カテゴリー「トランペット」の記事

2018年4月18日 (水)

Tony Guerrero 「Abrazo」(2018)

Abrazo_cover

トランペット奏者トニー・ゲレロは、1988年にソロデビュー作品(「Tiara」)をリリースして以来、9枚のソロ作品や、多数のプロジェクトで、演奏のみならず作編曲、プロデューサー、としても活躍するアーティストである。サイドマンとしては、グレッグ・カルーカスや、ブライアン・ブロムバーグ、ブライアン・ウィルソン、ダン・シーゲル、俳優のディック・ヴァン・ダイクなど、多数のアーティストの作品にも参加している。この新作は、ソフトなボサノバやラテンのムードで貫かれた作品。ゲレロは、全10曲でフリューゲルホーンを吹いていて、ほとんどの曲は、ピアノ、ギター、キーボードなど全ての楽器を、彼自身がワンマン演奏しているユニークな作品。ソフトでロマンティックな作風は、イージーリスニングのただずまいで、ヨーロッパの映画音楽のようでもある。ゲレロのフリューゲルホーンの演奏は、ジャズの名手、アート・ファーマーや、チャック・マンジョーネを思い起こして、単なるムード・ミュージックに留まらない聴きどころになっている。4曲のカバー演奏も聴きどころで、アート・ファーマーの「Petite Belle」や、アストラッド・ジルベルトの名曲「Love Is Stronger Far Than Me」、イヴァン・リンスの「Septembro」(クインシー・ジョーンズのバージョンが有名、1989年のアルバム「Back on the Block」)、イタリアのシンガー、ルーチョ・ダッラの名曲「Caruso」(オペラのテノール歌手エンリコ・カルーソーに捧げた曲)を取り上げている。「Petite Belle」は、アート・ファーマーの名演(1965年のアルバム「Sing Me Softly of the Blues」)が有名な曲だし、「Love Is Stronger Far Than Me」は、チャック・マンジョーネがプロデュースした女性歌手エスター・サターフィールドのカバー(1974年のアルバム「Once I Loved」)が有名。いずれも、フリューゲルホーンの「鉄板」のような名曲で、ゲレロの思入れの選曲なのだろう。そんな名曲らに引けを取らない、ゲレロのオリジナル曲もそれぞれ素晴らしい。M1「Abrazo」は、哀愁に満ちたラテン系メロディーが、まるで名画のテーマ曲のようだし。M2「Beso」も、スペイン風のマイナーな旋律が美しい曲で、ピアノとギターの染みる演奏が印象的な曲。M6「She Speaks to Me」は、スロウ・ボッサの曲で、ストリングスを思わせるシンセがドラマチックな演奏。M5「First Date」は、ミディアム・スロウのバラードで、明るくキャッチーなフレージンングはハーブ・アルパートを思わせるし、中盤に出てくる鍵盤ハーモニカ、メロディカの音色が爽快感を醸し出す。全ての楽器をワンマンで演奏したのは、もともとは、ミュージシャンを集める前提のデモ制作だったらしい。最終的には、それを完成させたという経緯だそうだ。フリューゲルホーンの、ソフトでヒューマンな音色と、哀愁を感じるメロディーやフレージングが、心地いい魅力的な作品だ。

2018年3月10日 (土)

Lin Rountree 「Stronger Still」(2018)

Strongerstill

ビルボードの発表するチャートは100以上に上る。その中には、「Smooth Jazz Songs」というチャートがあって、スムーズジャズの最新ヒットをチェックするには最適の情報源だ。ラジオ局のエアープレイ頻度でチャートインするシングル30曲は、曲名とアーティストを眺めるだけで、最新のスムーズジャズの動きが一目瞭然に分かる。アルバムを対象とした「Jazz Albums」の方も、要チェックだ。今や、スムーズジャズ系作品のチャートインが目立っている。アドリブ主体の伝統的なジャズの固定観念では理解できない様相だけれど、現代に受け入れられているミュージックがJAZZならば、それはスムーズジャズではないかな。さて、最近まで、ほぼ20週間に渡ってチャートインしていた(最高位1位)のが、このリン・ラウントゥリーの「Pass the Groove」だ。キャッチーなメロディーと、彼のミュート・トランペットのクールな響き。ダンサブルなビートに、ドラマチックなエレピのフレーズとホーン・セクションのアレンジで、完成度の高い楽曲になっている。そのヒットしたシングルを一曲目に配した新作アルバムがこの「Stronger Still」で、彼のベスト級の秀作だ。アダルトオリエンテッドで、クワイエット・ストーム的なクールさが、この人のトランペットとサウンドの特徴。この新作は、全10曲が佳曲ぞろいで、統一感のあるサウンドに魅了される。アコースティック・ギターをフューチャーした M2「My Time with You」は、メランコリーなポップ・チューン。M4「Take It Back」は、ギター奏者アダム・ホーリーが参加したソフトなファンキー・チューン。M8「In My Soul」では、サックス奏者マーカス・アンダーソンとコラボするスロウ・バラード。艶っぽいアンダーソンのサックスと、クールなラウントゥリーの掛け合いが聴きどころだ。M10「It Gets Better」は、おおらかな楽曲で、オープンな吹奏法が殊更に爽快で美しい演奏だ。M6「Somthing More」は、ジェシカ・ジョリアのボーカルをフューチャーした最新シングル。さて、チャートインするかな。

2017年5月 5日 (金)

Cindy Bradley 「Natural」(2017)

Naturalcoversmall

シンディ・ブラッドレイの新作は、サックス奏者デヴィッド・マンを共作者に迎えた作品。「Bloom」(2009)、「Unscripted」(2011)、「Bliss」(2014)の過去3作品では、マイケル・ブルーニングがプロデュースと楽曲の共作を手がけたサウンドのキーマンだったので、この新作での変化が注目。M1「Girl Talk」は、サックス奏者ポーラ・アサートンとの共演で、両者のファンキーな掛け合いが必聴。アサートンの「Ear Candy」(2015)で、ブラッドレイがゲスト共演したトラック「Between You & Me」があったので、今回はお返しということ。いつか、この2人でフル・アルバムを作って欲しいなあ。きっと傑作になるはず。M2「Category A」は、ギター奏者クリス・スタンドリングの共作とゲスト参加した曲で、これはハイライト・トラック。聴いたらすぐに分かる特徴的なスタンドリングのギター・サウンドとメロディ。ブラッドレイのフレージングも、ヒップでアシッドなところが新鮮な演奏。タイトル・トラックのM7「Natural」でも、スタンドリングが参加していて、ブラッドレイとのインタープレイがクールな味が印象的。M6「Clean Break」では、ファンキーなビートに乗るエコーの効いたトランペットが、彼女の傑作アルバム「Unscripted」のムードを思い出す。M9「She Bop」は、スウイング・ジャズを思わせるミュート・スタイルで終始演奏する意欲的な演奏。M3「Everyone But You」はメランコリーなメロディの曲、M10「Crush」は爽やかなメロディの曲、いずれもポップス・チューンと言っていい聴きやすいサウンド。このあたりは、今までに見られない新しい路線だろう。過去作品では、シャープでエッジの効いたサウンドが、この人の持ち味だった。それに比べると、今回は少しソフトなムードの印象が残る作品かな。次作では少しハードなビートの演奏が聴きたい。

2017年3月26日 (日)

Rick Braun 「Around The Horn」(2017)

Aroundthehorn

リック・ブラウンの新作は、アーバンなムードのサウンドに満ちた秀作。ドイツのトランペット奏者ティル・ブレナーが参加したタイトル・トラック、M8「Around The Horn」では、両者のトランペット掛け合いや、交流はおなじみのギター奏者ピーター・ホワイトが参加した2曲(M4「We Don’t Talk Anymore」とM9「Vila Vita」)など、必聴の曲が並ぶ。カバー曲も3曲、M4「We Don’t Talk Anymore」はチャーリー・プース、M6「In Common」はアリシア・キーズ、M10「Yellow」はコールドプレイと、いずれも近年の新しいアーティストの曲を取り上げているところなど、聴きどころが満載。そんな中で、ジョン・ストッダートとコラボした5曲は、ブラウンの新境地。ジョン・ストッダートは、フィラデルフィア 出身の、シンガー、キーボード奏者。このアルバムで、2人は5曲を共作共演していて、いずれもキャッチーなメロディーが印象的な楽曲。M1「So Strong」はラテン・メロディーの曲で、エコー処理のブラウンのトランペットが、ちょっとハープ・アルパートを思わせる。M3「Love Take Me」は、話題の女性ボーカリスト、リンジー・ウェブスターが参加した、ミディアム・バラードで、ヒット性のアーバンな楽曲。M5「Everything Is Alright」は、ブラウンらしいファンキー・チューン。ストッダートのボーカルと、ブラウンのトランペットもグルービーで、まるでBWBの演奏を思わせるところが興味深い。M7「I Love You More」も、ストッダートのボーカルとブラウンのトランペットが絡む、メロウなソウル・バラード。M11「One South Beach Night」は、メロウでキャッチーなポップ・チューンで、ストッダートのスキャットと、ブラウンのミュート・プレイのインタープレイが魅力的で、何度もリピートしたくなる。今年のベスト級作品として、イチオシの作品。

2017年2月26日 (日)

Johnny Britt 「Marvin Meets Miles」(2016)

Britt

マイルス・デイビスとマーヴィン・ゲイが、実際に共演したことはなかったはずだが。もしも共演したら、歴史的なパフォーマンスになっていたに違いない。ジョニー・ブリットの新作は、マイルスとマーヴィンのそんな「邂逅」をテーマにした作品。ジョニー・ブリットは、シンガーでトランペット奏者、プロデュースもするマルチ・アーティスト。「Impromp2」というスムーズ&メロウ路線のR&Bデュオを経て、ソロ作品「Feel So Good」(2012)をリリース。スムーズジャズ系でも、ジェシーJのプロデュースを手がけるなど注目のアーティスト。アカデミー賞で注目の「La La Land」でも、サウンドトラックのトランペット演奏もこの人だとか。この作品は、テーマトラックのM1「Marvin Meets Miles」はブリットのオリジナルで、それ以外の8曲は、マーヴィン・ゲイのカバー演奏。いずれもマーヴィンを彷彿とするボーカルと、マイルスばりのミュート・トランペットが交錯する、メロウでクールな秀作。M4「You Soure Love to Ball」や、M5「Let’s Get It On」、M6「What’s Goin’On」、M9「Got to Give It Up」などの名曲の再演も、トラッペットの絡むサウンドが新鮮。ボーカル無しのインストバージョンを「Miles Mix」と称して収録していて、その「Marvin Meets Miles」と「You Sure Love to Ball」の2曲が、スムーズジャズ・ファンとしては注目してしまう。「You Sure Love to Ball」のインストは、ボニー・ジェイムスのサックスがフューチャーされているトラックで、マーカス・ミラーとワー・ワー・ワトソンも客演。アルバムには未収録の、シングル・カットだけで聴ける「What’s Goin’On」のMiles Mixは、トランペット奏者ブリットを堪能できるカバー・バージョン。

2015年1月29日 (木)

Gabriel Mark Hasselbach 「Open Invitation」(2014)

Gabriel

カナダのトランペット奏者、ガブリエル・マーク・ハッセルバッハの、前作「Kissed By the Sun」(2012)に続く、新作。今作は、硬派なコンテンポラリー・ジャズの秀作。題名に銘打ったように、多くのゲスト・アーティストを「招待」しての演奏。参加したアーティストのクレジットを見るだけで、ワクワクしてしまう。こうやって多彩なゲストを迎えての企画は良くあるけれど、オールスター的な顔ぶれのセッションだけというのもありがち。でも、この作品の素晴らしさは太鼓判。曲毎のゲストは、以下の通り。

1.Count Me In (アダム・ローリック)
4. Init 2 Winit ( ダミアン・ウオルシュ)
6. Lovelight (Dee & Brittani Cole)
7. Let’s Do This Thang ( Olaf deShield)
8. Let It Slide ( ボブ・ミンツアー)
9. Aurora Borealis (ロック・ヘンドリックス)
10. Carte Blanche ( Cory Weeds )
M1のギターはアダム・ローリックという人、カナダで活躍するギタリスト兼サックス奏者。ガブリエルのトランペットとユニゾンや、さりげないオクターブなど、派手ではないけれど枯れた感じのフレーズがなかなかいい。グレッグ・マニング参加のM2は、キャッチーなテーマのハイライト曲。マニングのアコースティック・ピアノとガブリエルの交互のからみがクールだし、ガブリエルのフルート演奏も聴ける。タイトル曲M3では、カル・ハリス・ジュニアのアコースティック・ピアノがドラマチックな曲想にぴったり。M5は、聴いたらいかにものボールドウィンの鍵盤から始まる、これもクールなジャズ曲。そういえば、ボールドウィンの「Twenty」の快演「Cameleon 3000」では、ガブリエルのペットがフューチャーされていたのが記憶に新しい。M9は、ポール・ハードキャッスルの作品でおなじみのサックス奏者、ロック・ヘンドリックスが参加した演奏。チル・アウトなムードの曲で、かすれ気味の抑えたブローのヘンドリックスのサックスと、ガブリエルのペットやフルートの絡みがとにかくクールな曲。クールを連発してしまったけれど、ガブリエルのサックス、曲によってはフルート、はどこかメランコリーな味わいのある音色とフレーズ。前作のファンキーなビート感は無いけれど、ガブリエルのトランペットとサウンドが、ひたすらジャジーでクールな作品。

2014年11月 9日 (日)

Till Brönner 「The Movie Album」(2014)

Movie

ドイツのトランペット奏者、ティル・ブレナーは、90年代から活躍するジャズ界のスター・プレイヤー。活躍は、ストレート・ジャズに留まらず、フュージョン、ポップス、映画音楽、などジャンルをこなすマルチ・アーティスト。ソフトな歌声で歌も歌うし、チェット・ベイカーに捧げたアルバム「Chattin With Chet」(2000)もあるので、「チェット・ベイカーの再来」とも言われる。それに、なんたって、イケメンなところは、クリス・ボッティか、ティル・ブレナー。そんなブレナーの新作は、映画音楽集。ストリングスをバックにした映画音楽のテーマ曲集とは、ありがちな、スター・プレイヤーの優等生的企画かなと。聴いてみたら、そんな先入観を裏切る素晴らしい作品。ブレナーと共同プロデュースは、チャック・ローブ。ストリングスのアレンジメントは、クリス・ウォルデン。この2人のキー・パーソンが作ったサウンドは、ちょっと聴いたらイージー・リスリング風だけど、聴き込んだら細部が輝く音は感動もの。ブレナーのちょっとかすれたトランペットも、まるで歌声のようにハートに響いてヒューマンだし、垣間見せる短いジャズ・パッセージさえ、トランペッターとしての懐の深さを見せて、そこらのプレイヤーとは格の違いを感じる。ハイライトは、ドイツ・シンフォニー・オーケストラを配した5曲、M1「When You Wish Upon a Star」、M4「Love Theme From Cinema Paradiso」、M6「Il Postino」、M9「Forebidden Colours」(戦場のメリークリスマス)、M13「My Heart Will Go On」。ゴージャスなストリングスと、沁みるようなブレナーのトランペットのブレンドが上質な音世界。ボーカルものもあって、M3「Stand By Me」は、今や大注目のジャズ・シンガー、グレゴリー・ポーターが歌ったトラックで必聴のバージョン。歌もトランペットも、巧者の作る贅沢なミュージック。M8「Moon River」は、チャック・ローブの実娘のリジー・クエスタの歌。M5「Raindorops Keep Falling On My Head」は、ブレナー本人の歌。歌モノでも、「歌伴」に廻って歌を引き立たせるブレナーのトランペット演奏もさすが。時々、聞き返したいエバーグリーンな秀作。

2014年10月 4日 (土)

Dennis Angel 「On Track」(2014)

Ontruck

トランペット/フリューゲルフォーン奏者、デニース・エンジェルの新作アルバム。この作品の前に、「Timeless Grooves」(2012)という作品を出している。デニースのキャリアの詳細は分からないけれど、どちらもプロデューサーがジェイソン・マイルスという人。ジェイソン・マイルスは、ジャズ・キーボード奏者で、マイルス・デイビスの「Tutu」や、デイビッド・サンボーン、ルーサー・バンドロスのレコーディングに参加した経歴の持ち主。自身のアルバムも多数あり、最近は、グローバル・ノイズというグループの中心人物。というわけで、このデニースの作品は、ジェイソン・マイルスの料理によるレトロなジャズのムードを感じさせる作品。ハイライトは、先行シングルで出ていて、冒頭を飾る「Soul Strut」。大御所ジャズ・ピアニストのケニー・バロンがピアノを弾いている。ケニー・バロンは、70才を超えて現役のピアニスト。この曲は、デニースのオリジナル曲だけれど、ジャズ・ファンなら誰もがピンと来るに違いない、ソニー・クラークの名曲「Cool Struttin’」(1958)の現代版のような曲。あのハード・バップのムードそのままで、ケニー・バロンがソニー・クラークで、デニース・エンジェルがさしずめアート・ファーマー。サックスはGottfried Stogerという人で、デニースとの2管がフロントを固めるファンキー・サウンドに、思わず身を乗り出してしまう。ケニー・バロンの、枯れたピアノもしぶい。でも、わずか4分弱のトラックなので消化不良になってしまう。ケニー・バロンが、もう一曲参加している曲が、M8「Sunset Cafe」。ファンク・ジャズといっていいムード満点の演奏で、デニースのトランペットはチェット・ベイカーのよう。ケニー・バロンのピアノも、サックスも、リズムを刻む、ベースとドラムのビートも、ファンキーのかたまり。ところで、このジャケットは、今年の「ジャケット賞」上げたいくらい、そんなのないけれど。シングルの「Soul Strut」も秀逸。「Cool Strutin’」のあの有名すぎるジャケット、ハイヒールを履いた女性のショットを彷彿とする写真。音といい、この写真といい、グッとくるセンス、脱帽ものです。「Cool Struttin'」が久々に聴きたくなってきた。

Dennisangel7

Sl1500_

2014年9月 7日 (日)

Leslie Drayton 「Free and Easy」(2014)

Freeandeasy

レスリー・ドレイトンは、初期のアース、ウィンド&ファイアーにも参加していたこともあるトランペット奏者。EW&Fの作品では、デビュー作「Earth, Wind and Fire」(1971)、セカンド・アルバム「The Need of Love」(1972)に参加している。また、レスリーは、マーヴィン・ゲイの音楽監督をしたり、自身のオーケストラを率いたりと、長いキャリアを持つベテランで、リーダーとして10作品以上のアルバムをリリースしている。この新作は、レスリーのトランペットもしくはフリューゲルがメローに響いて、「クロスオーバー・イレブンン」から聴こえて来そうなサウンドと形容したい。M3「Alone in the Dark」のトランペットなんて、「もうすぐ時計の針は12時を回ろうとしています・・・」なんてナレーションがぴったりなメロー・チューン。フリューゲルホルンの音色は、そもそも、トランペットより柔らかな音質だけれど、M1「Remember When」や、M10「Hip Hop Fantasy」で奏でるレスリーのフリューゲルは包容力に満ちていて、ヒーリング効果間違いなし。全12曲、BGMのジャンルに入れられてしまうかもしれないほど、ソフト&メローだけれど、BGMなんて呼んで欲しくない。スムーズ・ジャズ・リスナーなら、こういう路線こそ「クワイエット・ストーム・ミュージック」と呼びたい。

2014年7月13日 (日)

Rick Braun 「Can You Feel It」(2014)

Canyoufeelit

リック・ブラウンの新作は、待望の、ビート全開、今年ベスト級の「傑作」。リック・ブラウンは、20年超のキャリアを持つ、スムーズ・ジャズ界ではビック・ネームのトランペッター。ソロ以外にも、他アーティストとのプロジェクトやゲスト演奏も多いが、去年はカーク・ウェイラムとノーマン・ブラウンと組んだグループBWBの10年振りの新作アルバム「Human Nature」が話題だった。でも、ソロとしては、近年の作品「Sings With Strings」(2011)は、ジャズ・スタンダードを歌い上げたボーカリストとしての作品で、「Swingin’ In The Snow」(2012)も、クリスマス・ソングを唄い上げる作品だった。トランぺッターで、シンガーと言えば、ルイ・アームストロングに、チェット・ベイカー。リックも、まさかスタンダード・ジャズ・シンガーの方向に行っちゃうのかなと、心配してました。でもこの新作、やっぱり、これでしょう。突き抜けたり、泣かせてもくれるペット・サウンドがたまらない。白眉は、M1「Can You Feel It」と、M5「Get Up And Dance」。「Can You Feel It」は、ディスコ・リズムにホーン・セクションが乗って、リックのペットが飛び跳ねるビート・チューン。「Get Up And Dance」は、アーバンなポップ・メロディーを、ゲストのデイブ・コーズのサックスと、リックのユニゾンがしびれる。アル・グリーンの曲をカバーしたM3「Take Me to The River」もググッと来ます。エリオット・ヤミンのソウルフルなボーカルもクールだし、ゲストはユージ・グルーブで、リックのペットとユージのサックスのチェイスがブルージーでたまらない、けれど、フェイド・アウトするのは酷でしょう。メローなリックのペット・サウンドも、この人の魅力。そんなメローでジェントルな音色に酔えるのは、M4「Mallorca」と、M8「Silk」。この2曲は、リックの自作曲で、メロディー・メーカーとしての才能も素晴らしい。ジェフ・ローバーをゲストに迎えての、M7「Delta」と、M9「Radar」は、聴いたとたんに納得のローバー流フュージョンで、リックのペットは風を切るごとく疾走する。ファンキーなビート・ミュージックに、アーバンなポップ・メロディーが詰まった作品は、全11曲例外なくワクワクさせてくれる。リックいわく、昔のCTIサウンドが好みだそう。ボブ・ジェイムスや、デオダート、あの頃のフュージョン・サウンドにはワクワクしたっけ。リックのこの作品、あの頃のエネルギーに通じて、ガツン。YouTubeにアップされているスタジオ・ライブ版「Get Up And Dance」は必見(必聴)。アルバムのデイブ・コーズに替わって、ユージ・グルーブが共演している。終盤のリックとユージのチェイス・プレイは、アルバムのデイブ版よりパワフルな演奏。エリオット・ヤミンがボーカルで参加する「Take Me to The River」も、フェイド・アウトしない、熱いパフォーマンスが必見です。

About This Blog

  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
2018年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

2015 Top Recommend (click)

  • Bob Boldwin「MelloWonder」
  • Brian Simpson 「Out of a Dream」
  • Jonathan Fritzen 「Fritzenized」

2014 Top Recommend (click )

  • Greg Manning 「Dance With You」
  • Rick Braun 「Can You Feel It」
  • Michael Lington 「Soul Appeal」
  • Ed Barker 「Simple Truth」

2013 Top Recommend (click)

  • Jeff Golub 「Train Keeps a Rolling」
  • Oli Silk 「Razor Sharp Brit」
  • Patrick Yandall 「Soul Grind」
  • Boney James 「The Beat」

2012 Top Recommend (click)

  • Euge Groove 「House of Groove」
  • Paul Brown 「The Funky Joint」
  • Chris Standring 「Electric Wonderland」
  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
  • Phil Denny 「Crossover」