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2019年3月31日 (日)

ジョージ・ベンソンの原点を探る伝記:『Benson: The Autobiography』by George Benson (2014)

Benson ギター奏者ジョージ・ベンソンの自伝。幼少の頃からの音楽キャリアを振り返る回顧録。共著は、音楽ジャーナリストのアラン・ゴールドシャーという人。ゴールドシャーの著作には、ゾンビーズ、アート・ブレイキー、ニルバーナといったミュージシャンをテーマにした評伝やフィクションがある。また、プロのベース奏者でもあるという。本書は、ストレートな物言いや、肩の張らない表現、リズム感のある文体で構成されていて、まるでベンソン自身の語りを聞いているような、臨場感のある伝記だ。

ベンソンがギター奏者として、70年代にCTIレーベルの諸作品で脚光を浴び、「Breezin'」(1976)の大ヒット、シンガーとしても大スターに上り詰めるのは、周知された成功物語だ。ヒット作品を連発する頃のエピソードはもちろん興味深いが、面白いのはスターになる前の若きベンソンの話。10代の頃や、新米ギター奏者としての体験、有名ミュージシャンとの交流談がとりわけ引き込まれる。

フィラデルフィアの母子家庭で育ったベンソン。7歳から新聞売りのすがらにナイト・クラブを回り、歌って小遣い稼ぎをする少年だった。リトル・ジョージィー・ベンソンと名乗り、10歳で初めてのレコードを出す。15歳で、従兄弟と5人組ドゥー・ワップ・グループ(The Altairs)を組み、地元で人気者に。そのグループでギターを弾くことになるのが、ギタリストとしての原点。高価なギターを買えず、継父が手作りでエレキ・ギターを作ってくれたのだという。その後、19歳で、オルガン奏者ブラザー・ジャック・マクダフのバンドに入り、プロのギター奏者のキャリアをスタート。60年代はファンク・ジャズ、70年代はフュージョンの時代にギター奏者として、80年代には歌手として、大成功を収める。

若きベンソンのヒーローは、ベニーグッドマン楽団のチャーリー・クリスチャンと、ウェス・モンゴメリー。モンゴメリーは、実際のプレイを目の当たりにして驚愕したことや、会話を交わした経験を披露している。技術的な影響を受けたギター奏者は、ビリー・バトラー。バトラーは、オルガン奏者ビル・ドゲットのギター奏者で、60年代を中心に活躍した、ファンク・ジャズのギター奏者。バトラーを聴いてみれば、なるほど、ベンソンの原点が発見できる。

ベンソンは、マイルス・デイヴィスの「Miles In The Sky」(1968)のセッションに参加している。その時のエピソードも興味深い。1曲(「Paraphernalia」)しか参加していないが、「凍りついた」セッションの中で「何を弾いているのか分からなかった」と思い出を語る。マイルスからは、バンドに入るように誘われたが実現に至らず。マネージャーや周りからは、「いつかマイルスよりビッグになるから」と反対された。代わりにマイルスが採用したのは、ジョン・マクラグリンだった。ベンソンが、マイルス・バンドに入っていたら、あの「Breezin’」は聴けなかったかも?

モハメッド・アリから、突然の電話を受けたエピソードも面白い。ベンソンの代表曲「The Greatest Love of All(愛は偉大なもの)」は、アリの自伝映画「The Greatest」(1977)のテーマ曲。その曲がヒット・チャートをにぎわした頃、ある真夜中に、会ったことの無いアリが電話をかけて来た。アリから「オレのことを考えて歌ったのか」と聞かれて、「貴方のように偉大な男のつもりで歌った」と答えたベンソン。「それだけ知りたかった」と切れたのだという。今や、レジェンドのベンソンが、マイルスやアリの前で動転する様が可笑しい。

ベンソンの継父という人は、ジャズ・ギタリストで、後年、ベンソンが歌手として成功した折にも、アルバムには必ず1曲ジャズ・ナンバーを入れろと言っていた。10代のリトル・ベンソンの十八番は、ジャズ・シンガー、エディ・ジェファーソンの「I Got the Blues」(1952)だった。ベンソンは、アルバム「Give Me the Night」(1980)で、継父のアドバイスに従い、ジェファーソンの持ち歌「Moody's Mood for Love」を歌っている(パティ・オースティンとデュエット)。ジェファーソンは、ジャズの楽器演奏に歌詞を付けて歌う、いわゆる「ヴォーカリーズ」の発明者といわれる人。歌手ベンソンのスキャットや器楽的な歌い方は、ジェファーソンが原点なのだ。

偉大なジョージ・ベンソンの「原点」を探る面白さに引き込まれる伝記だ。

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