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2015年5月の記事

2015年5月30日 (土)

Nate Harasim 「#Shadesofnate」(2015)

Nate

キーボード奏者ネイト・ハラシムの新作。ソロ作品は、「Next In Line」(2007)、「Love’s Taken Over」(2008)、「Rush」(2011)に次ぐ4枚目。ソロの作品としては、4年振りだけれど、近年はプロデューサーとしての「仕事」が際立っている。エリザベス・ミス「Breakaway」、ヴァンデル・アンドリューの「Turn It Up」や、グレッグ・チェンバース「Can’t Help Myself」、リン・ラウントリー「Serendipitous」など、いずれも若いアーティストの才能を引き出した手腕は、今やスムーズ・ジャズ界の最も才能溢れるプロデューサーのひとり。このハラシムこそ、オリ・シルクニコラス・コールジョナサン・フィッツエンといった若きアーティストと並んで、今の、これからのスムーズ・ジャズ・ミュージックの牽引者だ。 さて、この新作、15曲の作品を並べた、スムーズ・ジャズの枠にはまらないハラシム・サウンドの、パワー全開の力作。ひたすらラップ(KSqueez)をフューチャーした曲(M4「#Workit」)や、フィル・コリンズの「In the Air Tonight」をカバーした曲、まるでエミネムのようなヒップ・ホップ曲もあって。極め付けは、ソロ・ピアノで演奏するベートーベン「月光」(M7「#Moonlightsonata」)で、ほぼ9分も続く演奏に、ただ驚嘆。いずれも、スムーズ・ジャズのスタイルからは、かなりかけ離れたサウンドに、正直、面食らってしまう。そんな先進的なサウンドの中だから、かえってオーソドックスに聴こえてしまうスムーズもしくはコンテンポラリー・ジャズ路線の曲が7曲あって、やっぱりこれがいい。M1「#Harmonypark」は、デーブ・コーズとニルスが客演した、キャッチーなスムーズ・ジャズ・チューン。M3「#SummertimeFun」は、ダーレン・ラーンのサックス。M10「#LovIt」は、リン・ラウントリーとエラン・トロットマンが加わった、8ビートの爽快なスピード・チューン。M9「#CoolBeans」は、ポール・ブラウンのギターがシブい、スロー・ファンクなナンバー。客演の入ったいずれの演奏も、ハラシムのアコースティック・ピアノのアドリブが光っている。早いパッセージのフレージングでスウィングするピアノ演奏も必聴で、やっぱり、演奏家としても只者ではない。次作は、おとなしめでいいから、スムーズ・ジャズのスタイルだけで作って欲しい。

2015年5月25日 (月)

Peet Project「Love」(2015)

Peet

スムーズ・ジャズ界のワン・ディレクション?いや、マルーン5かな? ピート・プロジェクトは、ハンガリーの5人組インスト(歌も歌う)バンド。バイオリン奏者兼ボーカリストのピーター(Peter Ferencz)がリーダーであり、作詞作曲もして、プロデュースもする中心人物。その他、ピアノ、サックス、にベースとドラムは双子の兄弟という5人組。過去に、「Pink Spirit」(2010)、「Turn You On」(2011)、「Overseas」(2013)の3枚をリリースして、この新作が4枚目。ヨーロッパのスムーズ・ジャズは、ダンサブルなインスト・ポップスがトレンド。この人たちは、そんなトレンドを走るユニークなバンド。この新作は、ウキウキするポップ・チューン満載の作品で、このバンドの現時点での傑作だ。M2「Jazz & Wine」は、ベスト・トラックで、キャッチーなメロディーを、コーラスだけでなく、インスト演奏でブレンドする手法のなんとポップなこと。M3「Talking About Love」も、同様にポップなコーラス・チューンだけれど、後半のバイオリン演奏が主体のインスト・アンサンブルが素晴らしい。カントリーのフィドルのような速弾きフレージングが必聴。このあたりに、インスト・バンドらしい本来のグルーヴが現れていて、表面的なポッポス路線だけでない実力が見える。アルバム全10曲、ほとんどの曲に、コーラスもしくはボーカルが入るのだけれど、M1「Drive Time」と、M8「Night Is Fallin’」は、コーラスの入らない、”純”なインスト・チューン。ポップだったりメローな曲想を、バイオリンと、サックス、バンドが固めるスムーズ・ジャズ・スタイルの演奏。もっとこの手のインスト曲を演って欲しい。バンド・メンバーはイケメンだし、ヴィジュアル的にもスター路線を狙っているのかな。

2015年5月24日 (日)

Vahagn Stepanyan 「Moonlight」(2015)

Vahagn_new

キーボード奏者、バハーン・ステパニャンのデビュー作にして、ダイナミックな作品。ステパニャンは、アルメニア出身のアーティスト、クラッシック音楽教育を受けて、米国では多くのミュージシャンと共演を経験してのソロ・デビュー作。収められた12曲は、フュージョンやスムーズ・ジャズのインスト曲、ゲスト・ボーカルを迎えたポップスやR&B、と幅広い曲想と演奏スタイルの佳曲揃い。キーボード奏者に留まらず、曲や編曲、プロデュースまで、タダならぬ才能を見せてくれる。参加ミュージシャンは、アメリカ、イタリア、タイ、ドイツ、アルメニアなど、多国籍な布陣で固められて、ミックスはイスタンブールのトップ・エンジニアの手によりトルコで行われたという、異色だけれど、クオリティの高い内容。そんな背景から、曲想やサウンドのムードに、違いを感じるかな。ボーカルものの曲が5曲入っていて、いずれもドラマチックなムード高揚のR&B曲。スムーズ・ジャズ・ファンとして注目したいのは、この人のクリアな鍵盤フレージングが印象に残るインスト曲。M1「Gonna Fly」、M5「Someday」、M7「Moonlight」、M8「Lead Me Home」、M10「Journey」、が必聴のインスト・トラック。サックス奏者エリック・マリエンサルが参加した「Moonlight」はベスト・トラックだし、「Gonna Fly」も同様に、フュージョン・スタイルのバンド・アンサンブルが爽快な演奏。ステパニャンのキーボードも、アタック感のある演奏がクール。「Someday」や、「Journey」の、スロー・テンポ、もしくはバラード曲であっても、ピアノ・ソロ演奏はダイナミックなところが、この人の特徴。M3「Give More」は、ハード・リズムなフュージョン・アンサンブルを聴かせてくれる、一転、M12「Passion」では、クレイダーマンのような劇場型ムード・ピアノ。デビュー作だからだろう、歌ありインストあり多彩な曲想と、パワフルなエネルギーが伝わる演奏は、ちょっと方向性が散漫かな。でも将来性あるアーティストとして太鼓判。次作に期待したい。

2015年5月17日 (日)

Boney James 「Futuresoul」(2015)

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ボニー・ジェイムスの新作。前作「The Beat」のアタックなビート感を除いて、スローもしくはミディアム・テンポの曲を並べた、落ち着いたムードの作品。そもそも、この人のサックスは、洗練された「色気」のあるところが魅力で、この新作では、そんな彼のサックス・フレージングがたっぷり堪能できる。バラードな曲想が多いから、地味な印象はある作品だけれど、彼のサックスを愛してやまないファンとしては珠玉の演奏が並んだ、聴けば聴くほど愛着の深まる作品。参加アーティストは、ロビン・シックのレコーディングに参加していたJarius Mozee、カニエ・ウェストと共演して注目されたシンガーのドゥウェレ、R&Bバンドのミント・コンディションのリーダーでありボーカルのストークリー・ウィリアムズ、といった面子。どちらかというと、ネオ・ソウルというか、ちょっとプログレなR&B/ソウルのアーティスト。アルバム・タイトルが表しているのか、新しいソウル・ミュージックへのボニー・ジェイムスなりの解釈なのかもしれない。それでも、メローな音色のサックスと、クールなムードに終始するグルーヴは、この人ならではのもの。M1「Drumline」は、しっとりしたジェイムスのテナーがしぶい、ベスト・トラック。M9「Futuresoul」は、ドゥウェレがキーボードで参加した曲。スローテンポで、さらに際立つジェイムスのテーナーがクール。M2「Vinyl」は、80年代のスウィート・ソウルを思わせる胸キュンバラード。同様に、スウィート・ソウルなバラードM4「Watchu Gon’Do About It?」では、アルトを吹いていて、テナーに比べてメローの度合いがアップする色気のサックスがニクい。M10「Far from Home」は、コンテンポラリー・ジャズの色彩濃いバラード。ティム・カーモンのアコースティック・ピアノに、マーキス・ヒルのトランペット、両者のクールな客演にも注目。どことなく、マイルスの「カインド・オヴ・ブルー」を思わせるリリカルなムードのセッション。前作に入っていた「Batucada」のようなポップス性の曲はないけれど、ボニー・ジェイムスの「未来のソウル」を堪能できる、「今」のスムーズ・ジャズを代表するベスト作品。

2015年5月 9日 (土)

Vincent Ingala 「Coast to Coast」(2015)

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スムーズ・ジャズ界の若きスターと言っていい、サックス奏者ヴィンセント・インガラの待望の新作。サックスの音色の著しい成長は目を見張る、いや耳を見張ると言うのか。ロング・セラーとなった前作「Can’t Stop Now」を超えて、洗練されたサウンドは驚嘆に値するベスト級の必聴盤。タイトル曰く、ジャケット・ポートレートの背景のように、まるで「西海岸」を想起させる、青空が広がるようなヌケの良い音質と、ソウル・フレーバーのかかったアダルト・コンテンポラリーな曲想も素晴らしい。曲毎の細かいクレジットは不明だけれど、ゲスト・アーティストは、ピーター・ホワイト、DW3(カリフォルニアのスムーズ・ジャズ・ユニット)、リー・ソーンバーグ(トランペッター、かつてタワー・オブ・パワーのメンバー)、デニース・ローリンズ(英国のジャズ・ファンク系トロンボーン奏者)らが参加している。M1「Coast to Coast」はベスト・トラック、アタックのあるビート感たっぷりで、洗練されたスムーズ・ジャズ・チューン。インガラの健康的でヌケの良いサックスの気持ちい良いこと。M3「Making the Journey」は、西海岸サウンドのような視界の広がるソフト・フュージョンなギター曲。サックスが出てこないけれど、このギターはインガラ自身の演奏かしら。M4「Baby I’m Hooked (Right Into Your Love)」は、コンテンポラリーなボーカル曲。コーラス・ワークが上質なポップ・チューン。スウイートなボーカルとコーラスは、DW3かな。ダンサブルな曲が多いこの新作だけれど、M8「In Deep」はディスコ・ビートに、ホーン・アンサンブルと、ワイルドなエレキ・ギター、が超クールな注目トラック。M9「Gimme Some」は、アコースティックギター(ピーター・ホワイトだろう)と絡むインガラのサックスがぐっと来るメロウな曲。M10「T.L.C.(Tender Lovin’ Care)」は、R&Bなオーケストレーションがラヴ・アンリミッテッドを思わせる。今回の作品、秀逸な曲が揃っていて素晴らしいけれど、インガラのサックス演奏より、オーケストレーションやサウンド・デザインの全体像が優先されたような作品。そういう点では、インガラのサックスをもっとストレートに堪能したい欲求不満が、ちょっぴり残る。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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