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2018年10月の3件の記事

2018年10月31日 (水)

Skinny Hightower 「Retrospect」(2018)

Hightower retrospectスキニー・ハイタワーは、キーボード奏者で、ドラムやベースも操る、気鋭のアーティストだ。デビュー・アルバム「Cloud Nine」(2016)の後、メジャー・レーベルのトリッピン・リズム・レコードと契約して、「Emotions」(2017)をリリース。そして、精力的に早くもこの新作「Retrospect」をリリース。全15曲、1時間超えのボリュームに、彼の力量が前作以上に発揮された力作だ。縦横無尽な彼のピアノ演奏が発揮された楽曲の数々が並ぶ。彼のピアノは、前作に比べて、よりパーカッシブで、エネルギッシュに響き渡り、圧倒される演奏。数曲のゲストに、サックス奏者コンスタンティン・クラストルニ(Kool & Klean)や、ジャズ・ドラマーのネイト・スミスらが参加しているが、ハイタワーがキーボードに関わらず、フルートやベースなど、多くの楽器演奏とアレンジをこなしている。

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2018年10月24日 (水)

Yellowjackets 「Raising Our Voice」(2018)

Yjackets raisingourvoiceラッセル・フェランテ(p)、ボブ・ミンツアー(sax)、ウィリアム・ケネディ(dr)、デーン・アンダーソン(b)、の4人による、イエロージャケッツの新作は、ブラジル出身のボーカリスト、ルシアーナ・ソウザをゲストに迎えた意欲作だ。ジャケットの写真は、ソウザがイエロージャケッツの新メンバーになったかのような扱いなので、ちょっとびっくり。実際は、ソウザが参加したのは13曲中7曲で、残りの6曲は、バンドのインスト演奏曲なのだが、彼女の参加でアルバム全体に新鮮なムードが満ちた内容だ。
イエロージャケッツは、過去作品でも、マイケル・フランクスボビー・コードウェル、テイク・シックス、ボビー・マクファーリンといったボーカリストをゲストに迎えたことがあるし、1998年のアルバム「Club Nocturne」は、カート・エリング、ブレンダ・ラッセル、ジョナサン・バトラー、ジノ・ヴェネリ、といった複数のボーカリストをフューチャーした作品だった。今作のソウザのように、アルバムの大半を1人のボーカリストが務めるというのは画期的。ソウザとは、過去に共演していたのかと思いきや、今回が初めてのようだ。接点は、ラッセル・フェラントと、ソウザの旦那さんでプロデューサーのラリー・クラインらしい。ラリー・クラインは、以前はジョニ・ミッチェルのプロデューサーであり、パートナーであった人。フェラントも、ジョニ・ミッチェルと共演していたということもあり、2人の旧知の縁から、ソウザの参加に至ったようだ。
ソウザが参加した7曲の内、3曲はジャケッツの過去曲の再演。「Man Facing North」と「Solitude」は、1992年のアルバム「Like A River」収録曲。「Timeline」は、2011年アルバムのタイトル曲。彼女の、透明感のある声質、器楽的でテクニカルなスキャットが加わり、新鮮な再演となり、このコラボの成功を示している。ソウザが参加した新曲「Mutuality」(ラッセル・フェランテ作曲)は、ベスト・トラックの1曲。バロックのような室内楽的でロマンチックな曲想で、フェランテのピアノ、ミンツアーのソプラノ・サックス、ソウザのスキャットが交差するインタープレイが美しい。CDのライナーノーツによると、タイトルはマーティン・ルーサー・キング牧師のスピーチから得たという。その言葉とは、「All men are caught in an inescapable network of mutuality」、つまりは「すべての人は相互依存から逃れる事はできない」ということ。今の危惧すべき世界の動静には、曲作りで抵抗の声を上げることが必要ではないのか、というメッセージを込めたという。アルバムのタイトルにこそ、同じメッセージが読み取れる。
4人による、イエロージャケッツとしてのインスト演奏も注目だ。新ベーシストのデーン・アンダーソンとしては、前作「Cohearence」(2016)から2作目の作品だが、彼のペンによる曲を初めて3曲提供している。その内の1曲「Brotherly」は4人のアンサンブルがスリリングなコンテンポラリー・ジャズ曲。アンダーソンの重厚なベース・プレイが光っていて、かつてのジミー・ハスリップの抜けた穴を埋める才能だと期待したい。ボブ・ミンツアー作曲の「In Search Of」と「Strange Time」は、いずれもストレート・アヘッドなジャズ曲。ジャケッツが、ジャズ・バンドとして、変わらずトップ級である演奏を堪能できる。「Strange Time」は、変拍子のような曲で、複雑系のリズムで、スウイングするアンサンブルは、これぞジャケッツならではという演奏。
ちなみに、ほぼ同じくしてリリースされた、ルシアーナ・ソウザの新作アルバム「The Book of Longing」も、素晴らしい作品。ギターとベースのみをバックに歌った作品で、プロデュースはもちろんご主人のラリー・クライン。レナード・コーエン作品にインスパイアされて作った曲が中心だという。言葉をかみしめるような彼女の歌唱と、バックの演奏に引き込まれてしまう。

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2018年10月12日 (金)

Althea Rene 「Unstoppable」(2017)

Arene unstoppableフルート奏者アルティア・ルネは、出身地のデトロイトで、群保安官を10年以上務めたことがあるという異色の経歴の持ち主。とは言え、保安官を志していた訳では無いはず。父親は、モータウンのセッション・ミュージシャンで、サックス奏者だった。その父親の影響があり、フルート奏者を目指したという。2000年のデビュー作品「Flute Talk」以来、5枚の作品をリリースして、今や、スムーズジャズ界の女性フルート奏者としては、第一人者だ。6枚目となるこの新作は、プロデュースや作曲を、ルネ自身と、何人かの注目アーティストとコラボして作り上げた秀作。ルー・レイン、 マーカス・ハンター、ターハン・ヴァンダイク、ニコラス・コール、ダーリック・ハーヴィンといった、いずれも新進気鋭のアーティストの参加が、この作品の要になっている。リン・ラウントゥリー、キエリ・ミヌッチ(スペシャルEFX)、ティム・ボウマングレッグ・マニング、などメジャー級のアーティストのゲスト参加も豪華だが、なんといっても、ルネのフルートが、まるでシンガーのような、「歌唱力」と言えるメロディアスなフレージングを繰り出すのが最大の魅力。オリジナル曲の「Unstoppable」や、「Gypsy Soul」、「Now and Forever」など、R&Bムードのコンテンポラリー・ソングは、いずれも佳曲揃い。「What Cha Gonna Do With My Loving」(ステファニー・ミルズ)、「Rain」(シスターズ・ウィズ・ヴォイシス、原曲はジャコ・パストリアス)といったカバー曲のセンスも唸らせる。どの曲も、ライブ的なグルーヴが伝わる演奏陣のアンサンブルが、素晴らしい。特に、「Another Star」(スティーヴィー・ワンダー)の7分超のカバー演奏は、一聴の価値ある、ベスト・トラックだ。今回のレコーディングのオール・スター的メンバー(ルネのフルート、ヴァンダイクのピアノ、ハンターのドラムス、ジェームス・カーターのサックス、など)の演奏は、アドリブの応酬も情熱的で、目の覚めるようなグルーヴには圧倒されること、半端じゃ無い。

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