« Rick Braun 「Crossroads」(2019) | トップページ | Mark Etheredge 「Connected」(2016) »

2019年10月 6日 (日)

David Benoit 「David Benoit And Friends」(2019)

デイヴィッド・ベノワは、デビューが1977年だから40年を超えるキャリアのピアニストである。リーダー・アルバムは35作品を数える。大ベテランだけれどその音楽は枯れた味が増すというより瑞々しい味わいがさらに際立つ稀有なアーティストだ。

プロデュースや映画音楽、交響曲と広範囲な活動も注目に値するけれど、やはり彼のピアノ演奏は最大の魅力。ビル・エヴァンスやデイヴ・ブルーベックといった伝統を受け継いで、80年代以降のボブ・ジェイムスやデイヴ・グルーシンなどコンテンポラリーなジャズ・スタイルの系譜を引き継いでいる貴重な正統派だと思う。

そのデイヴィッド・ベノワの新作は、交流の深いベテラン・アーティストや、フレッシュな若い世代のゲストも迎えた多彩な作品。

主要なゲストは、マーク・アントワンデイブ・コーズピーター・ホワイトリック・ブラウン、ティム・ワイズバーグといった、今までも多くの共演を重ねてきた人たち。加えて、新鋭アーティスト、女性歌手リンゼイ・ウェブスターとサックス奏者ヴィンセント・インガラが参加している。2人はベノワと同じレーベル、シャナキーのアーティストである。

1曲目「Balld of Jane Hawk」は、ベノワらしい暖かさを感じるオリジナル曲。ギター奏者ピーター・ホワイトとフルート奏者ティム・ワイズバーグが客演している。ストリングスやホーン・セクションのオーケストラが雄大に盛り上がる劇的な曲想が素晴らしい。CDのライナーノーツのベノワの説明によれば、題名のジェーン・ホークとは、サスペンス・ホラーのベストセラー作家、ディーン・クーンツの著作シリーズの主人公のこと。そのジェーンは美貌の敏腕FBI捜査官で、ベノワのファンなのだという。きっと小説中にベノワの音楽を聴く場面が出てくるに違いない。ちなみにシリーズは5巻まで出ているようだ(1巻目は邦訳が出ている)。

「Vernazza」はベノワのオリジナル曲。デイブ・コーズが客演している。甘いフレーズのベノワに比べて、ファンキーに吹くコーズのサックスがインパクトのある曲。「Dave G.」もベノワのオリジナルで、ハイライトな曲。疾走感あふれるフェンダーの演奏と、初めての共演というヴィンセント・インガラのソプラノ・サックスが奔放に吹きまくる対比的なインタープレイが聴きどころ。曲名はデイブ・グルーシンを指している。ベノワがメジャーになる契機は、デイブ・グルーシンとラリー・ローゼンが設立したレーベル、GRPレコードの専属になったこと。87年の「Freedom At Midnight」がその1作目で、2000年初頭まで10作を超える作品をリリースしている。グルーシンへの尊敬の念を込めた1曲なのだろう。

ジェフ・ローバーと合作した曲「Sly Fox」はパワフルなフュージョン。ローバーは演奏に参加していないようだが、ベノワが演奏するハモンド・オルガンはまさにローバーかと見(聴)紛うファンキーなフレージング。ジェフ・ローバーが演奏とプロデュースで関わったベノワの作品に、『Full Circle』(06年)がある。その中の1曲「Beat Street」は2人のコラボの代表曲といっていい佳曲だ。

「96-132 Revisited」は、ベノワのデビュー作「Heavier Than Yesterday」(77年)に入っていた曲の再演。リズム・セクションとのストレートな演奏で、中盤に加速していくアンサンブルに引き込まれる。オリジナルは、エレキ・ピアノによるフュージョン・スタイルの演奏だったが、再演バージョンはピアノ演奏。

カバー曲は4曲。「Moon And Sand」は、ジャズ・ギター奏者ケニー・バレルのアコースティック・ギターによる名演(65年のアルバム『Guitar Forms』所収)をオマージュするように、ギター奏者マーク・アントワンが客演した演奏。流麗なオーケストレーションも、『Guitar Forms』の編曲・指揮をしたギル・エバンスへのオマージュを思わせる。アントワンとベノワは、2人名義のデュオ・アルバム『So Nice!』(17年)を作っている。

スタンダード曲「How Deep Is The Ocean」は、リック・ブラウンが客演したストレートなジャズ演奏。ブラウンが聴かせるマイルス・デイビスばりのハーマン・ミュート演奏に注目してほしい。2人の共演は多いが、ブラウンがプロデュースしたベノワの作品『Right Here, Right Now』(03年)は、間違いなく代表作だ。

意外なカバー選曲は「Feel It Still」。オルタナロック・バンド、ポルトガル・ザ・マンのグラミー賞を受賞した曲。ファンク・ジャズで解釈した「変身」がなんともかっこいい。「Viva La Vida」は、コールドプレイの代表曲。パワフルなストリングスが加わるシンフォニーに仕上げた編曲が素晴らしい。ここでのチェロ演奏はジャスティン・チェンという人。ベノワの説明によると、ベノワが指揮を務めた若手演奏家のシンフォニー・オーケストラの一員だった人で19才(!)だそう。

交流の深い豪華ゲストを迎えて、多彩な曲が並び聴きどころ満載の秀作。それぞれの曲に、ベノワが自身がキャリアを振り返る思い入れを込めたようで、深い興味が尽きない作品。

 

|

« Rick Braun 「Crossroads」(2019) | トップページ | Mark Etheredge 「Connected」(2016) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Rick Braun 「Crossroads」(2019) | トップページ | Mark Etheredge 「Connected」(2016) »