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2019年12月の5件の記事

2019年12月29日 (日)

Joyce Cooling 「Living Out Loud」(2019)

女性ギター奏者、ジョイス・クーリングの新作は、なんと10年ぶりとなるオリジナル・アルバムである。クーリングは、1989年にデビュー・アルバム『Cameo』を出しているが、その10年後にメジャー・レーベルのヘッズ・アップと契約して出した2作目『Playing It Cool』(97年)と3作目『Keeping Cool』(99年)が当時のフュージョン・シーンで話題となり人気を博したギター奏者だ。デビュー以来、クーリングのパートナーであるキーボード奏者ジェイ・ワグナーと作曲からプロデュースまで共作している。

西海岸やブラジリアン・テイストのある音楽性は、90年代後半はまだフュージョンのジャンル分けだったと記憶している。メロウで爽快な音楽は、スムーズ・ジャズのスタイルの先駆けであり、クーリングの旧作は活き活きとして今でも古さを感じない名作が揃っている。

 

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2019年12月22日 (日)

第62回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品(2019)【追記】

【追記】2020年度受賞作は、Rodrigo y Gabriela『METTAVOLUTION』が選ばれました。(文2020/1/28)

 

グラミー賞の「コンテンポラリー・インストゥルメンタル」という部門賞は、2000年に新設されて2013年まで「ポップ・インストゥルメンタル」という賞だった。かつては、ノーマン・ブラウン、デイブ・コーズ、ジェフ・ローバー、ジェラルド・アルブライト、など他多くのスムーズ・ジャズ系のアーティストも受賞やノミネートで選ばれているのだが、この数年の傾向は、広範囲なジャンルを対象に先進的な音楽性の作品が選ばれているように思う。今年のノミネート作品は、スムーズ・ジャズは選ばれていないが、先進的という点では、いずれも素晴らしい5作品だ。
(グラミー賞について関連過去記事はこちら

1. Christian Scott aTunde Adjuah ANCESTRAL RECALL

1983年生まれのクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーは新世代ジャズのトランペット奏者。前回の第61回グラミー賞にノミネートされた「The Emancipation Procrastination」に続いてのノミネート。

ポップスのような均整の取れた要素はほとんど現れない。アフリカン・リズムを骨格に、怒涛のようなシーツ・オブ・リズムが押し寄せる。

「songs she never heard」は、深淵の視界に触れるようなドラマチックな演奏が感動的。「ritual」では、慟哭のように迫り上がってくるフレージングのパワーに圧倒される。

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2019年12月21日 (土)

2019年のベスト3+1

今年紹介した新譜の中から選んだ、私のベスト3(+1)です。(下線は当サイト内の過去記事にリンクしています。)

1. U-Nam 『Future Love

ユー・ナムのスタイルを、総決算するような会心の作品。80年代のダンス・グルーヴと、ジョージ・ベンソンへのオマージュ、いずれも進化させて独自のオリジナリティを完成させた。途切れないグルーヴが続く全15曲、ボーカルを入れずにギター演奏を主役にした怒涛の熱量に圧倒される。

ファンキーなビートに、ポップなリフとダンス・グルーヴ、そしてスウィートでメロウなメロディ、多彩なサウンドを造り出した力量に感動する。多彩なテクを駆使する流麗なギター演奏は特筆に値する。ユー・ナムが、ベンソン・スタイルを超越したギター演奏家であることはもっと評価されていいと思う。

この作品の続編『The Love Vault: Future Love, Pt.2』が既にリリースされていて、ボーカル曲も入れた全12曲という内容で、これでもかのパワーが全開です。

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2019年12月 7日 (土)

Najee 「Center of the Heart」(2019)

コンスタントに良質な作品をリリースするサックス奏者ナジーの新作。1986年のソロ・デビュー以来、オリジナル・アルバムは16作目。30年を超えるキャリアの持ち主でも、新作ではいつも新しい切り口を聴かせてくれる。『Poetry in Motion』(17年)に続く今作は、若手のアーティスト(ブレア・ブライアントなど)や、新鋭のプロデューサー(ダーレン・ラーン、グレッグ・マニングなど)とのコラボを新機軸とした傑作だ。

ナジーは、テナー・サックスをメインに、アルト、ソプラノのサックスとフルートをバランス良く持ち替えて演奏する。特にフルートの演奏は必ず数曲アルバムに入れている。今作も、10曲中3曲がフルート演奏の曲。冒頭を飾る2曲で演奏していることもあり、フルートの演奏が強く印象に残る。

1曲目「Bella Visata」は、滑らかに疾走するフルートが心地いいハイライト曲。作曲は、ナジーとプロデューサーのデモンテ・ポセイの共作。ポセイとは『The Morning After』(13年)以来のコラボレーションで、この新作の4曲をプロデュースしている。バカラック曲「Alfie」のカバーもポセイによるプロデュース曲。編曲はいわゆる<ウィズ・ストリングス>的にオーケストラをバックに、ナジーがフルートで演奏する。上品なストリングスと交わる、ストレート・ジャズ的なナジーのフレージングも素晴らしい。いつか、ウィズ・ストリングスのフル・アルバムを作ってほしいなあ。

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2019年12月 1日 (日)

Ray Obiedo 「Carousel」(2019)

レイ・オビエドは、サンフランシスコを拠点に活躍するギター奏者。70年代後半からキャリアをスタート、オルガン奏者ジョニー・スミス、ハービー・ハンコック、ジョージ・デューク、タワー・オブ・パワー、マリオン・メドウズ、ラテン・パーカッション奏者ピート・エスコヴェードなど、ジャズ/フュージョンを中心に多くの著名ミュージシャンと共演している。ソロとしてのリーダー・アルバムは、デビュー作『Perfect Crime』(89年)から8作品を数える。

この新作はソロとして9作目。オビエド自身のレーベル<Rhythmus Redords>から3作目のリリース。レコーディングには、総勢30人超えのトップ級ミュージシャンが参加している。オビエドはギター演奏しているが、ソロを聴かせるというより、各客演者の聴かせどころを演出して、オーケストレーションをまとめる手腕を発揮した作品だ。

参加しているのは、イエロージャケッツのボブ・ミンツァー(sax)、アンディ・ナレル(スティールパン)、トゥーツ・シールマンスら重鎮がソロを披露する。加えて、ピーター・マイケル・エスコヴェード(パーカッション)、ピーター・ホルヴァート(p)、デイビッド・K・マシューズ(kyd)、マーク・ヴァン・ヴグヌン(b)、ポール・ヴァン・ヴグヌン(drums)、フィル・ホーキンズ(スティールパン)といったリズム・セクションはオビエドの過去作品でも常連の面子。

全9曲、オビエドのオリジナル曲が8曲と、カバー1曲(ヘンリー・マンシーニ作の「Lujon」)という構成。興味深いことに、アルバム・タイトル「Carousel」という曲は含まれていないが、実は同名の曲がある。オビエドの6作目ソロ・アルバム『Modern World』(99年)の1曲目がその曲。そして『Modern World』の収録曲から4曲が、この新作に入っている。

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