2019年6月 9日 (日)

Jimmy Webb 「SlipCover」(2019)

Slipcover ジミー・ウェッブの新作は、彼のピアノ・ソロ演奏による異色のアルバムです。アメリカやイギリスのポップス名曲10曲と、セルフカバー1曲を演奏しています。今までも、ウェッブの作品にはピアノ弾き語りによる曲は多かったが、歌無しでピアノ演奏だけの作品集とは嬉しい驚きです。演奏曲の多くは70年代のポップス名曲で、それぞれの作者へ敬意を込めた選曲となっているようです。

自身の曲「The Moon Is A Harsh Mistress」に加えて、ブライアン・ウィルソンの「God Only Knows」、ランディ・ニューマンの「Marie」、ジョニ・ミッチェルの「A Case of You」、ポール・サイモンの「Old Friends」、ビルー・ジョエルの「Lullaby (Goodnight, My Angel)」、スティービー・ワンダーの「All In Love Is Fair」、ポール・マッカートニーの「Let It Be」といった、あらためての説明は不要の名曲の数々です。ちょっとレアな選曲は「Pretty  Ballerina」でしょうか。これは60年代後半のポップ・グループ、ザ・レフト・バンク(The Left Banke)の1966年の曲。インド音階を思わせるユニークなメロディーが印象的です。

 

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2019年6月 2日 (日)

Pieces Of A Dream 「On Another Note」(2019)

Anothernoteジェームス・ロイド(キーボード)とカーティス・ハーモン(ドラムス、キーボード)の2人によるピーセス・オブ・ア・ドリームの新作。

全10曲は、ロイド作の楽曲、プロデュースによる4曲。ハーモン作(共作含む)の楽曲、プロデュースが4曲。ロイドとハーモン2人による共作とプロデュースが2曲、という構成。1曲目「On Another Note」とラストの10曲目「Last Call」は、2人の共作楽曲で、やっぱりこの2曲がハイライト。

ロイドの楽曲は、彼らしいロマンティックなムードの曲が聴きどころ。「Take Me There」は、メロウ・メロディを奏でるロイドのピアノ・ソロのバラード。「Floating」はサックスとアコースティック・ギターがムードを盛り上げるミディアム・テンポのマイナー曲。他の2曲、「Images of Peace」も「Rolling Along」もキャッチーなフレーズが印象的な曲。こういうポップな曲がロイドの持ち味だ。

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2019年5月28日 (火)

Dave Sereny 「Talk To Me」(2018)

Bb48df9996644ebe942e1a83f6f542f0 デイヴ・セレニーは、カナダ出身のギター奏者。カナダのスムーズ・ジャズ系のギター奏者というと、スティーヴ・オリバーや、ロブ・ターディック、といった巧者が思い浮かぶ。このセレニーも負けず劣らずハートに響くアーティスト。ジョージ・ベンソンのフォロワーといったスタイルで、カラッとしたグルーヴが持ち味のブルー・アイド・ソウルのような趣き。

2007年に「Take This Ride」を出して以来10年ぶりというこの新作アルバムは、RBムードの曲からポップな曲も並ぶ多彩な佳作だ。

About Her」は、ギブソンの骨太なフレージングや、コーラスが印象的な、メロウなソウル・ムードのハイライト曲。ファンキーなサックスは、同郷カナダ出身のウォーレン・ヒルの客演。セレニー本人が今回初めてボーカルを披露したというナンバー「Talk To Me」はキャッチーなメロディーが上質感を漂わせる佳曲。

Spotlite」はビート・ナンバーで、スピード感のあるフレージングがかっこいい。「Freedom」では、ブルージーなパッセージを披露して、ギタリストとしての本領発揮を聴かせる。カバー曲は、ボブ・マーレーの「Jammin」、スティーヴィー・ワンダーの「Id Be A Fool Right Now」の2曲。いずれも原曲のメロディーに忠実なプレイがなかなか良い感じ。

キャッチーなオリジナル曲の数々に作曲の才能も光る。ヒット性を予感させる好感度の高い作品。

 

2019年5月19日 (日)

ノーマン・ブラウン作品の復習

ギター奏者ノーマン・ブラウンのキャリアはデビュー作品から数えて27年、名実共にスムーズジャズを代表するギタリストだ。彼の過去作品を振り返り<復習>してみよう。

 

Storm

ノーマン・ブラウンのソロ・デビューは29才の時。モータウンのMoJazzレーベルから『Just Between Us』92年)、『After The Storm』94年)、『Better Days Ahead』96年)と5年間で3枚の作品をリリース。

MoJazzは、92年に発足したモータウン傘下のジャズ(コンテンポラリー/スムーズ系)専門レーベル。ブラウンのデビュー作品が第1弾作品だった。新設レーベルとして、ブラウンをポスト・ジョージ・ベンソンとして売り込もうと力を入れた。続く2作品はブラウン自身によるプロデュース作品。その後、モータウンがユニバーサルに吸収されるなど経営の再編に直面して、MoJazz98年に閉鎖された。

デビュー作をプロデュースしたのは、ノーマン・コナーズ。コナーズは、ジャズ・ドラマー出身だが、80年代以降はR&B/ソウル路線で自身の作品や他アーティスト(アル・ジョンソン、アンジェラ・ボフィル、マリオン・メドウズなど)のプロデュースで実績を残した人。ゲストは、スティービー・ワンダー、ボーイズIIメン、アル・マッケイ(ギター)、ボビー・ライル(ピアノ)、ジェラルド・アルブライトなど、豪華な顔ぶれが脇を固めた。

デビュー作は、コナーズの手腕でビートに彩られたサウンドが際立つゴージャスな作品。豪華さもチャート・イン狙いだろうか、プロデューサーのカラーに染まった観が強い。ブラウンのギターは、初作品だから力が入り熱量の高いグルーヴを聴かせる。特に1曲目「Stormin’」はキャッチーなハイライト曲。客演するカーク・ウェイラムとロニー・ロウズ、両サックス奏者のパワーに負けじと、エネルギッシュな高速パッセージが衝撃的だ。

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2019年5月15日 (水)

Norman Brown 「The Highest Act of Love」(2019)

Actoflove

ノーマン・ブラウンは前作「Let It Go」(2017)で、「私たちは誰もが精神的な存在である。私のこのCDは地上の創造物としての精神的存在者の一つのチャプターを表現したものだ。生きる経験こそが精神的存在の本質的な営む能力を促す。それは平和、喜び、幸福、調和、そう愛である。」という趣旨のメッセージを書いている。

そしてこの新作ではシンボルとして、古代エジプト神話で正義の女神とされる「マアト(Maat)」を掲げている。マアトの正義(The Law Maat)とは「神の望みは最高位の愛の行為(The highest act of love)であり、それは他者への愛を満たすことで実現する。神の愛こそが世界を守れるのだ。」とライナーに説明を書いている。

マアトとは、創造神である太陽神ラーの娘とされる。ジャケットの右下に描かれた、頭上に羽根を掲げた女性神がマアトである。ブラウンは、前作から今作品でも、インスピレーショナルな、つまり啓示的なテーマを掲げている。彼のメッセージは宗教的で、私を含めて理解には至らないリスナーも多いだろう。とはいえ彼のメッセージのわずかでも知った上で、彼の音楽を深く味わいたい。

さて、この新作は1曲のカバー曲と共作を含めた11曲のオリジナル曲集。モチベーション喚起的な曲タイトルを見れば、込められたメッセージが少し理解できるだろう。ほとんどの曲がスロウもしくはミッド・テンポで、啓示的なムードを演出している。音楽的には、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック的なアプローチといえるかな。多彩なゲストを迎えた前作と比べると、今回はブラウンのギターが主役で淡々と演奏する印象の作品だ。テーマを深読みせずとも、純粋にブラウンの上質な音楽を充分に楽しめるのは言うまでもない。

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2019年5月 4日 (土)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2)

1. ボビー・コールドウェル:「Heart of Mine」(1989)

Heartofmine

アルト・サックスは、デイヴ・コーズ

同名アルバム『Heart of Mine』(1989)収録曲。初出はボズ・スキャッグスのアルバム『Other Roads』(1988)のバージョン。

コーズはコールドウェルのバンドのメンバーだった。コールドウェルのバンド出身のサックス奏者は、ボニー・ジェイムスマイケル・リントンアンドリュー・ニューなど、いずれも今やソロで活躍しているアーティストばかり。

コーズのソロとしてデビュー・アルバム『Dave Koz』(1990)所収の「Emily」はコールドウェルとの共作曲。2人はその後もお互いの作品で共演している。中でも、コールドウェルの『House of Cards』(2012)でコーズが客演した「Blue」も、「Heart of Mine」と共に2人のコラボを代表するベスト曲だ。

 

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2019年4月28日 (日)

U-Nam 「Future Love」(2019)

Unam_futurelove

ギター奏者ユー・ナムは、2012年にスカイタウン・レコードを設立して、自身の作品だけでなく他アーティストの作品をリリースしている。フランス出身のユー・ナム(本名エマヌエル・アビテボール)が手がけるアーティストは、ほとんどがヨーロッパ出身者を集めた個性的なレーベルだ。所属アーティストは、キーボード奏者ヴァレリー・ステファノフ(ロシア出身)、キーボード奏者マティアス・ルース(スウェーデン)、サックス奏者アンドレイ・チェマット(ウクライナ)、サックス奏者アーノ・ハイス(ドイツ)、女性サックス奏者ニキ・サックス(ウクライナ)、女性サックス奏者マグダレーナ・チョバンコーバ(チェコ出身、ドイツのスリー・スタイルのメンバー)など、いずれも実力派だがアメリカでは無名という新鋭アーティスト。他のレーベルとは一線を画した音作りを追求するユー・ナムのプロデュース手腕にも目が離せない。

ソロ作品は近年の「Cest Le Funk」(2014)、「Surface Love」(2016)、ベスト曲集「The Essential Collection」(2017)とコンスタントに発表。他アーティストのプロデュースに加えて、ボブ・ボールドウィン、エラン・トロットマンらのアルバムにも客演するなど、精力的な活動に力を抜くような気配は微塵も感じられない。そしてこの新作は新曲13曲(プラス2曲の別バージョン)で、ギター奏者として圧巻の才能を聴かせてくれる。

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2019年4月21日 (日)

Lebron 「Undeniable」(2019)

Lebron_undeniable

サックス奏者レブロン・デニース(アーティスト名はレブロン)の新作。

レブロンは、実父はサックス奏者だったが、12才の時にアール・クルーのコンサートに行き、その時に聴いたサックス奏者マイケル・パウロに魅せられてサックスを始めたのだという。出身地アリゾナの消防隊員だったという異色の経歴で、救急救命士の資格を持っている。消防隊員を、スムーズ・ジャズ・アーティストに「発掘」したのはサックス奏者ダーレン・ラーン。ラーンが、レブロンをトリピン・アンド・リズム・レコードに推薦してデビューに至った。デビュー作「Shades」(2013)は、ラーンのフルサポートによるフレッシュな作品だった。2作目の「New Era」(2015)も、ラーンが協力した佳作。そしてこの新作が3作目。

今回は、ダーレン・ラーンのクレジットは見当たらず、マイク・ブルーニングがプロデュースを手がけた。ブルーニングの手腕によるメロウなサウンドに、レブロンのリリカルなサックスが印象的な作品。アルバム10曲中7曲を、ブルーニングが楽曲の作曲と共作、キーボード等の演奏、プロデュースを務めている。ブルーニングは、シンディ・ブラッドレイマリオン・メドウズマイケル・リントンなどのプロデュースや作編曲演奏でサポートしているキーマンだ。特に、シンディ・ブラッドレイの一連の作品には深く関わっている。(他3曲はマット・ゴディーナのプロデュース)

 

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2019年4月14日 (日)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?

数多いポップス曲の中でも、主役のシンガーよりも前奏や間奏で聴こえてきたサックスの音色に耳が釘づけになる名曲がある。

えっ、このサックスは誰?

 

1. スティング : 「Englishman in New York」(1987)

Sting_nothing ソプラノ・サックスを吹いているのは、ブランフォード・マルサリス。 

マルサリスは、85年ごろスティングのバンドに所属して、同曲を含む「...Nothing Like the Sun」や、「Dream of the Blue Turtle」(1985)などのアルバムに参加している。

スティングは、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団やニューヨーク室内合奏団と共演した「Symphonicities」(2010)をリリース。そこで同曲を再録している。

そのバージョンでは、ジャズ・サックス奏者アーロン・ハイクがクラリネットを吹いている。そのアルバム企画のツアーを収めたライブ盤「Live in Berlin」(2010)があり、そちらではマルサリスが客演した同曲が聴ける。

スティングは、新作「My Songs」を近日リリース予定。そのアルバムは、過去曲をリメイクしたもので、同曲も収録予定。どんなアレンジになるのか興味深い。

 

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2019年4月 7日 (日)

Neamen 「Moment Of Truth」(2019)

Mot_neamen ニーメン・ライルズは、「So Free」(2011)でデビューしたサックス奏者。デビュー作は、ギター奏者ジェイ・ソトがプロデュースと作編曲や演奏で、全面的にサポートした作品。そのデビュー作は、都会的でメロウな楽曲もいいし、ライルズのフレッシュなサックスが光った好印象の作品だった。

そしてこの新作は、デビュー作から8年ぶり、満を持しての2作目。今回も、ジェイ・ソトが、作曲編曲、ギターにキーボード演奏、プロデュースに至るまでサポートしている。前作のメロウなスムーズ・ジャズのムードとは変わって、楽曲もサウンドもかなりヒップな路線。ライルズのサックスも、ダイナミックにブロウする。曲も、ダンス・チューン、ファンク、ラップもあり、尖ったロックに、ブラコンありと多彩。半数を占める6曲がボーカル曲なので、デビュー作の印象で聴くと、戸惑ってしまう。

Flash Back Rhythm」は、キャッチーなダンス・チューン。ボーカルは、オースティン・カーステルという人。ファンキーなサックスと重なるラップがカッコいい。「This Love is Yours」も、上質な都会的アダルト・コンテンポラリー・ソング。ボーカルは女性R&Bシンガーのクリスタル・スターク。歌伴のソプラノ・サックスがメロウでいい感じ。他のボーカル4曲も、RBAOR、果てはロックと、異なる曲想で、別々に男女4人のボーカリストを迎えている。

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«ジョージ・ベンソンの原点を探る伝記:『Benson: The Autobiography』by George Benson (2014)

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