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2011年8月19日 (金)

Michael Franks 「Time Together」(2011)

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音源:CD(Shanachie 5189) 輸入盤












マイケル・フランクスのこの新作を聴いているあいだ、「スリーピング・ジプシー」(77年)を聴いているような錯覚を感じていた。聴いている曲はすべて新曲だし、なにしろ演奏が違うわけだが、不思議なことに頭をかすめるのは、あの「スリーピング・ジプシー」の名曲。そのメロディやフレーズのかけらが、現れては消える。これはデジャブなのか。

この新作の意図は、おそらくあの「スリーピング・ジプシー」のリプライズであり、それは単に再演奏を試みるということではなく、マイケル自身の精神的な原点回帰であろうし、サウンドのディレクションも、あの名演奏が残した、心地よいグルーブの再現。その意図は、本当に成功しているし、あの名盤を超えるとか再現できたかという比較ではなくて、これはもう、パラレル・ワールドで生まれたような、時を超えたもうひとつの「スリーピング・ジプシー」なのだ。

M-10「If I Could Make September Stay」の出だしからして、あの「アントニオの歌」を彷彿とさせられる。メロディーの行く末を追っていると、そのままあの名曲につながるのではないかと思ってしまう。M−3「Summer In New York」だって、軽快なサンバ風リズムは、「B'Wana-he No Home」かと思い、とはいえこの新曲の、都会的なメロディにははっとさせられる。ニューヨークを歌った「ご当地」ソングだけれど、街の名所を歌詞に織り込んでスマートに歌い上げる。M−6「I'd Rather Be Happy Than Right」のボサノバは、「Down In Brazil」だし、Mー4「Mice」は、あの「I Really Hope It's You」が顔を出す。

タイトル曲M−7「Time Together」は、愛犬フローラとの日々を歌う曲。「君を見つけたのはなんて幸運だっただろう。幸せな一緒の時間だったね。」、なんて歌うわけだから、心に悲しく響いてくる。それでも、内省的ではなく、思い出を幸せそうに歌うマイケルに、とても人間的なものを感じる。このタイトル曲が、「スリーピング・ジプシー」から時を経て、マイケルもまあいろいろあって、人間的に成熟したことが伝わってくる、聴いていてなんだかとてもうれしい曲だった。(ちなみに、マイケルのウェッブサイトに行くと、この曲のビデオが見られる。愛犬のスナップが、悲しいけれど、マイケルの愛情があふれている。ジャケットのボートに乗っているのは、その愛犬のフローラ。)

新しいレーベル「Shanachie」に移籍しての最新作。そういうこともあってか、入魂の一枚なのかもしれない。バックは、チャック・ローブ(g)や、ジル・ゴールドスタイン(p)などが、プロデュースも兼ねたいくつかのバンドセットが中心。M−4のマイク・マイニエリ(vib)とデビッド・スピノザ(g)の客演。M-1とM-4の、ティム・ブローナーのトランペットのサポートプレイが光る。

チャーミングで、ロマンティックな佳曲ばかり。マイケルの歌も、バックの演奏も、「スムース度」は満点。録音も、ボーカル中心に音が際立っていて秀逸。間違いなく、愛聴盤。

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