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2018年6月12日 (火)

Michael Franks 「The Music In My Head」(2018)と、マイケル作品のカバー集

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マイケル・フランクスの新作は、前作「Time Together」(2011 )以来、7年ぶり、通算19枚目のオリジナル作品。73歳になるマイケルだが、その歌声には年齢の衰えは感じられない。デビュー当時からのウィスパー・ボイスは健在で、枯れたと言うより円熟度が増した歌声に魅了される。全て新曲の10曲からなる新作は、いつも通りのスタイルが、安心して浸れるマイケルの音楽世界だ。前作はもちろん、過去作品からの延長にある、ジャズやボサノバを下敷きとしたサウンドのフォーマットは鉄板のごとく変わらない。参加しているミュージシャンも、チャック・ローブ、ジミー・ハスリップ、デヴィッド・スピノザなど、マイケルとは長年に渡る仲間たちが固めていて、殊更にリラックスしたムードを作っている。とりわけて、チャック・ローブが客演した、M1「As Long As We’re Both Together」は、必聴の1曲だ。去年早逝した、ギター奏者チャック・ローブは、長年に渡りマイケルの作品に欠かせない盟友だった。このトラックは、チャックがプロデュースして、ギター演奏をした、最後の曲となってしまった。ボッサのリズムに、流れるようなフレーズを奏でる、チャックのソフトなギターの美しいこと。M5「To Spend The Day With You」は、女性ジャズ・ピアノ奏者レイチェルZが参加した曲。明るいボッサのメロディーは、これも常套句的なマイケル節だけれど、レイチェルZのピアノ・プレイは若々しくて、華やいだムードを演出している。M7「Where You Hid the Truth」は、かたや切ないメロディのマイナー・バラード。こういったナイーヴなメロディも、マイケルの得意とするところで、名曲の「Antonio’s Song」や「Vivaldi’s Song」といった代表曲の路線を踏襲する曲。何年か先の次作を心待ちにして、この珠玉の10曲をじっくりと味わいたい。

Leosidran このマイケルの新作リリースに合わせたように、シンガー・ソング・ライターのレオ・シドランがマイケル・フランクスの作品集を出した。こちらも、なかなかの秀作だ。  その新作「Cool School」(2018)は、マイケル作品11曲を歌ったカバー集。レオ・シドランの父親は、ベン・シドラン。ベンといえば、70年代から活躍するピアニストでシンガー。ジャズに限らず、フュージョン、ロックなどクロスオーバーな音楽性は唯一無二のミュージシャンだ。ベンも、マイケルと同世代で、今でも現役だ。そのベンの息子のレオは、学生時代に、「Depleting Moral Legacy」(1999)でソロ・デビューしたシンガー・ソング・ライター。デビュー作から数えて、この新作が6作品目。レオの歌声は、当然ながら、父親ゆずりの歌声なのだが、父親ほどの「ドス」の強さは無いとは言え、時折聴かせる線の太いところがセクシーなボーカリストだ。レオが歌うマイケルの名曲は、若々しく、やや艶っぽい歌い方が魅力的で、原曲をほぼ忠実にした解釈も、マイケルのファンもきっと好感が持てることに間違いなしのカバー集だ。ハイライトは、M6「The Cool Scool」、マイケル自身とのデュエットによるバージョンだ。デュエットなので、オリジナル・バージョンとは趣きが異なるが、2人がブルージーに歌うところが聴きどころ。名曲の、M5「Antonio’s Song」は、白眉なバージョンで、ブラジルの歌手レオ・ミナクスとのデュエットと、ハーモニカの演奏が心地よく、数多ある同曲のカバーの中でもベスト級のトラックだろう。なお、CD盤には、レオ自身のオリジナル曲「Easy」がボーナス・トラックとして収録されている。この曲は、マイケル・フランクスにオマージュしたような、まるでマイケルの新曲のような趣きの佳作、必聴です。

マイケルの曲をカバーするミュージシャンは多いけれど、アルバム丸ごと、マイケルの曲集といえば、この2枚の過去作品も紹介しておきたい。

Veronicanann 女性ジャズ歌手、ヴェロニカ・ナンの「The Art of Michael Franks」(2010)は、マイケルの曲13曲をカバーしたアルバム。ヴェロニカは、90年代からマイケルのツアーや、アルバムでコーラスを担当している人。マイケルのアルバムでもデュエットしているトラックがあって、「Watching The Snow」(2003)収録の「Island Christmas」や、「Time Together」(2011)収録の「My Heart Said Now」、がそう。彼女のこのマイケル作品集は、長年マイケルをサポートしてきた彼女ならではの作品。同様に、マイケルとの共演が長い、ピアノ奏者チャールズ・ブレンジィッグが協力していて、いわば「マイケル・フランクス」ファミリーの作品の趣き。彼女のボーカルは、正統的なジャズ・ボーカルで、アレンジも同様にジャズのアプローチで解釈したマイケル作品集だ。中でも、M7「Leading Me Back to You」は貴重なトラック。オリジナルは、ピアノ奏者ジョー・サンプルのアルバム「Spellbound」(1989)の収録曲。マイケルとサンプル2人の共作で、マイケルがボーカルを務めた曲。このヴェロニカのアルバムに収録されたトラックは、彼女とマイケル本人のデュエット・バージョン。マイケル・フランクスのファンなら、絶対に必聴のバージョン。ヴェロニカは、マイケルの新作「The Music In My Head」でもバックコーラスを務めている。

Gordonhaskell ゴードン・ハスケルの「The Lady Wants To Know」(2004)は、11曲のマイケル作品集。かつてキンング・クリムゾンのメンバーだったこともある、ゴードン・ハスケルは、シンガー・ソング・ライターとして、70年初めから活躍するミュージシャン。彼も、マイケルと同世代のシンガー。このアルバムは、14年前の作品だが、マイケルの中性的な歌声と違って、ゴードンの男性的でシブーい枯れた歌声が痺れます。プロデュースは、ヘイミッシュ・スチュアート(アヴェレージ・ホワイト・バンドの元メンバー)だから、このブルー・アイド・ソウルなムード作りは彼のお手のもの、というところ。「The Lady Wants to Know」や、「Antonio’s Song」、「B’wana He No Home 」、「Monkey See」といった、マイケルの初期のエバーグリーン曲が並ぶセレクションも嬉しい。

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