2019年2月16日 (土)

Jim Kimo West 「Moku Maluhia: Peaceful Island」(2018)

Peaceful island第61回グラミー賞が発表された。先日、ノミネート作品を紹介した「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門は、スティーブ・ガッドの「Steve Gadd Band」が受賞。およそ80に迫る、膨大なカテゴリーを網羅するグラミー賞だが、純粋たるスムーズ・ジャズ系の作品もアーティストも、今回(も、)ほとんど見当たらない。ジャズやポップスの亜流とでも、思われてるのだろうか。売上が物差しのビルボードの方では、昨年度の「ジャズ・アルバム」のベスト・リストには、ボニー・ジェイムスブライアン・カルバートソンデイブ・コーズ、といったスムーズ・ジャズの作品とアーティストが、上位に入っているのに。アカデミー委員は、どのカテゴリーでも、多様性や社会的な影響力を含めた、芸術性を視点に選んでいるのだろう。スムーズ・ジャズのように、分かりやすくて、BGMとしても日常的な音楽は、陽が当たらないということなのか。

とは言え、グラミー賞の各部門のノミネートや受賞リストから、スムーズ・ジャズでなくとも、興味深い作品を見つけるのは楽しくもある。これは、そんな、印象的な作品。

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2019年2月12日 (火)

Jazz Funk Soul 「Life And Times」(2019)

Lifeandtimesジャズ・ファンク・ソウル(以下JFS)の新作は、急逝したギター奏者チャック・ローブの替わりとして、ポール・ジャクソン・ジュニアを迎えて再出発となる注目作。ジェフ・ローバー、エヴァレット・ハープに、ローブが組んだスーパー・トリオは、「Jazz Funk Soul」(2014)、「More Serious Business」(2016)の2作品を残して、ローブが逝ってしまい、バンドの継続を心配していたファンにとって、これはまさに朗報。

ジャクソンJRは、ジェフ・ローバー・フュージョン(JLF)では、近年作品のほとんどでサイド・マンとして参加しているほどに、ローバーとは交流の深いギタリストなので、このユニットでの親和性は疑いようが無い。JLFが、かなり尖ったインタープレイを特色とするユニットなら、このJFSは、ポップなグルーヴが特色と言える。こちらは、エヴァレット・ハープがキー・マンで、彼の書くポップな楽曲と、サックスのメロディアスなフレーズが、このユニットの特色を際立たせている。ジャクソンJRは、スウィンギーなギターを弾く人だから、相性は文句なし。

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2019年2月 9日 (土)

「母と子の絆」(ポール・サイモン)は、「ヴェトナム」(ジミー・クリフ)のアンサー・ソングでは?

Paulsimonポール・サイモンの「母と子の絆(Mother and Child Reunion)」と、ジミー・クリフの「ヴェトナム(Vietnam)」の、関連について、個人的な考察です。

2012年7月15日、ポール・サイモンはイギリスのハイド・パークで野外コンサートを行いました。サイモンが、「僕の個人的なヒーローを紹介します」と言って、ジミー・クリフがゲストで登場。2人で、「ヴェトナム」と「母と子の絆」を、まるでメドレーのように歌いました。(そのライブ盤「The Concert in Hyde Park」は、コンサートから5年後にリリースされました。)2人の共演は感動的なサプライズでしたが、歌われた2曲のストーリーが、密接にリンクしていることに多くの観客が注目したはずです。この2曲の繋がりで、「母と子」の解釈がやっと分かったように思えます。サイモンの「母と子」は、クリフの「ヴェトナム」に触発されて作った可能性が高く、そのサイモンの曲は、クリフの曲への「アンサー・ソング」であるとさえ思うのです。

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2019年1月27日 (日)

Jacob Webb 「I'm Coming Home」(2018)

Jacobwebbキーボード/ベース奏者ジェイコブ・ウェッブは、サックス奏者トッド・シフリンと、コンテンポラリー・ジャズ・ユニット、ザ・JT・プロジェクトを組んでいる。結成して10年になるユニットだが、特に近年作品の「Moments of Change」(2016)と「Another Chance」(2017)は、実力派の登場を強く印象付けた秀作だった。

この作品はウェッブにとって初めてのソロ作品。JTプロジェクトでは主にキーボードを担当しているが、このソロ作品ではベース演奏を中心に、JTプロジェクトとは異なるアプローチを志向した作品。ウェッブ自身が立ち上げた、「ネクスト・パラダイム(Next Paradigm)」という新レーベルからのリリースで、今後は新しいアーティストも発掘したいという。このソロ作品では、サックス奏者スタンタウン・ケンドリックや、トランペット奏者ランダル・ヘイウッドといった、交流関係のあるミュージシャンが参加している。ランダル・ヘイウッドは、女性シンガーのエイプリル・メイ・ウェッブと「Sounds of A&R」(S.O.A.R.)というジャズ・ユニットを組んでいる人。エイプリル・メイ・ウェッブは、ジェイコブの実姉であり、音楽的にも相互に共演し合う親密な関係だ。

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2019年1月20日 (日)

Ben Tankard 「Rise!」(2018)

Btankard riseベン・タンカードは、「ゴスペルのクインシー・ジョーンズ」と形容される、メジャー級のキーボード奏者。同時に、自己啓発の演説家でもあり、自身のファミリーと共に出演するテレビ番組が人気を博するスターでもある。彼の音楽は、ゴスペルや、コンテンポラリーなクリスチャン・ミュージックと呼ばれる、信仰や啓発を高揚するカテゴリーに入れられる。そんなカテゴリー分けは気にせず、スムーズ・ジャズとして楽しむのに値するグッド・ミュージックです。さて、この新作は、彼のスタイルである、メロウなムードに満ちた心地のいい作品。彼のピアノ演奏は、グルーヴを打ち出すのではなく、ハートに響くようなフレーズを繰り出すのが、特に味わい深いところです。

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2019年1月12日 (土)

David Garfield 「Jammin' Outside The Box」(2018)

Dg jamminキーボード奏者、デヴィッド・ガーフィールドの「Outside The Box」プロジェクト、前回の記事で紹介した「Jazz」に続く、第2弾。全19曲の収録だが、編集トラック(5曲)、前作収録曲の別バージョン(3曲)が含まれているので、新曲は正味11曲という構成。新曲のほとんどは、前作とはダブらないセッションの演奏で、新たに約60人のプレイヤーが参加して、第1集から引き続き参加するプレイヤーを加えると、総勢100人に及ぶ演奏陣によるスーパー・セッション集だ。今回は、ヴォーカリストをフューチャーした、いわゆる歌モノが6曲入っていて、インストを含めた選曲もR&B/ポップスのカバーが中心の作品集。

その中で、何と言ってもハイライトは、レジェンド・シンガー、スモーキー・ロビンソンが唄う「One Like You」。この曲は、もともと、ジョージ・ベンソンのオリジナル・アルバム「Songs and Stories」(2009)に入っていた曲で、作曲はガーフィールドとロビンソンの共作。スモーキー・ロビンソン自身が歌ったバージョンは、本作が初のセルフ・カバーなのだろうか。唄声こそ枯れたところは隠せないとはいえ、あの、ふるえるハスキー・ボイスのメロウな味わいには魅了される。アルト・サックスはデヴィッド・サンボーンで、バック・コーラスがマイケル・マクドナルド、というドリーム・チームのような演奏も一聴の価値あり。

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2019年1月 6日 (日)

David Garfield 「Jazz Outside The Box」(2018)

Dg jazzキーボード奏者、デヴィッド・ガーフィールドは、フュージョン・グループ「カリズマ」の中心人物。カリズマ名義の作品としては、「Perfect Harmony」(2012)以降はリリースが無かったので、久々に登場したガーフィールドのソロ新作だ。彼の人脈の広さを証明するように、オールスターのミュージシャンが総出演する感激のセッション集。

「Outside The Box」と銘打ったプロジェクトの第1作で、続けて4作品がリリースされるという。この後は、既にリリースされている「Jammin'」。ボーカル曲が中心になるという「Vox」と、フュージョン演奏が中心の「Stretchin'」。最後は、「Holidays」と名付けられる予定というから、クリスマス・ソング集なのだろうか。

そのプロジェクトの始まりを飾る作品が、「Jazz」と名付けられたこの作品。フュージョン/スムーズジャズのファンにとっては、万華鏡のような内容だ。バージョン違いの3トラックを含む全17曲は、1時間半に及ぶ重量級のボリュームで、力を入れて聴きこまなければいけない。ガーフィールドのオリジナル3曲以外は、11曲がカバー作品。デューク・エリントンの「In a Sentimental Mood」と「Sophisticated Lady」に、「My Fevorite Things」、ホレス・シルバーの「Song for My Father」、といったジャズの名曲から、ジョー・サンプルの「Rainbow Seeker」や、スティングの「Fragile」と「Roxanne」といった選曲リストに、聴く前からワクワクする。

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2019年1月 3日 (木)

Acoustic Alchemy 「33 ⅓」(2018)

Aalchemy 33 1 3アコースティック・アルケミーの新作。「Roseland」(2011)から、7年ぶりのスタジオ録音作品。アコースティック・アルケミーは、デビュー以来のオリジナル・メンバーであるグレッグ・カーマイケル(ナイロン・ギター)と、マイルズ・ギルダーデイル(スチール・アコースティック・ギターとエレキ・ギター)、2人のギタリストによるユニット。近年は、固定メンバーとして、フレッド・ホワイト(キーボード)、ゲイリー・グレインジャー(ベース)、グレッグ・グレインジャー(ドラムス)を従えたバンドで活動しているようだ。このメンバーが、前作に引き続き、この新作でも録音に参加している。2014年に出した「Live in London」も、この5人のバンドによるライブ盤だ。

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2018年12月29日 (土)

第61回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品(2018)

2018年度、第61回グラミー賞の、「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門、ノミネート5作品が発表されました。(受賞作の発表は、2019年2月11日の予定。)


  1. 「The Emancipation Procrastination」Christian Scott aTunde Adjuah

    Cscottクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーは、新世代ジャズ・シーン、注目のトランペッター。ビートやハーモニーといった、既成のフォーマットを解体するかのように、ミニマルで反復するリズムと、無秩序を感じさせるインプロビゼーションが、衝撃的な作品。「ジャズの100年」をテーマにして、連続してリリースした3部作の最終作品。アヴァンギャルドで未来的なコンセプトの中で、最後の曲「New Heros」が、フリー・ジャズに回帰して幕を閉じるのが印象的。

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2018年12月26日 (水)

2018年のベスト3+1

今年のベストな3+1作品です。

① 「Illuminate」Steve Oliver

Soliver illuminate

スティーヴ・オリバーの、大ヒットした「Global Kiss」(2010)は、今でも私の愛聴盤だ。新作が出るたびに、「Global Kiss」の進化を期待して、聴いてきたアーティストである。スピード感のあるポップな楽曲、エキゾチックなメロディー、ギターの独特な音色とドリーミーなパッセージ、彼の音楽世界にはいつも魅了される。ボーカルだけのアルバムを出したあたり、歌手の路線を行くのかと不安に駆られたけれど、この新作は久しぶりにインスト新曲だけで、満足度が高揚した作品だ。ハズレなしの楽曲の素晴らしさはもちろん、特筆は、オリバーのギター演奏。ジャズ寄りのフレージンングも素晴らしい。ギタリストとしての評価も高まって欲しい。


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«Gregg Karukas featuring Shelby Flint「Home for The Holidays」(1993、reissue 2018)

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