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2016年4月の記事

2016年4月30日 (土)

Yellowjackets 「Cohearence」(2016)

Cohearence

イエロージャケッツの新作は、お馴染みのボブ・ミンツァー(kb)、ラッセル・フェランテ(sax)、ウィリアム・ケネディ(dr)に、新メンバーのベーシスト、デーン・アルダーソンが加わった新体制での初作品。イエロージャケッツは、1981年結成で、オリジナルメンバー、ラッセル・フェランテを筆頭に、他メンバーもおそらく全員60代だろう。新加入のアルダーソンは、30代前半の若さというから、新しい化学反応が起きるのだろうか。ジミー・ハスリップが、「Timeline」(2010)を最後に脱退。その後、「A Rise in The Road」(2013)で、フェリックス・パストリアスが加入。フェリックスは、ジャコ・パストリアスの息子だから、当然話題になったのだけれど、1作を残してわずか1年で脱退してしまった。「A Rise in The Road」は、正直、ハスリップの抜けた穴は大きい印象の作品だった。話題のフェリックスも、父親譲りの才能の片鱗を見せられたのかどうか。遠慮がちのプレイにも聴こえたし、バンドに溶け込めていない感じがしたのだが。という訳で、当然のごとく、デーン・アルダーソンのベース演奏に耳が行ってしまう。M2「Guarded Optimism」では、オーソドックスなフォービートのランニング・ベース。M3「Anticipation」では、ミッドテンポの流れるようなフレーズが魅力的だ。M5「Trane Changing」は、フェリックス・パストリアスがラッセルと共に作曲も共作者としてクレジットされている作品。フェリックスが在籍中の、置き土産だろうか。曲想はオーソドックスなジャズだけれど、皮肉にも、アルダーソンのアドリブは、一番生き生きとしていて、トラックの出来もアルバム中秀逸。ジャコばり、とは言いすぎだけれど、必聴のプレイを聴かせてくれる。作品のムードは、曲想も演奏も、伝統的でモードなジャズ路線。ミンツァーやフェランテのインプロビゼーションは枯れた味わいがあるし、4人のアンサンブルも隙が無くて完璧で、これはこれでいいのだけれど。ジミー・ハスリップがいた頃の、複雑系リズムやダイナミックな曲展開は聴けないのは残念。ロベン・フォードがいたデビュー作「Yellowjackets」(1981)のスピード感全開のフュージョンも懐かしい。

2016年4月24日 (日)

Phillip Doc Martin 「Pocket Love」(2016)

Pocketlove

フィリップ・ドック・マーティンは、ワシントンDCで現役の歯科医でもあるユニークな経歴のサックス奏者。つまり、愛称”ドック”は、正真正銘のドクターというわけ。サックス奏者として、この新作は5枚目の作品。収められた全11曲は、ほとんどが3分から4分の長さの曲で、マーティンの小気味の良いサックス演奏と、ポップで上品なR&Bグルーヴの作品が並ぶ。派手なところは無いけれど、曲も演奏も、好印象が後を引く、心地の良い作品。M3「Just the Two of Us」は、ご存知グルーヴァー・ワシントン・ジュニアの名作のカバー。フィリップのサックスは、気負わず、淡々と、グローヴァーの名演を習作のように吹くところが、むしろ好意的な印象を残す、なかなかのカバー名演になっている。M11「All of Me」もジョン・レジェンド作品のカバー演奏、こちらもオリジナル・メロディーを忠実に奏でるフレージングが美しい演奏。マーティンのサックスは、そこかしこに、グローヴァー・ワシントン・ジュニアが見え隠れするけれど、小気味のいいフレージングは、彼自身の魅力的な演奏スタイルだ。M1「Club Life」とM2「Pocket Love」は、両曲とも都会的で洗練されたメロディーがキャッチーな佳曲。続く「Just the Two of Us」まで冒頭3曲は、そのまま繰り返しリピートしたいベスト曲だ。M5「Hip Today」も、ファンキーなメロディーの佳曲で、中低音域のフレージングから一転、高域を力強く吹くマーティンの演奏は必聴。プロデューサーは、マーヴィン・トニー・ヘミングスという人で、作曲でも、5曲をマーティンと共作している。ヘミングスは、R&B男性シンガーのモンテル・ジョーダンの作品プロデュースもした人で、マーティンの過去作品や、ダーレン・ラーンの作品にも関わっている。この作品の出来は、プロデューサーのヘミングスのサウンド・デザインによるところが大きいのだろう。歯医者で治療中でも、この作品を聴いていれば、痛みも忘れてリラックスできる、というオチかな。冗談はさておき、今年のベスト級作品の一枚。

2016年4月17日 (日)

Thierry Condor 「So Close」(2016)

Soclose_2

ティエリー・コンドルの新作は、前作「Stuff Like That」の続編と言ってもいい、もろに、80年代の西海岸サウンドの秀作。前作でも感激したけれど、コンドルの中性的なボーカルといい、懐かしいサウンドといい、AORファンなら歓喜するに違いない。幾つかのカバー曲では、TOTOやシカゴなど、あの頃のAORサウンドを思い起こす懐かしさはもちろん。それ以上に、何とも新しさを感じるグッド・ミュージック。前作同様、プロデュースはウーズ・ウィーゼンダンガーで、この作品のサウンド・クオリティの高さは、彼によるもの。コンドルともに、スイスで活動していて、この作品が作られたというのも興味深い。 M1「Heart to Heart」は、おなじみケニー・ロギンスのヒット曲。これぞAORのクラシックと言っていい名曲。コンドルの爽快な歌声がかっこいい。 M3「Deeper Than The Night」は、オリビア・ニュートン・ジョンが歌った邦題「愛の炎」。コンドルが歌えば、最高にキャッチーなAORチューン。フュージョンファンには懐かしい、聴いたらすぐに分かるサックス奏者のトム・スコットの演奏が聴けるのも涙もの。M8「So Close」は、ディズニー映画「Enchanted(魔法にかけられて)」の挿入歌のカバー。コンドルの魅力的なボーカルと、TOTOを彷彿とするサウンドが最高。M9「Music Prayer For Peace」は、オリジナルはアーニー・ワッツの曲で、クインシー・ジョーンズがプロデュースしたアルバム「Musican」(1985)に入っているフュージョンの名曲。オリジナルのボーカルはフィル・ペリーだった。コンドルのカバー・バージョンは、彼のボーカルに加えて、Gサックスのサックス客演がかっこいい必聴曲。その他、オリジナルらしい、M3「Love Will Rise and Fall」、M6「Hard To Say Goodbye」にしても、まるでAORのクラシック曲のようだ。収録曲12曲(1曲はバージョン違い)、すべての曲を聴けば、コンドルのボーカルと、AORの色褪せない魅力に感激するすばらしい作品。

2016年4月10日 (日)

The JT Project 「Moments of Change」(2016)

Change

トッド・シフリン(sax)とジェイコブ・ウェッブ(kb)の2人による「ザ・JT・プロジェクト」は、前作「Under the Covers」を聴いて、これは只者ならないユニットだと。ルックスもスター性を感じるし、そのうちにビッグになりそうだと注目したが。やはり、早くも、この新作は、メジャーレーベル「トリッピン・リズム・レコード」からの第1作で、内容も傑作だ。キャッチーなメロディーが印象的で、ビート感覚に溢れた曲、M1「Overdrive」、M6「Moments of Change」、M3「Talk About It」、M9「Don’t Blink」、はどの曲も、そのグルーヴが魅力にあふれる、白眉なスムーズ・ジャズ・チューン。「Don’t Blink」は、サックスとキーボードがユニゾンで主メロを「歌う」あたりに、まるでデュエットのような佳曲。これらのスムーズ・ジャズ・チューンは、「トリッピン・リズム・レコード」らしいポップな楽曲だし、このユニットの代表的なスタイルとして、リスナーに支持されるはず。片や、M10「Love Passion Correspondence」や、M12「Talia」、M13「Sng for Kg」は、インプロビゼーションを中心にしたコンテンポラリー・ジャズの演奏で、こちらもこのユニットの真骨頂。こんな硬派で技巧的なジャズの裏付けがあるところが、このユニットの魅力。「Talia」を聴けば、シフリンのサックスに、グイグイ引っ張られるような引力を感じるはず。今年のベスト級の1枚。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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