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2011年8月の記事

2011年8月21日 (日)

Andy Snitzer 「TRAVELER」(2011)

Andysnitzer

音源:iTunes Store
レーベル:Native Language















新しいCDに針を落とすとき、とはもう言わないか。プレイのボタンを押すときか。今や、CDでもなくて、ダウンロードしたデーターを開く時代。いずれにしても、新しいアルバムは出来るだけ先入観無しに聴きたいもの。

アンディ・スニッツアーの新作。ストレート・アヘッド・ジャズもこなすサックス奏者。その他の先入観無しに、このジャケットから想像してみる。写真の表情からして、内省的で、ストレート・ジャズ寄りなのかなと。聴いてみると、次から次へとバラードの大特集。ほとんどの曲が、スローかミディアムスロー。音も、シンセと打ち込みリズムが、ストレートジャズでなく、メローな雰囲気を作っている。どの曲も、都会的なメロディと、コンテンポラリーなアレンジと演奏、これぞスムースジャズ。

アンディのサックス・プレイは、熱い「泣き」のバラード・ブローをするのかと期待していると、予想に反して、その一歩手前で引き下がって、流れるよう。「メロディを聴いてくれ」、といわんばかりで、このアルバムの意図が見えてくる。例えば、雑踏の中。それもエアポートやメトロの流れていく群集の中で、一人ストレンジャーで居るときに、ふと聞きたい「静けさ」のようなメロディー。

曲は、タイトル曲を除いてすべて、一部共作はあるが、アンディ自身の手によるもの。ポール・サイモンのツアー・バンドにも参加していて、「ポール・サイモンからの刺激が、このアルバムに影響している」と、彼自身のコメントがライナーに載っている。曲作りとサウンドプロダクションに力を注いだアルバムなのだろう。

3曲(M−7、9、10)でソプラノも吹いているが、やっぱりテナーがいい。M−2「BOHEMIA」のミディアム・バラードは、テナーのナチュラルな中間音の出だしにぞくっとくる。「M−4「LOVE SONG」はたっぷりスウィートなメロディの、タイトルからして自信作だろう。曲の中ごろ、このアルバムでは一番「熱い」ブローを聴かせてくれる。それでも、パワー全開の手前で引いていくプレイが余韻を残す。M-3「LAUSANNE」は、唯一の比較的アップテンポでビート感のある曲。ドラム、ベース、ピアノと一体感あるアンサンブルが、アルバムの中で新鮮。

2011年8月19日 (金)

Michael Franks 「Time Together」(2011)

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音源:CD(Shanachie 5189) 輸入盤












マイケル・フランクスのこの新作を聴いているあいだ、「スリーピング・ジプシー」(77年)を聴いているような錯覚を感じていた。聴いている曲はすべて新曲だし、なにしろ演奏が違うわけだが、不思議なことに頭をかすめるのは、あの「スリーピング・ジプシー」の名曲。そのメロディやフレーズのかけらが、現れては消える。これはデジャブなのか。

この新作の意図は、おそらくあの「スリーピング・ジプシー」のリプライズであり、それは単に再演奏を試みるということではなく、マイケル自身の精神的な原点回帰であろうし、サウンドのディレクションも、あの名演奏が残した、心地よいグルーブの再現。その意図は、本当に成功しているし、あの名盤を超えるとか再現できたかという比較ではなくて、これはもう、パラレル・ワールドで生まれたような、時を超えたもうひとつの「スリーピング・ジプシー」なのだ。

M-10「If I Could Make September Stay」の出だしからして、あの「アントニオの歌」を彷彿とさせられる。メロディーの行く末を追っていると、そのままあの名曲につながるのではないかと思ってしまう。M−3「Summer In New York」だって、軽快なサンバ風リズムは、「B'Wana-he No Home」かと思い、とはいえこの新曲の、都会的なメロディにははっとさせられる。ニューヨークを歌った「ご当地」ソングだけれど、街の名所を歌詞に織り込んでスマートに歌い上げる。M−6「I'd Rather Be Happy Than Right」のボサノバは、「Down In Brazil」だし、Mー4「Mice」は、あの「I Really Hope It's You」が顔を出す。

タイトル曲M−7「Time Together」は、愛犬フローラとの日々を歌う曲。「君を見つけたのはなんて幸運だっただろう。幸せな一緒の時間だったね。」、なんて歌うわけだから、心に悲しく響いてくる。それでも、内省的ではなく、思い出を幸せそうに歌うマイケルに、とても人間的なものを感じる。このタイトル曲が、「スリーピング・ジプシー」から時を経て、マイケルもまあいろいろあって、人間的に成熟したことが伝わってくる、聴いていてなんだかとてもうれしい曲だった。(ちなみに、マイケルのウェッブサイトに行くと、この曲のビデオが見られる。愛犬のスナップが、悲しいけれど、マイケルの愛情があふれている。ジャケットのボートに乗っているのは、その愛犬のフローラ。)

新しいレーベル「Shanachie」に移籍しての最新作。そういうこともあってか、入魂の一枚なのかもしれない。バックは、チャック・ローブ(g)や、ジル・ゴールドスタイン(p)などが、プロデュースも兼ねたいくつかのバンドセットが中心。M−4のマイク・マイニエリ(vib)とデビッド・スピノザ(g)の客演。M-1とM-4の、ティム・ブローナーのトランペットのサポートプレイが光る。

チャーミングで、ロマンティックな佳曲ばかり。マイケルの歌も、バックの演奏も、「スムース度」は満点。録音も、ボーカル中心に音が際立っていて秀逸。間違いなく、愛聴盤。

2011年8月16日 (火)

Fourplay 「Let's Touch The Sky」(2010)

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フォープレイの12作目になる新作。ギタリストが、チャック・ローブに変わった。ボブ・ジェイムス、ネーザン・イースト、ハービー・メイソンの3人は不動のメンバー。歴代のギタリストは、リー・リトナーが、デビュー作(1991年)から4作目のベスト(1997年)まで。ラリー・カールトンが、「4」(1998年)から11作目の「Energy」(2008年)までの7作品を担当した。
チャック・ローブ参加で、どう変わったのか。ストレート・ジャズ寄りのインタープレイが聴ける曲で、このバンドの「変化」が聴ける。M−6「Gentle Giant(for Hank)」(2010年5月に他界したハンク・ジョーンズに捧げた曲だろう)、M−10「Golden Faders」の2曲は、フォービートではないけれど、チャック・ローブの正当派ギタープレイが、このバンドのシリアスな側面を引き出している。
M−3「More Than A Dream」のバラードは、チャックのアコースティック・ギターと、ボブのピアノが美しい。M−9「Above and Beyond」は、チャックのオクターブ奏法をフューチャーしたフュージョンタイプの疾走する曲。
フォープレイは、リー・リトナーがいたファーストとセカンドが、個人的ベスト・アルバム。あの頃のフォー・プレイは、メロウなアンサンブルとインタープレイが魅力的だった。チャック・ローブ参加で、またそんな雰囲気のグルーブが聴けるのでうれしい。M−4「Pineapple Getaway」、M−7「Night In Rio」の2曲と、タイトル曲のM−1「Let's Touch The Sky」は、初期のころを彷彿とする、スイートでスムースな演奏。
このメンバーは、現在全米をツアー中のようだ。ぜひ、次回の新作はライブ盤を出して欲しい。

2011年8月15日 (月)

Shakatak 「Across The World」(2011)

Across_the_world

シャカタクの「ナイト・バーズ」がヒットしたのは1982年、スムース・ジャズの原点の一曲かもしれない。
ジャズ・ファンクとか、フュージョン、もしくはクロスオーバーと呼ばれていた時代。とにかく「おしゃれ」な曲だった。疾走感あり、軽めのファンク・ビートで始まり、出てくるのがシングル・トーンの、アコースティック・ピアノ。エンディングに向かってのピアノのアドリブは、フェード・アウトが残念で、何度もリピートしたくなる曲だった。正当派のジャズ・ファンに言わせれば、「邪道」な曲。これはジャズではないと思っても、あのかっこよさに脱帽だった。1970年代のフュージョンは、ウェザー・レポートや、クルセイダーズのファンキーなビートと、エレクトリックなインター・プレイが主流だった。80年代のフィージョンは、よりコンテンポラリーな領域に向かい、今のスムース・ジャズに熟成していった。
あれ以来、シャカタクのメンバーは初期とほとんど変わらない。いままで発表したアルバムは50枚は下らない。今回の新作は、2年ぶりのオリジナル・アルバム。やっぱり、シャカタクだった。メンバーにボーカルがいるので、コーラス主体の曲が多いけれど、個人的には、ビル・シャープのピアノ・プレイ中心のインスト曲がお目当てだ。M−3「Waterfall」は、シンセのイントロに乗ってエレピが入ってくる。「クロスバー・イレブン」のオープニングにぴったり、のような曲。M−12「Trouble」は、ビルのアコースティック・ピアノが堪能できるバラード。こんな曲だけのソロ・アルバムを作ってほしい。M−8「Functional」は、タイトル通り、少しファンキーなピアノ・プレイが聴ける。
アルバム・タイトル、M−1「Across The World」は、コーラスも入るけれど、ピアノとギターのインター・プレイが印象的で、メロディアスな曲。やっぱり、また「ナイト・バーズ」が聴きたくなってしまう。

2011年8月 9日 (火)

黒木千波留「過ぎ去りし日の...」(2010)

Kuroki_cover

ピアノ・ソロは何を聴くか。

ジョージ・ウィンストンの「サマー」は昔から定番で、休日の朝に良く聴く。ジャケットの雰囲気そのままで、夏の晴れた日にぴったり。1991年の発売だから、もう20年前のCDだけれど、本当に色あせない音楽。

夜は、エディ・ヒギンズのソロ「スタンダード・バイ・リクエスト」。そんな経験も無いのに、ひとりバーでグラスを傾けているような妄想にトリップできる。エディ・ヒギンズが、2009年8月31日77歳で永眠する一年前、2008年8月に録音したスタンダード集。

そして、ブラッド・メルドーの「ライブ・イン・トーキョー」。ジャズ・ピアノの若き天才が、2003年に東京で行ったソロ公演のライブ盤。コンサートホールの静けさが、まるでキャンバスのようで、彼の右手と左手を使って色を降り注ぐような音の洪水。聴く度に、新鮮な音の出会いがある名盤。

さてそこで、このピアノが最近のヘビー・ローテーション。この数ヶ月、寝る前に聴き始めるが、何か懐かしい音色が続いて、数曲聴いただけで眠ってしまう。静かで心地よいピアノ。

黒木千波留さんは、1966年生まれのピアニスト・作編曲家。いろいろなミュージシャンのレコーディングに参加している。実は、ボサノバ歌手の吉田慶子さんが聴きたくて、探していたらこのディスクに辿り着いた。目当ての、吉田慶子さんの「サンバ・カンソン」というアルバムは、黒木千波留さんのピアノのだけをバックに歌ったもの。インディーズから出ていたようで、今は品切れのよう。iTunesでの配信が無いので、手に入らない。

この「過ぎ去りし日の。。。」にも、吉田慶子さんが3曲ボーカルで参加している。黒木千波留さんのオリジナルが4曲入っているが、ほとんどがフランスの映画音楽や挿入歌が並んでいる。全編シャンソンのムードだけれど、4曲目の「チリコンカン」はボサノバアレンジで、吉田慶子さんのささやくスキャットとピアノの掛け合いがすばらしい。6曲目のオリジナル「パストラル」は、そのまま映画音楽に使えそうな情景が浮かぶメロディー。ジャケットもいいなあ。

まだしばらくは、眠る時のピアノ・ソロ。


2011年8月 3日 (水)

Cindy Bradley 「Unscripted」(2011)

Cindybradley_unscripted

どこかの控え室なのか。マンハッタンの会員制高級ジャズバーか、はたまたクラブ系ジャズクラブなのか。シャンデリアの下で、スレンダーな足を組んで、ソファに沈み、クールにこちらを見つめる女性がこれから始まるセッションのパフォーマーなのか。ちょっと姉御っぽいこの女性、右手のトランペットを武器に、近藤等則ばりにバリバリ吹きまくるのか。

1曲目の始まりのプレリュード。足音が近づいてきて、クラブのドアを開ける。さあ、今夜のギグが始まる。
バリバリブローかと思いきや、聞こえてきたのは、打ち込み系のダンシングチューンだ!ファンキーなベースのリフの周りを飛び回るミディアムトーンのトランペット。かっこいい。4曲目と5曲目は、スタンダードのミディアムスローバラードを、沁みるミュートプレイで泣かされる。8曲目の間奏で、ラジオのチューニングを合わせて、かすかに聞こえるのは、ホール&オーツの「I Can't Go For That」ではないか。その予感を受けて、9曲目と10曲目は、ジャジーなビートナンバーが続く。そして、一転、11曲目はバラードプレイ。ソロプレイの間奏を挟んで、今晩のギグの幕を閉じる13曲目は、美しいオープンプレイ。目をとじたら、静かな海岸に立って、夜が明ける地平線が見えるではないか。

アルバムのタイトル「Unscripted」とは、おそらく「台本無し」の意味だろう。コンセプトは奥が深そうだ。
勝手に、曲目を「超訳」してみると(前奏間奏曲を除いて)。

(2)「大型移動機関に乗って」(Massive Transit)※バスか電車か飛行機かに、乗って大都会へ向かうイメージか。
(4)「あしあと」(Footprints)※ウェイン・ショーター作曲。マイルス・デイビスの「Miles Smiles」で演っている。
(5)「恋の味をご存知ないのね」(You Don't Know What Love Is)※コルトレーンの「バラード」の演奏が有名。この訳題は、大橋巨泉さんが付けた邦題(らしい)。
(6)「乗り越えて」(Lifted)
(7)「新しい日」(New Day)
(9)「いつかのブルー」(Deja Blue)※Deja Vu(既視感)にかけている(?)
(10)「通知書」(Pink Slip)※解雇通知書を意味する(らしい)
(11)「逆らえないもの」(Inevitable)
(13)「もう一度だけ」(One Moment More)

何かが見えてくるではないか、アルバムの意図が。「困難に打ち勝つ人生」なのか、「明日があるさ」と、語ってくれている演奏なのかも知れない。勝手にストーリーを思い浮かべて、最後の曲の「美しさ」が際立って聞こえてくる。

女性トランぺッター、シンディ・ブラッドリーのニュー・アルバム。ボーカルトラックが無いのがいい。最近のスムース系は、定番のようにボーカルが数曲入るのが多いけど、インストだけの勝負する意気込みを感じる。シンディは自身のウェッブサイトで、このアルバムについて、「人生のリアリティーがテーマ。人生に台本なんか無いもの。」とコメントしている。

彼女は1977年生まれで、若干34歳。メジャーデビューは2009年の前作「Bloom」で、これが2作目。アメリカン・スムース・ジャズ・アワードの「ベスト・ニュー・アーティスト」にも選ばれてる。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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