2021年7月11日 (日)

Ryan Montaño 「Truth Journey」(2021)

ライアン・モンタノは、米国ニューメキシコ州アルバカーキを拠点に活躍するトランペット奏者です。デビュー・アルバム「Something Happened Tuesday」(2013)に続いて、コンスタントに新曲シングルを発表している新鋭アーティスト。

本作は、発表済みのシングル6曲を含んだ最新アルバムです。サックス奏者ダーレン・ラーンが、プロデュース/ミキシングや楽曲共作でサポートしています。

モンタノは同時に、コマーシャルや映画にも出演する俳優やファッション・モデルもこなし、クリエーターとして映像作品を制作するなど、多彩な才能を発揮するマルチ・タレントです。

音楽家としては作曲編曲に情熱を傾けていると述べているように、本作は多彩な曲想と洗練されたサウンドが際立つ会心作です。

サウンド作りは、おそらく一緒に活動するバンド・メンバーが中心で、ユージ・グルーヴ、ブライアン・ブロムバーグ、ヴァンデル・アンドリュー、フィル・デニーらトップ級のミュージシャンもゲスト参加しています。

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2021年7月 1日 (木)

Craig Sharmat & Neil Andersson 「Strings」(2021)

今作は、ふたりのギター奏者、クレイグ・シャーマットとニール・アンダーソン(もしくはアンデション)が、ストリングスをバックに共演したイージー・リスニング・ムードの素晴らしい作品です。

クレイグ・シャーマットは、ソロ名義で4枚のスムーズジャズ・アルバムを発表しています。同時に、作曲・編曲家/プロデューサーとして、映画、TV番組、アニメーションなどの映像作品でも活躍する音楽家です。

ニール・アンダーソンは、60年代のロック・バンド<ファビュラス・ウェイラーズ(The Fabulous Wailers)>の在籍からプロのキャリアをスタートしています。一方で、ファインアートの画家としての道を歩み、多くの受賞歴を有している美術アーティストでもあります。

1993年に、ジプシー・ジャズ・バンド<パール・ジャンゴ>の結成メンバーとなり、20年間におよぶレコーディングや演奏活動に参加しました。現在アンダーソンは「名誉メンバー」となりバンドの活動には参加していないようですが、<パールジャンゴ>は現在も活動中(5人組)で15枚目となる最新アルバム『Simplicity』(2020)をリリースしています。

ジャンゴ・ラインハルトの伝統的スタイルと音楽を継承する、いわゆるジプシー(またはマヌーシュ)ジャズのギター奏者として、アンダーソンは”レジェンド”というべき名手でしょう。

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2021年6月13日 (日)

Marion Meadows 「Twice As Nice」(2021)

マリオン・メドウズの新作は、クリスマス・アルバムをはさんで「Soul City」(2018)からは4年ぶりのオリジナル・アルバムです。「Soul City」は大半がボーカル曲の作品だったので、インストゥルメンタル中心としては「Soul Traveller」(2015)以来の作品となります。

プロデュースを、ポール・ブラウン(5曲)、クリス・デイヴィス(4曲)、ジェフ・ローバー(1曲)が手がけています。フィーチャー・ゲストに、スティーヴ・オリバー(ギター)、ゴスペル/ワーシップ系シンガーのドネリー・スモールウッド(ボーカル)らが参加しています。

ポール・ブラウンが、メドウズのアルバムをプロデュース/共演するのは初めてのようです。スムーズジャズ界の看板のようなふたりが、初めてのコラボとは意外です。ブラウンらしい都会的でメロウなサウンドに、メドウズのサックスが違和感なく溶けこんで、洗練された音像の上質感は素晴らしい。

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2021年6月 6日 (日)

Merlon Devine 「Soul Jazz」(2021)

マーロン・デヴァインは、ワシントンDCを拠点に活動するサックス奏者です。コンテンポラリー・クリスチャン(もしくはワーシップ)・ミュージックとよばれる現代的ゴスペルのインストゥルメンタル・アーティストととらえられているようですが、スムーズジャズ/コンテンポラリー・ジャズとクロスオーバーする演奏家です。ソロ・アルバムは、『Due Season』(2002)から『Now』(2017)まで6作品を数えます。ソプラノ・サックスの演奏をトレードマークとして、包容力を感じさせる音色とサウンドが特徴です。

7作目となる新作は、クリスチャン・テーマを思わせるタイトルも並びますが、ミッドテンポを中心としたサウンドはメロウなムードに貫かれたコンテンポラリーなアーバン・ジャズとして堪能できる秀作です。

今作では曲ごとに複数のプロデューサーを迎えて、デヴァインと楽曲の共作/演奏で制作されています。ルー・レイン、デリック・ハーヴィン、マイケル・ブレーニングなど、いずれも近年のスムーズジャズ作品で活躍する実力派プロデューサー/ミュージシャンと洗練されたサウンドを作りあげています。

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2021年5月30日 (日)

Randal Clark 「Imaginary World」(2021)

ランダル・クラークは、米国ユタ州ソルト・レイク・シティを拠点に活動するサックス奏者。

ジェラルド・アルブライトやエリック・ダリウスらと共演するジャズ演奏だけでなく、ユタ交響楽団で活躍するなどクラシックの演奏家でもあります。また、ユタ大学で音楽教育の博士号を取得した指導者という、才能あふれる音楽家です。

この作品が、コンテンポラリー・ジャズのデビュー・アルバムのようですが、披露するサックスは技巧と熱量を込めた演奏が光る秀作です。

サポートするのは、ジミー・ハスリップ(ベース、共同プロデュース)、ジェフ・ローバー(キーボード)、ゲーリー・ノバック(ドラムス)、ヴィニー・カウリタ(ドラムス)らで、<ジェフ・ローバー・フュージョン(JLF)>の中核メンバー。

まるで、新たにクラークが加入してパワーアップしたような、JLFならではのとがったグルーヴが随所で展開されます。加えて、フィーチャー・ゲストに、ランディ・ブレッカー(トランペット)、マイケル・トンプソン(ギター)、スコット・キンゼイ(キーボード)らが参加しています。

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2021年5月16日 (日)

“魔法”をレコーディングした名プロデューサーの生涯:『The Ballad of Tommy LiPuma』 by Ben Sidran (2020)

本書は、グラミー賞受賞5回を数える名プロデューサー、トミー・リピューマ(1936-2017)の人生と功績を振り返る評伝です。著者は、ジャズ・シンガー/ソング・ライター/プロデューサーのベン・シドラン。シドランは、自身の自伝やジャズ評論などの著作を残している文筆家でもあります。

シドランいわく、リピューマはとても良くしゃべる人だったようで、彼から聞いたはなしをまとめたそうです。シドランの筆致は簡潔で読みやすく(ただしスラングが多いです)、リピューマ自身のユーモアたっぷりの語りを聞いているようで、親密な距離感を感じる良書です。

リピューマとアーティストとの交流や、名作にまつわるストーリーは、音楽ファンにとって必読の内容です。ジョージ・ベンソン、マイケル・フランクス、ドクター・ジョン、マイルス・デイヴィス、ナタリー・コール、ダイアナ・クラール、レオン・ラッセル、ポール・マッカートニー等々といったトップ・アーティストや、盟友のエンジニア、アル・シュミット(本年4月逝去)に、レコード業界の重鎮が続々と登場して、逸話の数々が活き活きと語られます。

一方で、本書はもっと骨太い分脈にこそ読む価値があります。リピューマの人生談は、幼少期から晩年にいたるまで、映画のようにドラマチックな展開です。アメリカのレコード業界の黄金時代からの興亡は、中心人物であったリピューマの証言は貴重な内容です。

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2021年5月 9日 (日)

Richard Elliot 「Authentic Life」(2021)

スコットランド出身のリチャード・エリオットは、80年代からジャズ/スムーズジャズ界の第一線で活躍するサックス奏者です。ファンク・バンドのタワー・オブ・パワーに参加した後、1984年に『Trolltown』でソロ・デビューしました。以来、20作近いアルバムをリリースしています。この新作は、『Summer Madness』(2016)以来の5年ぶりとなるオリジナル作品です。

近年作品では、『Summer Madness』がリック・ブラウン、『Lip Service』(2014)がポール・ブラウン、『In The Zone』(2011)はジェフ・ローバーらにプロデュースを任せていました。この新作は初期の作品に戻ったように、久しぶりの自身によるプロデュース作品になっています。プロデュースの熱意も込められて、コンテンポラリー・ジャズの本格派を志向した力作になりました。近年ではベスト級の作品といえます。

多くのプロジェクトで共演を重ねてきた盟友達、リック・ブラウン、ジェフ・ローバー、フィリップ・セス、デイヴ・コーズらを客演や共作に迎えています。リック・ブラウンはほぼ全曲の共作と客演に関わっています。特にブラウンが手がけたホーン・アレンジが洗練されていて、アルバム全体のサウンドのかなめになっています。

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2021年4月30日 (金)

Roberto Restuccia 「With Every Turn」(2021)

ロベルト・レストゥシアは、イギリス出身のギター奏者。インディーズで2枚のソロ・アルバムを出していますが、この作品がメジャー・レーベル、トリピンリズム・レコーズ(Trippin N Rhythm Records)からの第一弾です。

プロデュースはオリ・シルク(キーボード)が務めています。レストゥシアのプレイは、レイドバックした浮遊感が持ち味。心地よい繊細な音色も光りますが、深淵なブルースの味わいで硬派な演奏を聴かせます。

自身のペンによるオリジナルの全10曲は、スロウ・テンポながら、シルク率いるリズム・セクションが奥ゆかしいサウンドでレストゥシアのギターを引き立てています。

ベースのオレフォ・オラクエ(Orefo Orakwue)、ドラムスのレスリー・ジョセフ(Westley Joseph)は、シルクの『6』にも参加していた顔ぶれで常連のリズム・セクションでしょう。イギリスのベテラン・ジャズ・サックス奏者デレク・ナッシュ(Derek Nash)が数曲で参加しています。

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2021年4月18日 (日)

Julian Vaughn 「Chapters of Love」(2021)

ベース奏者ジュリアン・ヴォーンの新作は、”ラヴ”をテーマにオリジナル曲を中心にした5作目となるアルバムです。

11曲中1曲だけはカバー曲の「Someone To Love」で、R&Bシンガー、ジョンBのヒット曲(1995年)。R&Bシンガー/ソングライターのベビーフェイスのオリジナル曲で、バラードの名曲。80年代のブラック・コンテンポラリーを彷彿とさせて、このアルバムの曲とサウンドはアーバンでメローなR&Bムードにあふれています。

参加ミュージシャンは、ドナルド・ハイズ(サックス)、エラン・トロットマン(サックス)、マーカス・アンダーソン(サックス)、リン・ラウントゥリー(トランペット)、ニコラス・コール(ピアノ)、ルー・レイン(キーボード)、アダム・ホーリー(ギター)などが固めています。

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2021年4月11日 (日)

Michael Lington 「Alone Together The Duets」(2021)

マイケル・リントンの新作は、多彩なゲストとのデュオによるパフォーマンスを記録した作品です。昨年からのパンデミック下でリントンは、Stageit(ステージイット)というストリーミング・サービスを利用してビデオ・ショウを配信していました。その中から、ゲストをむかえた演奏10曲をまとめたものです。

過去に発表済みのトラック(いわゆるカラオケとして)に、リントンとゲストが演奏を重ねるというスタイルで作られました。登場するデュエットはリモート・ライブではなく、それぞれが事前にワン・テイクで録画/録音したものを技術的につなぎ合わせて完成させたといいますから驚きです。まるでスタジオ・ライブのような臨場感がリアルに感じられる好演の連続です。

6曲がボーカリストとの共演で、ポップス/R&B名曲のカバーとオリジナル曲の再演です。各シンガーの名唄はもちろんですが、リントンのいわゆる”歌伴”でのハートフルなサックス演奏が絶品です。

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