カテゴリー「キーボード」の63件の記事

2020年5月23日 (土)

Skinny Hightower「Blue Moon」(2020)

スキニー・ハイタワーの前作『Retrospect』(2018)は、みなぎる創造力が溢れた力作で、強く印象に残ったアーティストでした。この新作は、CDで二枚組、全24曲のボリュームで、さらなる音楽性の才気煥発に圧倒されます。
全曲が新作オリジナルで、編曲からキーボードを中心にほとんどの演奏を、ハイタワーがこなしています。

本人のホーム・ページには、興味深い制作経緯が書き綴られています。それによると、前作の後、うつ状態に悩んだことを明らかにしています。愛妻が所有していたレコード・コレクションを聴き込んで救われたといいます。ウォー、アイザック・ヘイズ、アース・ウィンド&ファイアー、カーティス・メイフィールド、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、といった70年代の名作の数々でした。全てを深く聴き、感動とともに自分を取り戻したと。それらの楽曲を分析することに至り、その後最終的に100曲をレコーディングしたそうです。その中から、本作の24曲が選ばれました。

全曲が、一気呵成で創られたエネルギーにあふれています。サウンドは粗削りなテクスチャーを感じますが、湧き出す発想を記録したリアリティが迫ります。聴き込んだという名作のエッセンスに気が付きますが、オマージュではなく、消化して生み出されたオリジナリティに他なりません。

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2020年2月22日 (土)

Eddie Bullen 「Kaleidoscope」(2020)

エディ・バレンは、カリブ海グレナダ出身で、カナダ・トロントを拠点に活躍するピアニストです。ソロ作品は、初作『Nocturnal Affair』(1996)から5作品を発表。プロデューサー/作編曲家でもあり、自身のレーベル「サンダー・ドーム・サウンズ」も運営しています。

この新作は、前作『Spice Island』からおよそ5年ぶり、6作品目となるソロ・アルバム。10曲のオリジナル楽曲を収録しています。

バレンのアコースティック/エレキ・ピアノは、硬質でクリアな音像が特徴。常連のバンド・メンバーがリズム・セクションを固めて、躍動感のあるグルーヴを引き立てています。実息のクインシー・バレン(キーボード/ギター)が、ほぼ全曲でギタリストとして参加しています。

バレンはCDのライナーノーツで、「この作品は70年代、80年代、90年代の新しいジャズ・サウンドに影響を受けている。インスト曲がダンス、ポップ、R&Bのチャートをにぎわした時代だった。」と述べています。その時代へのオマージュのように、輪郭が際立つメロディやフレーズが随所に現れます。バレンのルーツを反映して、トロピカルなムードも漂います。

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2019年10月13日 (日)

Mark Etheredge 「Connected」(2016)

マーク・エサレッジのデビュー・アルバム「Change Coming」(2012)は、オリジナルの全曲を自ら歌うシンガー・ソング・ライターとしてのボーカル作品だった。スティーリー・ダンを思わせるソリッドなサウンドと曲調が印象的で、80年頃のボズ・スキャッグスのようなアダルト・コンテンポラリー路線を志向したような作品だった。

その次作品がこの『Connected』(2016)で、エサレッジのピアノとキーボードが主役の全10曲インストゥルメンタルの演奏作品。ボーカリストからキーボード奏者へ方向転換というわけだが、目の覚めるようなピアノ演奏とバンド・アンサンブルで上質なスムーズ・ジャズ作品になった。共作を含めた全10曲はエサレッジのオリジナル曲で、歌詞を載せて歌えるようなメロディーは、シンガー・ソング・ライターとしての才能がリンクしている。

プロデュースはポール・ブラウン。都会的で洗練されたサウンドに統一されていて、エサレッジのピアノ奏者としての才能を引出したのはブラウンの手腕。全曲が同じメンバーのリズム・セクションで固められている。ギターはポール・ブラウン、ベースはロバート・バレー、ドラムスはゴーデン・キャンベル、パーカッションはリッチー・ガルシアという面子。エサレッジのロマンティックなフレージングと、ソリッドなリズム・セクションがブレンドするアンサンブルが素晴らしい。

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2019年10月 6日 (日)

David Benoit 「David Benoit And Friends」(2019)

デイヴィッド・ベノワは、デビューが1977年だから40年を超えるキャリアのピアニストである。リーダー・アルバムは35作品を数える。大ベテランだけれどその音楽は枯れた味が増すというより瑞々しい味わいがさらに際立つ稀有なアーティストだ。

プロデュースや映画音楽、交響曲と広範囲な活動も注目に値するけれど、やはり彼のピアノ演奏は最大の魅力。ビル・エヴァンスやデイヴ・ブルーベックといった伝統を受け継いで、80年代以降のボブ・ジェイムスやデイヴ・グルーシンなどコンテンポラリーなジャズ・スタイルの系譜を引き継いでいる貴重な正統派だと思う。

そのデイヴィッド・ベノワの新作は、交流の深いベテラン・アーティストや、フレッシュな若い世代のゲストも迎えた多彩な作品。

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2019年9月16日 (月)

Scott Wilkie 「Brasil」(2019)

ポップスやジャズでは定番の企画アルバムといえば、クリスマスもしくはホリデイ・ソング集。それとブラジル曲集というのも定番だろう。キャリアを続けるアーティストは、必ずといってもいいほど、どちらかもしくはどちらも手がける。個人的にはクリスマス・アルバムというのはあまり興味がわかないが、ブラジルをテーマにした企画盤はいつでも注目している。ブラジル音楽に造詣が深い訳ではないが、ボッサ系サウンドのリラックスした開放感には理由なく惹かれてしまう。演るのが贔屓のアーティストならなおさらだ。さて今回のスコット・ウィルキーのブラジル企画作品も、すでに私の愛聴盤になった秀作。

スコット・ウィルキーは、キャリアの長いコンテンポラリー・ジャズ・ピアノ奏者。ソロ・デビュー・アルバム『Boundless』(99年)から『Studio LIVE』(17年)まで7枚のアルバムをリリースしている。自身のスタジオとレーベルを持っていて、南カリフォルニアを中心に活動している。彼のピアノは、ジョー・サンプルや、デイヴ・グルーシン、デヴィッド・ベノアら名手の系譜に通じるスタイル。デビュー当時から、ラス・フリーマン、ジェフ・カシワ、ポール・ジャクソンJR、エリック・マリエンサルといったフュージョン/コンテンポラリー・ジャズのトップ・ミュージシャンと共演して、西海岸系の爽快なサウンドが特徴だ。

ソロ8枚目となるこの新作は、新旧のブラジル楽曲を中心にした作品。ブラジル・テイストと相まって、ウィルキーと演奏陣の軽快な音楽性が際立つ素晴らしい演奏集。

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2019年7月28日 (日)

David Nevue 「in the soft light of grace」(2019)

デイビッド・ネビューは、ニュー・エイジ系のソロ・ピアニストだ。この最新作まで、デビュー作「The Tower」(1992)から15枚のアルバムをリリースしている。ビルボードのニュー・エイジのチャートでは常連の人気アーティスト。

10代の頃はピンク・フロイドやカンサスといったプログレッシブ・ロックに夢中だったが、ジョージ・ウィンストンに魅了されてソロ・ピアノ演奏を目指したのだという。90年代にネビューはインターネット関連企業に努めるビジネス・マンをしながら、自主制作でアルバムを作り始めた。95年に、当時としては先駆けのオンラインで自身の作品を販売する。そのオンライン販売で人気を博して、2001年には会社勤めを辞めてプロのピアニストになる。

ソロ・ピアノのアルバム制作だけでなく、2003年からは、これもユニークな、ソロ・ピアノ専門のインターネット・ラジオ局「Whispering: Solo Piano Radio」の運営を始めた。2005年からはコンサート演奏も初めて、ソロだけでなくニュー・エイジ系の他のソロ・ピアニスト、デイビッド・ランツ、ピーター・ケーターらと共同コンサートも行なっている。オンラインの音楽販売や、インターネット・ラジオ曲の運営などの経験を書いた著作や、情報配信の活動もしている。

 

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2019年6月30日 (日)

Cal Harris Jr. 「Soulful」(2019)

キーボード奏者カル・ハリス・ジュニアの新作。

父親はモータウン・レコードのレコーディング・エンジニアのカルヴィン・L・ハリスという人で、マーヴィン・ゲイ、コモドアーズ、ダイアナ・ロス、ナタリー・コール、ライオネル・リッチーなど名だたるアーティストの録音やミキシングを担当して功績を残した。昨年に他界したというその父親に、この新作を捧げている。その父親の影響で、ハリス・ジュニアは幼少の頃から音楽世界を体感していたのだろう。

この新作は、前作『Shelter Island』(2013)に続く3作目の自己プロデュースによるフル・アルバム。前作以降に発表されていたシングルの5曲とその内1曲のリミックス・バージョンを含み、初出の5曲の新曲を加えた全11曲の内容。共演者との共作も含む全曲がオリジナル楽曲だ。

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2019年6月 9日 (日)

Jimmy Webb 「SlipCover」(2019)

ジミー・ウェッブの新作は、彼のピアノ・ソロ演奏による異色のアルバムです。アメリカやイギリスのポップス名曲10曲と、セルフカバー1曲を演奏しています。今までも、ウェッブの作品にはピアノ弾き語りによる曲は多かったが、歌無しでピアノ演奏だけの作品集とは嬉しい驚きです。演奏曲の多くは70年代のポップス名曲で、それぞれの作者へ敬意を込めた選曲となっているようです。

自身の曲「The Moon Is A Harsh Mistress」に加えて、ブライアン・ウィルソンの「God Only Knows」、ランディ・ニューマンの「Marie」、ジョニ・ミッチェルの「A Case of You」、ポール・サイモンの「Old Friends」、ビルー・ジョエルの「Lullaby (Goodnight, My Angel)」、スティービー・ワンダーの「All In Love Is Fair」、ポール・マッカートニーの「Let It Be」といった、あらためての説明は不要の名曲の数々です。ちょっとレアな選曲は「Pretty  Ballerina」でしょうか。これは60年代後半のポップ・グループ、ザ・レフト・バンク(The Left Banke)の1966年の曲。インド音階を思わせるユニークなメロディーが印象的です。

 

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2019年1月20日 (日)

Ben Tankard 「Rise!」(2018)

ベン・タンカードは、「ゴスペルのクインシー・ジョーンズ」と形容される、メジャー級のキーボード奏者。同時に、自己啓発の演説家でもあり、自身のファミリーと共に出演するテレビ番組が人気を博するスターでもある。彼の音楽は、ゴスペルや、コンテンポラリーなクリスチャン・ミュージックと呼ばれる、信仰や啓発を高揚するカテゴリーに入れられる。そんなカテゴリー分けは気にせず、スムーズ・ジャズとして楽しむのに値するグッド・ミュージックです。さて、この新作は、彼のスタイルである、メロウなムードに満ちた心地のいい作品。彼のピアノ演奏は、グルーヴを打ち出すのではなく、ハートに響くようなフレーズを繰り出すのが、特に味わい深いところです。

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2019年1月12日 (土)

David Garfield 「Jammin' Outside The Box」(2018)

キーボード奏者、デヴィッド・ガーフィールドの「Outside The Box」プロジェクト、前回の記事で紹介した「Jazz」に続く、第2弾。全19曲の収録だが、編集トラック(5曲)、前作収録曲の別バージョン(3曲)が含まれているので、新曲は正味11曲という構成。新曲のほとんどは、前作とはダブらないセッションの演奏で、新たに約60人のプレイヤーが参加して、第1集から引き続き参加するプレイヤーを加えると、総勢100人に及ぶ演奏陣によるスーパー・セッション集だ。今回は、ヴォーカリストをフューチャーした、いわゆる歌モノが6曲入っていて、インストを含めた選曲もR&B/ポップスのカバーが中心の作品集。

その中で、何と言ってもハイライトは、レジェンド・シンガー、スモーキー・ロビンソンが唄う「One Like You」。この曲は、もともと、ジョージ・ベンソンのオリジナル・アルバム「Songs and Stories」(2009)に入っていた曲で、作曲はガーフィールドとロビンソンの共作。スモーキー・ロビンソン自身が歌ったバージョンは、本作が初のセルフ・カバーなのだろうか。唄声こそ枯れたところは隠せないとはいえ、あの、ふるえるハスキー・ボイスのメロウな味わいには魅了される。アルト・サックスはデヴィッド・サンボーンで、バック・コーラスがマイケル・マクドナルド、というドリーム・チームのような演奏も一聴の価値あり。

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