« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »

2012年3月の記事

2012年3月31日 (土)

Darren Rahn 「Speechless」(2012)

Darrenrahn
音源:iTunes Store
レーベル:Trippin 'n' Rhythm

ダーレン・ラーンは、サックス奏者として、自身のアルバムを今まで3枚出している。加えて、サポートプレイヤーやプロデューサーとしても、ウェイン・ティスデール、デーブ・コーズ、ジョナサン・フリッツエンなどなど、スムースジャズの多数のアーティストをサポートしている。サックス奏者としては、派手なブロープレイヤーではないが、安定感のある音色を奏でる。
そのダーレンが、注目のスムース・ジャズのレーベル、トリッピン・リズム・レコード(TNR)と契約した。TNRは、1996年に設立されたコンテンポラリージャズの専門レーベル。近年のスムースジャズのジャンルでは、かなりメジャーな存在になっている。直近のチャートを見ても、TNRリリースのアルバムは上位に複数チャートインする常連。契約しているアーティストも、ビッグネームのポール・ハードキャッスルを筆頭に、シンディ・ブラッドリー、ジャード、オイル・シルクなど、スムースジャズの旬なアーティストを独り占めするかのような布陣だ。そのサウンドは、明確にヒット指向で、ポップスやR&Bの手法の、コンテンポラリーミュージック。その路線で、ジャズのスキルに長けたアーティストがサウンドを作り上げるのだから、単なるイージーリスニングとは一線を画した上質なスムースジャズだ。
TNRからのこの新作の路線は、リッチでコンテンポラリーなソウル・アルバム。80年代の、例えば、クール&ザ・ギャング、シャラマーやギャップ・バンドあたりを思い起こすようなグルーブを感じるのだが。デイブ・コーズとツイン・サックスでコラボするM-11「Flashback」は、ハイライトなトラック。タイトル通り、フラッシュバックするのは80年代のソウルミュージック。ナジーのフルートと競演するM-7「Studio 54」や、M-2「Into the Light」、M-3 「Magical」あたりは、懐かしい「ソウルトレイン」へのオマージュに聴こえる。クールダウンするバラード系のトラックも秀逸。M-4「Give 'n' Take」は、ポール・ブラウンのギターが聴ける、スウィート・ソウルなスタイル。ポール・ハードキャッスルの娘、マキシーヌ・ハードキャッスルがボーカルを取るM-8「Speechless」は、やっぱりハードキャッスル風になっている「チル・アウト」。M−9「One Step Ahead」は、フュージョンスタイルで新鮮。このアルバムはヒットするだろうし、ダーレン・ラーンの代表作になるに違いない。

2012年3月25日 (日)

スムースなピアニスト:ブライアン・シンプソン

Abovetheclouds
ブライアン・シンプソンは、スムースジャズを代表する最も「スムース」なピアニスト。キャリアは、ロサンジェルスのジャズクラブから始まり、ティーナ・マリー、シーナ・イーストン、ジャネット・ジャクソンなどのポップスアーティストのツアーに同行する。そんな関係からか、1991年には、サーフェイスという3人組R&Bバンドの「The First Time」という曲を、メンバーの1人のバーナード・ジャクソンと共作して、そのシングル曲はビルボードで2週間トップヒットとなっている。ブライアン・シンプソンのソロとしてのレコーディングアルバムは4作品。1995年にデビュー作「Closer Still」。2005年に「It's All Good」。このアルバムのタイトル曲がヒットして、スムースジャズ界の注目を集める。2007年には「Above The Clouds」。2010年の「South Beach」以降新作は出ていない。15年間で4作品なので、寡作のアーティスト。そのスタイルは、シングルトーンを際立たせるアコースティックピアノ。サウンドは、スムースジャズの王道を行くような、完成されたオーケストレーションと、コンテンポラリーメロディー。けれど、ムード優先の超美メロディに頼らず、アドリブにはジャズのスピリットがあふれる。本人のソロ作品は寡作だけれど、スムースジャズのビックネームアーティストのサポートは多数。デイブ・コーズ、スタンリー・クラーク、ジョージ・デューク等々。彼のプレイは、アクのない、それでいて美しく端正なメロディとフレーズを弾く希有なピアニスト。それが、サポートプレイヤーとしても人気なのだろう。彼の作品は、イージーリスニングとしてドライビングやバックグラウンドに重宝されるタイプのミュージックだけれど、それでも最高のクオリティのプロダクションだ。音量を上げて聴いてみると、緻密なサウンドプロダクションが分かる。どのアルバムも傑作だけれど、2007年の「Above The Clouds」がベストアルバム。フライトをテーマにした佳曲に捨て曲無し。他のアルバムにも増して、アタック感のあるアコースティックピアノの音色が本当に美しい。


2012年3月24日 (土)

Chris Standring「Electric Wonderland」(2012)

Electricwonderland
音源:iTunes Store
レーベル:Ultimate Vibe Recordings

イギリスのギタリスト、クリス・スタンドリングのニュー・アルバム。先行されて発表されたシングル「Oliver's Twist」のビデオは、なかなかにかっこいい。ヒップでラウンジ風のサウンドに、彼のアコースティック・ギターが、シャッフル気味にボサノバビートを奏でる。ロンドン辺りのビルの屋上か。彼のギターに合わせて、踊る人が増えていく。
このM-4「Oliver's Twist」ではアコースティックを弾いているけれど、アルバムのそれ以外のほとんどのトラックは、エレキギター、フェンダーストラストキャスターを弾いている。この音色がすごくいい。フェンダーストラットはどちらかというと、ジェフ・ベックやクラプトンなどロック系の奏者が好んで使う、ロックギターの代名詞のようなモデル。クリス・スタンドリングは、それをピックを使わないフィンガー奏法で、エコーを効果的に使い、とてもメローなサウンドを実現している。ときどき、パット・メセニーを思わせるようなフレーズも出てくるけれど、さりげないアドリブはジャズ。「エレクトリック」と銘打ったアルバムタイトルには、このギターのことを指しているだけでなく、ちりばめられたサウンドは、シンセ系やアコースティックな様々な音色をブレンドした、まさに「ワンダーランド」。
ヒップなビートで始まるM-1「Pandora's Box」は、ストラットギターの音色とフェンダーローズのエレキピアノのかけあいがいい。M-5「Wishful Thinking」は、ピーター・フランプトンで有名なトークボックスを使ったエフェクトと、クリアなチョーキング気味のギターサウンドを対比させた佳曲。M-6「Heart Of The Matter」は、ピアノ、ベース、ブラッシング・ドラムのアコースティックコンボをバックに、メローにちょっとブルージーな音色のギターサウンドが美しい。M-7「Escapade」は、サウンドはラウンジっぽくて、ギターはオクターブ奏法のテーマメロディがキャッチーな曲。M-9「Castle In The Sky」は、ウクレレで始まる明る曲調は、どこかブリティッシュフォークを思わせるなごむ曲。エンディングのM-10「Nightingale's Bridge」はバラードで、オーソドックスなジャズカルテットでの演奏。超美メロディがしみる。

2012年3月17日 (土)

Paul Brown 「The Funky Joint」(2012)

Paulbrownfunkyjointnewcd
音源:iTunes Store
レーベル:Woodward Avenue Records

ポール・ブラウンの新作は、ソロ名義で2010年の「Love You Found Me」以来の5作目、2009年にマーク・アントワンとのコラボアルバム「Foreign Exchange」を入れると6作目。今回はタイトルに「ファンキー」と銘打って、ブルーズやR&Bがテーマ。そのコンセプトにふさわしいが3曲、M-5「Love Don't Come EZ」、M−10「I Get a Feeling」、M-11「Gibson Blues」。いずれもいかにものブルーズチューン。M−5とM-10は、本人自身のボーカル曲で、リードボーカルを録るのははじめてらしい。ジョージ・ベンソン風に売り出そうという意図なのか。唄の方は、ちょっと危なっかしい感じ。
ブルーズをファンキーに料理した曲は、新境地なんだろう。でも、ポール・ブラウンといえば、スイート&メローなメロディー・メーカー。R&Bやソウルをコンテンポラリーに料理するサウンド・プロダクションがいつもかっこいい。彼の使うギターの、ギブソンL−5で奏でる、レトロなセミアコ・サウンドも魅力。(なんたって、ギブソンL−5は、ウエス・モンゴメリー。)彼のギター奏法も、シングルトーンのアドリブより、ビート重視のコードカッティングと、アクセントで時折入れるストロークを効かせたオクターブ奏法が、かっこいい。ワンパターンなんだけれど、彼の新作やプロディース作品にはいつもその路線を期待してしまう。ブルーズ調の前述3曲以外の8曲は、その路線の佳曲ぞろいで、安心。これぞ、ポール・ブラウンのサウンドというのは、ハンド・クラッピングを効果音に使うスイートソウル風の曲。M-1「The Funky Joint」、M-4「Say It Like It Is」がまさにそんな「ポール・ブラウン節」が聴ける曲。売れっ子プロデューサーらしく、今のスムーズジャズ界の有名どころがサポートしている。ボニー・ジェイムス、ジョナサン・フリッツエン、ボブ・ジェイムス、ダーレン・ラーン、ユージ・グルーブ。ダーレン・ラーンがサックスを吹くM-8「Ya Dig」と、ユージ・グルーブとのM-9「From the Ground Up」、いずれもコンテンポラリーなシティー感覚あふれるかっこいい曲。余談だけれど、ポール・ブラウンのルックスは、ちょっと似「クリントン元大統領」。撮り方によってかなり似てたりするので、ポートレートよりこのジャケットのようなアートワークのほうがいい。音の方は最高。

2012年3月 3日 (土)

Rob Tardik 「B.E.L.L.(Balance. Energy. Laughter. Love)」(2011)

Rob

音源:iTunes Store
レーベル:Guitardik

カナダ出身のギタリスト、ロブ・ターディックの新作。1曲目「East Meets Wes」は、ポール・ブラウンとのデュエットで、いかにものポール・ブラウン節の曲。タイトルのWESは、ウエス・モンゴメリーにかけて、二人がオクターブ奏法を掛け合う、なかなかキャッチーな曲。でも、このアルバムの良さは、2曲めから。聴き返すと、ポール・ブラウンとの1曲目が唐突と感じるほど。アルバム・タイトルのコンセプト、バランス良く元気で明るさと愛の讃歌という感じの、ポップでスムースな好盤。意図的なマイナー曲も無く、ミディアムテンポのアコースティックギターが中心で、リラックスした曲と演奏が並んでいる。M-4「Shakin' the House」は、サックスのダーレン・ラーンをフューチャーした曲で、ポール・ブラウンとの1曲に劣らずヒットポテンシャルの高い佳曲。M-7「La Buena Vida」では、フラメンコスタイルで弾きまくる。テクニックをひけらかすようなプレイでなく、うきうきする感じが楽しくなる。ちなみに、ジャケットにも映っている彼のギター。カナダのゴダン(Godin)というギターで、アル・ディ・メオラやパコ・デ・ルシアなど弾くアーティストが多い人気のギター。最後のM-12「Corazon Contento」もフラメンコ調の曲で、ギターとオルガンとケイジャンドラムのトリオで演奏するじわっとしみる良い演奏。ボーカル入りが2曲(M-2「The Right Time」、M-5「When It Comes to Lovin' You」)あって、これがなかなかいい。ボーカリストは南アフリカ出身のフランソワ・マルダーという人。声質や歌い方が、ちょっとジェイミー・カラムのようで、ブルースっぽくジャージーに歌うスタイル。特に、M-5はボサノバ風AORという感じのコンテンポラリーな曲。この2曲の歌声で初めて知ったが、これから注目したいシンガー。


« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »

About This Blog

  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

2015 Top Recommend (click)

  • Bob Boldwin「MelloWonder」
  • Brian Simpson 「Out of a Dream」
  • Jonathan Fritzen 「Fritzenized」

2014 Top Recommend (click )

  • Greg Manning 「Dance With You」
  • Rick Braun 「Can You Feel It」
  • Michael Lington 「Soul Appeal」
  • Ed Barker 「Simple Truth」

2013 Top Recommend (click)

  • Jeff Golub 「Train Keeps a Rolling」
  • Oli Silk 「Razor Sharp Brit」
  • Patrick Yandall 「Soul Grind」
  • Boney James 「The Beat」

2012 Top Recommend (click)

  • Euge Groove 「House of Groove」
  • Paul Brown 「The Funky Joint」
  • Chris Standring 「Electric Wonderland」
  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
  • Phil Denny 「Crossover」