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2013年1月14日 (月)

『レッキング・クルーのいい仕事』ケント・ハートマン著

Isbn906700592_3 彼らは「レッキング・クルー」と呼ばれた、いわゆるスタジオ・ミュージシャンの覆面チームだった。60年代から70年代に、ヒット・チャートを席巻した名曲の数々は、実際は彼らが演奏をしていた。この本は、当時のヒット曲の裏側を、ミュージシャンが誰だったかという単なる事実の暴露ではなく、それぞれのプレイヤーの人生が語られる。登場するのは、ビーチ・ボーイズ、ママス&パパス、フィル・スペクター、ジム・ウェッブ、ソニー&シェール、フィフス・ディメンション、グレン・キャンベル、モンキーズなどなど、彼らの名曲が生まれたストーリーが、演奏を支えたスタジオミュージシャンを中心に語られる。例えば、モンキーズの各曲は本人たちの演奏では無いということも、また、フィル・スペクターが名うてのスタジオミュージシャンをオーケストラのように使っていたのも、それぞれは周知の事実だし、バック・ミュージシャンに、ラリー・ネクテル、ハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、などのプレイヤー名を、クレジットで見つければ「品質保証」だった。でも、それ以上のストーリーは語られることは無かったから、この本が彼らにスポットを与えただけでも興味深い。でも、この本の面白さは、単にヒット曲の隠された事実の解説だではなく、「アメリカン・ドリーム」の体現と、また栄光からの失墜を経験したような「主人公達」が、ロック・アンド・ロールの世界にもいたことを語っている事だろう。ヒット曲を商業的に大量生産していくビジネスが、70年代以降にはかたちを変えていく。ヒット曲の制作方法も近代化したり、画一的なポップスだけでなく多様な音楽を求められる時代がやって来て、やがて「レッキング・クルー」も消えていく。音楽ファンとしては、当時のヒット名曲にまつわる逸話の数々に胸が躍る。モンキーズの「亀裂」のきっかけや、ブライアン・ウィルソンやフィル・スペクターの制作現場、ジム・ウェッブやグレン・キャンベルの成功秘話や、「明日に架ける橋」や「遥かなる影」の裏話、などがリアルで「そうだったのか」と大いに知って特になる気分だ。読後に、登場する楽曲を、聴き直せば新たな発見がありそうだ。ちなみに、レッキング・クルーとはロサンゼルスを拠点としたチームのことだが、他都市にもご当地版のスタジオ・ミュージシャンのチームがあったそう。書中の解説によれば、例えば、デトロイトのそれは「ファンク・ブラザース」、ナッシュビルのカントリー音楽では「Aチーム」と呼ばれていたそう。以前紹介したナッシュビル発のフュージョンバンド「プレイヤーA」の意味するところも、ナッシュビルのスタジオ・ミュージシャンのことかと、納得した次第。(発行:Pヴァイン・ブックス、訳:加瀬俊、)

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