(2017)

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ボニー・ジェイムスの新作は、今までにも増して、メロウなムードに彩られた傑作。前作「Futuresoul」(2015)も、落ち着いたテンポの曲が主体で、クールな印象の作品だった。そういった路線を引き継いだこの新作も、スロウやミッドテンポの曲が並ぶが、抑え気味のバイブレーションが秘めたソウルを感じるような、さらにクールで上質な作品になった。ありきたりに「バラード集」なんて、安易な一言ではまとめられない秀作。M1「Kicks」は、ソプラノサックスの音色がリリカルで、歌うようなジェイムス節が堪能できる、キャッチーなナンバー。M2「Tick Tock」は、導入部分から多用する低音のフレージングが、甘美でファンキーな曲。バックアップするホーンアレンジが、ソウルフルでかっこいい。それもそのはず、アレンジは、ホーン・セクションの巨匠、ジェリー・ヘイ。M3「On the Prowl」も、スロウなグルーヴのソウル・ナンバー。テナーサックスも、低音を多用して奏でるところが新鮮で、グッとくる。M8「Skylark」は、ご存知のスタンダード曲のカバー演奏。ピアノをバックに、ジェイムスのソロ・フレージングが白眉で、美しい演奏。M5「Honestly」は、女性ソウル・シンガー、エイブリー・サンシャインを起用したボーカル・ナンバー。超スロウでも、ハートに染みるソウルなボーカルとサックスがたまらない。M9「If I Can’t Hold You」も歌もの。こちらは、エリック・ロバーソンがボーカルの、スウィートなソウル・バラード。M6「We Came to Party」や、M10「Up All Night」は、アップテンポのファンキーな佳曲。でも、ちょっと抑え気味のビートが、かえって消化不良になってしまう。クールなところも最高だけど、今度は、ビート全開のボニー・ジェイムが聴きたいなあ。

2017年11月19日 (日)

Patrick Yandall 「A Journey Home」(2017)

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パトリック・ヤンダールは、キャリア25年のギタリスト。初期から、ほとんどの作品の発表は自己のプライベート・レーベル「Zangi」からのリリースだけなので、メジャーなシーンから距離を置いて、自身の音楽スタイルを徹底しているようだ。真摯なギター・プレイに徹した作品は、R&Bやソウル、ブルース、ファンクといった要素を、キャッチーなメロディーで消化する佳作ばかり。主にテレキャスターの、繊細かつ伸びのあるギター・トーンは、縦横無尽で、時にメローな柔らかさもあって、ひとつひとつの音に、感情移入せざるを得ない魅力がある。音作りは、ワン・マン・バンドの演奏のようで、ギター以外のオーケストレーションも素晴らしい。というわけで、この新作も、ファンキーでメロディアスな作品が並んだ秀作。M1「A Journey Home」は、ブラスやオルガンを効果的にバックに使って、スライドを多用するギターが印象的な、華やかな曲。M3「Cruising Kuhio Hwy」は、そのキャッチーなソフト・メロディーは爽やかな疾走感で、視界が広がるようなポップ・チューン。中盤の、伸びのいいフレージングに魅了される、ベスト・トラック。M6「Spirit Moves」は、「オー・ヤー」というだけの荒削りなコーラスが、なんともファンキーな曲。ギターに絡むピアノも素晴らしく、これもヤンダールの演奏なのかな。M9「Sunday Offering」は、ミッド・テンポのバラード。中音を駆使したフレージングが美しい。「私小説」的な風合いのある作品群で、演奏も味わい深いところが、この人の良さかな。

2017年10月21日 (土)

The JT Project 「Another Chance」(2017)

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ザ・JT・プロジェクトは、トッド・シフリン(サックス)とジェイコブ・ウェッブ(キーボード)の2人によるユニット。トリッピン・リズム・レコードからの1作目「Moments of Change」(2016)は、新しいスムーズ・ジャズのスターを予感させる充実した傑作だった。この新作も、全15曲のボリュームで、前作以上に2人の力量に圧倒される力作だ。冒頭を飾る、M1「Another Chance」や、M2「Give Me the Heat」は、前作の方向性を踏まえた、キャッチーなビートのポップな、とびきりのスムーズジャズ曲。この辺りが、このユニットの代名詞で、M6「Open Your Eyes」、M10「Breath」、M11「Louisa」、M14「Pure Intentions」の各曲も、疾走するグルーヴがたまらない、JTプロジェクトらしい、ぐっとくるスムーズジャズ曲。一方で、技巧的なジャズ・パフォーマンスもこのユニットの特色。コンテンポラリー・ジャズのM4「Segue」は白眉な演奏で、この曲と、M9「Sunlight」の、シフリンの熱のこもったサックスのインプロビゼーションは必聴。ちなみに、この作品の演奏メンバーに、ランダル・ヘイウッド(トランペット)、エイプリル・メイ・ウェッブ(ボーカル)という人が参加しているのだが、この2人は、「Sounds Of A&R(略してS.O.A.R.)」というジャズ・ユニットを組んでいる2人。このS.O.A.R.も、JTプロジェクトと同じトリッピン・リズム・レコードから「Let’s Stay Forever」というアルバムが出ていて、そちらにはJTプロジェクトが客演している、という関係。女性ボーカルの、エイプリル・メイ・ウェッブという人、JTプロジェクトのジェイコブ・ウェッブと、ファミリー・ネームが同じだから、兄妹?姉弟?なのかな。

2017年10月 7日 (土)

Tim Bowman 「Into the Blue」(2017)

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ティム・ボウマンはデトロイト出身のギタリスト。20年以上のキャリアを有する、スムーズジャズ界の重鎮ギタリストの一人。彼の実姉ヴィッキーは、ゴルペル界の名門ワイナンス・ファミリーのマービン・ワイナンスに嫁いだスター歌手。ボウマンも一時期ワイナンズにギター奏者として参加していた。ワイナンズを離れた後、「Love, Joy, Peace」(1996)でソロ・デビュー、その後4作品のアルバムをリリース。この新作「Into the Blue」は9年ぶり、久々の6作目のフル・アルバム。先行してシングル発表していた、M1「City Lights」、M14「Seaside Drive」の2曲や、ギターソロの小品3曲を含む、全15曲。先行シングルの2曲は、ボウマンらしい、キャッチーな都会的なサウンドに、ロマンティックなギターの音色が印象的なハイライト曲。ガットギターを奏でる3曲が光っている。M3「Into the Blue」、M5「Tan Hermosa(So Beautiful)」、M10「Love Forever More」、はいずれもメランコリーな美メロディーを、暖かみのあるガットギターで奏でて美しい。一方ソウルフルな曲もこの人らしい。M13「You Are」は、エラン・トロットマンが客演したスウィート・ソウル。M2「All I Need Is Love」は、メロウ・ソウルな歌もので、ボーカルは、R&Bグループのミント・コンディションのリード・シンガー、ストークリー・ウィリアムズ。ストークリーのボーカルも、ボウマンのギターも、泣きのメロウ節の佳曲。小品3曲も、それぞれわずか1分足らずだけれど、染みるギターにグッと来ます。今度は、ソロでフルアルバムが聴きたいなあ。

2017年9月17日 (日)

Michael J Thomas 「Driven」(2017)

Driven

サックス奏者マイケル J トーマスは、「City Beat」(2010)でデビュー。スマッシュ・ヒットしたシングル「I Think About Amy」(2011)以降は録音作品は出ていなかったので、この新作は久しぶり。新作は、彼自身のボーカルを披露する M1「My Love」で始まる。AOR的と言っていいメロディーはどこか懐かしいし、彼の中性的な歌声は、かのマイケル・ジャクソンを彷彿として、とても新鮮。11曲のアルバム中、ボーカル曲は4曲入っていて、彼のボーカル曲がこのアルバムのハイライト。残りのボーカル曲3曲、M5「Girls Got Moves」はファンキーなノリがかっこいいし、M8「Say Goodbye」は包容力が伝わるバラードで、M10「Driven」はワイルドなポップ・チューン、といずれもマイケル・ジャクソンを繊細にした歌声が印象的でキャッチーな佳曲揃い。でも、やはりサックス奏者としてのトーマスの魅力が伝わるインスト曲にも注目。M2「Baby Coffee」はブラス・セクションをバックに、ポップなメロディーを奏でるシルキーな音色のサックスに魅了される曲。M4「You Know You Got This」は、AOR的なメロディーが懐かく、でも都会的なビートがアガる曲。M9「Never Gonna Leave You」は、セクシーな音色のサックスが主役のスロウ・テンポのジャージーなトラック。どちらも魅力的な、自身のボーカルとサックスを駆使した、上質なポップ・アルバムと言ってもいい、ユニークでベスト級の秀作。

2017年9月 3日 (日)

Jonathan Fritzén 「Ballads」(2017)

Ballads

ジョナサン・フリッツェンの新作は「バラッド」と名付けられた、文字通りスロウなムードのフルアルバム。前作「Fritzenized」(2015)までの5作品は、ビートに乗ってシンプルでアタックなシングル・トーンのピアノ、ポップなメロディーがスウィングするサウンド、そういうところが彼の真骨頂だったので、静謐なサウンドに貫かれたこの新作は意欲作だ。全12曲は彼の自作曲で、メロディーは牧歌的で、ピアノを固めるサウンドは映画のサントラを思わせるように映像的だ。ほとんどの曲は、フリッツェンのピアノとシンセに加えて、ギターの客演と、シンプルなサウンド。8曲をサポートするギタリストは、アレックス・クラウンという人で、この人は、フリッツェンと同郷のストックホルム時代の友人だそう。M2「Today」は、そんなクラウンのギターが活躍する曲で、アルバムの中でも比較的ワイルドなトラック。M4「Let It Go」も、クラウンが客演した、切ないメロディーの上質なポップ・チューンの白眉なトラック。M3「The Fiddler」は、牧歌的でフォーキーなメロディーがヒーリング・ムードいっぱい、ゲストのバイオリンは、ピート・プロジェクトのピーター・フェレンツ。M8「Countryside」は、視界が広がるような大らかな曲調のピアノが美しい。最後のコーダに聴かせてくれるアタックのあるビートの繰り返しは、都会的で、フェードアウトするのが残念。M7「Sahara」では、実母のカタリーナ・フリッツェンがフルートで客演して、親子共演のトラック。最後のM12「Rainbows」は、ピアノ・ソロの小品だけれど、フリッツェンならではのメロディーが余韻を残して美しい。聴き込むほどに、フリッツェンのピアノ世界に浸れる秀作。

«Special EFX 「Deep as the Night」(2017)

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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  • Bob Boldwin「MelloWonder」
  • Brian Simpson 「Out of a Dream」
  • Jonathan Fritzen 「Fritzenized」

2014 Top Recommend (click )

  • Greg Manning 「Dance With You」
  • Rick Braun 「Can You Feel It」
  • Michael Lington 「Soul Appeal」
  • Ed Barker 「Simple Truth」

2013 Top Recommend (click)

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  • Oli Silk 「Razor Sharp Brit」
  • Patrick Yandall 「Soul Grind」
  • Boney James 「The Beat」

2012 Top Recommend (click)

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  • Paul Brown 「The Funky Joint」
  • Chris Standring 「Electric Wonderland」
  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
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