« あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2) | トップページ | ノーマン・ブラウン作品の復習 »

2019年5月15日 (水)

Norman Brown 「The Highest Act of Love」(2019)

Actoflove

ノーマン・ブラウンは前作「Let It Go」(2017)で、「私たちは誰もが精神的な存在である。私のこのCDは地上の創造物としての精神的存在者の一つのチャプターを表現したものだ。生きる経験こそが精神的存在の本質的な営む能力を促す。それは平和、喜び、幸福、調和、そう愛である。」という趣旨のメッセージを書いている。

そしてこの新作ではシンボルとして、古代エジプト神話で正義の女神とされる「マアト(Maat)」を掲げている。マアトの正義(The Law Maat)とは「神の望みは最高位の愛の行為(The highest act of love)であり、それは他者への愛を満たすことで実現する。神の愛こそが世界を守れるのだ。」とライナーに説明を書いている。

マアトとは、創造神である太陽神ラーの娘とされる。ジャケットの右下に描かれた、頭上に羽根を掲げた女性神がマアトである。ブラウンは、前作から今作品でも、インスピレーショナルな、つまり啓示的なテーマを掲げている。彼のメッセージは宗教的で、私を含めて理解には至らないリスナーも多いだろう。とはいえ彼のメッセージのわずかでも知った上で、彼の音楽を深く味わいたい。

さて、この新作は1曲のカバー曲と共作を含めた11曲のオリジナル曲集。モチベーション喚起的な曲タイトルを見れば、込められたメッセージが少し理解できるだろう。ほとんどの曲がスロウもしくはミッド・テンポで、啓示的なムードを演出している。音楽的には、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック的なアプローチといえるかな。多彩なゲストを迎えた前作と比べると、今回はブラウンのギターが主役で淡々と演奏する印象の作品だ。テーマを深読みせずとも、純粋にブラウンの上質な音楽を充分に楽しめるのは言うまでもない。

1曲目「Inside the Garden of Peace and Love」は、ポール・ブラウンとの久しぶりの共演。最近のポール・ブラウンが傾倒するブルースなムードで、両者のデュオによるブルージーな演奏は必聴。「My Window to Heaven」も、2人の共作。ポール・ブラウンは演奏には加わらずプロデュース。こちらはアーバンムードのキャッチーな佳曲。この2曲の共演は、かつてのコラボを思い出させてスムーズジャズ・ファンにとっては嬉しい限り。

2曲目「King is Here」は、キャッチーなメロディーのポップな曲。メロウなオクターヴ演奏の音色はリピートして聴きたくなる。タイトル曲「The Highest Act of Love」はスロウな曲調で、イントロのソロ演奏から、テクを駆使する圧巻の演奏を聴かせてくれる。派手な曲では無いけれど実に味わい深い名演だ。

Peace of Mind」は、キム・ウォーターズとの共作。ウォーターズはサックスを吹いていないが、プロデュースとギター以外のサウンドを担当している。ミッド・テンポのポップな曲調はウォーターズの影響だろう。この2人のコラボをもっと聴きたい。「Fountains Of Spiritual Water」は、アコースティック・ギターによる演奏曲。ニュー・エイジ風の編曲はブラウンにしてはユニーク。たまに披露してくれるアコギの演奏にも注目。

カバー曲「Free」はゴスペル/ソウル・シンガー、デニース・ウィリアムスの名曲。ウィリアム本人がゲストで歌っている。オリジナルは76年のヒット曲だから、40年を経て本人が歌うセルフ・カバーということになろうか。ウィリアムズのボーカルを盛り立てる、ブラウンのスロウで流れるようなパッセージが美しい。「Words of Wisdom」もボーカル曲で、楽曲はブラウンのオリジナル。シンガーは女性ゴスペル・シンガーのベイビー・リー。ブラウン本人もコーラスに加わった上質なアダルト・コンテンポラリーなソウル・バラードで、ブラウンの作曲センスの素晴らしさを改めて認識できる佳曲だ。

ブラウンの作品では常連のBWBのメンバー、カーク・ウェイラムとリック・ブラウンの参加は今回見当たらない。BWBのユニットによる演奏曲が無いのはちょっと残念ではある。

« あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2) | トップページ | ノーマン・ブラウン作品の復習 »

ギター」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2) | トップページ | ノーマン・ブラウン作品の復習 »

About This Blog

  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだ新譜を中心に紹介します。
    番外編は、ミュージック本の紹介など。

    Since 2011 by UGASAI