2019年10月13日 (日)

Mark Etheredge 「Connected」(2016)

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マーク・エサレッジのデビュー・アルバム「Change Coming」(2012)は、オリジナルの全曲を自ら歌うシンガー・ソング・ライターとしてのボーカル作品だった。スティーリー・ダンを思わせるソリッドなサウンドと曲調が印象的で、80年頃のボズ・スキャッグスのようなアダルト・コンテンポラリー路線を志向したような作品だった。

その次作品がこの『Connected』(2016)で、エサレッジのピアノとキーボードが主役の全10曲インストゥルメンタルの演奏作品。ボーカリストからキーボード奏者へ方向転換というわけだが、目の覚めるようなピアノ演奏とバンド・アンサンブルで上質なスムーズ・ジャズ作品になった。共作を含めた全10曲はエサレッジのオリジナル曲で、歌詞を載せて歌えるようなメロディーは、シンガー・ソング・ライターとしての才能がリンクしている。

プロデュースはポール・ブラウン。都会的で洗練されたサウンドに統一されていて、エサレッジのピアノ奏者としての才能を引出したのはブラウンの手腕。全曲が同じメンバーのリズム・セクションで固められている。ギターはポール・ブラウン、ベースはロバート・バレー、ドラムスはゴーデン・キャンベル、パーカッションはリッチー・ガルシアという面子。エサレッジのロマンティックなフレージングと、ソリッドなリズム・セクションがブレンドするアンサンブルが素晴らしい。

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2019年10月 6日 (日)

David Benoit 「David Benoit And Friends」(2019)

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デイヴィッド・ベノワは、デビューが1977年だから40年を超えるキャリアのピアニストである。リーダー・アルバムは35作品を数える。大ベテランだけれどその音楽は枯れた味が増すというより瑞々しい味わいがさらに際立つ稀有なアーティストだ。

プロデュースや映画音楽、交響曲と広範囲な活動も注目に値するけれど、やはり彼のピアノ演奏は最大の魅力。ビル・エヴァンスやデイヴ・ブルーベックといった伝統を受け継いで、80年代以降のボブ・ジェイムスやデイヴ・グルーシンなどコンテンポラリーなジャズ・スタイルの系譜を引き継いでいる貴重な正統派だと思う。

そのデイヴィッド・ベノワの新作は、交流の深いベテラン・アーティストや、フレッシュな若い世代のゲストも迎えた多彩な作品。

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2019年9月23日 (月)

Rick Braun 「Crossroads」(2019)

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リック・ブラウンの新作は、前作「Around The Horn」(17年)や「Can You Feel It」(14年)が放っていたオン・ビートな熱量は控えめ。スロウな楽曲を中心にブラウンのシルキーな音色を堪能出来る上質なサウンドの秀作だ。

全10曲(2曲はカバー曲)、フィリップ・セスとの共演が3曲、クリス・デイヴィスとの共演が2曲、ピーター・ホワイトとの共演が1曲と、いずれも過去作品でも共演している3人とのコラボレーションが聴きどころになっている。

セスと共作した「Crossroads」はポップなアレンジを施したキャッチーな曲。終盤のセスとブラウンのリラックスした掛け合いに引き込まれる。「Bahia」もセスとの共作でボッサ・ムードが心地いい佳曲。メランコリーなアレンジが印象的だ。

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2019年9月16日 (月)

Scott Wilkie 「Brasil」(2019)

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ポップスやジャズでは定番の企画アルバムといえば、クリスマスもしくはホリデイ・ソング集。それとブラジル曲集というのも定番だろう。キャリアを続けるアーティストは、必ずといってもいいほど、どちらかもしくはどちらも手がける。個人的にはクリスマス・アルバムというのはあまり興味がわかないが、ブラジルをテーマにした企画盤はいつでも注目している。ブラジル音楽に造詣が深い訳ではないが、ボッサ系サウンドのリラックスした開放感には理由なく惹かれてしまう。演るのが贔屓のアーティストならなおさらだ。さて今回のスコット・ウィルキーのブラジル企画作品も、すでに私の愛聴盤になった秀作。

スコット・ウィルキーは、キャリアの長いコンテンポラリー・ジャズ・ピアノ奏者。ソロ・デビュー・アルバム『Boundless』(99年)から『Studio LIVE』(17年)まで7枚のアルバムをリリースしている。自身のスタジオとレーベルを持っていて、南カリフォルニアを中心に活動している。彼のピアノは、ジョー・サンプルや、デイヴ・グルーシン、デヴィッド・ベノアら名手の系譜に通じるスタイル。デビュー当時から、ラス・フリーマン、ジェフ・カシワ、ポール・ジャクソンJR、エリック・マリエンサルといったフュージョン/コンテンポラリー・ジャズのトップ・ミュージシャンと共演して、西海岸系の爽快なサウンドが特徴だ。

ソロ8枚目となるこの新作は、新旧のブラジル楽曲を中心にした作品。ブラジル・テイストと相まって、ウィルキーと演奏陣の軽快な音楽性が際立つ素晴らしい演奏集。

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2019年9月 1日 (日)

Kim Scott 「Free To Be」(2019)

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スムーズジャズ界のトップ級女性フルート奏者といえば、アルティア・ルネレーガン・ホワイトサイド、キム・スコットの3人。いずれも巧者の3人だが、なかでもスコットの演奏はフルートの特性が際立ったフェミニンなフレージングが特徴。この新作は、前作「Southern Heat」に比べて、そんなフェミニンなムードが漂っていて自然体で作られたことが伝わる秀作。

前作に続いてプロデューサーは、ケルビン・ウートン。ウートンは、R&B系プロデューサー/アレンジャー/マルチ・ミュージシャンとして、R&B/ソウル界の男性歌手アンソニー・ハミルトン、女性歌手のジル・スコット、アース・ウインド&ファイアーなどのメジャー・アーティストのアルバムに参加している。このアルバム全9曲中7曲が、ウートンがプロデュース/キーボード演奏で関わっている。

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2019年8月25日 (日)

ピーセス・オブ・ア・ドリームの復習

ピーセス・オブ・ア・ドリームは、故郷フィラデルフィアの学生、ジェームス・ロイド(キーボード)、カーティス・ハーモン(ドラムス)、セドリック・ナポレオン(ベース)の3人が組んだアマチュア・バンドだった。10代のバンド結成(75年)から活動は通算40年を超えて、アルバムは20作品を数える。メンバー編成や音楽性は変容を経てきたが、今でもオリジナル・メンバーのロイドとハーモンの2人で活動するスムーズジャズ界屈指のレジェンド・バンドである。

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Pieces Of A Dream (1981)

アマチュア時代にバンド名はいくつかの改名を経て、最終的にそのユニークな名前に決定。ロイドが語っているところによると、その名前はサックス奏者スタンリー・タレンタインの曲「Pieces of Dreams」のスピンオフ(ひねり)で、夢(ドリーム)を実現した3人(ピーセス)という意味を込めたそうだ。

ちなみに、タレンタインは同曲をタイトルにしたアルバム(74年)をリリースしているが、同曲はカバー演奏である。オリジナルは、ミッシェル・ルグランが作曲したアメリカ映画(邦名「美しき愛のかけら」70年)の主題歌。作詞はアランとマリリン・バーグマン夫妻、歌ったのはペギー・リーで、受賞は逃したがアカデミー賞主題曲賞にノミネートされた名曲。その曲は彼らのレパートリーだったのかもしれない。

ミドル・スクールの学生だった3人は地元フィラデルフィアのテレビ・ショウのバック・バンドに抜擢される。ゲスト出演したデイヴ・ヴァンレンタインや、ジェリー・バトラー、クラーク・テリー、グローバー・ワシントン・ジュニアといったスター・ミュージシャンの伴奏を務めた。その後3人は、ある日老舗ジャズ・クラブ「ビジュー」で前座演奏をする。その時、観客で来ていたグローバー・ワシントン・ジュニアが彼らの演奏に飛び入り、「Mr.Magic」(ワシントン・ジュニアの代表曲)を共演する。ロイドが15か16歳、他2人が17か18歳だったという。ワシントン・ジュニアの『Live At The Bijou』(77年)というアルバムは、その場所「ビジュー」でのライブ盤である。

その後、彼らを気に入ったワシントン・ジュニアが、自身のプロダクションに3人をスカウトしてプロ・デビューに至る。ワシントン・ジュニア自らプロデュースしてエレクトラ・レーベルからデビュー・アルバム(81年)をリリース。この時3人はまだハイスクールの学生だった。その後もワシントン・ジュニアがプロデュースして合計3枚のアルバムをリリースした。

まさにバンド名に込めたように、弱冠10代ではなばなしくプロ・デビューに至った幸運は3人にとってまさに夢がかなったのだった。

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2019年8月11日 (日)

Mel Holder 「Music Book Vol. III - Magnificent」(2019)

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メル・ホルダーは、ニューヨーク出身のサックス奏者。ゴスペル/クリスチャン・ミュージックにカテゴリー分けされる人で、1999年のデビュー作から5枚のソロ・アルバムをリリースしている。ブルックリンにある教会の敬虔な信者であり、20年以上に渡り音楽を担当する聖職者として活動している。多くのゴスペル系アーティストとの共演や、教会が行う米国内外の布教/演奏活動を行なっている。

近年の教会は、メガ・チャーチと呼ばれる数千人超の信者を集めるコンサート規模の集会が大人気だそうだ。そのステージでは、ゴスペルはもちろんロックやカントリーをベースにしたバンドやシンガーが参加者を高揚させるという。そんなムーブメントも昨今のクリスチャン・ミュージックの多様化の一因と想像する。私は宗教的な解説を述べる知識はないが、音楽目線では近年のゴスペルやコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックは気になる存在だ。インストゥルメンタルの楽曲もあり、特にスムーズ・ジャズのアーティストが登場するのは聴き逃せない。

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2019年8月 4日 (日)

Walter Beasley 「Going Home」(2019)

Goinghome_beasleyウォルター・ビーズリーの新作は全11曲、数曲を除いて、ほぼ同じメンバーによるグルーヴィーな演奏が光る秀作。キー・パーソンは、キーボードのフィル・デイビスと、ドラムスのジョン・ロバーツ。ビーズリーは、ほとんどの曲でソプラノ・サックスを吹いている。

何より5曲のカバー演奏に惹かれてしまう。グローヴァー・ワシントン・ジュニアや、ウィルトン・フェルダー、ジョージ・ハワード、ロイ・ハーグローヴらの楽曲を演っているのだが、いずれも80年から90年代をピークに活躍した、スムーズジャズの先駆者と言える偉大なミュージシャン。ビーズリー自身のヒーロであり、オマージュなのだろう。自らが継承者であることをアピールするような、ビーズリーの演奏が素晴らしい。

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2019年7月28日 (日)

David Nevue 「in the soft light of grace」(2019)

Softlight

デイビッド・ネビューは、ニュー・エイジ系のソロ・ピアニストだ。この最新作まで、デビュー作「The Tower」(1992)から15枚のアルバムをリリースしている。ビルボードのニュー・エイジのチャートでは常連の人気アーティスト。

10代の頃はピンク・フロイドやカンサスといったプログレッシブ・ロックに夢中だったが、ジョージ・ウィンストンに魅了されてソロ・ピアノ演奏を目指したのだという。90年代にネビューはインターネット関連企業に努めるビジネス・マンをしながら、自主制作でアルバムを作り始めた。95年に、当時としては先駆けのオンラインで自身の作品を販売する。そのオンライン販売で人気を博して、2001年には会社勤めを辞めてプロのピアニストになる。

ソロ・ピアノのアルバム制作だけでなく、2003年からは、これもユニークな、ソロ・ピアノ専門のインターネット・ラジオ局「Whispering: Solo Piano Radio」の運営を始めた。2005年からはコンサート演奏も初めて、ソロだけでなくニュー・エイジ系の他のソロ・ピアニスト、デイビッド・ランツ、ピーター・ケーターらと共同コンサートも行なっている。オンラインの音楽販売や、インターネット・ラジオ曲の運営などの経験を書いた著作や、情報配信の活動もしている。

 

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2019年7月14日 (日)

Torcuato Mariano 「Escola Brasileira」(2019)

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トルクアート・マリアーノはアルゼンチン生まれでブラジルで活躍するベテラン・ギター奏者。ソロとしては5枚の作品をリリースしている。

世界的な評価も高いブラジルのシンガー、カズーザ、イヴァン・リンス、ガル・コスタ、ジャバンなどとも共演。作編曲家でプロデューサーとしても、フラヴィオ・ヴェントゥリーニ(Flavio Venturini)、ファビオ・ジュニア(Fabio Junior)、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ( Paulinho da Viola)、ベロ(Belo)といった、ブラジルの錚々たるシンガー/アーティスト達の作品に関わっている。

ギター奏者としても、スムーズジャズ系ミュージシャン、イエロージャケッツ、マイケル・リントン、ボブ・ボールドウィンらと共演も多い。最近ではボールドウィンの『The Brazilian-American Soundtrack』でも、マリアーノがフューチャーされていた。

 

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«The Braxton Brothers 「Higher」(2018)