カテゴリー「サックス」の記事

2018年9月21日 (金)

Gerald Albright 「30」(2018)

Galbright 30ジェラルド・アルブライトの新作は、デビューから30年を記念して、ずばり「30」と名付けられた作品。87年のデビュー作品「Just Between Us」から数えて、19作品目(共演企画ものやライブ、ベストなどの6作品を含む)。その過去作品から、選りすぐった8曲を新しく演奏した内容で、新曲1曲と、ボーナストラック1曲を加えた全10曲(全てアルブライトの作曲)。過去作品の再演とはいえ、古さなど微塵も感じられない、アップデートされたアレンジは比類ない上質感とグルーヴにあふれている。近年作の「Slam Dunk」(2014)、「G」(2016)で披露してきた、縦横無尽のサックスはもちろん、ホーン・セクション、ベースの多重録音ワンマン・プレイが、さらに磨きがかかったサウンドだ。
87年のデビューアルバム「Just Between Us」からは、タイトル曲と「Come Back To Me」の、2曲を再演。「Come Back To Me」では、実娘のセリーナ・アルブライトがボーカルで参加している。
88年の2作目「Bermuda Nights」からは、タイトル曲。91年のライブ盤「Live at Birdland West」から、「Bossa of Nova」。この曲のスタジオ録音は、今回が初めてかも知れない。95年の「Giving Myself to You」からは、「Chips N' Salsa」。97年の「Live to Love」から、「Sooki Sooki」。2004年の「Kickin' It Up」から、「4 On the Floor」を、同曲のボーナス・トラックと2バージョン。ボーナスの方は、ギター奏者リッキー・ワットフォードをフューチャーしたトラックだ。2006年の「New Beginnings」からは、タイトル曲。そして、おそらく、新曲だろう「Road to Peace」は、ミディアム・テンポのバラードで、サックスとピアノのゴスペル・テイストの演奏が聴きもの。
アルブライトの「ベスト・オブ」的な選曲で、キャリアを振り返るという回帰的なコンセプトではあっても、最高にコンテンポラリーなサウンド・デザインで作り上げたところが秀逸。スムーズジャズの第一人者であることを証明する秀作だ。

2018年7月15日 (日)

Phil Denny 「Align」(2018)

Pdenny alignサックス奏者フィル・デニーの新作。デビュー・アルバム「Crossover」(2012)にしてベスト級の作品だったし、その後、「The Messenger」(2013)、「Upswing」(2015)と、コンスタントに秀作をリリース。フレッシュでキャッチーなサウンドが、作品ごとに磨きがかかる、期待の新世代アーティストだ。この新作も、全11曲、外れ曲なしの、成長を感じさせる秀作。

M1「Switch Up」は、ファンキーなビートがキャッチーで、こういうグルーヴがこの人らしい、ハイライト曲。M2「Feel Alright」は、ポップなメロディが秀逸な、ヘビロテ間違いなしの曲。ギターの客演は、デヴィッド・P・スティーヴンス。オーバーダビングしたサックスの音色が、新鮮な方向を感じる佳曲。M5「Brio Bounce」も、ファンキー路線のビート・チューンで、この曲でも、オーバーダビングしたサックスが印象的で、スピード感があふれる曲。この人は、基本的にはテナーの奏者だけれど、曲によってソプラノ・サックスも吹くことがある。今作では、M6「Solux」で、ソプラノを吹いている。ミディアム・スロウなバラード曲で、後半の、テナーも絡めたオーバーダビングの盛り上がりが聴きどころ。この曲のギター客演は、アダム・ホーリー。ソウルフルな2人のインタープレイがスリリング。M8「Align」でも、ソプラノを吹いてのバラード曲。リリカルに奏でるソプラノのフレージングが、今作での新境地を感じさせる曲。M9「Honey Step」は、冒頭からテナーのソリッドな音色が、オーバーダビング多用のアルバム中では、かえって新鮮に聴こえるビート・チューン。M11「Kinda Wanna」は、グルーヴ全開の爽快な曲。ダビングを多用したホーン・サウンドがパワフルで、アルバムの締めくくりに相応しいラスト曲。

次回の作品は、ライブ録音のように、もっとソリッドなサックスのパフォーマンスを聴いてみたい。

2018年6月24日 (日)

Michael Lington 「Silver Lining」(2018)

Silverlining

マイケル・リントンの新作は、「Soul Appeal」(2014)から、「Second Nature」(2016)と続いた、メンフィス・ソウルへのオマージュを込めた、連作の3作品目。過去2作品と同様に、プロデューサー/キーボード奏者バリー・イーストモンドが、リントンとタッグを組んだ作品。参加ミュージシャンは、レイ・パーカー・ジュニア、ポール・ジャクソン・ジュニア、レスター・スネル率いるメンフィス・ホーン、など、過去2作と同様のセッション・メンバーが固めるが、3作目ということもあり、ソウルフルな熱量が、今まで以上に沸騰して、ガツンとやられる作品だ。アイザック・ヘイズのバンド・メンバーでもあった、オルガン奏者レスター・スネルが率いる4管ホーン・セクションが、今作でも「本物の音」聴かせてくれる。まずは、M1「City Life」は、キャッチーなファンク・チューンで、リントンのシルキーなフレージングに、重厚なリズムとホーン・セクション、加えてユーズリミックスのギター奏者デイヴ・ステュワートが客演するハードなギター・プレイが交錯する必聴のハイライト曲だ。M2「Break the Ice」も、メンフィス・ホーンズがサポートする演奏。ソウルフルなホーンと、オルガンと、熱いフレーズを吹きまくるマイケル、ゴージャスな演奏。M6「Can't Say Goodbye」は、スウィート・ソウルなバラード。泣きメロを吹くリントン節が、ハートにグッと来てたまらない。この曲の、ハモンドオルガン演奏はレスター・スネルで、これこそメンフィス・ソウルのムードたっぷり。M4「People Get Ready」は、おそらく78歳になろうかという、メンフィス・ソウルのレジェンド・シンガー、ウィリアム・ベルがゲストで歌う曲。オリジナルは、カーティス・メイフィールドが在籍したインプレッションズの1965年の名曲。アーバン・ムードなマイケル・リントンが聴けるのが、M5「Silver Lining」や、M11「Straight to the Top」。都会的なメロディーとサウンドに、洗練されたこのフレージング。アルトなのにテナーのようにパワフルに吹くところも、彼の魅力です。ところで、マイケルは音楽以外のビジネスにも手腕を発揮していて、自分の名前をブランドにした「葉巻」と「ワイン」の販売も手がけている。煙をくゆらせて、ワインを飲めば、彼の音楽がさらに味わい深いということかな。

2018年6月17日 (日)

Michael Paulo 「Beautiful Day」(2018)

Beautifulday

ハワイ出身のマイケル・パウロは、40年を超えるキャリアのジャズ・サックス奏者。ミドル・ネームは「タツオ」というそうな、日系の人だ。日本でも人気のあったハワイのバンド「カラパナ」の初期のメンバーでもあり、ソロ奏者としてのデビュー作品「Tats In The Rainbow」(1979)は日本のみでリリースしている。その後は、アル・ジャロウのツアー・メンバーを10年に渡り務めたり、リック・ブラウン、ピーター・ホワイト、ジェフ・ローバー、デビッド・ベノワ、ケニー・ロギンス、ボビー・コードウェル、など、多くのビック・ネームと共演。矢沢永吉や、杏里、といった日本のポピュラー・アーティストとの共演も多いから、デビュー当時から知る日本のリスナーは多いはず。最近では、トロンボーン奏者ジェフ・アルパートの「Open Your Heart」(2017)で、客演していたのが記憶に新しい。ソロ名義としては、10年ぶりだそう、この新作は11枚目のソロ作品。5曲のカバーと、8曲のオリジナルからなる全13曲の作品。ポール・ブラウン、デヴィッド・ベノワ、ポール・ジャクソン・ジュニア、レイ・パーカー・ジュニア、らがサポートを務めている。マイケルの人間性が現れているような、ソフトでジェントル・トーンのサックスの音色が心地いい。M5「Your Song」(エルトン・ジョン)や、M8「Fragile」(スティング)、M13「You've Got a Friend」(キャロル・キング)といった、ポップス名曲のカバーで奏でる、「てらい」のないフレージングが美しい。M2「Mr Magic」は、お馴染みのグローバー・ワシントン・ジュニアの名曲のカバー。この人の系譜が、グルーバーはもちろん、デビッド・サンボーンや、果てはポール・デスモンドまでつながっているのが想像できる、ソフトでリリカルな好演奏だ。オリジナル曲のハイライトは、M1「Beautiful Day」で、ギターの客演はポール・ブラウン。R&Bテイストのコンテンポラリーなサウンド、サックスの響きは都会的で、アダルト・オリエンテッドな佳曲。M4「Back with the Funk」は、ポール・ジャクソン・ジュニアのギターが客演した、ディスコっぽいノリがどこか懐かしいオールド・スクールな曲。M6「Who You Gonna Call」もキャッチーな曲、ギターはレイ・パーカー・ジュニアで、打ち込み系のサウンドに、ギターとサックスのファンキーなヴァイブレーションがかっこいい。マイケル・パウロを「昔の名前」で知っている日本のコアなリスナーも、きっと目が覚めるに違いない好感度高い作品。

2018年6月 3日 (日)

Vincent Ingala 「Personal Touch」(2018)

Personal_touch

スムーズジャズ界の若きスター、ヴィンセント・インガラの待望の新作。10代でデビュー以来、3枚のソロ作品は、新作ごとに成長著しい内容は、目(いや耳だな)を見張るアーティストだ。前作「Coast to Coast」(2015)の洗練されたサウンドは、もうメジャー級のクオリティだったし、その前後に、グレッグ・カルーカスピーター・ホワイトローマン・ストリート、といったトップ級アーティストからゲスト参加に引っ張りだこなことも大きな評価を受けている証だろう。さて、新作は全10曲、ゲストは無しの、サックス、キーボード、ギター、ドラムス、ボーカルなど、全ての演奏を彼一人で作り上げた作品。2曲のカバーを除く全曲も彼のペンによるものだし、プロデュースはもちろん、ミックスまで手がけて、サックス奏者に止まらないマルチ・アーティストの力量を発揮した秀作。M1「Personal Touch」は、キャッチーなポップ・メロディーと、艶っぽさが出てきたサックスのフレージングが白眉なベスト・チューン。M2「My Kind of Day」も、負けず劣らずのキャッチーなポップ・チューン。この曲での、ソプラノ・サックスもリリカルなフレージングを聴かせてくれる。M5「I Think I'm Falling in Love (With You)」では、さりげなくボーカルも披露している。M7「Feng Sway」は、彼のギター演奏が主役のトラック。ニルスを思わせるギター・テクに注目。M9「Snap, Crackle, Pop」のホーン・セクションをバックに、サックスがシャッフルするグルーヴはかっこいい。M4「Dream Girl」は、チル・ムードな曲で、彼のピアノ演奏が主役のトラック。ピアノは、ジョナサン・フリッツェンという感じなのがご愛嬌かな。カバー曲は、M3「Love Zone」がビリー・オーシャン、M6「If You Were Here Tonight」はアレクサンダー・オニール、といういずれも80年代のブラコン・ヒット曲を取り上げている。M8「Can't Stop the Rain From Falling」はチル・ムードの曲で、ポール・ハードキャッスルのような感じで、インガラの今までの路線からすると、ちょっと異色。他の曲でも、シンセやチル・ムードのサウンド・カラーに、ポール・ハードキャッスル「風」な趣が感じられる。ワンマン・バンドで作り上げたということで、ハードキャッスルが「お手本」なのかな。

2018年3月24日 (土)

Paula Atherton 「Shake It」(2018)

Shakeit

女性サックス奏者、ポーラ・アサートンの新作は、この人らしいパワフルなサックスが堪能できる秀作。冒頭の曲、M1「Low Rider」は、意表を突かれるカバー曲で、70年代のファンク・バンド、ウォーの代表曲。オリジナルは、1975年のアルバム「Why Can't We Be Friends?」の収録曲。重量級のボーカルが、オリジナルに忠実な構成だが、アサートンのパワフルなフルートが印象的。フルートで、ヘビー・ファンクと来たか。必聴に値します。M5「You Got It」は、ハイライト級のスムーズ・ジャズ・ナンバー。弾けたアサートンのサックスが爽快な演奏。キャッチーなピアノ演奏は、ザ・リッピングトンズのビル・ヘラー。アルバムでは毎回、彼女自身のボーカルも披露するのが定番になっている。M4「Good Love Gone Bad」がそのボーカル・ナンバーで、サックス同様にヘビー・シャウトするブルージーな曲。かと言えば、M7「Say Goodbye」は、ポップなジャンプ・ナンバーで、こちらも彼女のボーカルとサックスが、ノリの良いワンマン・アンサンブル。M8「Shake It」は、ホーン・セクションを従えてリードするサックスと、トランペット奏者シンディ・ブラッドリーの掛け合いが聴きもののファンク・チューン。二人の掛け合いは、同様に、骨太なファンク・ビートのM6「All About the One」でも聴ける。アサートンとブラッドリーは、「ジャズ・イン・ピンク」で共演したり、それぞれのアルバムに毎回ゲスト参加したりと、息のあったところを聴かせてくれる。M9「My Song for You」は、ギター奏者ニック・コリオーネの曲で、彼のギターとアサートンのサックスによるコラボ曲。メランコリーで都会的なメロディーと二人のフレージングが、ハートに沁みるいい曲です。「カリンバ・ミュージック」からのリリースだった前作「Ear Candy」(2015)は洗練された作品だった。今作は「カリンバ」からのリリースではないようだけれど、アサートンの活き活きとしたところが聴けるベスト級作品になった。

2018年3月18日 (日)

Marion Meadows 「Soul City」(2018)

Soulcity_2

スムーズ・ジャズは、定義の確立していないジャンルかもしれないが、それはコンテンポラリーな音楽として、時代と共に変容している音楽だからだろう。派生的には、ジャズを始まりとして、コンテンポラリー・ジャズ、クロスオーバー、果てはフュージョンといったスタイルを経たインストルメンタル(演奏中心の楽曲)が中心なので、ジャズのサブ・ジャンルのようなネーミングになったのではないのかな。今や、そのスタイルは、インストに限らず、ボーカル曲であれ、ジャズやフュージョン寄りから、R&Bやポップ・チューンまで様々だ。ちなみに、「Smooth」を付けたネーミングも、スムーズ・ソウルや、スムーズR&B、といった多々の派生形も生まれている。スムーズ・ロックや、スムーズ・ブルース、スムーズ・ラップなんて、あるのかもしれない。それらは、ジャンルというより、文字通り心地いいミュージックの「くくり」ではないかな。それでも、多様な「スムーズ・ジャズ」の中で、そのメインストリームは、ウェル・アレンジメントで構成されたインストメンタル楽曲で、グルーヴがなくてはならない、というのが筆者のこだわりです。さて、スムーズ・ジャズ界のスーパースター、サックス奏者マリオン・メドウズの新作は、いつも通り間違いのないグルーヴを聴かせてくれる作品。豪華なゲスト歌手を迎えて、ボーカル曲が大半をしめる今作は、「スムーズR&B」の秀作だ。M2「Dreamin」は、女性ボーカリストのマイーザを迎えて、ギター奏者ピーター・ホワイトも加わった、ラテン・スタイルのハイライト曲。M5「Time After Time」は、シンディ・ローパーの名曲カバーで、ボーカルは、ピーボ・ブライソン。M8「Samba De Playa」のボーカルは、ウィル・ダウニング。M9「No Wind, No Rain」は、女性ジャズ・ボーカリストのダナ・ローレンが歌うジャージーな曲。ローレンのハスキーなスキャットと、メドウズのムーディーなソプラノ・サックスに、シャープなアコースティック・ピアノの会話が美しい。歌伴でも、メドウズのリリカルなソプラノは魅了的だけれど、やっぱり彼が主役のインスト曲が聴きたい。インスト3曲の中では、M1「Sould City」が光っている。ゲストは、ギター奏者ノーマン・ブラウンと、トランペット奏者のジョーイ・サマービル。3人のインタープレイが聴きものの、スロウ・ファンクな曲。次作は、この路線でインスト・オンリーの作品を期待したい。

2018年2月23日 (金)

Chris Godber 「Momentum」(2018)

Momentum

サックス奏者クリス・ゴッドバーの前作「Starting Over」(2015)は、サックスの音色もサウンドもフレッシュな佳作で、個人的には高感度の高い作品だった。この新作は、洗練されたサウンドに磨きがかかり、成長著しいところを感じさせてくれる秀作だ。前作と同様に、同じバンドで演奏するキャレブ・ミドルトン(key)や、ロウェル・ハーパー(g)らとの演奏も、生き生きとしたアンサンブルで、グッド・バイブレーションを聴かせてくれる。今作のプロデュースは、レイモンド・ダリウス・ジャクソンという人で、ゴッドバーの演奏バンドでもキーボード奏者を務めているようだ。ダリウス・ジャクソンや、キャレブ・ミドルトンらとの共作を含めた全11曲は、なかなかいい曲ばかり。ボーカル曲など無いけれど、いずれもオーソドックスなスタイルのインスト演奏は安心できる内容だ。M1「Momentum」は、冒頭のテナーの音色が艶っぽいところが印象的なキャッチーなスムーズジャズ・ナンバー。ゴッドバーは、テナー、アルト、ソプラノいずれも吹いているけれど、今作ではテナーの音色がなかなかいい感じだ。M6「Sizzle」は、ギター奏者アダム・ホーリーが客演(曲も共作)したハイライト・ナンバー。先行してシングルでも出ていた曲で、自信作だろう。M3「Living Water」は、ボブ・ボールドウィンが参加した曲。ボールドウィンのピアノとユニゾンで奏でるテーマから、彼のピアノのおかげでやっぱり一味違う演奏。M11「Chips'n'Salsa」は、ボッサ・リズムのコンテンポラリー・ジャズ曲。ピアノやリズム・セクションのライブ感のあるスウィングした演奏が光っていて素晴らしい。ゴッドバーのジャージーなフレージングも、巧者なところを聴かせてくれる。ゴッドバーは、「喘息」の持病を持っていながらの、演奏家である。同時に、呼吸ケアのスペシャリストである呼吸治療のセラピストとしても活動しているそうである。喘息に悩んでいる人たちに、勇気を与えたいと言う。この人も尊敬に値するアーティストなのである。

2018年2月11日 (日)

Gary Palmer 「Coast 2 Coast」(2018)

Coast2coast

フロリダで活躍するサックス奏者、ゲーリー・パーマーの2作目のフルアルバムは、アーバン・ソウルのムードに満ち溢れた佳曲ぞろいの秀作だ。パーマーのサックスは、ボーカルならハスキー気味の音色と、ゴスペルを感じる官能的なフレージングが魅力的。ミディアム・スロウが中心の曲は、クワイエット・ストームと形容できるアーバン・サウンドで、スウィート・ソウルや、フィリー・ソウルのムードがたっぷり。パーマーにとってこの作品は、スムーズ・ジャズの著名アーティストとコラボしたところが新機軸で、バラエティに富んだ内容。それでも、トータルなサウンドはまとまりがあって、なかなか素晴らしい作品。コラボしたアーティストは、ポール・ブラウンティム・ワトソンデヴィッド・P・スティーブンス、シンガーのケヴィン・フォスター、日本人ギタリストのKay-Taこと松野啓太、そして、ニルスといった面々。ポール・ブラウンが参加した3曲は、タイトル曲M1「Coast 2 Coast」、ボブ・ボールドウィンのキーボードがフューチャーされたM12「Land of the Sun」、スタンリー・クラークの初期の名曲をカバーしたM9「Lisa」と、いずれもポール・ブラウンらしいキャッチーなサウンドと、パーマーのサックスがかっこいい、必聴の演奏。Kay-Taが参加したM4「Misunderstanding」は、グッとくる「泣き」のソウル・バラード。デヴィッド・P・スティーブンスのM5「One More Time」も、さらに「泣き」のフィリー・ソウル。ニルスが参加したM10「Windsurfer」は、視界の広がる疾走感溢れる演奏。シンガーのケヴィン・フォスターが参加した2曲は、M3「I Can't Get Over You」と、M13「Ask Me to Stay」で、フォスター自身のソロ・アルバムでパーマーが客演した「Love Is Pain」に含まれていた曲。おそらく同じテイクだろう。いずれも、スウィート・ソウル・バラードで、テディ・ペンダーグラス風といった感じかな。

ちなみに、ゲーリー・パーマーはフロリダ州ラウダーヒルで警察官を務めていたそうで、2010年に引退後も、少年院で要職を務めているという。そんな社会貢献と並行して、音楽活動をしているというから、尊敬すべきサックス奏者なのである。

2018年1月27日 (土)

Walter Beasley 「The Best of Walter Beasley: The Affable Years, Vol.1」(2018)

Affable

サックス奏者ウォルター・ビーズリーは、30年のキャリアを有する、20枚以上のソロ作品を出しているスムーズジャズ界有数のプレイヤーである。サックスのみならず、シンガーでもあり、バークリー音楽大学でプロフェッサーも務める教育者でもある。彼のスタイルは、メロウでチルアウトなR&Bテイストのサウンドに、クールな音色のサックスが特徴。グローバー・ワシントン・ジュニアのフォロワーとして形容されることが多いけれど、ポスト・グローバーとして90年代の初期作品から、今につながるスムーズジャズのスタイルを作り上げたアーティストだ。新作はベスト集で、自身のレコード・レーベル「Affable」からの近年作品を中心にセレクトされている。全11曲の内、(おそらく)新曲1曲と、残りの10曲は、過去の6枚のアルバムからセレクトという構成。 新曲は、M8「Late Night Lover」で、R&Bシンガー、ラヒーム・デヴォーンのボーカルをフューチャーしたソウル・ナンバー。ビーズリーのサックスは、歌伴に徹して目立たないけれど、しぶーいフレージングがかっこいい。

2003年のアルバム「Go with the Flow」からは、アルバムタイトル曲のM3「Go with the Flow」を収録。セレクト曲の中では一番古いトラックだけれど、クールなサックスとサウンドは違和感が無い。

2007年の「Ready for Love」からは、2曲で、M7「La Nina」と、「Be Thankful」。 「Be Thankful」は、ビーズリーのボーカルが冴えるカバー曲。オリジナル曲は「Be Thankful For What You've Got」という曲で、フィリー系ソウル・シンガーのウィリアム・デボーンのデビュー曲であり、1974年のヒット曲。ビーズリーのボーカルが、ソウルフルでしぶーい歌声。2010年のライブ・アルバム「In the Groove」でも、演っていたお気に入りの曲のようだ。ちなみに、イギリスの女性歌手ルーマーも、「Love Is the Answer」(2015)でカバーしていた曲で、ルーマーの歌声で洗練されたバージョンだった。スウィートソウルの隠れた名曲かな。

2009年のアルバム「Free You Mind」からは、M1「Barack's Groove」、とM11「She Can't Help It」の2曲。ちなみに、「Barack's Groove」のバラクとは、オバマ前大統領のファースト・ネームで、文字通りオバマ前大統領に捧げたオリジナル曲。この曲を冒頭に持ってきたのは、反トランプ大統領という主張かなと想像してしまうね。

2010年「Backatcha」からは、3曲で、M2「Lovely Day」、M4「Expressway」、とM6「Ellie's Theme」。「Lovely Day」は、ビル・ウィザースの有名曲のカバー。 2015年の「I'm Back」(2015)からは、M9「Skip to My Lew」。最近作のアルバム「Blackstreams」(2017)からは、M5「Come on Over」。

ウォルター・ビーズリーの業績を把握するには最適な作品集。スムーズジャズを語るには、押さえておきたいアーティストだ。第1集となっているので、続編が出るのだろう。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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  • Paul Brown 「The Funky Joint」
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  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
  • Phil Denny 「Crossover」