カテゴリー「ギター」の81件の記事

2020年6月 7日 (日)

Chris Standring 「Real Life」(2020)

ギター奏者クリス・スタンドリングの、13枚目のソロ・アルバムです。前作『Sunlight』(2018)の後、リミックス集『Best of Chris Standring Remixed』(2019)をはさんで、スタジオ作品としての新作です。

サポート陣は、前作にも参加していたアンドレ・ベリー(ベース)、クリス・コールマン(ドラムス)、デイヴ・カラソニー(ドラムス、ザ・リッピングトンズ)らのリズム・セクションと、ゲストはミッチェル・フォアマン(ピアノ)、マット・ロード(フェンダー)、ヴァネッサ・へインズ(ボーカル、インコグニートのシンガー)の顔ぶれです。

オリジナル9曲(1曲は共作)を含む全11曲の内容です。近年の、『Electric Wonderland』(2012)や『Don't Talk, Dance!』(2014)の、ラウンジ・ビートが際立った秀作に比べると、比較的にオーセンティックな味わいの作品です。ギターも従来のエレクトリックに加えて、アコースティックな音色が新鮮です。

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2020年5月10日 (日)

Nils 「Caught In The Groove」(2020)

ニルスの新作は、非の打ちどころがない傑作です。10作目となるソロ・アルバムは、全12曲、カヴァー曲なし、自作オリジナルで固めた会心の作品。

演奏陣は、ミッチ・フォアマン(キーボード)、ジョニー・ブリット(キーボード、コーラス、ホーン・セクション)、ダリル・ウィリアムス(ベース)、クリデン・ジャクソン(コーラス、キーボード)、オリバー・C・ブラウン(パーカッション)など、前作『Play』(2018)でも参加していた布陣が中心です。

演奏陣の創るサウンドは隙がなく緻密ですが、今回はゲストの独奏はほとんどなく、終始にわたりニルスのギター演奏が主役として躍動します。オーガニックなリズム・セクションに、ホーン・セクションやシンセを配したアレンジは絢爛で、ヒット・ポップスのように均整のとれたサウンド。ニルスのギターは、派手にテクニックをひけらかすのではなく音色の変化を繰り出して魅力的です。シャープな音粒や、スイングするコード・ストローク、エコーによるトリップ感など、惹き込まれるディテールが途切れません。

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2020年3月20日 (金)

Emilio Diaz 「Adiós」(2020)

エミリオ・ディアスは、アルゼンチン生まれのギター奏者です。4歳からギターを始めて14歳でバンド演奏に加わり、2012年からプロとしてソロ活動を開始したそうです。おそらくまだ20代後半だと思われます。

デジタル配信で聴ける作品は、『Se Va La Tarde』(2014)『Voy』(2018)『Desde Agentro』(2019)があります。本作がソロ・アルバムの4作目となる新作です。1作目はライブ録音で、2作目も半数がライブ録音、3作目と本作がフルのスタジオ録音です。ルーツからして、フラメンコやサンバなどのラテン・ジャズを想像しましたが、ジョージ・ベンソンやリー・リトナーらの影響を受けた演奏スタイルでコンテンポラリーな音楽を披露しています。

<Adiós>は哀愁的なメロディの曲で、ピアノとギターがラテン的なフレーズを繰り出しますがなかなかポップな佳曲です。

<Enero>のギターとスキャットのユニゾンは、ジョージ・ベンソン流とはいえ瑞々しいムードが個性的です。
<Tarde>は軽快なフレーズのギターが爽快な曲。親しみやすいフレーズを、自然体で弾きこなす演奏に好感度が上がります。
<Tal Ves Manana>はビバップ・スタイルのジャズ演奏。流麗なパッセージはバーニー・ケッセルを彷彿として、伝統的な技量を聴かせます。

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2020年3月 2日 (月)

Ronny Smith 「Raise The Roof」(2020)

ロニー・スミスは、アメリカ東海岸の都市、ボルチモアを拠点に活躍するギター奏者です。長年にわたり、米国陸軍軍楽隊で、キャリアを積んだそうです。

初期のソロ作品は、ローカルのレーベルから4枚の作品。その後近年は、サンディエゴのインディ・レーベル、パシフィック・コースト・ジャズから『Just Groovin’』(2009)と『Shake It Up』(2017)を発表しています。2作の間に、別レーベルから『Can’t Stop Now』(2013)も出しています。この新作は、通算8作品目のソロ作品で、ユー・ナムが率いる《スカイ・タウン・レコーズ》からのリリースです。

スミスの演奏は、ジョージ・ベンソンやノーマン・ブラウンの影響を受けたスタイル。オクターヴ奏法を操るところは、オリジナルのウェス・モンゴメリーより、ロニー・ジョーダンをさらに洗練したような味わいを感じます。ロング・フレーズを、小刻みに単音をつなぐテクニックが個性的です。

本作は、8曲のスミス自身のオリジナル曲とカヴァー2曲の内容です。ほぼ全曲、スミス自身の演奏(ギター、キーボード、ベース等)で作られています。アーバンなムードの楽曲とサウンド、メロウな音色のギターが都会的なムードで統一されています。

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2019年12月29日 (日)

Joyce Cooling 「Living Out Loud」(2019)

女性ギター奏者、ジョイス・クーリングの新作は、なんと10年ぶりとなるオリジナル・アルバムである。クーリングは、1989年にデビュー・アルバム『Cameo』を出しているが、その10年後にメジャー・レーベルのヘッズ・アップと契約して出した2作目『Playing It Cool』(97年)と3作目『Keeping Cool』(99年)が当時のフュージョン・シーンで話題となり人気を博したギター奏者だ。デビュー以来、クーリングのパートナーであるキーボード奏者ジェイ・ワグナーと作曲からプロデュースまで共作している。

西海岸やブラジリアン・テイストのある音楽性は、90年代後半はまだフュージョンのジャンル分けだったと記憶している。メロウで爽快な音楽は、スムーズ・ジャズのスタイルの先駆けであり、クーリングの旧作は活き活きとして今でも古さを感じない名作が揃っている。

 

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2019年12月 1日 (日)

Ray Obiedo 「Carousel」(2019)

レイ・オビエドは、サンフランシスコを拠点に活躍するギター奏者。70年代後半からキャリアをスタート、オルガン奏者ジョニー・スミス、ハービー・ハンコック、ジョージ・デューク、タワー・オブ・パワー、マリオン・メドウズ、ラテン・パーカッション奏者ピート・エスコヴェードなど、ジャズ/フュージョンを中心に多くの著名ミュージシャンと共演している。ソロとしてのリーダー・アルバムは、デビュー作『Perfect Crime』(89年)から8作品を数える。

この新作はソロとして9作目。オビエド自身のレーベル<Rhythmus Redords>から3作目のリリース。レコーディングには、総勢30人超えのトップ級ミュージシャンが参加している。オビエドはギター演奏しているが、ソロを聴かせるというより、各客演者の聴かせどころを演出して、オーケストレーションをまとめる手腕を発揮した作品だ。

参加しているのは、イエロージャケッツのボブ・ミンツァー(sax)、アンディ・ナレル(スティールパン)、トゥーツ・シールマンスら重鎮がソロを披露する。加えて、ピーター・マイケル・エスコヴェード(パーカッション)、ピーター・ホルヴァート(p)、デイビッド・K・マシューズ(kyd)、マーク・ヴァン・ヴグヌン(b)、ポール・ヴァン・ヴグヌン(drums)、フィル・ホーキンズ(スティールパン)といったリズム・セクションはオビエドの過去作品でも常連の面子。

全9曲、オビエドのオリジナル曲が8曲と、カバー1曲(ヘンリー・マンシーニ作の「Lujon」)という構成。興味深いことに、アルバム・タイトル「Carousel」という曲は含まれていないが、実は同名の曲がある。オビエドの6作目ソロ・アルバム『Modern World』(99年)の1曲目がその曲。そして『Modern World』の収録曲から4曲が、この新作に入っている。

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2019年7月14日 (日)

Torcuato Mariano 「Escola Brasileira」(2019)

トルクアート・マリアーノはアルゼンチン生まれでブラジルで活躍するベテラン・ギター奏者。ソロとしては5枚の作品をリリースしている。

世界的な評価も高いブラジルのシンガー、カズーザ、イヴァン・リンス、ガル・コスタ、ジャバンなどとも共演。作編曲家でプロデューサーとしても、フラヴィオ・ヴェントゥリーニ(Flavio Venturini)、ファビオ・ジュニア(Fabio Junior)、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ( Paulinho da Viola)、ベロ(Belo)といった、ブラジルの錚々たるシンガー/アーティスト達の作品に関わっている。

ギター奏者としても、スムーズジャズ系ミュージシャン、イエロージャケッツ、マイケル・リントン、ボブ・ボールドウィンらと共演も多い。最近ではボールドウィンの『The Brazilian-American Soundtrack』でも、マリアーノがフューチャーされていた。

 

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2019年5月28日 (火)

Dave Sereny 「Talk To Me」(2018)

デイヴ・セレニーは、カナダ出身のギター奏者。カナダのスムーズ・ジャズ系のギター奏者というと、スティーヴ・オリバーや、ロブ・ターディック、といった巧者が思い浮かぶ。このセレニーも負けず劣らずハートに響くアーティスト。ジョージ・ベンソンのフォロワーといったスタイルで、カラッとしたグルーヴが持ち味のブルー・アイド・ソウルのような趣き。

2007年に「Take This Ride」を出して以来10年ぶりというこの新作アルバムは、RBムードの曲からポップな曲も並ぶ多彩な佳作だ。

About Her」は、ギブソンの骨太なフレージングや、コーラスが印象的な、メロウなソウル・ムードのハイライト曲。ファンキーなサックスは、同郷カナダ出身のウォーレン・ヒルの客演。セレニー本人が今回初めてボーカルを披露したというナンバー「Talk To Me」はキャッチーなメロディーが上質感を漂わせる佳曲。

Spotlite」はビート・ナンバーで、スピード感のあるフレージングがかっこいい。「Freedom」では、ブルージーなパッセージを披露して、ギタリストとしての本領発揮を聴かせる。カバー曲は、ボブ・マーレーの「Jammin」、スティーヴィー・ワンダーの「Id Be A Fool Right Now」の2曲。いずれも原曲のメロディーに忠実なプレイがなかなか良い感じ。

キャッチーなオリジナル曲の数々に作曲の才能も光る。ヒット性を予感させる好感度の高い作品。

 

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2019年5月19日 (日)

ノーマン・ブラウン作品の復習

ギター奏者ノーマン・ブラウンのキャリアはデビュー作品から数えて27年、名実共にスムーズジャズを代表するギタリストだ。彼の過去作品を振り返り<復習>してみよう。

 

ノーマン・ブラウンのソロ・デビューは29才の時。モータウンのMoJazzレーベルから『Just Between Us』92年)、『After The Storm』94年)、『Better Days Ahead』96年)と5年間で3枚の作品をリリース。

MoJazzは、92年に発足したモータウン傘下のジャズ(コンテンポラリー/スムーズ系)専門レーベル。ブラウンのデビュー作品が第1弾作品だった。新設レーベルとして、ブラウンをポスト・ジョージ・ベンソンとして売り込もうと力を入れた。続く2作品はブラウン自身によるプロデュース作品。その後、モータウンがユニバーサルに吸収されるなど経営の再編に直面して、MoJazz98年に閉鎖された。

デビュー作をプロデュースしたのは、ノーマン・コナーズ。コナーズは、ジャズ・ドラマー出身だが、80年代以降はR&B/ソウル路線で自身の作品や他アーティスト(アル・ジョンソン、アンジェラ・ボフィル、マリオン・メドウズなど)のプロデュースで実績を残した人。ゲストは、スティービー・ワンダー、ボーイズIIメン、アル・マッケイ(ギター)、ボビー・ライル(ピアノ)、ジェラルド・アルブライトなど、豪華な顔ぶれが脇を固めた。

デビュー作は、コナーズの手腕でビートに彩られたサウンドが際立つゴージャスな作品。豪華さもチャート・イン狙いだろうか、プロデューサーのカラーに染まった観が強い。ブラウンのギターは、初作品だから力が入り熱量の高いグルーヴを聴かせる。特に1曲目「Stormin’」はキャッチーなハイライト曲。客演するカーク・ウェイラムとロニー・ロウズ、両サックス奏者のパワーに負けじと、エネルギッシュな高速パッセージが衝撃的だ。

 

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2019年5月15日 (水)

Norman Brown 「The Highest Act of Love」(2019)

ノーマン・ブラウンは前作「Let It Go」(2017)で、「私たちは誰もが精神的な存在である。私のこのCDは地上の創造物としての精神的存在者の一つのチャプターを表現したものだ。生きる経験こそが精神的存在の本質的な営む能力を促す。それは平和、喜び、幸福、調和、そう愛である。」という趣旨のメッセージを書いている。

そしてこの新作ではシンボルとして、古代エジプト神話で正義の女神とされる「マアト(Maat)」を掲げている。マアトの正義(The Law Maat)とは「神の望みは最高位の愛の行為(The highest act of love)であり、それは他者への愛を満たすことで実現する。神の愛こそが世界を守れるのだ。」とライナーに説明を書いている。

マアトとは、創造神である太陽神ラーの娘とされる。ジャケットの右下に描かれた、頭上に羽根を掲げた女性神がマアトである。ブラウンは、前作から今作品でも、インスピレーショナルな、つまり啓示的なテーマを掲げている。彼のメッセージは宗教的で、私を含めて理解には至らないリスナーも多いだろう。とはいえ彼のメッセージのわずかでも知った上で、彼の音楽を深く味わいたい。

さて、この新作は1曲のカバー曲と共作を含めた11曲のオリジナル曲集。モチベーション喚起的な曲タイトルを見れば、込められたメッセージが少し理解できるだろう。ほとんどの曲がスロウもしくはミッド・テンポで、啓示的なムードを演出している。音楽的には、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック的なアプローチといえるかな。多彩なゲストを迎えた前作と比べると、今回はブラウンのギターが主役で淡々と演奏する印象の作品だ。テーマを深読みせずとも、純粋にブラウンの上質な音楽を充分に楽しめるのは言うまでもない。

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