カテゴリー「コラム」の記事

2019年6月22日 (土)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 3)

1. ジェリー・ラファティ:「霧のベーカー・ストリート(Baker Street)」(1978)

Citytocityアルト・サックスは、 ラファエル・レイブンスクロフト Raphael Ravenscroft)という人。

この超印象的なサックス・リフで、レイブンスクロフトは一躍注目された。ラファティの次のアルバム『Night Owl』(79年)では、登場が増えてタイトル曲のリリコン演奏や複数曲のサックス演奏で起用されている。

ピンク・フロイドや、マキシン・ナイチンゲール、クリス・レアなどのレコーディングにも参加。79年にはソロ・アルバム(『Her Father Didnt Like Me Anyway』)をリリースしている。

 

続きを読む "あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 3)" »

2019年5月 4日 (土)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2)

1. ボビー・コールドウェル:「Heart of Mine」(1989)

Heartofmine

アルト・サックスは、デイヴ・コーズ

同名アルバム『Heart of Mine』(1989)収録曲。初出はボズ・スキャッグスのアルバム『Other Roads』(1988)のバージョン。

コーズはコールドウェルのバンドのメンバーだった。コールドウェルのバンド出身のサックス奏者は、ボニー・ジェイムスマイケル・リントンアンドリュー・ニューなど、いずれも今やソロで活躍しているアーティストばかり。

コーズのソロとしてデビュー・アルバム『Dave Koz』(1990)所収の「Emily」はコールドウェルとの共作曲。2人はその後もお互いの作品で共演している。中でも、コールドウェルの『House of Cards』(2012)でコーズが客演した「Blue」も、「Heart of Mine」と共に2人のコラボを代表するベスト曲だ。

 

続きを読む "あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 2)" »

2019年4月14日 (日)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?

数多いポップス曲の中でも、主役のシンガーよりも前奏や間奏で聴こえてきたサックスの音色に耳が釘づけになる名曲がある。

えっ、このサックスは誰?

 

1. スティング : 「Englishman in New York」(1987)

Sting_nothing ソプラノ・サックスを吹いているのは、ブランフォード・マルサリス。 

マルサリスは、85年ごろスティングのバンドに所属して、同曲を含む「...Nothing Like the Sun」や、「Dream of the Blue Turtle」(1985)などのアルバムに参加している。

スティングは、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団やニューヨーク室内合奏団と共演した「Symphonicities」(2010)をリリース。そこで同曲を再録している。

そのバージョンでは、ジャズ・サックス奏者アーロン・ハイクがクラリネットを吹いている。そのアルバム企画のツアーを収めたライブ盤「Live in Berlin」(2010)があり、そちらではマルサリスが客演した同曲が聴ける。

スティングは、新作「My Songs」を近日リリース予定。そのアルバムは、過去曲をリメイクしたもので、同曲も収録予定。どんなアレンジになるのか興味深い。

 

続きを読む "あのポップス名曲のサックスは誰だ?" »

2019年3月22日 (金)

アート・ガーファンクルが歌った映画挿入歌

Sing_soundtrackアート・ガーファンクルは、「キャッチ22」や「愛の狩人」などの映画に出演した俳優でもある。シンガーとしても映画との関係が深く、映画や映像作品の主題歌や挿入歌を歌っている。それぞれのサントラ盤では聴くことができるが、彼自身のオリジナル・アルバムには収録されていない曲も多い。(※印が未収録曲)

 

1.「Bright Eyes」(1979)

アニメ映画「Watership Down(ウォーターシップダウンのうさぎたち)」(1978)の挿入歌。作詞作曲はマイク・バット。イギリスではチャート1位を記録する大ヒットになった。マイク・バットは、初めからガーファンクルを想定して曲を作ったが、了解してもらえるとは思っていなかったとか。ガーファンクルのアルバムは、英国盤「Fate For Breakfast」(1979)に収録。

1999年には、TVシリーズのアニメがリメイクされて、同曲を、アイルランドの大人気ポップ・グループ、ボーイゾーンのメンバーだったスティーヴン・ゲイトリーがソロで歌った。彼のソロ・アルバム「New Begining」(2000)に、そのバージョンが収められている。なお、ゲイトリーは、2009年に33歳で急死。

バットが自身の作品を集めた「A Songwriter's Tale」(2008)では、セルフ・カバーした同曲が聴ける。

余談だが、ネットフリックスと英BBCが、同作品を3Dアニメーションで新作リメイクして、去年の12月に公開。テーマ曲は、サム・スミスの歌う「Fire on Fire」という曲(作曲はサム・スミスとスティーヴ・マックの共作)。

 

続きを読む "アート・ガーファンクルが歌った映画挿入歌" »

2019年2月 9日 (土)

「母と子の絆」(ポール・サイモン)は、「ヴェトナム」(ジミー・クリフ)のアンサー・ソングでは?

Paulsimonポール・サイモンの「母と子の絆(Mother and Child Reunion)」と、ジミー・クリフの「ヴェトナム(Vietnam)」の、関連について、個人的な考察です。

2012年7月15日、ポール・サイモンはイギリスのハイド・パークで野外コンサートを行いました。サイモンが、「僕の個人的なヒーローを紹介します」と言って、ジミー・クリフがゲストで登場。2人で、「ヴェトナム」と「母と子の絆」を、まるでメドレーのように歌いました。(そのライブ盤「The Concert in Hyde Park」は、コンサートから5年後にリリースされました。)2人の共演は感動的なサプライズでしたが、歌われた2曲のストーリーが、密接にリンクしていることに多くの観客が注目したはずです。この2曲の繋がりで、「母と子」の解釈がやっと分かったように思えます。サイモンの「母と子」は、クリフの「ヴェトナム」に触発されて作った可能性が高く、そのサイモンの曲は、クリフの曲への「アンサー・ソング」であるとさえ思うのです。

続きを読む "「母と子の絆」(ポール・サイモン)は、「ヴェトナム」(ジミー・クリフ)のアンサー・ソングでは?" »

2018年12月29日 (土)

第61回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品(2018)

2018年度、第61回グラミー賞の、「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門、ノミネート5作品が発表されました。(受賞作の発表は、2019年2月11日の予定。)


  1. 「The Emancipation Procrastination」Christian Scott aTunde Adjuah

    Cscottクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーは、新世代ジャズ・シーン、注目のトランペッター。ビートやハーモニーといった、既成のフォーマットを解体するかのように、ミニマルで反復するリズムと、無秩序を感じさせるインプロビゼーションが、衝撃的な作品。「ジャズの100年」をテーマにして、連続してリリースした3部作の最終作品。アヴァンギャルドで未来的なコンセプトの中で、最後の曲「New Heros」が、フリー・ジャズに回帰して幕を閉じるのが印象的。

続きを読む "第61回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品(2018)" »

2018年12月26日 (水)

2018年のベスト3+1

今年のベストな3+1作品です。

① 「Illuminate」Steve Oliver

Soliver illuminate

スティーヴ・オリバーの、大ヒットした「Global Kiss」(2010)は、今でも私の愛聴盤だ。新作が出るたびに、「Global Kiss」の進化を期待して、聴いてきたアーティストである。スピード感のあるポップな楽曲、エキゾチックなメロディー、ギターの独特な音色とドリーミーなパッセージ、彼の音楽世界にはいつも魅了される。ボーカルだけのアルバムを出したあたり、歌手の路線を行くのかと不安に駆られたけれど、この新作は久しぶりにインスト新曲だけで、満足度が高揚した作品だ。ハズレなしの楽曲の素晴らしさはもちろん、特筆は、オリバーのギター演奏。ジャズ寄りのフレージンングも素晴らしい。ギタリストとしての評価も高まって欲しい。


続きを読む "2018年のベスト3+1" »

2017年12月31日 (日)

2017年のスムーズジャズ・ソング15+2曲

Prototype 今年のスムーズジャズから、オススメの15と、外せなかった2曲。

① 「Fast Lane」
ピーセス・オヴ・ア・ドリームの「Just Funkin' Around」から、スピード感が抜群の曲で、疾走するサックスが聴きもの。このサックス奏者はトニー・ワトソン・ジュニアという人で、ピーセス・オヴ・ア・ドリームの近年作品を固める準メンバー的な人。
② 「Let's Take It Back」
ナジーの「Poetry In Motion」から、1曲だけのインコグニートとのコラボ曲。今度は、ブルーイのプロデュースでフル・アルバムを作って欲しいなあ。
③ 「Cruising Kunio Hway」
パトリック・ヤンダールの「A Journey Home」から。視界が広がるメロディーと、繊細なテレキャスターの音色が心地いい。
④ 「You Are」
ティム・ボウマンの「Into the Blue」から。エラン・トロットマンのサックスを迎えての、スウィート・ソウルなメロウ・バラードに酔わされます。
⑤ 「Going Out」
ジュリアン・ヴァーンの「Bona Fide」から。この曲のサックスもエラン・トロットマンで、こういうソウル・バラードのサックスにはこの人が欠かせない。
⑥ 「Main Street」
ジャッキーム・ジョイナーの「Main Street Beat」からの、タイトル曲。オーバーダビングされたサックスのアンサンブルが印象的で、グルーヴ全開のキャッチー・ソング。
⑦ 「Backseat Drivers」
マーカス・アンダーソンの「Limited Edition」から。こちらも、ワンマン・アンサンブルのサックスが豪快なビート・チューン。ギターの客演は、アダム・ホーリー。マーカス・アンダーソンの新作は、オリ・シルクやピーター・ホワイトも客演している「This is Christmas」。アンダーソンらしい、ヒップでメロウなクリスマス・アルバムです。
⑧ 「Heartburn」
ヴァレリー・ステファノフの「New Beginnings」から。エメルギッシュなピアノとサックスが印象的な、パワー・チューン。サックスは、Andrey Chumutという人で、スカイタウン・レコードからソロ作品を録音中のようで、来年注目したいアーティスト。
⑨ 「Liberated」
ノーマン・ブラウンの「Let It Go」から、BWB名義のトラック。BWBの3人のグルーヴには、さすがに身が乗り出します。
⑩ 「Category A」
シンディ・ブラッドリーの「Natural」から。クリス・スタンドリングとコラボした曲。スタンドリング独特のアシッドなサウンドに、ブラッドリーのトランペットがクールに響き渡る。
⑪ 「Lifecycle」
ネイザン・イーストの「Reverence」から。今年、チャック・ローブさんが他界された。フォープレイの活動はどうなるのかな、そちらも心配。
⑫ 「Tick Tock」
ボニー・ジェイムスの「Honestly」から。スロウなリズミに、セクシーなジェイムスのサックスの音色が極上です。
⑬ 「So Strong」
リック・ブラウンの新作「Around The Horn」から。今年は、BWBの3人のソロ作品がいずれも際立っていた。来年は、BWBの新作が聴けるかな。
⑭ 「Baby Coffee」
マイケルJトーマスの新作「Driven」から。サックスは元より、マイケル・ジャクソンを思わせる歌声と歌唱力にびっくり。アーバン・コンテンポラリーな内容も素晴らしい作品。
⑮ 「Been Around the World」
ブライアン・カルバートソンの「Funk!」から。カルバートソンの新作「Colors of Love」は、来年2月にリリース予定。ファンクとは打って変わり、ロマンティックな内容のようで、待ち遠しい。
⑯ 「Groove On」
ユージ・グルーヴの新作「Groove On」から。新作をリリースするたびに、クオリティが高くなるユージ・グルーヴ。絶対に聴き逃せない人。
⑰ 「The Badness」
ジェフ・ローバー・フュージョンの「Prototype」から。新メンバーのアンディ・スニッツアーが入っても、エッジでスリリングなグルーヴは健在。ノミネートされている、グラミー賞に、ぜひ輝いて欲しい。

2017年12月24日 (日)

2017年のベスト3+1

Aroundthehorn Joyner Newbeginning Lovecovers

今年聴いた作品の中から、例によって「独断的」に選んだベスト3と次点の作品。

① 「Around the Horn」 Rick Braun

リック・ブラウンの作品は、アーバンなアレンジと、流麗なブラウンのペット・サウンドが、全曲に渡ってメロウに響き渡る傑作。前作「Can You Feel It」(2014)は、ビート全開のファンキーな作品だったけれど、今作はちょっとレイドバック気味のソウルフルでカッコいいブラウンが堪能できる。サウンドの要は、ほぼ半数の曲に参加している、ジョン・ストッダート。彼が、曲の共作、キーボード演奏、ボーカル、プロデュースを担当したコラボが大正解。ストッダートは、ゴスペル系R&Bシンガーで、自身のソロ作品や、カーク・ウェイラムとの共演で注目される人。ストッダートの、ネオ・ソウル・フレーバーと、ブラウンのクールなペット・サウンドが、ブレンドされた極上のミュージック。タイトル曲は、ゲストのティル・ブレナーとインタープレイが鳥肌もののベスト・トラック。名作級のベスト作品。

② 「Main Street Beat」 Jackiem Joyner

ジャッキーム・ジョイナーの作品は、彼のパワフルなサックスが、「全開」する秀作。ほとんどの曲は、彼のバンド・メンバーが固めた演奏で、フレッシュな躍動感で溢れている。ジャスティン・ティンバレイクや、ブルーノ・マースのヒット曲のカバー演奏も名演だが、ジョイナーのオリジナル曲はキャッチーな曲ばかりで、作曲の才能の素晴らしいこと。M1「Main Street」のポップ・チューンから、M6「Southside Boulevard」や、M11「Get Down Street」のスピード溢れるファンキーなビート・ナンバーも最高。スムーズジャズは、こうでなきゃあ、というベスト作品。

③ 「New Beginnings」 Valeriy Stepanov

ロシアはイルクーツク出身という、キーボード奏者ヴァレリー・ステファノフの作品。ギター奏者ユーナムが、自身のレーベル「スカイタウン・レコード」からデビューさせた、新人アーティストだ。パワフルかつテクも聴かせるピアノと、フェンダーのポップなフレージング、おそらく彼自身のペンのよる曲やアレンジは、どの曲もキャッチーなフックに満ちて素晴らしい内容。これからの活躍が大いに期待できる大型新人の登場だ。

④「#lovecovers」Kirk Whalum

次点は、カーク・ウェイラムのカバー作品集。全曲ボーカル入りだし、啓示的テーマの曲の数々は、ゴスペルかクリスチャン・ミュージックの範疇でもあり、ということで次点にランク。とは言え、ウェイラムの演奏はベスト級で、今年もっとも心動かされた作品だ。彼のライフワークである「The Gospel According to Jazz」シリーズのスタジオ録音による完成盤と言ってもいい。ワイナンズ・ファミリーなどゴスペル界のメジャー・アーティストの参加も豪華だけれど、ウェイラムのサックスは、歌うがごとく清々として、感涙的でさえある。偉大なアーティストを偲んだような「Tomorrow」は、MC入りの演出も秀逸で、感動のハイライト・チューンだ。ホイットニー・ヒューストン名演のヒット曲「I Will Always Love You」を始めとして、全曲でウェイラムのサックス・フレージングの覚めるような美しさに、感動しまくり、何度リピート・プレイしたことか。

その他、今年の秀作の数々。

リック・ブラウンとカーク・ウェイラムの盟友でありBWB組のノーマン・ブラウンによる「Let It Go」は、もちろん傑作で、ベスト3に入れるか悩んだ作品。

ギター奏者ティム・ボウマンの久しぶりのフル・アルバム、「Into the Blue」は、メロディアスなギター旋律と、ポップな曲満載の作品。

マイケル・J・トーマスの「Driven」は、彼のボーカルが新鮮で、AOR的な明るさに魅了された作品。

JTプロジェクトの「Another Chance」や、ピーセス・オブ・ア・ドリームの「Just Funkin' Around」は、バンド・アンサンブルのリアル・グルーヴに酔える演奏作品。

マーカス・アンダーソンの「Limited Edition」は、彼らしいヒップなダンス・グルーヴが全開した快作。

さて、年末の「恒例」の、「Sound of The Breez」のマスター「洋楽のソムリエ」さんとの共同企画、お互いのベスト作品の発表も、今年で5年目です。「洋楽のソムリエ」さんによる、ベスト作品は下記になりました。今年は初めて、重なるアルバムがなく、異なるセレクションになりました。(「Sound of The Breeze」のサイトにも掲載されていますので、ご覧になって下さい。)

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「Sound of The Breeze」から

Reverence Poetry_najee Letitgo_2

2017年 Best Smooth Jazz Albums

1位 『Reverence 』 Nathan East

しっかり練られた構成と収録曲ひとつひとつのクオリティの高さが群を抜いていた。緻密でありながらこれだけ骨太なアルバムは、スムーズ・ジャズでは珍しいのではないだろうか。随所に見られる、Earth,Wind & Fire など先人に対するリスペクトにも好感が持てる。スティービー作品のカバー、「Higher Ground 」は、当サイトが認定した上半期におけるベスト・ダンス曲のひとつだ。ニッキ・ヤノフスキーをフィーチャーした「The Mood I’m In 」は、こじゃれている。なお、米国のスムーズ・ジャズ専門局のオンエア回数では、上半期に長期にわたって1位を続けていたアルバムでもある。内容のみならず人気でも他を圧倒した結果の1位は、文句なしだろう。

2位 『Poetry In Motion 』 Najee

ナジーは、筆者がアルバムが出るたびに購入して聴いているアーティストのひとりだ。しかし、彼のアルバムを” 年間ベスト” として推したことはなかった。今回このアルバムを第2位に選んだのは、これまで以上に「抜群の心地よさ」があったからである。聴いていると知らぬ間にアルバム全体を聴き終えていて、また初めから聴きたくなる。そんなアルバムなのだ。エリック・ロバーソンをゲストに迎えた「Is It The Way 」など歌が入ったものも素晴らしい。インコグニートをフィーチャーした「Let’s Take It Back」は、当サイトが選ぶ年間ベスト・ダンス曲 15 作品の第13 位だ。

3位 『Let It Go 』 Norman Brown

『Poetry In Motion 』と、どちらを上位にするか散々迷った。曲の多彩さという点でいえば、むしろこちらだろう。心地よさに加え、「ジャズしている」感覚も充分だ。このアルバムも、歌物がアクセントになっている。今回、2位、3位ともレコード会社はShanachieだ。となれば、アルバムに歌物を収録するのは、会社の方針でもあろうか? 総崩れになっているR&B分野のファンに手を差し伸べられるのは、今やこんなタイプのスムーズ・ジャズかも知れない。

<一年を振り返って>

今年は「次点」を認定しなかった。しかし、ぎりぎりで飛び込んで来たユージ・グルーヴの新アルバム『Groove On 』は、充分ベスト3に値する作品だ。彼のアルバムには、心地よいグルーヴで酔わせる作品が必ず入っていて期待を裏切ることがない。 さて、グラミーの「Best Contemporary Instrumental Album 部門」に、ジェフ・ローバー・フュージョンの『Prototype 』がノミネートされた。「ごきげんだね! 」と称賛に値する作品である。しかし、この手のものは1980年代から存在する。グラミーのアカデミーが意味する” Contemporary “ とは、なんなのだろう? グラミー賞の同部門が、決してわれわれが想定するスムーズ・ジャズを対象にしたものではないことを非常に残念に、また嘆かわしく思う。

なお、ここ数年で感じるのは、音楽シーンでのR&B の凋落だ。今やその欠けた部分をカバーしているのは、スムーズ・ジャズではないだろうか。当サイトが選んだ今年のベスト・アルバム三作品 は、図らずもそんな作品が並んだ。 来年は、キーボーディストによる作品に期待したいと思う。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「Sound of The Breeze」のベスト3作品は、いずれもトップランクのクオリティで、今年を代表するアルバムであること大賛成だ。来年も、多くの良質作品に出会えるのを期待しています。

2012年のベスト作品

2013年のベスト作品

2017年12月10日 (日)

第60回グラミー賞ノミネート作品

Whatif Spirit Mountroyal Prototype Badhombre

第60回グラミー賞のノミネート作品が発表された。「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」の候補作品は、この5作品。近年、この部門は、コンテンポラリー・ミュージックの多様な演奏作品から選ばれているが、異なるジャンルのハイライト的なセレクションで、それを同じ土俵で評価するのもどうなのかなあ。そして、とても残念なことに、スムーズジャズは「無視」されているがごとく、良作が選ばれることも無くて、ファンとしては腹が立つところ。だが、まあ、認めないなら、勝手にしろや、という感じですなあ。

① 「What If」 The Jerry Douglas Band

ジェリー・ダグラスは、ブルーグラスやカントリーで用いられる通称ドブロと呼ばれるスライド・ギターの名手。14度のグラミー受賞歴を誇り、カントリーに限らずジャンルを越えてアメリカン・ミュージックに影響を与える大物アーティスト。自己名義のバンドのこの作品は、ブルーグラスを下敷きに、ジャズやロックをブレンドして、独自の音楽世界を発揮した意欲作。「Cavebop」は、典型的なブルーグラスと、ジャズが融合したような、クロスオーバーな演奏だし、タイトル曲「What If」の、繊細なフレージングのスライド・ギターの演奏は、ドラマチックで素晴らしい。

② 「Spirit」 Alex Han

アレックス・ハンは、マーカス・ミラーのバンドで活躍する、新鋭のサックス奏者。第58回のグラミー賞ノミネート作品、マーカス・ミラーの「Afrodeezia」(2015)にも参加している。この「Spirit」は、マーカス・ミラーがプロデュースした彼のデビュー作品。タイトル曲の、ハンの静謐なサックスが美しい。未来志向のコンテンポラリー・ジャズの秀作。

③ 「Mount Royal」 Julian Lage & Chris Eldridge

ジュリアン・レイジは、ジャズ・ギター奏者で、わずか15歳で、ゲイリー・バートンのバンド参加でデビューした、ジャズ界の新鋭。片や、クリス・エルドリッジは、ブルーグラスのバンド、パンチブラザーズのギタリスト。パンチ・ブラザーズと言えば、マンドリン奏者クリス・シーリが率いるスーパー・バンドで、ブルーグラスに留まらない多様な音楽世界が魅力のバンド。その二人が共演というだけでも、話題の作品。2人のアコギによるデュオ演奏は、数曲で歌も入るが、ブルーグラスやトラッド・フォークなどをベースにした、大らかなアメリカン・ルーツ・ミュージック。

④ 「Prototype」 Jeff Lorber Fusion

われらが、ジェフ・ローバー・フュージョンの新作。かつて「Hacienda」(2013)が、2014年の56回グラミー賞にノミネートされたこともある。この作品は、ジェフ・ローバーとジミー・ハスリップに、新サックス奏者としてアンディ・スニッツアーを迎えた、「新生」ジェフ・ローバー・フュージョンとしての新作。アンディ・スニッツアーも、違和感なく溶け込んでいるけれど、個人的には、かつてのサックス奏者エリック・マリエンサルがいた「Galaxy」(2012)や、「Hacienda」の、スリル全開なバイヴレーションには及ばないような気がするけれど。

⑤ 「Bad Hombre」 Antonio Sanchez

アントニオ・サンチェスは、ゲイリー・バートン、パット・メセニーや、チック・コリアなどと共演してきた、メキシコ出身のドラマー。アカデミー賞作品の映画「バードマン」のオリジナルスコアを作曲した人。この作品は、彼のソロ・ドラミングによるインプロビゼーションが圧巻な作品。前衛的であり、内省的でもあるが、映像作品のような感動の伝わる鬼才に溢れる作品。

①はブルーグラス、②はコンテンポラリー・ジャズ、③はフォークのフォーマット、④はフュージョン、⑤は前衛的作品、とは言え、いずれもジャンルではくくれない意欲作。かように異なる音楽性の秀作から、ベストを選ぶ基準が分からないが、独断的には、「本命」は①かな。ブルーグラスにジャズやロックを融合させて、伝統的なフォーマットを超えようとする、パッションの伝わる演奏に心を動かされる傑作。グラミー賞の発表は、2018年1月28日です。

第59回グラミー賞ノミネート作品

第58回グラミー賞ノミネート作品

第57回グラミー賞ノミネート作品

第56回グラミー賞ノミネート作品

第55回グラミー賞ノミネート作品

第54回グラミー賞ノミネート作品

About This Blog

  • スムーズジャズは、最高のコンテンポラリーミュージック。ググっとくるアーティストのバイブレーションを、リアルタイムで聴きたい。独断で選んだ新譜を中心に紹介します。
    番外編は、ミュージック本の紹介など。

    Since 2011 by UGASAI