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2013年9月16日 (月)

Jeff Golub「Train Keeps a Rolling」(2013)

Golub

ジェフ・ゴラブのデビューは1988年。いままで、すでに13作品のアルバムを出している、26年のキャリアを持つギタリスト。アタックがやや強い音色を弾く人で、ロックやブルース系寄りのコンテンポラリー・ジャズ・ギタリスト。前作の「The Three Kings」(2011)は、ブルース界の3人の”キング”、BBキング、フレディ・キング、アルバート・キングへトリビュートした、ディープでゴージャスなブルース作品だった。そのジェフ・ゴラブの新作。ジャケットの彼はどこかワイルドな感じで、今までの貴公子なイメージとどこか違う。題名も「Train Keeps a Rolling」だから、タイトル表現の、電車の引き込み線をバックにした撮影だろう、と。寄り添う犬は、あれっ「盲導犬」?。ワイルドに見えたジェフは、サングラスをかけている? そう、うかつにも、知らなかった。ジェフは、前作アルバムの録音を完了した後、2011年の7月に、視神経の障害で視力を失ってしまう。「The Three Kings」のレコーディング中に、すでに右目の障害が始まっていたが、誰にも語らず演奏したそうだ。そして、その後、両目の視力を失ってしまう。それから1年後の2012年9月には、ニューヨーク市内の地下鉄ホームから落下をする事故にあう。地下鉄が接近する間一髪のところを、自ら這い上がってまさに九死に一生を得て、幸運にも擦り傷だけで助かるのだ。その事故は失明の不運より、彼に生きるパッションを与えたのかもしれない。事故後のインタビューでも、「今でもショックだよ。死んでいたかもしれないからね。でも、見えていない事を心配しない。」と語っている。彼の身の上に起こったそんな事実を知らなくても、このアルバムを聴けば彼の音楽へのパッションが伝わってくる。共演は、イギリス出身のオルガン奏者、ブライアン・オーガー、という人。そのブライアン・オーガーが結成していたオブリヴィオン・エクスプレスの「Closer To It」(1973)というアルバムを、15才のジェフは聴いて感銘を受ける。「ロック・ミュージシャンがジャズを演奏するのを初めて聴いて、ジャズを演奏するにはジャズ・ミュージシャンである必要はないと分かった」、とジェフはライナーに書いている。このアルバムの11曲はいずれも、ジェフのギターとブライアンのオルガンを中心とした、バンドセッションの作りなのだが、どの曲もタイプの違いはあれ、ロックやブルースをベースにしたわくわくするバイブレーションに溢れている。ブライアンの弾くハモンドオルガンが、70年代を感じさせるレトロなビートがいい。ブルーススピリットを外さない、どちらかというとロックビートを炸裂させるようなジェフのギターは元気いっぱいで壮快なプレイだ。M1の「The Cat」は、オルガンの巨人ジミー・スミスがラロ・シフリンと組んだ名盤(1964)タイトル曲のカバー演奏。オリジナル以上にパワー・アップしたホーン・セクションをバックに、チョーキングプレイのジェフのギターと、ジミー・スミスを彷彿するブライアンのオルガンがグッド・バイブレーションを炸裂するハイライトチューン。この冒頭曲にいきなりガツンとやられる。M3のアルバムタイトル曲は、ジェフのペンによる曲で、ジェフのロックギターが疾走してゆく。M5の「Pusherman」は、カーティス・メイフィールドのサントラ名盤「Superfly」(1972)に入っていた曲のカバー演奏。70年代のファンク・ブルースな雰囲気で、サビのジェフのギターが文句無しにカッコいい。M6「How Long」は、ポール・キャラックの同名曲を、フリストファー・クロスが参加して唄ったカバー演奏。ブルー・アイド・ソウルな原曲を、クリストファーが唄って、西海岸風のAORに仕上がったベストでポップなトラック。ジェフのコードストロークもウェストコーストロックしている。M7「J&B」とM9「Shepherds Bush Market」は、前作からの流れを感じる、いずれもシカゴ・ブルースなセッション・トラック。ディープでワイルドな、ジェフのブルースパッセージのギターが堪能できる。M8「Happiness Is Just Around the Bend」とM10「Whenever You're Ready」は、アレックス・リガートウッドがボーカル参加したロックな2曲。アレックスは、サンタナのバンドのリードボーカルを務めた人で、サンタナ以前はブライアン・オーガーのバンドにも参加していた。最後の曲M11「Walking On The Moon」は、スティングの曲のカバー。ボーカルは、AORファンには懐かしい人、「Biggest Part of Me」(1980)のヒットで有名なアンブロージアのボーカリストだったデイヴィッド・パック。このアルバムは、AORからロックやブルースのタイプの曲が集められているけれど、聴きものは「前向き」なジェフのギターと、ブライアン・オーガー率いるセッション・バンドが作り出す、グッド・バイブレーション。ギターインストアルバムとして今年のベストな一枚に推薦したい。

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