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2019年3月17日 (日)

Nelson Rangell 「By Light」(2019)

By lightネルソン・ランジェルは、80年代後半から活躍するサックス奏者。多種のサックスに加えて、フルートやピッコロも多才にこなす。キャリアは30年におよび、90年代のGRPレコードからの作品(7つのソロ・アルバムや客演)で、コンテンポラリー・ジャズのサックス奏者として実力を知らしめた。

ランジェルは、最近のラジオ・インタビューでこのアルバムを「ポップ・ジャズ」と呼んでいた。ブレッカー・ブラザース、デイヴィッド・サンボーン、ザ・クルセイダーズといった、70年代から80年代に活躍したクロスオーバー/フュージョンのスター達が彼のヒーローだったという。ジャズが、ポップスのフォーマットを取り入れたインスト曲が人気を博した時代。ランジェルがGRPで活躍した90年代も、トム・スコット、ザ・リッピントンズ、ボブ・ジェイムス、リー・リトナー、デイヴ・グルーシンといったアーティストが、さらにポップでキャッチーな曲を、何よりグルーヴのある演奏で進化させた。そんな系譜を「ポップ・ジャズ」と呼んでいるのだろう。さて、この新作は、ランジェルのソロ作品として18枚目の会心のアルバム。

「Tidal Wave」は、ビート全開のリズムに、サックスのテンションが爽快に突き抜けるハイライト・トラック。このグルーヴのうねりこそ、ポップ・ジャズの醍醐味といえる。「Old School」も、ファンキーなリズムにはまるし、ブルージーなサックス・ソロにもググッと惹きつけられる。「From The Start」は、スピード感のある都会的な曲想が心地いい。ピアノ(ザ・リッピングトンズにも在籍したことのある、デヴィッド・コチャンスキー)の上品なフレージングにうっとりする。「Letting Go」は、生ギター(ブライアン・モンロニー)のメロウなバッキングに、サックスが艶っぽく響くバラード。タイトル曲「By Light」では、フルートを吹くランジェル。小刻みなフレーズで、縦横無尽に吹きまくるフルートに耳を奪われる。ピアノ(アレックス・ネクラソフ)の華麗なソロも聴きどころ。「Ali's Moon」もフルートだが、こちらはロング・トーンを使い、おおらかに奏でる演奏がいい。「A Dream I Had」は、情緒的なフレーズを確かめるように吹くサックスと、少しマイナーなメロディーがじわっと心にしみる。

プロデュースは、ランジェルとアレックス・ネクラソフ(キーボード)の2人。収録オリジナル曲のほとんどが、2人の共作。ネクラソフは、近年のランジェルの作品では常連のパートナーで、この人がサウンド作りのキー・マンだ。ちなみに、ネクラソフはロシア出身の音楽家で、サックス奏者でもある。サックス奏者としてのジャズ演奏作品も出している。

まさに「ポップ・ジャズ」を堪能できる全10曲(カバーは1曲、マイケル・ジャクソンの「Human Nature」)。今年のベスト級の作品だと思う。


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コメント

いつも詳しい記事を読まさせていただいています。
ネルソン・ランジェル、以前はよく聞いていたのですが、久々に名前を見ました。
早速オフシャルサイトで試聴してみましたが、フルート、いいですね。

読んで頂きありがとうございます。
ランジェルは、フルートにしてもサックスにしても、サウンドが爽快でいいですよね。

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