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2011年9月の記事

2011年9月25日 (日)

Spyro Gyra 「A Foreign Affair」(2011)

Spyrogyra
音源:CD(輸入盤)
レーベル:Amherst













日本はモダン・ジャズ「王国」だ。50年代から60年代の、ストレート・アヘッドなジャズはいつでも人気がある。モダン・ジャズのCD名盤は、繰り返し復刻盤が出るし、過去の録音も、まだあったのかと思うぐらい、発掘されて発売される。古いものだけでなく、モダン・ジャズのフォーマットをフォローする新しいプイレイヤーやバンドも次々と現れる。日本ほどモダン・ジャズが売れる市場もないのだろう。比べて、日本ではフュージョンやスムース・ジャズの定着は後進国。世界的には、現代のジャズはけっしてモダン・ジャズのフォーマットを踏襲せず、フュージョンやスムース系の演奏に生きていると言える。ジャズは現代の音楽であり、そのフォーマットはどうであれ、そのスピリットがジャズそのものなのだ。

そのジャズ・スピリットを、フュージョンというフォームで表現し続けているバンドが「スパイロ・ジャイロ」だ。なんたって、もう35年も同じスタイルを続けているし、アルバムも30枚以上。サックスのジェイ・ベッケンスタイン、キーボードのトム・シューマンは、結成時からのメンバーで、今もってこのバンドを支えている。これだけ長くやれるということは、支持するリスナーがいるからこそで、それはやはりジャズに対するマーケットの違いなのだろう。この新作は、初期の大ヒット作「Morning Dance」(1979)を出していたレーベル「アムハースト」に、25年ぶりに復帰した作品。

今回の新作は、曲目にもいろいろな国が登場するように、世界をテーマにした「万華鏡」のようなアルバム。初期のころから、カリプソやラテンなどエスニックなリズムがこのバンドの特色。そのバイブレーションは、アルバムを通してリズムの多様性と明るい曲調に感じることができる。それでも、このバンドの35年変わらぬ生命力は、現代のジャズのスピリットの表現力にある。M−4「Falling Walls」の、インプロビゼーションのアンサンブルのスリリングな展開は、まさにそのジャズのスピリットだ。真骨頂は、M-1「Caribe」、M-9「Antigua」のラテン系リズムの上で浮遊するサックスやギターの哀愁のメロディー。太陽讃歌のような、M−11「Dancing On Table Mountain」やM−3「Sweet Ole Thang」はリズムのスウィング感がうきうきする。M-5は、なんと「Shinjuku」と名付けられた曲。いやな予感がしたが、やっぱり尺八と琴でカンフー・テーマのような出だしに、ちょっと苦笑い。M−8「Cancao de Ninar」は、どこかフォークソングのような、ソプラノが美しい。

このバンドをジャズと呼ぶのに何が疑問なんだ?

2011年9月19日 (月)

Bobby Caldwell「Evening Scandal(原題:Bobby Caldwell)」(1978)

Bobbycaldwell
音源:CD(2011年発売リイシュー盤)
レーベル:Victor Entertainment













言わずもがな、ボビー・コールドウェルの1978年デビュー盤にして、最高傑作の名盤。リリース以来、こよなく愛聴しているアルバム。間違いなく、無人島に持っていく一枚。今度のリイシューは、①K2HDマスタリングの高音質CD、②「Can't Say Goodbye」の別テイクがボーナス・トラックで入っていること、が目玉。②は過去にも発表されていたようだが、そのトラックを含めて全曲が高音質になっていて新鮮。リリース後、アナログのビニール・レコードで聴きまくり、CD時代も何枚かのCDを聴き、デジタル・ミュージックになってからも聴いたが、いずれも音質には不満足だったのが、このリイシュー盤で解消された。
ビクターの開発しているK2HDマスタリングは、通常のCDに広範囲の音楽情報を収める技術。説明によると、44.1kHz/16bitのCDマスターに、192kHz/24bitの情報を記録しているそうだ。詳しいことは判らないが、数値が大きいということは情報量が多くて、今まで以上に「良い音」がするということだろう。確かに、すべての曲音のレンジが拡大していて、「おおっ、こんな音がしていたのか」とまるで初めて聴くがごとくの新鮮さを感じる。ダイナミックレンジも広がり、それぞれの音の粒が際立って、iTunesで提供されている音源とは大きく違う。やっぱり、デジタル音源はまだ、CD音源にはかなわない。
以前から感じていたが、このアルバムの良さは、曲の良さももちろんだkが、ボビーのボーカルをバックアップするにアレンジと演奏のグルーブ感。M-9「Down For The Third Time」のギタープレイが、こんなにグルーヴィで生き生きと聴こえるのは、今まで音源との違いを端的に感じられる。名曲M-6「What You Wont't Do For Love」の、エンディングの少し長めの演奏で、各楽器のリアルなプレイに、改めてわくわくする。
ボーナス・トラックのM-10「Can't Say Goodbye(TKバージョン)」で聴かれる、ファズを使ったギター・プレイの何とファンキーなことか。当初、アナログ・ディスクに入っていて、差し替えられたらしい。今までのトラックの、間奏のシンセがなぜか陳腐に聴こえてしまう。
ボビー・コールドウェルは、今やスタンダード・ジャズを歌う、ナイト・ショー・タイプのボーカリストという感じだけれど、やっぱりこのデビュー盤のような、R&Bテイストのオリジナル楽曲でいつかまた一枚作って欲しい。ずっと待っているけど、もう出ないかもしれない。でも、このデビュー盤は、曲も演奏も、色あせない。この一枚があればいいかな。音質も最高になったことだし。

2011年9月18日 (日)

Jeff Kashiwa「Back In the Day」(2009)

Backintheday_2
音源:iTunes Store
レーベル:Shanachie













ジェフ・カシワは、ザ・リッピングトンズのサックス奏者(1989年〜1999年)として有名。ソロ名義アルバムも、2007年まで7枚出している。このアルバムは、2009年にレーベル(Shanachie)移籍して発表した、今のところの最新アルバムだ。
この人のサウンドは、スムース・ジャズのまさに「王道」という気がする。スムース・ジャズだからといって、けっしてイージー・リスニングでもなく、ムード・ミュージックでもないのだ、というのが彼のアルバムを聴くと確信できる。カシワというから、おそらく日系だろう。というわけでもないが、彼のサックスは歌うがごとく、まるで上質のJポップに聴こえてきて、日本語の歌詞を付けて歌いたくなってしまう。
このアルバムも、全10曲が2つのタイプに分かれる。メローでメロディアスな「歌う」サックスを聴かせてくれる、まさに上質ポップスの曲。ファンキーで、テナー・サックスのアドリブ・プレイが、やっぱり彼のストレート・ジャズのオリジナリティを粋に披露するタイプの曲。
個人的には、ポップス系の曲がお気に入り。ベスト・トラックは、M-2「You' re The One」。題名を見ただけで、ラブソングをイメージして、聴いたとたんに、彼のサックスに被せて日本語歌詞で歌いたくなるような曲。というより、彼のサックスがボーカルごとくに「歌う」のがここちよい。まるでポップスのヒット・チューンのような、M-6「Meet You There」、M-1「When It Feels Good」、M-9「Back In the Day」。せつないソプラノ・サックスの美しいバラード、M-10「Honesty」。
方や、ファンキーなバイブレーションの曲たち。M-8「Baby, Come Over」、エンディングに向かうアドリブ・プレイは、彼がストレート・ジャズ直系のプレイヤーだという証明。チョッパー・ベースをバックにブルージーに吹くM-7「The Attraction」、まさにアーバン・テイストが堪能できるサウンド。M-3「Creepin'」もファンキーな佳曲。唯一のボーカル入り曲M-5「Somethin' Real」があるのだが、他の曲で彼のサックスが歌詞がなくても十分「ボーカル」として堪能できるので、この曲が浮いてしまう。
ちなみに、彼はザ・サックス・パックという、三人(スティーブ・コール、キム・ウオーターズ)のサックス・プレイヤーのグループにも参加している。2枚のアルバムを出していて、新作をレコーディングしている模様。その前に、そろそろソロの新作が聴きたい。

2011年9月 8日 (木)

Jamhunters 「Driftin'」(2011)

Jamhunters_driftin
音源:iTunes Store















こういうアルバムに出会うとうれしくなってしまう。条件としては、①ビックネームのプレイヤーではないこと、②70年代のフュージョンやクロスオーバーのエッセンスが感じられること、おまけとして③ジャケットにもセンスが感じられること。①は、つまり、新人や初めて聴くプレイヤーで、ちまたに広がる前に優越感に浸りたい。②は、かつてのフュージョンやクロスオーバーの創世記を経て、そのエッセンスを引き継ぎながら、今のスムースジャズに昇華しているような音楽が、単に好みということ。③は、今の時代、配信音楽の場合は、試し聴きが出来るので、かつての「ジャケ買い」のような危険は冒さないが、それでもやっぱりジャケットにもアートのセンスが欲しい。このアルバムはまさにそういう条件に合った「当たり」だ。

ジャム・ハンターズは、デンマーク発のグループ。ギターのラース・ファビアンセンと、キーボードのピーター・ミカエルのデュオ・グループ。2006年のデビュー・アルバム「Jamhunters」、2008年に「Music Speaks Louder Than Words」を出して、この新作が三枚目。全曲、この二人の共作だが、演奏の主体はラース・ファビアンセンのギター・プレイ。このギターがとってもいい。セミアコで、早弾きやエフェクトなど無しで、オクターブ奏法を混ぜながらのプレイなのだが、これがグルーヴィでメロディアス。ボーカルが加わっての曲もあるのだが、彼のギターサウンドのほうが、ボーカリストより「歌って」いるのだ。

グルーヴィーなM−1「Under The Palm Tree」で始まる。シャカタクをもっとファンキーにしたような曲で、スムース・ジャズ系のラジオ・ステーションなら、ヘビー・ローテーションは間違い無しのベスト・トラック。タイトル曲のM-3「Driftin'」は、オクターブ奏法とスキャットが絡む、どことなく牧歌的なスローメローな曲。始まりのビートがスティーリー・ダンを思わせるM−5「Cocktail」は、AOR系のアーバン・ポップスのよう。アコーディオンとギターのユニゾンが、メランコリックなM−7「Gypsy Jam」。M-10「Airbone」は、プログレっぽいところがヨーロッパを思わせる。M-11「Slow Woman」は、スローなギターアドリブが、メローで心地よい。全14曲、メロディも演奏もキャッチーで、スムースなグルーブがあふれている。

2011年9月 3日 (土)

Matt Marshak 「Urban Folktales」(2011)

Urbanforktales2
音源:iTunes
レーベル:MattMarshak.com














青空の下をドライブする時は、疾走感たっぷりのビートはっきりのアルバムを聴きたい。夜には、静かに一人で飲むなら、摩天楼にささやき通るような、スロウでメローな演奏を聴きたい。ところが、初めから終わりまで、期待通りのバイブレーションが続くアルバムはなかなかないもの。メローな曲に酔っていると、次の曲は突然、青空を突き破るようなファンクチューンが出てきたりして、スキップで飛ばしたり。TPOに合わせて、お気に入りの曲を編集したりする。でもなあ、そんなの面倒だ。同じビートとバイブレーションが続くグッド・ミュージックのアルバムを見つけたい。

マット・マーシャックは、ニューヨーク出身のギタリスト。2001年にデビューアルバムを出してから、この新作が6作目。「この作品は、初めから終わりまで同じバイブレーションで通した、初めてのテーマ・アルバムだ。夜中のシティ・サウンドを表現したかったんだ。」と、彼自身がコメントしているとおり、これは夜にピッタリのミュージック。

同じバイブレーションをキープしながら、ギターの奏法と音色を駆使して作った、万華鏡のような作品集。ワウワウ・エフェクトとエコーで、夜を演出しているような、M-1「Teddy P」とM−6「For So Long」。ポップチューンのような、キャッチーな、M-4「Tell Me How You Feel」とM−5「A Silent Knowing」。チョーキングを効果的に使ってブルース・フィーリングたっぶりの、M−7「Piece By Piece」。ワンツー・ワンツーのスロービートにメローノートを繰り返す、M−8「Harlem River Drive」。オクターブ奏法が冴え渡るクールな、M−9「Cackalaky Cool」。スチール弦のアコースティックサウンドでさわやかな、M-10「Time For Takeoff」。オルガンやホーンセクションが加わって、ワウワウがファンキーな、シカゴのR&Bバンドのような、M−11「Glen Burnie」と、最後を飾るM−13「Dancing With My Daughter」。

これなら、編集いらず、夜に聴き通せるスムース・ジャズの決定版。もう、今年ベスト候補の一枚かな。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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