カテゴリー「キーボード」の記事

2019年1月20日 (日)

Ben Tankard 「Rise!」(2018)

Btankard riseベン・タンカードは、「ゴスペルのクインシー・ジョーンズ」と形容される、メジャー級のキーボード奏者。同時に、自己啓発の演説家でもあり、自身のファミリーと共に出演するテレビ番組が人気を博するスターでもある。彼の音楽は、ゴスペルや、コンテンポラリーなクリスチャン・ミュージックと呼ばれる、信仰や啓発を高揚するカテゴリーに入れられる。そんなカテゴリー分けは気にせず、スムーズ・ジャズとして楽しむのに値するグッド・ミュージックです。さて、この新作は、彼のスタイルである、メロウなムードに満ちた心地のいい作品。彼のピアノ演奏は、グルーヴを打ち出すのではなく、ハートに響くようなフレーズを繰り出すのが、特に味わい深いところです。

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2019年1月12日 (土)

David Garfield 「Jammin' Outside The Box」(2018)

Dg jamminキーボード奏者、デヴィッド・ガーフィールドの「Outside The Box」プロジェクト、前回の記事で紹介した「Jazz」に続く、第2弾。全19曲の収録だが、編集トラック(5曲)、前作収録曲の別バージョン(3曲)が含まれているので、新曲は正味11曲という構成。新曲のほとんどは、前作とはダブらないセッションの演奏で、新たに約60人のプレイヤーが参加して、第1集から引き続き参加するプレイヤーを加えると、総勢100人に及ぶ演奏陣によるスーパー・セッション集だ。今回は、ヴォーカリストをフューチャーした、いわゆる歌モノが6曲入っていて、インストを含めた選曲もR&B/ポップスのカバーが中心の作品集。

その中で、何と言ってもハイライトは、レジェンド・シンガー、スモーキー・ロビンソンが唄う「One Like You」。この曲は、もともと、ジョージ・ベンソンのオリジナル・アルバム「Songs and Stories」(2009)に入っていた曲で、作曲はガーフィールドとロビンソンの共作。スモーキー・ロビンソン自身が歌ったバージョンは、本作が初のセルフ・カバーなのだろうか。唄声こそ枯れたところは隠せないとはいえ、あの、ふるえるハスキー・ボイスのメロウな味わいには魅了される。アルト・サックスはデヴィッド・サンボーンで、バック・コーラスがマイケル・マクドナルド、というドリーム・チームのような演奏も一聴の価値あり。

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2019年1月 6日 (日)

David Garfield 「Jazz Outside The Box」(2018)

Dg jazzキーボード奏者、デヴィッド・ガーフィールドは、フュージョン・グループ「カリズマ」の中心人物。カリズマ名義の作品としては、「Perfect Harmony」(2012)以降はリリースが無かったので、久々に登場したガーフィールドのソロ新作だ。彼の人脈の広さを証明するように、オールスターのミュージシャンが総出演する感激のセッション集。

「Outside The Box」と銘打ったプロジェクトの第1作で、続けて4作品がリリースされるという。この後は、既にリリースされている「Jammin'」。ボーカル曲が中心になるという「Vox」と、フュージョン演奏が中心の「Stretchin'」。最後は、「Holidays」と名付けられる予定というから、クリスマス・ソング集なのだろうか。

そのプロジェクトの始まりを飾る作品が、「Jazz」と名付けられたこの作品。フュージョン/スムーズジャズのファンにとっては、万華鏡のような内容だ。バージョン違いの3トラックを含む全17曲は、1時間半に及ぶ重量級のボリュームで、力を入れて聴きこまなければいけない。ガーフィールドのオリジナル3曲以外は、11曲がカバー作品。デューク・エリントンの「In a Sentimental Mood」と「Sophisticated Lady」に、「My Fevorite Things」、ホレス・シルバーの「Song for My Father」、といったジャズの名曲から、ジョー・サンプルの「Rainbow Seeker」や、スティングの「Fragile」と「Roxanne」といった選曲リストに、聴く前からワクワクする。

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2018年12月23日 (日)

Gregg Karukas featuring Shelby Flint「Home for The Holidays」(1993、reissue 2018)

Gkarukas holidayグレッグ・カルーカスが、93年に出したクリスマス・アルバムが再発されました。これは、スタンダードを中心にしたクリスマス曲を、ピアノ・トリオのフォーマットで演奏した作品です。トリオのメンバーは、カルーカス(ピアノ)、ジョン・レフトウィッチ(ベース)、ジョエル・テイラー(ドラムス)。ボーカルとして、シェルビー・フリントが、12曲中の6曲で唄っています。

カルーカスの作品の中では、唯一のクリスマス・アルバムで、かつピアノ・トリオ演奏という、異色の企画作品です。今になって、日本で再発されるというのも珍しい。理由は、ボーカルで参加したシェルビー・フリントに注目した再発のようです。理由はともあれ、嬉しい再発です。(再発盤の日本語表記は、カルーカスでなく「カルーキス」?となって、ジャケットもおしゃれに新装されていますので、お見逃しないように。)

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2018年11月25日 (日)

Bob Baldwin 「Bob Baldwin Presents Abbey Road and the Beatles」(2018)

Bbaldwin abeyroadボブ・ボールドウィンは、キーボード奏者である一方、10年前からラジオ番組を制作して、自らホストDJを務めている。「New Urban Jazz Lounge」というその番組は、今では全米40を超えるステーションで放送されている人気番組だ。彼の提唱する「ニュー・アーバン・ジャズ」とは、”伝統的なジャズの様式に敬意を払い、ブラジル音楽とアーバンなフレーバーをブレンドした、コンテンポラリー・ジャズの形である。”と定義付けている。その番組は、ボールドウェインのホーム・ページで、ストリーミング配信されているので、ぜひ一聴されたし。
さて、ボールドウィンの新作は、デビュー作「A Long Way to Go」(1988)から数えてキャリア30年目を記念する、ビートルズ・ソング集である。ビートルズの名曲10曲が、「ニュー・アーバン・ジャズ」な演奏曲に生まれ変わり、目(耳だね)を見張る作品集になった。

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2018年11月17日 (土)

Kayla Waters 「Coevolve」(2018)

Coevolveピアノ奏者ケイラ・ウォーターズは、サックス奏者のキム・ウォーターズの愛娘である。キム・ウォーターズの作品、「Silver Soul」(2014)でも、彼女のピアノ演奏がフューチャーされていたように、父娘の共演から、早くから注目されていた人。その後、トリッピン・リズム・レコードから「Apogee」(2017)をリリースして、ソロ・デビューを果たした。そして、この新作がソロとしての2枚目のアルバム。「Apogee」はフレッシュなデビュー作品だったが、ぎこちないところが拭えない印象もあった。この新作では、ピアノが踊るように奔放でエレガントな演奏で、目(耳)を見張るほどに、デビュー作とは段違いで素晴らしい。楽曲も、若々しさを感じて、明るい基調のムードが爽快だ。

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2018年10月31日 (水)

Skinny Hightower 「Retrospect」(2018)

Hightower retrospectスキニー・ハイタワーは、キーボード奏者で、ドラムやベースも操る、気鋭のアーティストだ。デビュー・アルバム「Cloud Nine」(2016)の後、メジャー・レーベルのトリッピン・リズム・レコードと契約して、「Emotions」(2017)をリリース。そして、精力的に早くもこの新作「Retrospect」をリリース。全15曲、1時間超えのボリュームに、彼の力量が前作以上に発揮された力作だ。縦横無尽な彼のピアノ演奏が発揮された楽曲の数々が並ぶ。彼のピアノは、前作に比べて、よりパーカッシブで、エネルギッシュに響き渡り、圧倒される演奏。数曲のゲストに、サックス奏者コンスタンティン・クラストルニ(Kool & Klean)や、ジャズ・ドラマーのネイト・スミスらが参加しているが、ハイタワーがキーボードに関わらず、フルートやベースなど、多くの楽器演奏とアレンジをこなしている。

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2018年8月13日 (月)

Brian Simpson 「Something About You」(2018)

Bsimpson somethingaboutyouブライアン・シンプソンの新作。シャナキー・レコードと契約した最初のアルバム「South Beach」(2010)から数えて、同レーベルから早くも5作目の作品。通算では、8枚目のソロ作品。「South Beach」以前というと、デビュー・アルバム「Closer Still」(1995)の後、「It's All Good」(2005)、「Above the Clouds」(2007)と、12年の間にわずか3作品のリリースだったから、近年の意欲的なリリースは、嬉しい限りだ。この新作も、シンプソンのピアノ・スタイルを高めた素晴らしい内容。今や、彼がスムーズジャズの領域で、間違いなくトップ・アーティストであることを証明する作品だ。
前作「Persuasion」(2016)は、スティーヴ・オリバーとの共作が「新機軸」だったけれど、今作もそのオリバーとのコラボを進化させた作品。全10曲中、オリバーとの共作は7曲。オリバーは、ギターの演奏はしていないが、楽曲の共作と、プログラミング演奏、共同プロデュースで関与している。残り3曲は、これも常連のオリバー・ウェンデル(キーボード)をサポートに迎えての作品となっている。
タイトル曲「Something About You」は、キャッチーなメロディーの佳曲。コーラスを配した色彩感豊かなサウンドは、スティーヴ・オリバーの手腕。「タメた」ステップを踏むかのような、ピアノ・フレージングは、シンプソンならではの美しい演奏。「Morning Samba」は、サンバのリズムに乗って、踊るようなシンプソンのフレージングが心地良い。「Mojave」は、ゲストのギター奏者ヤーロン・レヴィーのアコースティック・ギターと、シンプソンのピアノとのインタープレイが聴きもので、フェード・アウトするのが残念。「Irresistible」はチルアウトなムードの曲で、こちらでもレヴィーがゲストで演奏している。フラメンコ・スタイルのギターと、シンプソンのメランコリーなフレージングに引き込まれる演奏。「Chemistry」は、ゲストのトランペット奏者ロン・キングとの「会話」がブルージーな演奏。ロン・キングは、最後の曲「The Rainbow」でも演奏していて、こちらはミュート奏法で、ジャージーなムードのバラード曲。
今作品は、シンプソンのピアノを際立たせて、統一したムードに彩られている。ほとんど全曲のサポート・ミュージシャンが共通しているのが要因だろう。ギター(Darrell Crooks)、ベース(Alex Al)、パーカッション(Ramon Yslas)による、サポート隊の「いい仕事」は必聴だ。ドラムスがいないというのも興味深いところ。プログラム系の音色が主体になっている曲でも、ベースのオーガニックなグルーヴ感が、「隠し味」のように印象的だ。

2018年4月 8日 (日)

Dan Siegel 「Origins」(2018)

Dsorigins

ダン・シーゲルは、80年代から活躍しているベテラン・キーボード奏者。デビュー作品「Nite Ride」(1980)から数えて、ソロ作品は20を超える。フュージョン全盛期のキーボード奏者、デオダートや、ボブ・ジェームス、ジョー・サンプル、がヒット作品を連発していたのが、80年の前後だった。その後を追うように、デイブ・グルーシンや、ジェフ・ローバー、デイヴィッド・ベノワ、そしてダン・シーゲル、といった面々が出てきた。ジェフ・ローバーを筆頭に、そしてシーゲルも、今も現役としての活躍が聴けるのは嬉しい限りだ。ダン・シーゲルも、2000年以降、リリースのペースは落ちたけれど、5年ぶりのリリースだった前作「Indigo」(2014)に続いて、比較的早いこの新作のリリース。おそらく、60才半ばだと思われるので、これからも、さらに円熟した演奏活動が期待できそうだ。さて、この新作は、ベース奏者ブライアン・ブロムバーグと共同プロデュースした作品。ブロムバーグは、前作や前々作のプロデュースもしているし、シーゲルの近年作品に関わっている気心の合った盟友だろう。シーゲル自身のペンになる全10曲を、彼のアコースティック・ピアノを中心に、ブロムバーグのアコースティック・ベースも聴きどころの、オーガニックなスタイルのコンテンポラリー・ジャズだ。M5「Arabesque」や、M6「Moon and Stars」、M8「Under the Sun」は、いずれもシーゲルらしい、メランコリーなテーマ・メロディーが印象的な、美しい楽曲の数々。全曲で、シーゲルのピアノのキレのいいフレージングも、たっぷりと堪能できる作品になっているのだけれど、聴いていてジョー・サンプルの名作で、個人的にもエバーグリーンの「Carmel」(1979)を思い出してしまった。M4「Lost and Found」での、少しファンキーなアクセントが印象的なフレージングもそうだし、M3「After All」は特に、美しいメロディーもさることながら、後半のピアノ・ソロが白眉で、ジョー・サンプルが思いをよぎる。次作は、エレピも演って欲しいなあ、そう、ジョー・サンプルの「A Rainy Day In Moterey」のように。

2017年9月 3日 (日)

Jonathan Fritzén 「Ballads」(2017)

Ballads

ジョナサン・フリッツェンの新作は「バラッド」と名付けられた、文字通りスロウなムードのフルアルバム。前作「Fritzenized」(2015)までの5作品は、ビートに乗ってシンプルでアタックなシングル・トーンのピアノ、ポップなメロディーがスウィングするサウンド、そういうところが彼の真骨頂だったので、静謐なサウンドに貫かれたこの新作は意欲作だ。全12曲は彼の自作曲で、メロディーは牧歌的で、ピアノを固めるサウンドは映画のサントラを思わせるように映像的だ。ほとんどの曲は、フリッツェンのピアノとシンセに加えて、ギターの客演と、シンプルなサウンド。8曲をサポートするギタリストは、アレックス・クラウンという人で、この人は、フリッツェンと同郷のストックホルム時代の友人だそう。M2「Today」は、そんなクラウンのギターが活躍する曲で、アルバムの中でも比較的ワイルドなトラック。M4「Let It Go」も、クラウンが客演した、切ないメロディーの上質なポップ・チューンの白眉なトラック。M3「The Fiddler」は、牧歌的でフォーキーなメロディーがヒーリング・ムードいっぱい、ゲストのバイオリンは、ピート・プロジェクトのピーター・フェレンツ。M8「Countryside」は、視界が広がるような大らかな曲調のピアノが美しい。最後のコーダに聴かせてくれるアタックのあるビートの繰り返しは、都会的で、フェードアウトするのが残念。M7「Sahara」では、実母のカタリーナ・フリッツェンがフルートで客演して、親子共演のトラック。最後のM12「Rainbows」は、ピアノ・ソロの小品だけれど、フリッツェンならではのメロディーが余韻を残して美しい。聴き込むほどに、フリッツェンのピアノ世界に浸れる秀作。

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