カテゴリー「BOOK」の記事

2014年4月21日 (月)

「バート・バカラック自伝」 バート・バカラック著

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バート・バカラックは、1928年生まれだから、おそらく85歳。いまだに、演奏公演も行っている巨匠であるが、過去60年にわたる作曲家人生と私生活を振り返ったのがこの自伝。私生活では、女優アンジー・ディキンソンとの結婚離婚、その後は、作品のパートナーでもあったキャロル・ベイヤー・セイガーとの結婚離婚、ひいては幸福をつかんだ現在の家族とのこと。ディンキンソンとの娘で、自閉症だったニッキーへの愛情と悲痛(彼女は他界してしまう。バカラックには「ニッキー」という作品もあり、後に、ハル・デヴィッドが詩を付けている。)。赤裸々に告白される人生は、大作曲家ゆえの、常人では経験できないような波乱に溢れている。自分自身で語る自伝に加えて、登場人物のコメントが差し挟まれるような構成は、映画的な臨場感があって素晴らしい伝記になっている。バカラックの人生についてはもちろんだけれど、音楽ファンとしては、数々の名曲や、音楽のパートナーとの逸話が興味深い。バート・バカラックと、作詞家ハル・デヴィッドは、1972年頃から共作しなくなるが、その原因は、ギャラについての軋轢が原因で、バカラックは、それを自分の過ちだと告白している。共作品がヒットを重ねていても、その賞賛は主に作曲家バカラックに向けられていた背景もあっての、失敗だったのだろう。2人が共作を続けていれば、どんなすばらしい作品が書けただろうかとバカラック自身、後悔を告白している。2人のパートナーシップは17年に及んでいて、名曲の数々で、デヴィッドの作詞が貢献をした過程と、共作の逸話をバカラックは明らかにしている。例えば、「アルフィー」は、「最高傑作」と評する歌詞が先に出来ていたので、8小節に10小節が加わった特徴的な曲になったとか。「雨にぬれても」は、映画「明日に向かって撃て!」の挿入歌だが、映画のシーンでは雨が降っていないのにあの歌詞なのは、仮歌でバカラックが歌った歌詞をそのままデヴィッドが採用したとか。アカデミー賞を取った「アーサーのテーマ」は、クリストファー・クロスの歌でヒットした名作だが、作品はバカラックとセイガー、クロス、とピーター・アレンが共作に名を連ねていて、個人的にもピーター・アレンがどこまで関与した作品か興味があった。実は、「月の光とニューヨーク・シティ〜」という一節の歌詞は、セイガーのアレンとのボツになった別作から取った歌詞を使ったので、4人が作者になったという。なにしろ、この本を読んだら、当然バカラックが聴きたくなるというわけで、。最新のリリースでは、「Anyone Who Had a Heart」(2013)という6枚組ボックス・セットが出ているが、ちょっとボリュームがありすぎるので、その編集CD2枚組(40曲入り)を聴いた。同じタイトルはiTunesでも配信されているが、契約の関係か一部の曲や曲順が違っている。キャロル・ベイヤー・セイガーとの共作時代の名作、パティ・ラベルとマイケル・マクドナルドのデュエット「On My Own」(1986)や、クリス・デバーの「Love Is My Desicion」(1988)、はCDでは聴けるが、iTunes版には入っていない。というように何曲か違いがあるので注意されたし。自伝の方には、日本版独自の詳細なディスコグラフィーが付いている。(訳:奥田祐土、発行:シンコーミュージック)

2013年8月 1日 (木)

「フレディ・マーキュリー 孤独な道化」レスリー・アン・ジョーンズ著

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フレディ・マーキュリーが45歳で他界したのは、1991年11月24日。それから22年も経つというのに、彼の唄声は色褪せないし、史上最高のロックボーカリストの1人。とりたててクイーンのファンではなくても、「ボヘミアン・ラプソディ」や一連の名曲に魅せられない人はいない。この本は、フレディ・マーキュリーの伝記であるが、偉大なロック・ボーカリストの業績を詳細に掘り起こす内容ではない。彼の残した作品にまつわる裏話などももちろん出てきて興味深いが、コアなファンなら周知かもしれないので、そういった興味だけで読む本ではない。かくいう筆者も、クイーンはもちろん嫌いではないけれど、特にファンというわけではない。けれどこの評伝に引込まれてしまった。希代稀に見る成功の階段を駆け上がり、奇異に満ちた人生を最後は悲劇的に終わらせた、フレディ・マーキュリーというひとりの人間の姿に。彼の死因がエイズだったことや、男性女性に限らない奔放な交友関係、または、金任せの豪遊癖など多々のゴシップなどは、彼がいなくなった今でも、時にはおもしろおかしいく流布されている事実である。そういった「事実」の裏側で、フレディという人間が、彼自身の性癖に戸惑い、いつも罪の意識に苛まれ、家族を求め続けた人間で、その苦悩の表現として、対極的な生命力のあふれた楽曲を作り出していたのだ。フレディは、アフリカはザンジバル島のパールシー教徒の一家に生を受けた。彼はいわゆるペルシャ人であって、厳格な信教徒の家庭で育った。厳格ゆえに、家庭内の堅苦しい愛情表現で幼少期を過ごしたことが、大人になってから肉体的な愛情に固執してしまうと、フレディ自身も思っていたようだ。いわゆるアングロサクソン系の白人のロックスターが主流の時代に、フレディは自分自身の出自にしても隠していたから、フレディーのボーカルスタイルが、ステージに上がったとたん神がかりにパワフルなパフォーマンスを見せていたのも、コンプレックスの解決方法だったのかもしれない。彼がクイーンを率いて、怒濤のヒット曲を連発して成功して行く反面、私生活ではいつも苦悩していて、時に破壊的で、かつシャイで、友達や家庭を愛し、ユーモアに富んでいた人間性には、読んでいて心が打たれる。ちなみに、クイーンの「輝ける日々(These Are The Days Of Our Lives)」のプロモーションビデオでは、公式ビデオとしてはフレディの生前最後の姿が見れる。見るのも痛々しい姿だけれど、優しい唄声と彼特有のスタイルに拍手したい。ところで、ハリウッドではフレディの伝記映画の企画が進んでいるらしいが、監督も決まらないようで、主役に決定していたサシャ・バロン・コーエンも最近、降板したとかで、迷走中。(岩木貴子訳 出版:ヤマハミュージックメディア)

2013年2月17日 (日)

日本のジャズとラジオとジャズ喫茶「あの頃」を読む三冊

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音楽評論家・相倉久人さん著「至高のジャズ全史」(集英社新書)は、日本のジャズ黎明期を、証人ならではの視点で語る。それはまるで格闘技のように、ジャズと闘うプレイヤーたち。著者の切り口は鋭くナイフのようで、まるでジャズのアドリブ。日本のジャズが、イデオロギーであり、熱狂であった時代。ピーター・バラカンさんの「ラジオのこちら側で」(岩波新書)。ラジオでおなじみのバラカンさんの、日本にやってきて異文化や音楽シーンと関わる半生。DJやラジオに対する思い入れと、音楽の多様性の支持は、Jポップばかりや商業主義への批判で、同感。ぼくもバラカンさんの番組は好きで良く聴くのだけれど、彼の番組でかかる音楽は、他では紹介されないような曲がかかり、開眼することが多い。彼は「音楽にはメジャーもマイナーも存在しない」と言っている、つまり、いい音楽とだめな音楽だけで、売れてるとか売れてないとか、ではないんだよね。音楽をどこで聴くのかも重要な要素。かつて、ジャズ喫茶が重要な場所だったあの頃。シュート・アロー著「東京ジャズメモリー」(文芸社)は、80年代の東京にたくさんあったジャズ喫茶を解説したエッセイ。かなりアナログでディープな解説が面白い。70年代後半から80年代初めに、東京のジャズ喫茶に入り浸っていた人には懐かしいはず。本の最後に語られる、ジャズ喫茶と関係はない、おまけのような、ネイザン・イーストとハンドパワーの逸話は、スムースジャズファンはぜひ読まれたし。

2013年1月14日 (月)

『レッキング・クルーのいい仕事』ケント・ハートマン著

Isbn906700592_3 彼らは「レッキング・クルー」と呼ばれた、いわゆるスタジオ・ミュージシャンの覆面チームだった。60年代から70年代に、ヒット・チャートを席巻した名曲の数々は、実際は彼らが演奏をしていた。この本は、当時のヒット曲の裏側を、ミュージシャンが誰だったかという単なる事実の暴露ではなく、それぞれのプレイヤーの人生が語られる。登場するのは、ビーチ・ボーイズ、ママス&パパス、フィル・スペクター、ジム・ウェッブ、ソニー&シェール、フィフス・ディメンション、グレン・キャンベル、モンキーズなどなど、彼らの名曲が生まれたストーリーが、演奏を支えたスタジオミュージシャンを中心に語られる。例えば、モンキーズの各曲は本人たちの演奏では無いということも、また、フィル・スペクターが名うてのスタジオミュージシャンをオーケストラのように使っていたのも、それぞれは周知の事実だし、バック・ミュージシャンに、ラリー・ネクテル、ハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、などのプレイヤー名を、クレジットで見つければ「品質保証」だった。でも、それ以上のストーリーは語られることは無かったから、この本が彼らにスポットを与えただけでも興味深い。でも、この本の面白さは、単にヒット曲の隠された事実の解説だではなく、「アメリカン・ドリーム」の体現と、また栄光からの失墜を経験したような「主人公達」が、ロック・アンド・ロールの世界にもいたことを語っている事だろう。ヒット曲を商業的に大量生産していくビジネスが、70年代以降にはかたちを変えていく。ヒット曲の制作方法も近代化したり、画一的なポップスだけでなく多様な音楽を求められる時代がやって来て、やがて「レッキング・クルー」も消えていく。音楽ファンとしては、当時のヒット名曲にまつわる逸話の数々に胸が躍る。モンキーズの「亀裂」のきっかけや、ブライアン・ウィルソンやフィル・スペクターの制作現場、ジム・ウェッブやグレン・キャンベルの成功秘話や、「明日に架ける橋」や「遥かなる影」の裏話、などがリアルで「そうだったのか」と大いに知って特になる気分だ。読後に、登場する楽曲を、聴き直せば新たな発見がありそうだ。ちなみに、レッキング・クルーとはロサンゼルスを拠点としたチームのことだが、他都市にもご当地版のスタジオ・ミュージシャンのチームがあったそう。書中の解説によれば、例えば、デトロイトのそれは「ファンク・ブラザース」、ナッシュビルのカントリー音楽では「Aチーム」と呼ばれていたそう。以前紹介したナッシュビル発のフュージョンバンド「プレイヤーA」の意味するところも、ナッシュビルのスタジオ・ミュージシャンのことかと、納得した次第。(発行:Pヴァイン・ブックス、訳:加瀬俊、)

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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