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2017年12月24日 (日)

2017年のベスト3+1

Aroundthehorn Joyner Newbeginning Lovecovers

今年聴いた作品の中から、例によって「独断的」に選んだベスト3と次点の作品。

① 「Around the Horn」 Rick Braun

リック・ブラウンの作品は、アーバンなアレンジと、流麗なブラウンのペット・サウンドが、全曲に渡ってメロウに響き渡る傑作。前作「Can You Feel It」(2014)は、ビート全開のファンキーな作品だったけれど、今作はちょっとレイドバック気味のソウルフルでカッコいいブラウンが堪能できる。サウンドの要は、ほぼ半数の曲に参加している、ジョン・ストッダート。彼が、曲の共作、キーボード演奏、ボーカル、プロデュースを担当したコラボが大正解。ストッダートは、ゴスペル系R&Bシンガーで、自身のソロ作品や、カーク・ウェイラムとの共演で注目される人。ストッダートの、ネオ・ソウル・フレーバーと、ブラウンのクールなペット・サウンドが、ブレンドされた極上のミュージック。タイトル曲は、ゲストのティル・ブレナーとインタープレイが鳥肌もののベスト・トラック。名作級のベスト作品。

② 「Main Street Beat」 Jackiem Joyner

ジャッキーム・ジョイナーの作品は、彼のパワフルなサックスが、「全開」する秀作。ほとんどの曲は、彼のバンド・メンバーが固めた演奏で、フレッシュな躍動感で溢れている。ジャスティン・ティンバレイクや、ブルーノ・マースのヒット曲のカバー演奏も名演だが、ジョイナーのオリジナル曲はキャッチーな曲ばかりで、作曲の才能の素晴らしいこと。M1「Main Street」のポップ・チューンから、M6「Southside Boulevard」や、M11「Get Down Street」のスピード溢れるファンキーなビート・ナンバーも最高。スムーズジャズは、こうでなきゃあ、というベスト作品。

③ 「New Beginnings」 Valeriy Stepanov

ロシアはイルクーツク出身という、キーボード奏者ヴァレリー・ステファノフの作品。ギター奏者ユーナムが、自身のレーベル「スカイタウン・レコード」からデビューさせた、新人アーティストだ。パワフルかつテクも聴かせるピアノと、フェンダーのポップなフレージング、おそらく彼自身のペンのよる曲やアレンジは、どの曲もキャッチーなフックに満ちて素晴らしい内容。これからの活躍が大いに期待できる大型新人の登場だ。

④「#lovecovers」Kirk Whalum

次点は、カーク・ウェイラムのカバー作品集。全曲ボーカル入りだし、啓示的テーマの曲の数々は、ゴスペルかクリスチャン・ミュージックの範疇でもあり、ということで次点にランク。とは言え、ウェイラムの演奏はベスト級で、今年もっとも心動かされた作品だ。彼のライフワークである「The Gospel According to Jazz」シリーズのスタジオ録音による完成盤と言ってもいい。ワイナンズ・ファミリーなどゴスペル界のメジャー・アーティストの参加も豪華だけれど、ウェイラムのサックスは、歌うがごとく清々として、感涙的でさえある。偉大なアーティストを偲んだような「Tomorrow」は、MC入りの演出も秀逸で、感動のハイライト・チューンだ。ホイットニー・ヒューストン名演のヒット曲「I Will Always Love You」を始めとして、全曲でウェイラムのサックス・フレージングの覚めるような美しさに、感動しまくり、何度リピート・プレイしたことか。

その他、今年の秀作の数々。

リック・ブラウンとカーク・ウェイラムの盟友でありBWB組のノーマン・ブラウンによる「Let It Go」は、もちろん傑作で、ベスト3に入れるか悩んだ作品。

ギター奏者ティム・ボウマンの久しぶりのフル・アルバム、「Into the Blue」は、メロディアスなギター旋律と、ポップな曲満載の作品。

マイケル・J・トーマスの「Driven」は、彼のボーカルが新鮮で、AOR的な明るさに魅了された作品。

JTプロジェクトの「Another Chance」や、ピーセス・オブ・ア・ドリームの「Just Funkin' Around」は、バンド・アンサンブルのリアル・グルーヴに酔える演奏作品。

マーカス・アンダーソンの「Limited Edition」は、彼らしいヒップなダンス・グルーヴが全開した快作。

さて、年末の「恒例」の、「Sound of The Breez」のマスター「洋楽のソムリエ」さんとの共同企画、お互いのベスト作品の発表も、今年で5年目です。「洋楽のソムリエ」さんによる、ベスト作品は下記になりました。今年は初めて、重なるアルバムがなく、異なるセレクションになりました。(「Sound of The Breeze」のサイトにも掲載されていますので、ご覧になって下さい。)

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「Sound of The Breeze」から

Reverence Poetry_najee Letitgo_2

2017年 Best Smooth Jazz Albums

1位 『Reverence 』 Nathan East

しっかり練られた構成と収録曲ひとつひとつのクオリティの高さが群を抜いていた。緻密でありながらこれだけ骨太なアルバムは、スムーズ・ジャズでは珍しいのではないだろうか。随所に見られる、Earth,Wind & Fire など先人に対するリスペクトにも好感が持てる。スティービー作品のカバー、「Higher Ground 」は、当サイトが認定した上半期におけるベスト・ダンス曲のひとつだ。ニッキ・ヤノフスキーをフィーチャーした「The Mood I’m In 」は、こじゃれている。なお、米国のスムーズ・ジャズ専門局のオンエア回数では、上半期に長期にわたって1位を続けていたアルバムでもある。内容のみならず人気でも他を圧倒した結果の1位は、文句なしだろう。

2位 『Poetry In Motion 』 Najee

ナジーは、筆者がアルバムが出るたびに購入して聴いているアーティストのひとりだ。しかし、彼のアルバムを” 年間ベスト” として推したことはなかった。今回このアルバムを第2位に選んだのは、これまで以上に「抜群の心地よさ」があったからである。聴いていると知らぬ間にアルバム全体を聴き終えていて、また初めから聴きたくなる。そんなアルバムなのだ。エリック・ロバーソンをゲストに迎えた「Is It The Way 」など歌が入ったものも素晴らしい。インコグニートをフィーチャーした「Let’s Take It Back」は、当サイトが選ぶ年間ベスト・ダンス曲 15 作品の第13 位だ。

3位 『Let It Go 』 Norman Brown

『Poetry In Motion 』と、どちらを上位にするか散々迷った。曲の多彩さという点でいえば、むしろこちらだろう。心地よさに加え、「ジャズしている」感覚も充分だ。このアルバムも、歌物がアクセントになっている。今回、2位、3位ともレコード会社はShanachieだ。となれば、アルバムに歌物を収録するのは、会社の方針でもあろうか? 総崩れになっているR&B分野のファンに手を差し伸べられるのは、今やこんなタイプのスムーズ・ジャズかも知れない。

<一年を振り返って>

今年は「次点」を認定しなかった。しかし、ぎりぎりで飛び込んで来たユージ・グルーヴの新アルバム『Groove On 』は、充分ベスト3に値する作品だ。彼のアルバムには、心地よいグルーヴで酔わせる作品が必ず入っていて期待を裏切ることがない。 さて、グラミーの「Best Contemporary Instrumental Album 部門」に、ジェフ・ローバー・フュージョンの『Prototype 』がノミネートされた。「ごきげんだね! 」と称賛に値する作品である。しかし、この手のものは1980年代から存在する。グラミーのアカデミーが意味する” Contemporary “ とは、なんなのだろう? グラミー賞の同部門が、決してわれわれが想定するスムーズ・ジャズを対象にしたものではないことを非常に残念に、また嘆かわしく思う。

なお、ここ数年で感じるのは、音楽シーンでのR&B の凋落だ。今やその欠けた部分をカバーしているのは、スムーズ・ジャズではないだろうか。当サイトが選んだ今年のベスト・アルバム三作品 は、図らずもそんな作品が並んだ。 来年は、キーボーディストによる作品に期待したいと思う。

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「Sound of The Breeze」のベスト3作品は、いずれもトップランクのクオリティで、今年を代表するアルバムであること大賛成だ。来年も、多くの良質作品に出会えるのを期待しています。

2012年のベスト作品

2013年のベスト作品

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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