2018年12月 8日 (土)

Jeff Lorber Fusion 「Impact」(2018)

IMPACTジェフ・ローバーと、ジミー・ハスリップに、サックス奏者アンディ・スニッツアーが加わった新生ジェフ・ローバー・フュージョンの新作は、同メンバーとしては、「Prototype」(2017)に次ぐ2作目。「Prototype」は、第60回グラミー賞の「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」を受賞した作品。
グラミー賞受賞というムードも反映して、前作以上にメンバーの意思疎通とリラックス感が、奔放に発揮された作品となった。3人に加えて、ドラムスはゲイリー・ノバック、ギターはポール・ジャクソン・ジュニア、といった前作に引き続いてのサポート陣と、安定感のあるアンサンブルを聴かせてくれる。
1曲目の「Sport Coat Makes Good」の、疾走感のあるリズム・パターンこそ、十八番のアンサンブル。ホーン・セクションを重ねたロックなビートが爽快。2曲目の「Pasadena City」も、このバンドならではの重量級のリズムとアンサンブルに圧倒される。「Quest」は、ゆったりとしたリズムが異色で、スニッツアーの奏でるフレージングもポップな味わいが、新機軸に聴こえる。最後の曲「Valinor」も、フレージングがポップで新鮮だ。ローバーのアコピと、スニッツアーのサックスの交錯がスウィングして心地いい。
Hacienda」(2013)や、「Prototype」はスリル感がたまらない作品だったが、少しリラックスしたグルーヴを聴かせてくれるこの作品も負けず劣らずの秀作だ。

2018年11月25日 (日)

Bob Baldwin 「Bob Baldwin Presents Abbey Road and the Beatles」(2018)

Bbaldwin abeyroadボブ・ボールドウィンは、キーボード奏者である一方、10年前からラジオ番組を制作して、自らホストDJを務めている。「New Urban Jazz Lounge」というその番組は、今では全米40を超えるステーションで放送されている人気番組だ。彼の提唱する「ニュー・アーバン・ジャズ」とは、”伝統的なジャズの様式に敬意を払い、ブラジル音楽とアーバンなフレーバーをブレンドした、コンテンポラリー・ジャズの形である。”と定義付けている。その番組は、ボールドウェインのホーム・ページで、ストリーミング配信されているので、ぜひ一聴されたし。
さて、ボールドウィンの新作は、デビュー作「A Long Way to Go」(1988)から数えてキャリア30年目を記念する、ビートルズ・ソング集である。ビートルズの名曲10曲が、「ニュー・アーバン・ジャズ」な演奏曲に生まれ変わり、目(耳だね)を見張る作品集になった。
ファンキーなベースのリズム・リフで始まるイントロが意表を突く「Yesterday」は、対照的にほぼ原曲に忠実なボールドウィンのピアノと相まって、魅力的な演奏。ちなみに、「Yeasterday」は、ボールドウィンのお気に入りのビートルズ・ナンバーのようで、つい前作「The Brazilian-American Soundtrack」(2016)でも、同曲を演っているし、20年以上前の「For You」(1994)というアルバムにも、同曲が収録されている。「Imagine」も、編曲が白眉な1曲。都会的なR&Bグルーヴに飾られた演奏は、オリジナルとはまるで別もの。ユージ・グルーヴのソプラノ・サックスと、ボールドウィンのピアノのインタープレイが美しい、ベスト・トラック。「And I Love Her」は、忠実にオリジナル・メロディーを奏でるボールドウィンのピアノが聴きもの。ほぼリズム・セクションだけの、シンプルなアレンジで、終始リリカルなピアノに心惹かれる。「Michelle」も、オリジナル・メロディーは忠実に、主旋律以外のフレージングが独自なメロディに飾られたアレンジが素晴らしい。「Don't Wanna Be (The Fool on the Hill)」ではシー・シー・ペニンストン、「My Love」ではロリ・ウィリアムズ、のいずれも女性ボーカリストを迎えて、アダルト・オリエンテッドなムードの曲に変身。
10曲のビートルズ・ナンバー(「Something」はインストとボーカルの2バージョンが入っている)に加えて、ボールドウィンのオリジナルの「Abbey Road」という曲が入っている。ゲスト・ボーカルは、ロリ・ウィリアムズ。”アビー・ロード、その音楽は決して古びない。美しきアビー・ロードは、永遠のサウンド。”と歌われる。歌詞には、レノン、ポール、リンゴ、ジョージ、なんとヨーコまで登場。Come Together、Let It Be、Here Come the Sun、などの曲名も歌われる。メロウで、アーバンなR&Bメロディーに乗っての、「ビートルズ大賛歌」なのである。

2018年11月17日 (土)

Kayla Waters 「Coevolve」(2018)

Coevolveピアノ奏者ケイラ・ウォーターズは、サックス奏者のキム・ウォーターズの愛娘である。キム・ウォーターズの作品、「Silver Soul」(2014)でも、彼女のピアノ演奏がフューチャーされていたように、父娘の共演から、早くから注目されていた人。その後、トリッピン・リズム・レコードから「Apogee」(2017)をリリースして、ソロ・デビューを果たした。そして、この新作がソロとしての2枚目のアルバム。「Apogee」はフレッシュなデビュー作品だったが、ぎこちないところが拭えない印象もあった。この新作では、ピアノが踊るように奔放でエレガントな演奏で、目(耳)を見張るほどに、デビュー作とは段違いで素晴らしい。楽曲も、若々しさを感じて、明るい基調のムードが爽快だ。1曲目の「Zephyr」は、先行でシングルとなっていた曲で、彼女の代名詞になるようなハイライト・チューン。題名のゼファーとはギリシア神話の西風神を転じて、そよ風のこと。リラックス感のあるメロディーと、爽やかなピアノのフレージングがまさに優しい風のように爽やかな佳曲だ。2曲目の「Black Cover」でも、感情移入しながら爪弾くようなピアノが美しい。この曲のサックスは、キム・ウォーターズだろう。「Eden's Gold」は、R&Bテイストのスロウ・バラード。明るい印象を残す、ロマンチックなピアノのフレージングが際立つ曲。「Cocoa Earth」は、エレキ・ピアノの演奏で、スピード感を伴うグルーヴが楽しい。中盤から交差するフルートは、ツアーのメンバーらしいケリー・ゲイナーという人の演奏。そのフルートも聴きどころ。最後の曲がアルバム・タイトル曲「Coevolve」で、アンビエントなムードのピアノ演奏が印象的な曲で、これもこの人の特色だろう。デビュー2作目にして、飛躍を印象付ける秀作。

2018年11月 9日 (金)

Paul Brown 「Uptown Blues」(2018)

Paul Brown Uptown Bluesポール・ブラウンは、今や、スムーズジャズ界屈指の売れっ子プロデューサーだ。ボニー・ジェイムス、ユージ・グルーヴ、ピーター・ホワイト、マーク・アントワン、リック・ブラウン、カーク・ウェイラム、ジェシーJ、などなど、ポールがプロデュースしたアーティストは、スター級だけでなく新人に至るまで、枚挙に遑がない。彼の手腕による作風は、アーバンで、メロウで、都会的なムードに溢れたサウンドと楽曲が特色だ。ポールはギター奏者として、ソロ・アルバムも「Up Front」(2004)を第1作として、「One Way Back」(2016)まで、数えて8作品をリリースしている。今までのソロ作品も、都会的なサウンドとコンテンポラリーな楽曲、メロウなギター・プレイが特色の秀作揃いだ。また、ポールは「ブラザース・ブラウン」という4人組のブルース・バンドを組んでいる。同性同名のポール・ブラウンというオルガン奏者と組んでいるバンドである。「Dusty Road」(2016)というデビュー・アルバムも出していて、こちらはポールがギターとボーカルを担当した、濃いーブルース作品となっている。バンドはリトル・フィートを思わせて、ポールのギターとボーカルも、BBキングかなと思わせるところも。
そして、この新作だが、そんなブルースへの傾倒を深めた内容になった。1曲目の「Boogaloo」は、ポールのブルース・ギターと、メンフィス・ソウルばりのホーン・セクションがガツンとくるハイライト・チューン。5曲目の「I Can't Stand the Rain」も、ホーン・セクションや女性コーラスをバックに、ポールがボーカルを披露するブルース曲。メロディーのキャッチーなところは、伝統的なブルースとの違いが現代的な楽曲。「Uptown Blues」は、ポールのギターが主役の演奏。オルガンとリズム・セクションをバックに奏でる、ギターのファンキーなフレージングが素晴らしい。「Blues for Jeff」は、2015年に他界したギター奏者ジェフ・ゴラブに捧げた曲。ゴラブの「Temptation」(2005)は、ポールのプロデュース作品だった。乾いたトーンのブルース・フレーズが、生前のゴラブの演奏を思わせる。
斯くも、今までのソロ作品の傾向と異なって、ほとんどブルース・アルバムと呼んでもいいような作品なのだが、異色の2曲が入っている。愛妻のシンガー、ジャキー・ブラウンの歌声が聴けるバラード「Somebody's Child」と、注目に値するのが4曲目の「Tomorrow Morning」。この曲のボーカルは、なんとケニー・ランキン。ケニー・ランキンは、2009年に肺癌のため他界した、レジェンドなボーカリスト。実は、2008年ごろ、ポール・ブラウンと、マーク・アントワン、ケニー・ランキンの3人は、一緒にコンサートを行っている。その時の模様の一部は、ユーチューブでも見ることが出来るが、ケニーにとっては最後のステージ・ギグだったのかも知れない。公開されているビデオでは、ポールとマークが入ったバンドを従えて、ケニーが、「In the Name of Love」と、この「Tomorrow Morning」を歌っている。ケニーは、ポールと一緒にアルバム制作を準備していて、録音していた1曲なのだろうか。このアルバムに入っているバージョンは、ケニーの歌とガット・ギター、ポールのギターだけのシンプルな演奏。10年を経て、聴くことが出来るケニー・ランキンの遺作が、心に沁みる。

2018年10月31日 (水)

Skinny Hightower 「Retrospect」(2018)

Hightower retrospectスキニー・ハイタワーは、キーボード奏者で、ドラムやベースも操る、気鋭のアーティストだ。デビュー・アルバム「Cloud Nine」(2016)の後、メジャー・レーベルのトリッピン・リズム・レコードと契約して、「Emotions」(2017)をリリース。そして、精力的に早くもこの新作「Retrospect」をリリース。全15曲、1時間超えのボリュームに、彼の力量が前作以上に発揮された力作だ。縦横無尽な彼のピアノ演奏が発揮された楽曲の数々が並ぶ。彼のピアノは、前作に比べて、よりパーカッシブで、エネルギッシュに響き渡り、圧倒される演奏。数曲のゲストに、サックス奏者コンスタンティン・クラストルニ(Kool & Klean)や、ジャズ・ドラマーのネイト・スミスらが参加しているが、ハイタワーがキーボードに関わらず、フルートやベースなど、多くの楽器演奏とアレンジをこなしている。
「From the Heart」は、コンスタンティン・クラストルニが参加した曲。Kool & Klean での十八番のチルアウト・ムードの印象を覆すような、情熱的なサックスと、グルーヴィーなピアノが交差する佳曲。「Retrospect」は、終始パワフルにフレーズを刻むピアノが圧倒的な演奏。後半の、オルガン演奏も聴きどころのベスト・トラック。「Next to You」は、女性ボーカル(Bebe Merrillsという人)をフューチャーした、メロウなR&Bバラード。ピアノも、メロウな味わいが新鮮だ。「One Way Street」は、ビルボード(Smooth Jazz Songs)にもチャートイン中の、ファンキーなビート・ナンバー。ビートに乗って踊るようなピアノに引き込まれる、キャッチーな曲。「Hold On」は、スロウでメロウな佳曲で、クラストルニのジャージーなサックスと、オルガンのインタープレイが印象的。アルバム中唯一のカバー曲は、「People Make the World Go 'Round」。ご存知、スタイリスティックスの名曲(トム・ベル作曲)。ヴィブラフォン(シンセかな?)が奏でるクールなフレージングを堪能できる、味わい深いカバー演奏。
前作のアルバム「Emotions」をリリースした時に、ハイタワー自身による「Emotions:The Narrative」という著作を出している(アマゾンのキンドル版あり)。内容は、アルバム「Emotions」の全曲の、曲作りの背景や彼自身の心象を著したもの。彼は、デビュー前、5年間に渡り陸軍に服役して、アフガニスタンで従軍していた経験を持っている。実母の他界や、服役後の心的ストレス障害、夫婦関係の苦悩、といったプライベートな事柄も披露している。「私の音楽が、スムーズジャズの世界の大勢から支持されなくても、ただ1人の誰かに楽しんでもらいたい。」と述べているのが印象的。この新作も、彼の音楽に込められた真摯なメッセージを感じ取りたい。

2018年10月24日 (水)

Yellowjackets 「Raising Our Voice」(2018)

Yjackets raisingourvoiceラッセル・フェランテ(p)、ボブ・ミンツアー(sax)、ウィリアム・ケネディ(dr)、デーン・アンダーソン(b)、の4人による、イエロージャケッツの新作は、ブラジル出身のボーカリスト、ルシアーナ・ソウザをゲストに迎えた意欲作だ。ジャケットの写真は、ソウザがイエロージャケッツの新メンバーになったかのような扱いなので、ちょっとびっくり。実際は、ソウザが参加したのは13曲中7曲で、残りの6曲は、バンドのインスト演奏曲なのだが、彼女の参加でアルバム全体に新鮮なムードが満ちた内容だ。
イエロージャケッツは、過去作品でも、マイケル・フランクスボビー・コードウェル、テイク・シックス、ボビー・マクファーリンといったボーカリストをゲストに迎えたことがあるし、1998年のアルバム「Club Nocturne」は、カート・エリング、ブレンダ・ラッセル、ジョナサン・バトラー、ジノ・ヴェネリ、といった複数のボーカリストをフューチャーした作品だった。今作のソウザのように、アルバムの大半を1人のボーカリストが務めるというのは画期的。ソウザとは、過去に共演していたのかと思いきや、今回が初めてのようだ。接点は、ラッセル・フェラントと、ソウザの旦那さんでプロデューサーのラリー・クラインらしい。ラリー・クラインは、以前はジョニ・ミッチェルのプロデューサーであり、パートナーであった人。フェラントも、ジョニ・ミッチェルと共演していたということもあり、2人の旧知の縁から、ソウザの参加に至ったようだ。
ソウザが参加した7曲の内、3曲はジャケッツの過去曲の再演。「Man Facing North」と「Solitude」は、1992年のアルバム「Like A River」収録曲。「Timeline」は、2011年アルバムのタイトル曲。彼女の、透明感のある声質、器楽的でテクニカルなスキャットが加わり、新鮮な再演となり、このコラボの成功を示している。ソウザが参加した新曲「Mutuality」(ラッセル・フェランテ作曲)は、ベスト・トラックの1曲。バロックのような室内楽的でロマンチックな曲想で、フェランテのピアノ、ミンツアーのソプラノ・サックス、ソウザのスキャットが交差するインタープレイが美しい。CDのライナーノーツによると、タイトルはマーティン・ルーサー・キング牧師のスピーチから得たという。その言葉とは、「All men are caught in an inescapable network of mutuality」、つまりは「すべての人は相互依存から逃れる事はできない」ということ。今の危惧すべき世界の動静には、曲作りで抵抗の声を上げることが必要ではないのか、というメッセージを込めたという。アルバムのタイトルにこそ、同じメッセージが読み取れる。
4人による、イエロージャケッツとしてのインスト演奏も注目だ。新ベーシストのデーン・アンダーソンとしては、前作「Cohearence」(2016)から2作目の作品だが、彼のペンによる曲を初めて3曲提供している。その内の1曲「Brotherly」は4人のアンサンブルがスリリングなコンテンポラリー・ジャズ曲。アンダーソンの重厚なベース・プレイが光っていて、かつてのジミー・ハスリップの抜けた穴を埋める才能だと期待したい。ボブ・ミンツアー作曲の「In Search Of」と「Strange Time」は、いずれもストレート・アヘッドなジャズ曲。ジャケッツが、ジャズ・バンドとして、変わらずトップ級である演奏を堪能できる。「Strange Time」は、変拍子のような曲で、複雑系のリズムで、スウイングするアンサンブルは、これぞジャケッツならではという演奏。
ちなみに、ほぼ同じくしてリリースされた、ルシアーナ・ソウザの新作アルバム「The Book of Longing」も、素晴らしい作品。ギターとベースのみをバックに歌った作品で、プロデュースはもちろんご主人のラリー・クライン。レナード・コーエン作品にインスパイアされて作った曲が中心だという。言葉をかみしめるような彼女の歌唱と、バックの演奏に引き込まれてしまう。

2018年10月12日 (金)

Althea Rene 「Unstoppable」(2017)

Arene unstoppableフルート奏者アルティア・ルネは、出身地のデトロイトで、群保安官を10年以上務めたことがあるという異色の経歴の持ち主。とは言え、保安官を志していた訳では無いはず。父親は、モータウンのセッション・ミュージシャンで、サックス奏者だった。その父親の影響があり、フルート奏者を目指したという。2000年のデビュー作品「Flute Talk」以来、5枚の作品をリリースして、今や、スムーズジャズ界の女性フルート奏者としては、第一人者だ。6枚目となるこの新作は、プロデュースや作曲を、ルネ自身と、何人かの注目アーティストとコラボして作り上げた秀作。ルー・レイン、 マーカス・ハンター、ターハン・ヴァンダイク、ニコラス・コール、ダーリック・ハーヴィンといった、いずれも新進気鋭のアーティストの参加が、この作品の要になっている。リン・ラウントゥリー、キエリ・ミヌッチ(スペシャルEFX)、ティム・ボウマングレッグ・マニング、などメジャー級のアーティストのゲスト参加も豪華だが、なんといっても、ルネのフルートが、まるでシンガーのような、「歌唱力」と言えるメロディアスなフレージングを繰り出すのが最大の魅力。オリジナル曲の「Unstoppable」や、「Gypsy Soul」、「Now and Forever」など、R&Bムードのコンテンポラリー・ソングは、いずれも佳曲揃い。「What Cha Gonna Do With My Loving」(ステファニー・ミルズ)、「Rain」(シスターズ・ウィズ・ヴォイシス、原曲はジャコ・パストリアス)といったカバー曲のセンスも唸らせる。どの曲も、ライブ的なグルーヴが伝わる演奏陣のアンサンブルが、素晴らしい。特に、「Another Star」(スティーヴィー・ワンダー)の7分超のカバー演奏は、一聴の価値ある、ベスト・トラックだ。今回のレコーディングのオール・スター的メンバー(ルネのフルート、ヴァンダイクのピアノ、ハンターのドラムス、ジェームス・カーターのサックス、など)の演奏は、アドリブの応酬も情熱的で、目の覚めるようなグルーヴには圧倒されること、半端じゃ無い。

2018年9月29日 (土)

Freddy Cole 「My Mood is You」(2018)

Fcole mymoodジャズ・シンガー、フレディ・コールの新作。フレディ・コールは、ナット・キング・コールの実弟。ナットには、アイクとフレディの2人の弟がいる。ナット・キング・コールは、1965年に45才の若さで早逝。8才下の弟アイクも、ピアニストだったが、2001年に73才で鬼籍に入る。ナットの実娘、ナタリー・コールも、2015年に65歳で他界した。偉大な才能の早世はいつの時代も繰り返されるのだろうか。ナットを筆頭に、多くの音楽家を輩出しているコール家の、直系のフレディ・コールは、今も現役のシンガーだ。フレディは、ナットとは12才離れていて、もうすぐ、86才を迎えるはず。キャリアは、優に60年を超える、大ベテランだ。彼の歌声に、ナットの面影を探す向きもいるのかもしれないが、小気味のいいスウィングに乗って、語りかけるような、包容力に満ちた渋い歌声は、フレディーならではの味わいだ。伴奏陣は、いずれもジャズ正統派のミュージシャンで、エレガントでリリカルな演奏が聴きものだ。ジョン・ディ・マルティーノ(p)、ランディ・ナポレオン(g)、エリアス・ベイリー(b)、クワンタン・バクスター(dr)のカルテットは、フレディーの近年作品の常連で、気心が知れた関係に違いない、リラックスした演奏を聴かせてくれる。客演のサックス奏者ジョエル・フラームは、時に「動」的なフレージングを聴かせて、ムーディーなアンサンブルの中で、印象深いアクセントになっている。
アルバムの10曲は、著名曲とは限らず幅広い佳曲が並んでいて、興味を引く選曲だ。「They Didn't Believe Me」はフランク・シナトラ、「Temptation」はビング・クロスビー、の名唱が代表的なスタンダード曲。「My Heart Tells Me」、「The Lonely One」、の2曲は、ナット・キング・コールがレパートリーとしていた曲。特に、「The Lone One」は、ナットのジャズ超名盤「After Midnight」(1957)の中の1曲。ジャズ歌手レナ・ホーンがレパートリーとしていた曲からは3曲、「My Mood Is You」、「I'll Always Leave the Door a Little Open」、「Love Like This Can't Last」。特に、「My Mood Is You」の、自然に語るような歌い方はシビれるし、美的といっていい演奏が極上で、ハイライトな曲だ。「Almost in Love」はエルビス・プレスリーが歌った曲(1968)。注目は、「First Began」だろう。超ヒット・メーカーのバンド、マルーン5のメンバーでもある、PJモートンのソロ作品「Gumbo」(2017)からの曲。若い世代のソウル・アーティストの曲も、フレディー・コールは、スタンダード・ジャズのように歌い上げて、違和感など無く、新鮮で素晴らしい。アルバム最後の「Marie」も、非ジャズの曲で、シンガー・ソング・ライターのランディ・ニューマンのアルバム「Good Old Boys」(1974)の1曲。ランディ・ニューマンを取り上げて、ジャズの解釈で歌うのだから、なんとも粋ではありませんか。
芳醇で味わい深いフレディー・コールのボーカルと、心地いいムード・ジャズ系の演奏。これぞ極上のスムーズ・ミュージックですな、大推薦の作品。

2018年9月21日 (金)

Gerald Albright 「30」(2018)

Galbright 30ジェラルド・アルブライトの新作は、デビューから30年を記念して、ずばり「30」と名付けられた作品。87年のデビュー作品「Just Between Us」から数えて、19作品目(共演企画ものやライブ、ベストなどの6作品を含む)。その過去作品から、選りすぐった8曲を新しく演奏した内容で、新曲1曲と、ボーナストラック1曲を加えた全10曲(全てアルブライトの作曲)。過去作品の再演とはいえ、古さなど微塵も感じられない、アップデートされたアレンジは比類ない上質感とグルーヴにあふれている。近年作の「Slam Dunk」(2014)、「G」(2016)で披露してきた、縦横無尽のサックスはもちろん、ホーン・セクション、ベースの多重録音ワンマン・プレイが、さらに磨きがかかったサウンドだ。
87年のデビューアルバム「Just Between Us」からは、タイトル曲と「Come Back To Me」の、2曲を再演。「Come Back To Me」では、実娘のセリーナ・アルブライトがボーカルで参加している。
88年の2作目「Bermuda Nights」からは、タイトル曲。91年のライブ盤「Live at Birdland West」から、「Bossa of Nova」。この曲のスタジオ録音は、今回が初めてかも知れない。95年の「Giving Myself to You」からは、「Chips N' Salsa」。97年の「Live to Love」から、「Sooki Sooki」。2004年の「Kickin' It Up」から、「4 On the Floor」を、同曲のボーナス・トラックと2バージョン。ボーナスの方は、ギター奏者リッキー・ワットフォードをフューチャーしたトラックだ。2006年の「New Beginnings」からは、タイトル曲。そして、おそらく、新曲だろう「Road to Peace」は、ミディアム・テンポのバラードで、サックスとピアノのゴスペル・テイストの演奏が聴きもの。
アルブライトの「ベスト・オブ」的な選曲で、キャリアを振り返るという回帰的なコンセプトではあっても、最高にコンテンポラリーなサウンド・デザインで作り上げたところが秀逸。スムーズジャズの第一人者であることを証明する秀作だ。

2018年9月12日 (水)

Darryl Williams 「Here To Stay」(2017)

Dwilliams hereベース奏者ダリル・ウィリアムズは、名だたるスムーズ・ジャズ・アーティストから引っ張りだこのセッション・ミュージシャンだ。共演や客演したアーティストは、ジェラルド・アルブライト、ユージ・グルーヴ、マイケル・リントン、リック・ブラウン、ポール・ブラウン、ジェフ・ローバーなどなど、枚挙にいとまがない。最近では、ニルスの新作「Play」の大半の曲でも、ベース奏者としてクレジットされていた。
サンディエゴ出身のウィリアムズは、10代からベース演奏を始めて、ジャズやR&Bのバンドやサポートで演奏経験を積んできた人。2007年には、ソロのデビュー・アルバム「That Was Then」をリリース。この「Here To Say」が、10年ぶり2枚目のソロ・アルバム。共同プロデュースは、ユージ・グルーヴ。ゲストのアーティストは、ユージ・グルーヴはもちろん、ポール・ブラウン、ジェフ・ローバー、マイケル・リントン、ジョナサン・フリッツェン、ポール・ブラウン、という豪華なメンバー。今までのサポート・ミュージシャンとしての貢献を証明するような、客演のメンバーだ。10曲中2曲を除いて、ウィリアムズ自身のペンによる楽曲。メロウで、アーバン・ムードの楽曲の数々は、ウィリアムズの作曲の才能にも唸るばかりだ。
アルバム・タイトル曲「Here To Stay」は、ユージ・グルーヴが客演した、キャッチーなハイライト・トラック。グルーヴのソプラノと、ウィリアムズのベースがユニゾンで奏でるフレージングが、メロウな佳曲。「Do You Remember」は、マイケル・リントンが客演したビート・チューン。パワフルなリントンにリンクするような、ウィリアムズのチョッパーがパワフルだ。「Now and Never」は、ジョナサン・フリッツェンのピアノとユニゾンするバラード曲で、チルアウトなムードがたまらない。「How Long Has It Been」は、ギターのように奏でる奏法と、スラップ奏法の二刀流(ダビング)の重量級ベースが印象的な曲。客演は、ジェフ・ローバーのエレピとマーカス・アンダーソンのサックス。「Turn Up」は、ピアノ奏者スコット・ウィルキー客演の曲。軽快なピアノと骨太のベースが、対照的だけれど、上質なグルーヴに溢れている。
アルバムを通して、都会的でクワイエット・ストームなムードが堪能できる秀作。ベース奏者としては、自己のプレイはむしろ奥ゆかしくて、全体の曲とサウンド作りの才能が光る作品。

«ポール・サイモンの評伝 ②:邦訳されている評伝

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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