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2020年5月23日 (土)

Skinny Hightower「Blue Moon」(2020)

スキニー・ハイタワーの前作『Retrospect』(2018)は、みなぎる創造力が溢れた力作で、強く印象に残ったアーティストでした。この新作は、CDで二枚組、全24曲のボリュームで、さらなる音楽性の才気煥発に圧倒されます。
全曲が新作オリジナルで、編曲からキーボードを中心にほとんどの演奏を、ハイタワーがこなしています。

本人のホーム・ページには、興味深い制作経緯が書き綴られています。それによると、前作の後、うつ状態に悩んだことを明らかにしています。愛妻が所有していたレコード・コレクションを聴き込んで救われたといいます。ウォー、アイザック・ヘイズ、アース・ウィンド&ファイアー、カーティス・メイフィールド、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、といった70年代の名作の数々でした。全てを深く聴き、感動とともに自分を取り戻したと。それらの楽曲を分析することに至り、その後最終的に100曲をレコーディングしたそうです。その中から、本作の24曲が選ばれました。

全曲が、一気呵成で創られたエネルギーにあふれています。サウンドは粗削りなテクスチャーを感じますが、湧き出す発想を記録したリアリティが迫ります。聴き込んだという名作のエッセンスに気が付きますが、オマージュではなく、消化して生み出されたオリジナリティに他なりません。

甲乙つけがたい、サウンドもメロディーも表情の異なる24の佳曲が並んでいます。メインの演奏は鍵盤楽器で、アコースティック・ピアノ、オルガン、ヴィヴラフォン、エレキ・ピアノなどを弾き分けています。中でも、オルガンとヴィヴラフォンの存在感が際立っています。

オルガンでは、「Bittersweet」のアーバンな旋律とフレージングが絶品です。「Honey」「Boogieman」「Mr.Sims」「Strollin' In」でも、リズム&ブルースを共通項にオルガンをフィーチャーしています。「Blow」での、重量級のホーン・セクションとのソウルフルなグルーヴは飛び抜けてかっこいい。

ヴィヴラフォンをフィーチャーしたのは「Blue Moon」「Madison Avenue」「Ain't Gotta Go Nowhere」で、
いずれもフィリー・ソウルの味わいを感じます。「Blue Moon」では、ジーン・シル(Gene Shill)という人がサックスで客演して、ジャージーなインタープレイがクールです。

アコースティック・ピアノは、「Now Or Never」「Spanish Harlem」「Summer Nights」「Jammin' In The Morning Sun」などでフィーチャーされています。コンテンポラリー・ジャズ/スムーズジャズのエッセンスが感じられます。「Now Or Never」は、シンセも交わるスムーズジャズ・チューンです。「Summer Nights」は、都会的でリリカルなフレージングにグッと惹きこまれます。

「Force」は、ハイタワーが弾くベースと、オリ・シルクのピアノが組み合うグッとくる演奏。パワフルなベースと、流麗なピアノが対比するグルーヴが見事です。

レコーディングしたという100曲のうち、本作に収められたのは4分の1なので、いずれ全貌が聴けることを期待したい。

 

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