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2018年6月の記事

2018年6月24日 (日)

Michael Lington 「Silver Lining」(2018)

Silverlining

マイケル・リントンの新作は、「Soul Appeal」(2014)から、「Second Nature」(2016)と続いた、メンフィス・ソウルへのオマージュを込めた、連作の3作品目。過去2作品と同様に、プロデューサー/キーボード奏者バリー・イーストモンドが、リントンとタッグを組んだ作品。参加ミュージシャンは、レイ・パーカー・ジュニア、ポール・ジャクソン・ジュニア、レスター・スネル率いるメンフィス・ホーン、など、過去2作と同様のセッション・メンバーが固めるが、3作目ということもあり、ソウルフルな熱量が、今まで以上に沸騰して、ガツンとやられる作品だ。アイザック・ヘイズのバンド・メンバーでもあった、オルガン奏者レスター・スネルが率いる4管ホーン・セクションが、今作でも「本物の音」聴かせてくれる。まずは、M1「City Life」は、キャッチーなファンク・チューンで、リントンのシルキーなフレージングに、重厚なリズムとホーン・セクション、加えてユーズリミックスのギター奏者デイヴ・ステュワートが客演するハードなギター・プレイが交錯する必聴のハイライト曲だ。M2「Break the Ice」も、メンフィス・ホーンズがサポートする演奏。ソウルフルなホーンと、オルガンと、熱いフレーズを吹きまくるマイケル、ゴージャスな演奏。M6「Can't Say Goodbye」は、スウィート・ソウルなバラード。泣きメロを吹くリントン節が、ハートにグッと来てたまらない。この曲の、ハモンドオルガン演奏はレスター・スネルで、これこそメンフィス・ソウルのムードたっぷり。M4「People Get Ready」は、おそらく78歳になろうかという、メンフィス・ソウルのレジェンド・シンガー、ウィリアム・ベルがゲストで歌う曲。オリジナルは、カーティス・メイフィールドが在籍したインプレッションズの1965年の名曲。アーバン・ムードなマイケル・リントンが聴けるのが、M5「Silver Lining」や、M11「Straight to the Top」。都会的なメロディーとサウンドに、洗練されたこのフレージング。アルトなのにテナーのようにパワフルに吹くところも、彼の魅力です。ところで、マイケルは音楽以外のビジネスにも手腕を発揮していて、自分の名前をブランドにした「葉巻」と「ワイン」の販売も手がけている。煙をくゆらせて、ワインを飲めば、彼の音楽がさらに味わい深いということかな。

2018年6月17日 (日)

Michael Paulo 「Beautiful Day」(2018)

Beautifulday

ハワイ出身のマイケル・パウロは、40年を超えるキャリアのジャズ・サックス奏者。ミドル・ネームは「タツオ」というそうな、日系の人だ。日本でも人気のあったハワイのバンド「カラパナ」の初期のメンバーでもあり、ソロ奏者としてのデビュー作品「Tats In The Rainbow」(1979)は日本のみでリリースしている。その後は、アル・ジャロウのツアー・メンバーを10年に渡り務めたり、リック・ブラウン、ピーター・ホワイト、ジェフ・ローバー、デビッド・ベノワ、ケニー・ロギンス、ボビー・コードウェル、など、多くのビック・ネームと共演。矢沢永吉や、杏里、といった日本のポピュラー・アーティストとの共演も多いから、デビュー当時から知る日本のリスナーは多いはず。最近では、トロンボーン奏者ジェフ・アルパートの「Open Your Heart」(2017)で、客演していたのが記憶に新しい。ソロ名義としては、10年ぶりだそう、この新作は11枚目のソロ作品。5曲のカバーと、8曲のオリジナルからなる全13曲の作品。ポール・ブラウン、デヴィッド・ベノワ、ポール・ジャクソン・ジュニア、レイ・パーカー・ジュニア、らがサポートを務めている。マイケルの人間性が現れているような、ソフトでジェントル・トーンのサックスの音色が心地いい。M5「Your Song」(エルトン・ジョン)や、M8「Fragile」(スティング)、M13「You've Got a Friend」(キャロル・キング)といった、ポップス名曲のカバーで奏でる、「てらい」のないフレージングが美しい。M2「Mr Magic」は、お馴染みのグローバー・ワシントン・ジュニアの名曲のカバー。この人の系譜が、グルーバーはもちろん、デビッド・サンボーンや、果てはポール・デスモンドまでつながっているのが想像できる、ソフトでリリカルな好演奏だ。オリジナル曲のハイライトは、M1「Beautiful Day」で、ギターの客演はポール・ブラウン。R&Bテイストのコンテンポラリーなサウンド、サックスの響きは都会的で、アダルト・オリエンテッドな佳曲。M4「Back with the Funk」は、ポール・ジャクソン・ジュニアのギターが客演した、ディスコっぽいノリがどこか懐かしいオールド・スクールな曲。M6「Who You Gonna Call」もキャッチーな曲、ギターはレイ・パーカー・ジュニアで、打ち込み系のサウンドに、ギターとサックスのファンキーなヴァイブレーションがかっこいい。マイケル・パウロを「昔の名前」で知っている日本のコアなリスナーも、きっと目が覚めるに違いない好感度高い作品。

2018年6月12日 (火)

Michael Franks 「The Music In My Head」(2018)と、マイケル作品のカバー集

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マイケル・フランクスの新作は、前作「Time Together」(2011 )以来、7年ぶり、通算19枚目のオリジナル作品。73歳になるマイケルだが、その歌声には年齢の衰えは感じられない。デビュー当時からのウィスパー・ボイスは健在で、枯れたと言うより円熟度が増した歌声に魅了される。全て新曲の10曲からなる新作は、いつも通りのスタイルが、安心して浸れるマイケルの音楽世界だ。前作はもちろん、過去作品からの延長にある、ジャズやボサノバを下敷きとしたサウンドのフォーマットは鉄板のごとく変わらない。参加しているミュージシャンも、チャック・ローブ、ジミー・ハスリップ、デヴィッド・スピノザなど、マイケルとは長年に渡る仲間たちが固めていて、殊更にリラックスしたムードを作っている。とりわけて、チャック・ローブが客演した、M1「As Long As We’re Both Together」は、必聴の1曲だ。去年早逝した、ギター奏者チャック・ローブは、長年に渡りマイケルの作品に欠かせない盟友だった。このトラックは、チャックがプロデュースして、ギター演奏をした、最後の曲となってしまった。ボッサのリズムに、流れるようなフレーズを奏でる、チャックのソフトなギターの美しいこと。M5「To Spend The Day With You」は、女性ジャズ・ピアノ奏者レイチェルZが参加した曲。明るいボッサのメロディーは、これも常套句的なマイケル節だけれど、レイチェルZのピアノ・プレイは若々しくて、華やいだムードを演出している。M7「Where You Hid the Truth」は、かたや切ないメロディのマイナー・バラード。こういったナイーヴなメロディも、マイケルの得意とするところで、名曲の「Antonio’s Song」や「Vivaldi’s Song」といった代表曲の路線を踏襲する曲。何年か先の次作を心待ちにして、この珠玉の10曲をじっくりと味わいたい。

Leosidran このマイケルの新作リリースに合わせたように、シンガー・ソング・ライターのレオ・シドランがマイケル・フランクスの作品集を出した。こちらも、なかなかの秀作だ。  その新作「Cool School」(2018)は、マイケル作品11曲を歌ったカバー集。レオ・シドランの父親は、ベン・シドラン。ベンといえば、70年代から活躍するピアニストでシンガー。ジャズに限らず、フュージョン、ロックなどクロスオーバーな音楽性は唯一無二のミュージシャンだ。ベンも、マイケルと同世代で、今でも現役だ。そのベンの息子のレオは、学生時代に、「Depleting Moral Legacy」(1999)でソロ・デビューしたシンガー・ソング・ライター。デビュー作から数えて、この新作が6作品目。レオの歌声は、当然ながら、父親ゆずりの歌声なのだが、父親ほどの「ドス」の強さは無いとは言え、時折聴かせる線の太いところがセクシーなボーカリストだ。レオが歌うマイケルの名曲は、若々しく、やや艶っぽい歌い方が魅力的で、原曲をほぼ忠実にした解釈も、マイケルのファンもきっと好感が持てることに間違いなしのカバー集だ。ハイライトは、M6「The Cool Scool」、マイケル自身とのデュエットによるバージョンだ。デュエットなので、オリジナル・バージョンとは趣きが異なるが、2人がブルージーに歌うところが聴きどころ。名曲の、M5「Antonio’s Song」は、白眉なバージョンで、ブラジルの歌手レオ・ミナクスとのデュエットと、ハーモニカの演奏が心地よく、数多ある同曲のカバーの中でもベスト級のトラックだろう。なお、CD盤には、レオ自身のオリジナル曲「Easy」がボーナス・トラックとして収録されている。この曲は、マイケル・フランクスにオマージュしたような、まるでマイケルの新曲のような趣きの佳作、必聴です。

マイケルの曲をカバーするミュージシャンは多いけれど、アルバム丸ごと、マイケルの曲集といえば、この2枚の過去作品も紹介しておきたい。

Veronicanann 女性ジャズ歌手、ヴェロニカ・ナンの「The Art of Michael Franks」(2010)は、マイケルの曲13曲をカバーしたアルバム。ヴェロニカは、90年代からマイケルのツアーや、アルバムでコーラスを担当している人。マイケルのアルバムでもデュエットしているトラックがあって、「Watching The Snow」(2003)収録の「Island Christmas」や、「Time Together」(2011)収録の「My Heart Said Now」、がそう。彼女のこのマイケル作品集は、長年マイケルをサポートしてきた彼女ならではの作品。同様に、マイケルとの共演が長い、ピアノ奏者チャールズ・ブレンジィッグが協力していて、いわば「マイケル・フランクス」ファミリーの作品の趣き。彼女のボーカルは、正統的なジャズ・ボーカルで、アレンジも同様にジャズのアプローチで解釈したマイケル作品集だ。中でも、M7「Leading Me Back to You」は貴重なトラック。オリジナルは、ピアノ奏者ジョー・サンプルのアルバム「Spellbound」(1989)の収録曲。マイケルとサンプル2人の共作で、マイケルがボーカルを務めた曲。このヴェロニカのアルバムに収録されたトラックは、彼女とマイケル本人のデュエット・バージョン。マイケル・フランクスのファンなら、絶対に必聴のバージョン。ヴェロニカは、マイケルの新作「The Music In My Head」でもバックコーラスを務めている。

Gordonhaskell ゴードン・ハスケルの「The Lady Wants To Know」(2004)は、11曲のマイケル作品集。かつてキンング・クリムゾンのメンバーだったこともある、ゴードン・ハスケルは、シンガー・ソング・ライターとして、70年初めから活躍するミュージシャン。彼も、マイケルと同世代のシンガー。このアルバムは、14年前の作品だが、マイケルの中性的な歌声と違って、ゴードンの男性的でシブーい枯れた歌声が痺れます。プロデュースは、ヘイミッシュ・スチュアート(アヴェレージ・ホワイト・バンドの元メンバー)だから、このブルー・アイド・ソウルなムード作りは彼のお手のもの、というところ。「The Lady Wants to Know」や、「Antonio’s Song」、「B’wana He No Home 」、「Monkey See」といった、マイケルの初期のエバーグリーン曲が並ぶセレクションも嬉しい。

2018年6月 3日 (日)

Vincent Ingala 「Personal Touch」(2018)

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スムーズジャズ界の若きスター、ヴィンセント・インガラの待望の新作。10代でデビュー以来、3枚のソロ作品は、新作ごとに成長著しい内容は、目(いや耳だな)を見張るアーティストだ。前作「Coast to Coast」(2015)の洗練されたサウンドは、もうメジャー級のクオリティだったし、その前後に、グレッグ・カルーカスピーター・ホワイトローマン・ストリート、といったトップ級アーティストからゲスト参加に引っ張りだこなことも大きな評価を受けている証だろう。さて、新作は全10曲、ゲストは無しの、サックス、キーボード、ギター、ドラムス、ボーカルなど、全ての演奏を彼一人で作り上げた作品。2曲のカバーを除く全曲も彼のペンによるものだし、プロデュースはもちろん、ミックスまで手がけて、サックス奏者に止まらないマルチ・アーティストの力量を発揮した秀作。M1「Personal Touch」は、キャッチーなポップ・メロディーと、艶っぽさが出てきたサックスのフレージングが白眉なベスト・チューン。M2「My Kind of Day」も、負けず劣らずのキャッチーなポップ・チューン。この曲での、ソプラノ・サックスもリリカルなフレージングを聴かせてくれる。M5「I Think I'm Falling in Love (With You)」では、さりげなくボーカルも披露している。M7「Feng Sway」は、彼のギター演奏が主役のトラック。ニルスを思わせるギター・テクに注目。M9「Snap, Crackle, Pop」のホーン・セクションをバックに、サックスがシャッフルするグルーヴはかっこいい。M4「Dream Girl」は、チル・ムードな曲で、彼のピアノ演奏が主役のトラック。ピアノは、ジョナサン・フリッツェンという感じなのがご愛嬌かな。カバー曲は、M3「Love Zone」がビリー・オーシャン、M6「If You Were Here Tonight」はアレクサンダー・オニール、といういずれも80年代のブラコン・ヒット曲を取り上げている。M8「Can't Stop the Rain From Falling」はチル・ムードの曲で、ポール・ハードキャッスルのような感じで、インガラの今までの路線からすると、ちょっと異色。他の曲でも、シンセやチル・ムードのサウンド・カラーに、ポール・ハードキャッスル「風」な趣が感じられる。ワンマン・バンドで作り上げたということで、ハードキャッスルが「お手本」なのかな。

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