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2020年6月14日 (日)

Tony Saunders 「Sexy Somethin」(2020)

トニー・サンダースは、サンフランシスコのベイエリアを拠点に活躍するベース奏者です。

父親は、70年代に活躍したキーボード奏者マール・サンダース(2008年没)。マールは、ジェリー・ガルシア(グレイトフル・デッド)と活動を共にしたロックのレジェンド・プレイヤーとして有名です。ふたりは、双頭バンド「サンダース/ガルシア・バンド」だけでなく、2000年代初頭までコラボレーションを続けた盟友でした。

そのレジェンドを父親に持ったトニーは10代から演奏活動を始めて、およそ50年のキャリアを有する音楽家(ベース/キーボード/アレンジ/プロデュース)です。ソロのベース奏者として、デビュー・アルバム『Romancing the Bass』(2011)から3作品を発表しています。この新作は、4年ぶりの4作目となるスタジオ・アルバムです。

豪華な参加ゲストに注目です。3曲を共作・共同プロデュースしたニルスを筆頭に、ゲイル・ジョンソン(キーボード)、マリオン・メドウズ(サックス)、ポール・ブラウン(ギター)、ポール・ジャクソン・ジュニア(ギター)、ジェフ・ローバー(キーボード)、ジェフ・ライアン(サックス)ら、スムーズジャズ・ファンにとっては興奮が抑えられないメンバーです。

サンダースは自身のサイトで、自らのベース演奏を「B.B.キングが”ルシール”(愛用のギター)を弾いたよう演奏したい」と述べています。「テクニックではなく、温かみを伝える」音楽をリスナーに聴いて欲しい、と。

アルバムは1曲目、R&Bのレジェンド・グループ、ザ・ウィスパーズによる80年代のヒット曲「Rock Steady」から始まります。オリジナルのディスコ・グルーヴを再現した、重厚なカヴァー演奏です。この曲のみ、プロデュース/バック・コーラスを担っているのは、マジック・メンデスという、ザ・ウィスパーズのプロデューサー/ツアー・メンバーを務めた人です。

「Chasing The Dream」は、ニルスとサンダースの共作曲です。サックス(ジェフ・ライアン)も加わった、メローなスムーズジャズ曲です。後半に、サンダースのベースが聴けますが、3人のバランスを重視した音作りです。ニルスとの共作曲は、あと2曲「Awakening」「After George」で、両曲はジェフ・ローバーが参加したコラボ演奏です。

「Tony's Romance」は、サンダースのベースが主役で、リード楽器としてのベースが違和感なく流れるように響くファンキーな佳曲です。後半の、ギター(ポール・ジャクソン・ジュニア)とのインタープレイが聴きどころ。「Whispering Waters」は、マリオン・メドウズが参加した演奏。サンダース作曲の美メロを、メドウズのソプラノ・サックスが奏でて空気感が変わるバラード曲です。メドウズに花を持たせていますが、バックを固めるサンダースのベースが奏でる、さりげなく美しいフレージングに注目してください。

「Sexy Somethin」は、キーボード/シンセサイザー奏者ゲイル・ジョンソンが演奏に加わっていますが、終始サンダースのベースをフィーチャーした、メランコリーな佳曲です。さりげなく、俊足のパッセージを繰り出すベースの鳴音を追いかけてしまいます。

ベースをメロディーを奏でるリード楽器として操る奏者は多いけれど、サンダースは派手なスラップ(チョッパー)も披露しないで、サウンドの要としての役割に徹しているところに、好感が持てるプレイヤーです。聴きどころが満載の素晴らしい作品です。

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