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2019年5月19日 (日)

ノーマン・ブラウン作品の復習

ギター奏者ノーマン・ブラウンのキャリアはデビュー作品から数えて27年、名実共にスムーズジャズを代表するギタリストだ。彼の過去作品を振り返り<復習>してみよう。

 

Storm

ノーマン・ブラウンのソロ・デビューは29才の時。モータウンのMoJazzレーベルから『Just Between Us』92年)、『After The Storm』94年)、『Better Days Ahead』96年)と5年間で3枚の作品をリリース。

MoJazzは、92年に発足したモータウン傘下のジャズ(コンテンポラリー/スムーズ系)専門レーベル。ブラウンのデビュー作品が第1弾作品だった。新設レーベルとして、ブラウンをポスト・ジョージ・ベンソンとして売り込もうと力を入れた。続く2作品はブラウン自身によるプロデュース作品。その後、モータウンがユニバーサルに吸収されるなど経営の再編に直面して、MoJazz98年に閉鎖された。

デビュー作をプロデュースしたのは、ノーマン・コナーズ。コナーズは、ジャズ・ドラマー出身だが、80年代以降はR&B/ソウル路線で自身の作品や他アーティスト(アル・ジョンソン、アンジェラ・ボフィル、マリオン・メドウズなど)のプロデュースで実績を残した人。ゲストは、スティービー・ワンダー、ボーイズIIメン、アル・マッケイ(ギター)、ボビー・ライル(ピアノ)、ジェラルド・アルブライトなど、豪華な顔ぶれが脇を固めた。

デビュー作は、コナーズの手腕でビートに彩られたサウンドが際立つゴージャスな作品。豪華さもチャート・イン狙いだろうか、プロデューサーのカラーに染まった観が強い。ブラウンのギターは、初作品だから力が入り熱量の高いグルーヴを聴かせる。特に1曲目「Stormin’」はキャッチーなハイライト曲。客演するカーク・ウェイラムとロニー・ロウズ、両サックス奏者のパワーに負けじと、エネルギッシュな高速パッセージが衝撃的だ。

2作目と3作目はミディアム・スロウなムードに転じて落ち着いた印象。リラックスしたメロウなギター・プレイが味わい深く、個人的には好感度が高い。速弾きやオクターブ奏法といった多彩なスタイルを駆使して、後年につながるギター奏者としての個性を発揮している。アルバム・タイトル曲「After The Storm」の流れるような美しいパッセージや、同じくタイトル曲「Better Days Ahead」のソフトなオクターヴ・トーンでの果敢なプレイが印象に残る。いずれも、ブラウン作曲によるポップな曲調と、覚めるようなテクニックを披露した代表曲といえる。

後年モータウンを吸収したユニバーサルが傘下のGRPレーベルからリリースしたコンピレーション『The Very Best of Norman Brown』(05年)は、MoJazz時代の3枚アルバムからのセレクション。いまだに、ブラウンの公式ベスト集はこの1枚だけ。

ちなみに、ソロ・デビュー前の音源としては、トランペット奏者トニー・ゲレロのアルバム『Different Places』(89年)所収「Strut」や、サックス奏者ポール・ルッソの『Firm Grip』(91年)のタイトル曲で、ブラウンのソロが聴ける。

 

Coolin それから4年後、ブラウンはワーナー・ブラザースへ移籍して、『Celebration』(00年)、『Just Chillin』(02年)、『West Coast Coolin’』(04年)の3枚を発表。この時代の作品が、ブラウンの存在感を知らしめた。いずれも、ポール・ブラウンがプロデューサーとして関わったのが成功の要因といえる。

90年代後半既にポール・ブラウンは売れっ子のプロデューサーであった。ボニー・ジェイムスピーター・ホワイトジョージ・ベンソンなどのプロデュースで実績を残していた。ベンソンの『Standing Together』(98年)はポールが手がけた作品で、そのとろけるようなメロウ・サウンドの手法は、ブラウンの諸作でも共通性が見られる。

Just Chillin』は、第45回グラミー賞(02年)のベスト・ポップ・インストゥルメンタル作品に輝く。ポール・ブラウンの手腕で、アーバン・コンテンポラリー系の洗練されたメロウ・サウンドを演出。ギター演奏だけでなく、ベンソン張りのユニゾン・スキャットやボーカルをフューチャーした曲作りで、R&Bやアダルト・コンテンポラリーのジャンルへ認知を広げたクロスオーバーな作品群。

Celebration』の「Breaking Out」で聴かせるスキャットとギターのユニゾンは、ベンソンを凌ぐキレの良さだ。『Just Chillin』では、チャート入りを志向したようなボーカル曲(マイケル・マクドナルドの歌う「I Still Believe」やワニータ・ウィンの歌う「Feeling the Way」など)を入れるなど、アダルト・コンテンポラリーな音楽性を鮮明にしている。『West Coast Coolin’』では、ブラウン本人のボーカルがさらに比重を増して、アーバンなサウンドもより洗練された作品となった。ブラウンのメロウな歌声で披露するカバー曲「Whats Going On」は、ボーカリストとしての技量をアピールした文句なしのハイライト曲。

この頃ソロ活動とは別に、サックス奏者カーク・ウェイラム、トランペット奏者リック・ブラウンとユニット、BWBを組んで『Groovin’』(02年)発表。

 

Staywithme その後3年を経て、ピーク・レーベルに移籍。ピーク・レーベルは、ザ・リッピングトンズのラス・フリーマンが設立したレーベル。ブラウン自身のプロデュースで、『Stay With Me』07年)、『Sending My Love』10年)をリリース。両作ともギタリスト回帰の作品といえる。

特に、『Stay With Me』は、ワーナー時代から転じて、コンテンポラリー・ジャズのスタイルに傾倒したサウンドとギター演奏が印象深い作品。いずれも、共同プロデュースはキーボード奏者でもあるハーマン・ジャクソン。ハーマンは、2作目以降からほとんどの作品でレコーディングに参加する近しいサポーターだ。

Stay With Me』の「Lets Take a Ride」は、スキャットも聴かせるが、オーガニックなリズム隊を従えたグルーヴィーなプレイが爽快。「Pops Cool Groove」では、ウェス・モンゴメリーを継承する正統派たることを証明する演奏が素晴らしい。『Sending My Love』の「Come Go With Me」や、「Coming Back (Return of the Man)」の爽快なRBグルーヴは、ブラウンの個性を際立たせた代表曲といえる。

 

次の7年の間はソロ以外のプロジェクトが続いた。サックス奏者ジェラルド・アルブライトとのコラボ作品「24/7」(12年)は、第55回グラミー賞ベスト・ポップ・インストゥルメンタル作品(12年)にノミネートされるが、残念ながら受賞は逃した。BWB名義の2作目「Human Nature」(13年)、3作目「Braun Whalum Brown」(16年)を続けてリリース。

7年ぶりのソロ作品は、シャナキー・レコードから「Let It Go」(17年)をリリース。そして最新作「The Highest Act of Love」(19年)は、オリジナル作品としてはソロ10作目となる。スピリチュアルな創作意図を明らかにして、アーティストとしての主張をアピールするところに、音楽に対する新たな姿勢を思わせる。熟練した演奏と洗練された音楽性はさらに完成度を高めている。もう、ジョージ・ベンソンの名前で形容するなど的外れだろう。

MoJazz時代、デビュー作は後年のスタイルからすると異色の趣きだが、2作目以降のフレッシュでリリカルな演奏が印象深い。ポール・ブラウンとの共作では垢抜けたサウンドが記憶に残る。ピーク・レコードの作品は正統的なギター奏者として高い評価に値する。いずれもエヴァーグリーンのように味わい深い作品の数々だが、個人的にベストを選ぶとすれば、『After The Storm』と『Stay With Me』の2作を挙げておきたい。

 

 

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コメント

1枚目の1曲目Stomin'で魅了された一人です。
好きなカークウェイラムが参加しているのも購入に走らせた要因でした。
彼の登場と共に始まったMoJazzレーベルは、結局続かなかったのですね。
書かれているとおり、その後少し落ち着いた感じになった印象があって、After The Storme以降離れた時期もありましたがStay With Meからまた復帰しました。
新譜はまだ未入手ですが、キムウォーターズが参加しているとのことなので、ちょっと楽しみです。

いつもコメントありがとうございます。
Stormin'はあの時代のスムーズジャズの代表曲といえますね。レコード会社やプロデューサーが変わっても、それぞれ良いアルバムが多いと思います。レーベルを超えたベスト盤が出たら嬉しいのですが。もちろん新譜も素晴らしいと思います。

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