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2012年1月15日 (日)

Paul Hardcastle 「Paul Hardcastle VI」(2011)

Ph6
音源:CD(輸入盤)
レーベル:Trippin 'n' Rhythm Records













ポール・ハードキャッスルは、スムースジャズ系のアーティスト(キーボード兼プロデューサー)として、欧米で新作を出せばヒット間違い無しのビックネームだ。この新作も、米国のチャートを見る限り、発売以来チャート上位に長くいるし、評価も高いアルバムだ。残念ながら、あまり、というかほとんど、日本では紹介されない。この新作を含めて、過去作品も、今は、日本盤はリリースされていないようだ。iTunesでは、過去作品も買えるけれど、契約の関係なのか、この新作はまだ登場していない。
ポール・ハードキャッスルのキャリアは、80年代から始まり、イギリスや欧州を中心にヒット曲を放っている。「19」という曲は、1985年に欧米各国で大ヒットしたらしい。当時のアメリカのベトナム戦争への関与をテーマにした反戦的な曲で、オリジナルではニュースのナレーションや兵士のインタビューをコラージュして話題になった。そういったこともあり、彼の評価も欧米では定着している。
このアルバムは、「Hardcastle」と名義したシリーズの新作(6作目)で、これとは別に、「The Jazzmasters」名義のシリーズもあり、こちらも2010年に6作目までリリースしている。どちらかといえば、The Jazzmastersのほうが、楽器やボーカルをフューチャーした正当的スムースジャズのプロジェクトで、方や、「Hardcastle」のシリーズは、打ち込みや、ビートのミニマル処理が、エレクトロ系ソウルミュージックのような感じか。最近、スムースジャズ系でチリー(chilly)と表現するサウンドの傾向が「はやり」らしい、日本的には「ヒーリング」的というのが適切かもしれないが、この人のサウンドプロダクションの特徴のひとつかもしれない。ほのかなマイナーでメローなメロディと、繰り返される打ち込みビートは、軽快さの裏に、何か落ち着かせてくれるバイブレーションを持っている。伝統的なフュージョンや、明るいポップチューンを求めるスムーズジャズの物差しからすると、ポール・ハードキャッスルのサウンドは評価が低いのかもしれない。さらに、ハウス系やエレクトロ系の主流にしては物足らず、というのが、日本での商業的な評価につながらない原因かもしれない。彼のこのミュージックは、ポップチューンの変わりに、スムースジャズを求めるだけでなく、前衛的な要素も受け入れて、精神的なバリューを感じるようなリスナーに支持されているような気がする。
このアルバムのハイライトは、M-1「Rainforest/What's going on」。マービン・ゲイの名曲で、実際にマービンのボーカルをコラージュして、1984年にヒットしたポール・ハードキャッスルの自作曲を再演したものだ。数年前、彼の父親から、「19」と「What's going on」をミックスしたらどうかというアイデアがあり、レコード会社と交渉の末、マービンのボーカルの使用権を得たと、元ネタをライナーノーツで紹介している。マービン・ゲイのボーカルからこのアルバムが始まるからか、続く、M-2「Night Time Hustle」、M-5「Lost For Words」、M-6「Dc Boogie」、M-8「Easy Come Easy Go」が、題名そのままに、ソウルフルでファンキーなメロディーが際立った、いいトラックだ。M-9「Let This Love Begin」、M-11「Into The Blue」はエレクトロ系リズムパターンをバックのボーカルチューンで、どこかユーロビート風で、ヒット性が高い佳曲。
ポール・ハードキャッスルは、なぜか日本であまり紹介されない「大物」。

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