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2019年2月24日 (日)

Philippe Saisse Trio 「On The Level !」(2017)

Onthelevelフィリップ・セスは、80年代後半から活躍する、フランス出身のキーボード奏者。奏者に限らず、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして、ジャズだけでなく、ポップスや映像作品など、活動は広範囲に及ぶ。多くのアーティストと共演も多いが、ソロ名義の作品も、デビュー作「Valerian」(1988)から7作品を数える。近年のソロ作品、「At World's Edge」(2009年)は、2011年グラミー賞コンテンポラリー・ジャズ・アルバム部門のノミネートに選ばれている。その後、ピアノ・ソロによるクリスマス企画作品「Dorian's First Christmas」(2012)を挟んで、およそ7年ぶりとなるオリジナル新作がこの作品。トリオ名義とはいえ、セスが、カバー1曲を除く全9曲の作曲(共作も)、編曲、プロデュースを手がけた、彼のオリジナリティが発揮された作品。

セス率いる、スクータ・ワーマー(ドラムス)、デヴィッド・フィンク(ベース)から成るトリオは、かつて、2006年に「The Body and Soul Sessions」という作品があり、今回の作品は、同メンバーで10年ぶりの新作ということになる。ちなみに、同3人によるトリオは、「アコースティック・トリオ」の名義で、「My Favorite Songs: Contemporary Mood」(2000)、「My Favorite Songs: Classic Mood」(2001)と、女性ボーカリストのケリー・サエが加わった「Ready To Go」(2003)という、日本でリリースされた作品もある。

今回の作品、3人に加えて、ガンビ・オーティス(パーカッション)が加わった、「4人」のトリオ。オーティスは、ギター奏者アル・ディ・メオラのバンドの一員。他にも、ギター奏者マーク・アントワ、4人のボーカリスト、ナッシュビルのセッション・バンドで、ケニー・ロギンスやマイケル・マクドナルド他多くのアーティストと共演している、ザ・スモーキング・セクションなど、多彩なゲストが加わっている。トリオの演奏はエネルギッシュで、ブラスやシンセが交差するサウンドは終始ダイナミックだ。

1曲目「On The Levell」は、クリシェ進行のベース・リフがキャッチーで、生ピアノのフレージンングもファンキーなハイライト曲。スクラッチ・ノイズや、ヒップなボイス・エフェクトが、アシッドなムードを漂わせて、セスならではの多彩なアレンジに唸らせられる佳曲。「And So But Then」は、マーク・アントワのガット・ギターが主役の地中海的なムードが魅力的な曲。トリオの緻密なアンサンブルにも引き込まれてしまう。「Lucky Luke」は、ファンク・ジャズのような曲想で、セスの生ピアノのエネルギッシュな疾走感がたまらない。バックを盛り立てるパワフルなホーン・セクションが、ジム・エイカーズ率いるザ・スモーキング・セクション。「Blue Rondo」は、跳ねるようなエレピがキャッチーで、ブルージーなビート・ナンバー。ファンキーなピアノのフレージングにしろ、生ベースの重厚なソロも印象的。「Maienbad」は、スペイン的なメランコリー・メロディーが美しい曲。アントワのガット・ギターが、ここでも情緒たっぷりに引きつける。

4曲のボーカル曲も佳曲ぞろい。「She Takes My Breath Aaway」は、シンガー/俳優のレット・ジョージが歌う、ポップな曲。「Custe O Que Custar」は、ブラジル出身の女性ボーカリスト、ヴァネッサ・ファラベラがポルトガル語で歌う、キャッチーなMPB(ブラジルのポップス)。「Star of My Life」のボーカルは、かつて共演作品を作ったケリー・サエ。サエは、インコグニートや、オーストリアのファンク・バンド、カウント・ベーシックのボーカルを務めた人。唯一のカバー曲は、R&Bの名曲「Sunny」で、ソウル歌手ラリー・ブラッグスのボーカル。ブラッグスは、タワー・オブ・ザ・パワーを経て、今はテンプテーションズのメンバー。

ミックスの音像も素晴らしい。トリオのピアノやベース、生ギターはアコースティックだが、パワフルなブラス・セクションにも埋もれずに際立っている。アルバムからのシングル、「On The Level」、「Blue Rondo」など4曲が、連続して上位にチャート・イン(ビルボードのスムーズ・ジャズ・ソングス)している。傑作です。



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