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2015年4月12日 (日)

Diana Krall 「Wallflower」(2015)

Krall

多方面で絶賛されている、ダイアナ・クラールの新作。70年代中心のヒット・ポップスを歌ったカバー集で、選曲もいいし、デヴィッド・フォスターのアレンジ、クラールのボーカル、と3拍子が揃った素晴らしい内容の秀作。何といっても、フォスターのオーケストレーションが素晴らしい。個性の強い名曲のオリジナル・バージョンのムードをそのままに、ストリング中心のオーケストレーションで表現したアレンジメントはまるでマジックのよう。10CCの名曲「I’m Not In Love」は、オリジナルの「シート・オブ・サウンド」が、ストリングスやピアノで表現されて、かつ室内楽のような品位もある解釈で仕上げた感動のバージョン。クラールのボーカルは、低音の魅力が輝いている。スローテンポでストリングスをバックに歌う「Superstar」は鳥肌ものだし、「Don’t Dream It’s Over」の囁くような低音の導入部、「I Can’t Tell You Why」のハスキーな歌い方、それぞれほとんどフェイクせずにオリジナルメロディーを忠実に歌うところも、かえって枯れたところも持ち合わせた、巧者なヴォーカリストであることを聴かせてくれる。取り上げている選曲もいい。イーグルスに、ギルバート・オサリバン、ジム・クロウチ、エルトン・ジョン、ボブ・ディラン、カーペンターズに、なんとクラウデッド・ハウスと来るんだから、もう涙もの。ベビーブーマーが青春時代を過ごした黄金ポップスで、久しぶりに出会った旧友ような懐かしさと感傷を、思わずにいられない。クラールも、1964年生まれだから、リアル・タイムに思い出のある曲の数々なのかもしれない。クラールは、「When I Look In Your Eyes」(1999)や、大ヒットした「The Look of Love」(2001)、傑作ライブ盤「Live In Paris」(2001)など、スタンダードを歌う、正統派ジャズ・ボーカリストだし、ピアニストとしても巧者。今回のポップス・カバー集は、意外な企画のようだけれど、実は、クラールは以前から、同時代ポップスをカバーしていて、それぞれ光った録音を残している。「Live In Paris」(2002)では、弾き語りで歌ったアンコール曲、彼女の同郷カナダ出身のジョニ・ミッチェルの「A Case of You」が何といっても素晴らしい。同じアルバムの最後に入っている、この曲だけがスタジオ録音の、ビリー・ジョエルの「素顔のままで(Just the Way You Are)」は、マイケル・ブレッカーのサックス演奏も必聴の素晴らしいカバー。「Quiet Nights」(2009)では、ビー・ジーズの「傷心の日々(How Can You Mend a Broken Heart)」と、ディオンヌ・ワーウィックで有名な「Walk On By」。クラールがエルヴィス・コステロと結婚した後に作った、「The Girl in the Other Room」(2004)には、ジョニ・ミッチェルの「Black Crow」、トム・ウェイツの「Temptation」、コステロの「Almost Blue」。その7曲を集めたら、”Another Wallflower”といった趣の、いいコンピレーションになるはず。ところで、今回の作品に、ポール・マッカートニーの未発表曲「If I Take You Home Tonight」が収録されていて、話題だけれど、クラールは以前に、ポールと共演している縁があってのことだろう。ポール・マッカートニーが、ジャズ・スタンダードをカバーした「Kisses on the Bottom」(2012)では、クラールと彼女のバンドが録音に参加していたから。ポールはそのアルバム用に3曲を書き下ろして録音したらしい。その時のアウト・テイクがこの曲。マッカートニーの曲というだけで話題だけれど、個人的には、他のカバー作品の方が秀逸だ。今度は、クラールのピアノ演奏をフューチャーして、スムーズ・ジャズの作品を作って欲しいなあ。

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