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2018年12月16日 (日)

ポール・サイモンの評伝 ③:『Homeward Bound: The Life of Paul Simon』by Peter Ames Carlin(2016)

Psimon homewardboundポール・サイモンの評伝を読んでみる「シリーズ」です。(勝手にやってるのですが)

今年出たロバート・ヒルバーン著の『Paul Simon:The Life』に先立つこと、2016年に出たこの本は、ピーター・エイムズ・カーリンという人の書いた評伝です。米国音楽雑誌「Rolling Stone」誌が毎年選んでいる、「ベスト・ミュージック・ブックス」の2016年度の1冊にも選ばれています。著者のカーリン氏は、米国の音楽ジャーナリストで、他の著作には、ブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカートニー、ブライアン・ウィルソンについて著した各評伝があります。

この本は、ポール本人は認めていない、つまり「非公認」の評伝です。ポール自身へのインタビューも認められず、ポール・サイドからは出版に対する圧力もあったそうです。それでも、膨大な過去のインタビューや記事を掘り起こし、関係者への取材を通して、ポールの足跡を驚くほど詳細に調べ上げた力作になっています。「非公認」とはいえ、面白さは一級の評伝です。

周知のエピソードの数々、トム&ジェリーから、サイモン&ガーファンクルとしての時代、ソロのシンガー&ソングライターとして数々の名作を生み出す足跡は、他の評伝と同様に、漏らすことなく語られます。そういった、大河のようなポールの半生物語は、知り尽された筋書きとはいえ、この著者による筆致は、映像的で、詳細な描写で、ぐいぐいと引っ張られて読了しました。まるで、ポール・サイモンや、アート・ガーファンクルが主人公になったドラマを見ているようで、感動的なストーリー・テリングが秀逸です。

「美談」とはいえないエピソードもいくつか出てくるので、そのあたりが、ポール・サイモンにとっては「知られたくない」ことなのでしょうか。例えば、名曲「スカボローフェア」の話。その曲は、イギリスの古いトラッド曲が原型です。その曲をフィンガー・ピッキングのフォーク・スタイルで教えたのは、イギリスのフォーク・ギタリスト、マーティン・ケイシーという人です。S&Gのバージョンでの作者クレジットは、サイモンとガーファンクルの2人となっていて、ケイシーのクレジットはありません。ケイシーは、長年に渡り、不快感を飲み込んでいたようですが、2000年にロンドンで、2人は共演して「スカボローフェア」を唄っています。

名作アルバム「Graceland」(1986)には、「ラ・バンバ」のヒットで有名な、メキシコ系バンドの「ロス・ロボス」が共演した曲「All Around the World or The Myth of Fingerprints」が収録されていて、作者はポール・サイモンとなっています。この評伝によると、ロス・ロボスの二日間によるセッションを、ポールが「切り貼り」して作り上げた曲なのだとか。ロス・ロボスのメンバーは、自分たちがクレジットされていないことを抗議したが、レコード会社のワーナー・ブラザースからは押さえ込まれ、ポール側からは無視されたのだそうです。という具合に、他にもたくさんのトリビア的エピソードが出てきて、興味が尽きません。

いつの日か、ポールの足跡が「映画」になることもあるでしょう。ポール・サイモンと、アート・ガーファンクル、2人のキャラも映画向きではありませんか。その時は、誰が演じるのかが、最大の関心ですね。

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