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2018年10月24日 (水)

Yellowjackets 「Raising Our Voice」(2018)

Yjackets raisingourvoiceラッセル・フェランテ(p)、ボブ・ミンツアー(sax)、ウィリアム・ケネディ(dr)、デーン・アンダーソン(b)、の4人による、イエロージャケッツの新作は、ブラジル出身のボーカリスト、ルシアーナ・ソウザをゲストに迎えた意欲作だ。ジャケットの写真は、ソウザがイエロージャケッツの新メンバーになったかのような扱いなので、ちょっとびっくり。実際は、ソウザが参加したのは13曲中7曲で、残りの6曲は、バンドのインスト演奏曲なのだが、彼女の参加でアルバム全体に新鮮なムードが満ちた内容だ。
イエロージャケッツは、過去作品でも、マイケル・フランクスボビー・コードウェル、テイク・シックス、ボビー・マクファーリンといったボーカリストをゲストに迎えたことがあるし、1998年のアルバム「Club Nocturne」は、カート・エリング、ブレンダ・ラッセル、ジョナサン・バトラー、ジノ・ヴェネリ、といった複数のボーカリストをフューチャーした作品だった。今作のソウザのように、アルバムの大半を1人のボーカリストが務めるというのは画期的。ソウザとは、過去に共演していたのかと思いきや、今回が初めてのようだ。接点は、ラッセル・フェラントと、ソウザの旦那さんでプロデューサーのラリー・クラインらしい。ラリー・クラインは、以前はジョニ・ミッチェルのプロデューサーであり、パートナーであった人。フェラントも、ジョニ・ミッチェルと共演していたということもあり、2人の旧知の縁から、ソウザの参加に至ったようだ。
ソウザが参加した7曲の内、3曲はジャケッツの過去曲の再演。「Man Facing North」と「Solitude」は、1992年のアルバム「Like A River」収録曲。「Timeline」は、2011年アルバムのタイトル曲。彼女の、透明感のある声質、器楽的でテクニカルなスキャットが加わり、新鮮な再演となり、このコラボの成功を示している。ソウザが参加した新曲「Mutuality」(ラッセル・フェランテ作曲)は、ベスト・トラックの1曲。バロックのような室内楽的でロマンチックな曲想で、フェランテのピアノ、ミンツアーのソプラノ・サックス、ソウザのスキャットが交差するインタープレイが美しい。CDのライナーノーツによると、タイトルはマーティン・ルーサー・キング牧師のスピーチから得たという。その言葉とは、「All men are caught in an inescapable network of mutuality」、つまりは「すべての人は相互依存から逃れる事はできない」ということ。今の危惧すべき世界の動静には、曲作りで抵抗の声を上げることが必要ではないのか、というメッセージを込めたという。アルバムのタイトルにこそ、同じメッセージが読み取れる。
4人による、イエロージャケッツとしてのインスト演奏も注目だ。新ベーシストのデーン・アンダーソンとしては、前作「Cohearence」(2016)から2作目の作品だが、彼のペンによる曲を初めて3曲提供している。その内の1曲「Brotherly」は4人のアンサンブルがスリリングなコンテンポラリー・ジャズ曲。アンダーソンの重厚なベース・プレイが光っていて、かつてのジミー・ハスリップの抜けた穴を埋める才能だと期待したい。ボブ・ミンツアー作曲の「In Search Of」と「Strange Time」は、いずれもストレート・アヘッドなジャズ曲。ジャケッツが、ジャズ・バンドとして、変わらずトップ級である演奏を堪能できる。「Strange Time」は、変拍子のような曲で、複雑系のリズムで、スウイングするアンサンブルは、これぞジャケッツならではという演奏。
ちなみに、ほぼ同じくしてリリースされた、ルシアーナ・ソウザの新作アルバム「The Book of Longing」も、素晴らしい作品。ギターとベースのみをバックに歌った作品で、プロデュースはもちろんご主人のラリー・クライン。レナード・コーエン作品にインスパイアされて作った曲が中心だという。言葉をかみしめるような彼女の歌唱と、バックの演奏に引き込まれてしまう。

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