カテゴリー「ギター」の記事

2018年8月27日 (月)

Nils 「Play」(2018)

Nils Playギター奏者ニルスの新作は、前作「Alley Cat」(2015)に続いて、クオリティを高めた秀作。ニルスのスリリングなギターが快走して、タイトなリズムやホーン・セクションと作るグルーヴは爽快だ。共作を含むオリジナル10曲はいずれも佳曲ばかりで、ニルスの作曲センスが光る。コンテンポラリーなR&Bスタイルの曲が際立っていて、今回多くの曲に参加しているジョニー・ブリット(ボーカル、キーボード、トランペット)の登用がハマっている。
「Coast to Coast」は、ハイライトなキャッチー・ナンバー。キレが良くて、セクシーなところも聴かせるニルスの魅力が発揮された曲。「Sway」は、ジョニー・ブリットのクールなトランペットが印象的な、スロウ・バラード。ニルスの、ブルージーなプレイも光っている。「Straight Down the Line」は、ホーン・セクションが盛り上がるファンキーなナンバー。キーボード奏者フィリップ・セスが客演。「Play It」は、ニルスとキーボード奏者ネイト・ハラシムが共作した、アタックのあるメロディが魅力の曲。ネイト・ハラシムも客演しているタイトなアンサンブルが聴きどころ。「California」は、サックス奏者スティーヴ・コールが客演した曲。コールのサックスが爽快だ。アルバム最後の曲「Fire of My Heart」は、新しい作風を感じさせる美しい曲。賛歌のように歌い上げるコーラスが印象的。ドラムスは、セッションドラマーとして有名な、サイモン・フィリップス。ドラマチックな、ドラミングに注目。
カバー曲は、「We Got Love」(ベイビーフェイス)と「Careless Whisper」(ワム!)の2曲。「Careless Whisper」といえば、例のサックス・ソロだが、ここではブランドン・ウィリスが聴かせてくれる。いずれも有名曲のカバーで存在感があるが、オリジナル曲だけでトップ級の作品。

2018年8月20日 (月)

Steve Oliver 「Illuminate」(2018)

Soliver illuminateスティーヴ・オリバーの新作は、久しぶりのインストゥルメンタル作品。「World Citizen」(2012)の後、「Best of...so far」(2014)はベスト・アルバム(2曲の新曲入り)だったし、その後の「Pictures & Frames」(2016)は全曲が自身の歌声による、歌詞付きソング、いわゆる歌もののボーカル・アルバムだったので、新曲のインストゥルメンタル・アルバムとしては6年ぶりの新作だ。オリバーは、過去作品でも、必ず数曲はボーカル・ソングを入れていて、シンガーとしても「二刀流」の才能の持ち主。だが、今作はその歌ものを「封印」して、全11曲演奏オンリーの意欲作となった。内容も、文句なしのベスト級だ。
オリバーのトレード・マークである、色彩感豊かなギター・シンセや、ポップな歌詞無しヴォーカリーズ、などを多用したサウンドはいっそう磨きが掛かり、スピード感溢れるギター・フレージングも冴え渡る曲ばかり。サポート・ミュージシャンも巧者揃いで、隙のないグルーヴが堪能できる。特に、半数を占める曲で脇を固めている、ジミー・ハスリップ(ベース)、ジョエル・テイラー(ドラムス)、による鉄板のリズム隊は重量級。フィリピン出身のジャズ・ピアノ奏者タテン・カティンディグの流麗なフレージングも必聴。ゲストのサックス奏者も多彩で、ウェール・ラーソン、ネルソン・ランジェル、チェース・ウナ、ビリーレイ・シェパード、がそれぞれ曲により登場する。18才でデビューしたチェース・ウナはデビュー作「On The Chase」(2017)を、ビリーレイ・シェパードのデビュー作「Silk」(2017)を、それぞれオリバーがプロデュースを手掛けている。
1曲目「Full Tilt」は、スピード感のあるキャッチーな曲。サックスは、ウェール・ラーソン。オリバーの、ギターとヴォーカリーズの爽快感、これこそオリバーの「十八番」のような曲。アルバム・タイトル曲「Illuminate」も、爽快な曲想を奏でる流麗なギターと、リリカルなピアノが活躍する演奏。シングルになっている「Vamonosu」は、キャッチーなラテン調のハイライト曲。サックスは、チェース・ハナ。「Circles」は、コンテンポラリー・ジャズのアンサンブルが秀逸なベスト・トラック。ハスリップ、テイラーのリズム隊に、サックスはネルソン・ランジェル、ピアノはカティンディグ。オリバーのギターは、正統派のジャズ・アプローチを披露する。「Hidden Sun」も、オリバーに、ハスリップ、テイラー、カティンディグによる鉄板のアンサンブル。コンテンポラリー・ジャズの、リリカルでクールなグルーヴが聴くほどに味わいを感じる演奏。「City of Lightning」は、メランコリーなメロディの曲。ビリーレイ・シェパードのサックス、オリバーのアコギとヴォーカリーズ、がブレンドするサウンドが美しい。
前作「Pictures & Frames」は、全曲がボーカル曲だったので、まさかシンガーに「転身」かなと心配したけれど。今作品は、オリバーのギター奏者およびマルチなサウンド・クリエーターとしての実力を遺憾なく発揮した内容に、大安心。

2018年7月 2日 (月)

Dee Brown 「Remembering You」(2018)

Rememberingyou

アメリカ中西部ミシガン州のデトロイトを基点に活躍する、ギター奏者ディー・ブラウンの新作。スムーズジャズ専門レーベルの「インナーヴィジョン・レコーズ」から、前作「Brown Sugar, Honey-Coated Love」(2014)に続く、2枚目のフル・アルバム。この人のギター奏法は、一聴して分かる「ジョージ・ベンソン」フォロワーだ。大御所ノーマン・ブラウンは元より、ティム・ボウマンや、ニック・コリオーネ、ポール・ブラウン、ユー・ナム、ロニー・スミス、などなど、「ベンソン・スタイル」の系譜を受け継ぐギター奏者は、スムーズジャズ界のメインストリームだ。いかに、ジョージ・ベンソンの影響が偉大かは、そのフォロワーの活躍が証明している。さて、ディー・ブラウン。いずれの曲も、R&B味のスウィート・メロディーに乗って、この人のギターのパッセージとサウンドが繰り出すグルーヴに、ググッと引き込まれる好盤。全11曲いずれもキャッチーな曲ばかり、中でもハイライトはシングルが先行していたM2「Hey Baby」だろう。急逝したという、彼の亡きフィアンセに捧げた曲だという。そのフィアンセは、前作のアルバムやシングルでも、バック・コーラスを担当していた人。「Hey Baby」のイントロで聴けるヴォイスは、フィアンセ本人のもの。という訳で、少しメランコリックなメロディーが心に残るけれど、ファンキーなギターのフレージングや、サックスとのインタープレイのヴァイヴレーションは、むしろ明るくてキャッチーに響き渡る佳曲。M1「I Want You Too」は、スキャットとギター・パッセージのユニゾンが、まさにベンソン風なファンキーでノリのいい曲。繰り出すオクターブや速弾きパッセージが素晴らしい。M10「Beauty Within」も、ボーカルとギターのジャジーなユニゾンが印象的な、スウィート・メロディーのミディアム・バラード。ギターとボーカル(本人だろう)のユニゾンは、ベンソン風と形容する必要なしの、ブラウンらしいスタイルと言っていい佳曲だ。ジョージ・ベンソンと言えば、ギターは日本が誇るアイバニーズのGBモデルだが、ディー・ブラウンの弾くギターは、アメリカのイーストマンというギター。イーストマンは、ヴァイオリンやチェロを創業とするハンド・メイドのメーカー。ロビー・ロバートソン(ザ・バンド)や、リッチー・フューレイ(バッファロー・スプリングフィールド)、リチャード・トンプソン(フェアポート・コンヴェンション)など、ロック、ジャズ、カントリーなどの音楽界で愛好するアーティストが多いギター。ブラウンの使用しているイーストマンのセミアコは、ソフトな音色が特徴的。ミディアムやスロウで奏でるヒューマンな音色は美しい。ラストのバラード曲M11「Remembering You」は、亡きフィアンセのストーリーを知ってしまった以上は、そのフレージングと音色に、ことさらに包容力を感じて、引き込まれてしまうなあ。

2018年5月27日 (日)

Jay Soto 「On The Verge」(2018)

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ジェイ・ソトは、2005年のデビュー・アルバム「Long Time Coming」から活躍しているギタリスト。この新作で、通算7枚目だから多作ではないけれど、スムーズジャズ・ファンなら押さえておきたい、ツウ好みのアーティストだ。デビュー作品は、ポップな楽曲が満載で、彼のギターのフレージングは爽快で、ドライビング・ミュージックにピッタリといった趣きの佳作だった。2枚目の「Stay Awhile」(2007)では、ジェフ・ローバーやポール・ブラウンといった一流どころをゲストに迎えて、さらに都会的で洗練されたサウンドを作り上げた秀作で、今聴いても古さは感じない、ベスト級のスムーズジャズ作品。クリアなシングトーンと、アクセントのオクターブのパッセージが、疾走感と清涼感を感じるグルービーなギター。そして、ポップでキャッチーな楽曲がこの人の特徴で、3枚目の「Mesmerized」(2009)も、そのスタイルが発揮されたスムーズジャズの秀作だった。4枚目の「Morning Glory」(2013)は、彼のピアノ演奏による、ニューミュージック・スタイルの異色の作品。残念ながら、ここでは彼のスムーズジャズ・ギターは聴けない。初期の3枚のスムーズジャズ作品からセレクションされたベスト・アルバム(2013)の後、6作目の「Veritas」(2015)は、またも異色な作品で、全編シンフォニックなオーケストレーションをバックに、ナイロン・ギターを演奏した作品。しばらくは、そんな異色の作品が続いたので、初期ようなスムーズジャズ・スタイルの作品を待望していた。さて、この新作は、なんと、彼自身の歌が中心のボーカル・アルバム。全12曲中、インストは2曲で、10曲がボーカル曲。全曲、彼のオリジナル曲で、70年代後半から80年代のAORやソフト・ロックの路線を踏襲するメロディーとサウンドだ。TOTOや、ケニー・ロギンス、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー、といった懐かしい曲想を彷彿とする曲の数々。彼の歌もなかなかで、歌声はバリー・マニロウ似の感じがするが、どうだろう。貴重なインストの2曲、M3「Yours Truly」、とM7「Got Groove」は、必聴のスムーズジャズ・トラック。特に「Got Groove」の、スピードのあるパッセージが素晴らしい。歌もいいけれど、この人のギターをインストで、たっぷり聴きたい。次作は、原点回帰の全曲インストの作品を出して欲しいなあ。

2018年5月 3日 (木)

Chris Standring 「Sunlight」(2018)

Sunlight

イギリスのギター奏者クリス・スタンドリングの新作は、キャリア20年を祝しての記念碑的な秀作だ。デビュー・アルバム「Velvet」(1988)から数えて、スタジオ作品としては11作目。ほぼ2年にごと、コンスタントに佳作を届けてくれる、スムーズジャズ界の代表的ギタリストで、個人的にもフェバリット・アーティストの一人。アシッドで、ヒップなサウンドと、エレクトリックな音色の浮遊感あふれるギターは、クールなバイブレーションを感じさせてくれる、唯一無二のギタリスト。この新作は、彼のギター演奏、それもインプロビゼーションに比重を置いた内容で、そのクールなグルーヴにたっぷり酔える、素晴らしい作品。いつもの完成度の高い、ポップでダンサブルな曲も、彼の魅力だが、この新作で聴かせてくれるグルーヴ優先のパフォーマンスは、今まで以上にジャズ的で、個人的にはベスト級な内容だ。M1「Static In The Attic」は、レコードのスクラッチ音から始まるところが少し驚かされる曲。スクラッチのノイズと、トークボックスのボイス・エフェクトが絡んだ、ラウンジなムードの背景にファンキーなギターが浮遊するハイライト曲。M2「Aphrodisiac」は、ハンドクラッピングとボイス・エフェクトがヒップな曲。機械的なビートに乗ってスウイングするようなフレージングのなんとクールなこと。ベースとドラムスは、打ち込みではないのに、未来的なビートを感じるリズム・セクションだ。M4「The Revisit」で、ボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノ。M6「God Only Knows」(ビーチ・ボーイズのカバー)で、ジョン・ノベロのアコースティック・ピアノ。M2「Aphrodisiac」では、ミッチェル・フォアマンのフェンダー・ローズ、などのゲスト・アーティストが参加した演奏も光っている。CDを買うと、2曲のボーナス・トラックがダウンロードできる。M9「Do Not Adjust Your Set」は、ブランドン・フィールズ(ザ・リッピントンズのサックス奏者)とピート・クリストリーブ(スティーリー・ダンの「Deacon Blues」でのソロ演奏が有名なジャズ・サックス奏者)、二人のテーナー・サックス奏者によるホーン・セクションがサポートする曲。CD本編のバージョンは、ブランドン・フィールズのソロなのだが、ボーナス・トラックは、ピート・クリストリーブがソロを取るバージョンが聴ける。もう1曲は、本編でボブ・ジェームスが参加した「The Revisit」で、ボーナス・トラックはボブのパートを、Hans Zermuehlenという人がシンセを演奏している。ファンにとっては、「お宝」のようなボーナス・トラックが聴けるのが嬉しい。

2017年11月19日 (日)

Patrick Yandall 「A Journey Home」(2017)

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パトリック・ヤンダールは、キャリア25年のギタリスト。初期から、ほとんどの作品の発表は自己のプライベート・レーベル「Zangi」からのリリースだけなので、メジャーなシーンから距離を置いて、自身の音楽スタイルを徹底しているようだ。真摯なギター・プレイに徹した作品は、R&Bやソウル、ブルース、ファンクといった要素を、キャッチーなメロディーで消化する佳作ばかり。主にテレキャスターの、繊細かつ伸びのあるギター・トーンは、縦横無尽で、時にメローな柔らかさもあって、ひとつひとつの音に、感情移入せざるを得ない魅力がある。音作りは、ワン・マン・バンドの演奏のようで、ギター以外のオーケストレーションも素晴らしい。というわけで、この新作も、ファンキーでメロディアスな作品が並んだ秀作。M1「A Journey Home」は、ブラスやオルガンを効果的にバックに使って、スライドを多用するギターが印象的な、華やかな曲。M3「Cruising Kuhio Hwy」は、そのキャッチーなソフト・メロディーは爽やかな疾走感で、視界が広がるようなポップ・チューン。中盤の、伸びのいいフレージングに魅了される、ベスト・トラック。M6「Spirit Moves」は、「オー・ヤー」というだけの荒削りなコーラスが、なんともファンキーな曲。ギターに絡むピアノも素晴らしく、これもヤンダールの演奏なのかな。M9「Sunday Offering」は、ミッド・テンポのバラード。中音を駆使したフレージングが美しい。「私小説」的な風合いのある作品群で、演奏も味わい深いところが、この人の良さかな。

2017年10月 7日 (土)

Tim Bowman 「Into the Blue」(2017)

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ティム・ボウマンはデトロイト出身のギタリスト。20年以上のキャリアを有する、スムーズジャズ界の重鎮ギタリストの一人。彼の実姉ヴィッキーは、ゴルペル界の名門ワイナンス・ファミリーのマービン・ワイナンスに嫁いだスター歌手。ボウマンも一時期ワイナンズにギター奏者として参加していた。ワイナンズを離れた後、「Love, Joy, Peace」(1996)でソロ・デビュー、その後4作品のアルバムをリリース。この新作「Into the Blue」は9年ぶり、久々の6作目のフル・アルバム。先行してシングル発表していた、M1「City Lights」、M14「Seaside Drive」の2曲や、ギターソロの小品3曲を含む、全15曲。先行シングルの2曲は、ボウマンらしい、キャッチーな都会的なサウンドに、ロマンティックなギターの音色が印象的なハイライト曲。ガットギターを奏でる3曲が光っている。M3「Into the Blue」、M5「Tan Hermosa(So Beautiful)」、M10「Love Forever More」、はいずれもメランコリーな美メロディーを、暖かみのあるガットギターで奏でて美しい。一方ソウルフルな曲もこの人らしい。M13「You Are」は、エラン・トロットマンが客演したスウィート・ソウル。M2「All I Need Is Love」は、メロウ・ソウルな歌もので、ボーカルは、R&Bグループのミント・コンディションのリード・シンガー、ストークリー・ウィリアムズ。ストークリーのボーカルも、ボウマンのギターも、泣きのメロウ節の佳曲。小品3曲も、それぞれわずか1分足らずだけれど、染みるギターにグッと来ます。今度は、ソロでフルアルバムが聴きたいなあ。

2017年8月10日 (木)

Chuck Loeb (1955〜2017)

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ギター奏者チャック・ローブさんが亡くなった。先日の7月31日、享年61歳。近年は癌と戦っていたとのこと。なんとまあ、早すぎる旅立ちではないか。スムーズジャズの才能溢れる逸材が逝ってしまった。最近は体調不良を理由に、フォープレイの公演も参加せず、カーク・ウェイラムやラリー・カールトンが代役を務めていた。今年のグラミー賞にノミネートされた「Unspoken」(2016)がソロ遺作となってしまった。1989年のデビュー作「My Shining Hour」以来、20作品のソロ・アルバムを残した。マイケル・フォアマンとのバンド、メトロのメンバーでもあり、2010年からは、フォープレイのギタリストとして参加して、近作「Silver」(2015)まで3作品に参加。ジェフ・ローバー、エバレット・ハープとの新しいユニット「ジャズ・ファンク・ソウル」にも参加。その他、サイドマンやプロデューサーとして数多くの演奏と幅広い功績を残している。奥さまは、ボサノバ歌手のカルメン・クエスタ、チャック・ローブのプロデュースで新作「Palabras」を出したばかり。スペイン語で歌うクエスタの歌声と、チャック・ローブの温かいアコースティック・ギターの音色、相まって美しいボサノヴァ、まるで2人だけのデュエットのような作品。これが遺作になるなんて。悲しくなんと沁みること。合掌。

2017年5月20日 (土)

Norman Brown 「Let It Go」(2017)

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ギター奏者ノーマン・ブラウンのソロ10作目となる新作は、ギター・プレイはもちろんサウンド・プロダクション全て、「上質」という点で、右に出る進行形のアーティストは見当たらない、完成度の高いスムーズジャズ作品。アルバムのコンセプトは、ブラウン自身のライナー・ノーツから理解するに、生命や幸福、愛、といった奥深いスピリテュアルなテーマで作られた作品。ブラウン節のギター・フレーズとサウンドは、いつもどおりグルーヴを感じるが、上品で透明感のある音の奥行には、彼の精神的なメッセージが隠れているのだろう。M2「It Keeps Coming Back」、M3「Let It Go」の2曲はいずれも、ミディアム・スロウ・メロディのコンテンポラリー・インスト曲で、上品なギターとサウンドが秀逸なベスト・トラック。M10「Liberated」は、BWB名義のファンキー・チューンで、BWBファンには嬉しいハイライト・トラック。曲中から聴ける、カーク・ウェイラムリック・ブラウン、ノーマン・ブラウンのボーカルとギター、3者の「がっぷり四つ(三つ?)」の演奏は鳥肌モノ。ちなみにノーマン・ブラウンは、過去のソロ作品に、BWB名義の演奏を入れている。BWBのフルアルバムは3枚しかないけれど、それぞれのソロ・アルバムに「隠れた」BWB演奏が見つけられるので、ファンは要チェック。さて、M11「Remember Who You Are」も、BWB盟友のカーク・ウェイラムがソプラノ・サックスで参加した演奏で、ブラウンのフレージングがたっぷり聴けるコンテンポラリー・ジャズな曲。M4「Ooh Child」は、70年代ソウルのヒット曲、兄弟ソウル・グループの先駆け、ザ・ファイヴ・ステアステップスによるミリオンセラーのカバー演奏。こちらのボーカルは、トレイシー・カーターという人で、キーボードも演奏している。また、ノーマン・ブラウンの実娘である3人姉妹のボーカル・トリオ「S.O.U.L.(Sisters of Unbreakable Love)」が参加した、M5「Conversations」、M6「Living Out Your Destiny」の2曲が興味深い。いずれ、彼女たちもメジャー・デビューするだろうから、注目したい。もちろん、ノーマン・ブラウンのプロデュースだろうから。アルバム最後の曲、M10「Man in the Mirror」は、言わずと知れたマイケル・ジャクソンのカバー曲。ブラウンは、アコースティク・ギターを演奏している。ゴスペル・グループの「サウンズ・オブ・ブラックネス」が参加して、アルバムを締めくくる「賛歌」に仕上げている。ところで、BWBのアルバム「Human Nature」(2013)は、マイケルの作品集。そのアルバムの最後の曲も、「Man in the Mirror」だった。聴き比べてみてはいかがかな。

2017年1月15日 (日)

Peter White 「Groovin'」(2016)

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ピーター・ホワイトの新作は、全10曲すべてカバー作品集。卓越なメロディー・メーカーでもあるホワイトのオリジナル曲が無いので、残念ではある。それでも、彼のガット・ギター演奏は、いつも以上にリラックスして聴こえるし、選曲もポピュラーな名曲揃いで、オリジナルを逸脱しないアレンジも素晴らしい。どこを切っても、ホワイト流の「グッド・ミュージック」だから、気がつくと愛聴盤になってしまう。M1「Groovin’」(ラスカルズ)、M2「Do I DO」(スティービー・ワンダー)、M8「Sleepwalk」(サント&ジョニー)、など、聴き慣れたメロディーを奏でるギターが心地いい。M4「How Long」は、ポール・キャラックが在籍していた英国のバンド「エース」の隠れた名曲で、ジェフ・ゴラブの名演カバーが記憶に新しい。ホワイトのカバー演奏も、メランコリックで素晴らしい。サックスの客演は、ヴィンセント・インガラ。この選曲はゴラブへのオマージュかな。ステファニー・ミルズのM7「Never Knew Love Like This Before」と、ザ・スリー・ディーグリースの名曲M9「When will i see you again」は、聴き逃せない演奏。いずれも超ヒットのオリジナル曲だけれど、ホワイトのギターで聴けるとは嬉しい。最後の曲M10「Here, There and Everywhere」(ビートルズ)も、心に沁みるギターの名演。ピーター・ホワイトのファンには、彼からの「ギフト」のような作品。

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  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだスムース系の新譜を紹介します。Since 2011。UGASAI
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  • Ed Barker 「Simple Truth」

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  • Oli Silk 「Razor Sharp Brit」
  • Patrick Yandall 「Soul Grind」
  • Boney James 「The Beat」

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  • Paul Brown 「The Funky Joint」
  • Chris Standring 「Electric Wonderland」
  • Vincent Ingala 「Can't Stop Now」
  • Phil Denny 「Crossover」