2024年4月14日 (日)

Chris Standring 「as we think」(2024)

ギター奏者クリス・スタンドリングの新作は、本人がCDのライナーに記しているとおり「アップビートで、ポジティブなスピンがかかった」自作の11曲からなる秀作です。「アップビート」といっても、ほどよい熱量のビートがつらぬかれて、スタンドリングのオーセンティックな演奏が洒脱なムードを充満させる充実作。

サウンドを固めるサポートは、信頼厚い常連のリズム・セクション、アンドレ・ベリー(ベース)、クリス・コールマン(ドラム)、ロドニー・リー(キーボード)。くわえて、こちらもデビュー時代からたびたび客演しているディノ・ソルド(テナーサックスとハーモニカ)が数曲で参加しています。

スタートの「Chocolate Shake」は、スタンドリングの代名詞といっていいトークボックスが活躍するファンキー・ナンバー。

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2024年3月24日 (日)

Erik Verwey & Hermine Deurloo 「About A Home」(2023)

オランダのハーモニカ奏者ハーマイネ・デューローの新作は、ピアノ奏者エリック・ヴェーウェイのトリオに加わりスタジオ録音した演奏集。他メンバーは、ドイツ出身のベース奏者ヘンドリック・ミュラー(Hendrik Müller)とドラム奏者ダニエル・ヴァン・ダレン(Daniel Van Dalen)。

カヴァー1曲をのぞく全10曲はヴェーウェイによる作曲。ヴェーウェイは、映像作品の作曲やクラブなどでの演奏でキャリアをつんだ音楽家です。自身がリーダーのトリオは、今作と同じメンバーでデビュー作『People Flow』(2019)を発表。そのアルバムを聴いてデューローが今回の共演を呼びかけたそうです。

先に出ていたデューローの『Splendor Takes』で、ヴェーウェイをむかえてデュオ2曲を披露していました。その2曲(「What Do You See」と「Mother’s Lament」)は、本アルバムでも新しいテイクで収録されています。

ヴェーウェイの楽曲はシャンソンやタンゴの味わいもある多様な曲が並んで、作曲の才能も光ります。相性のよさを発揮したふたりの上品なインタープレイに引きこまれます。

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2024年3月17日 (日)

Marc Jordan 「Waiting For The Sun To Rise」(2023)

カナダのマーク・ジョーダンはキャリア40年を超えて、76歳の今も現役のシンガー・ソング・ライターです。70年代後半に人気をあつめたAOR系アーティストのひとりとして注目されました。デビュー作『Mannequin』(1978)や2作目『Blue Desert』(1979)はAOR時代を代表する必聴盤でしょう。

初期の西海岸サウンドの方向性は、以降は時代をへてロックからカントリー色に傾いても数々の良作につながり、時にはジャズ寄りのアプローチも聴かせるなど幅広い音楽性で歌作りをつづけています。

近年は、70歳をむかえて発表した『Both Sides』(2019)はポップスやスタンダードを取りあげて円熟したボーカリストの妙を発揮した作品でした。直後の『He Sang She Sang』(2022)では奥さまのエイミー・スカイと組んで王道的なデュエットで光るハーモニーを聴かせてくれました。

ちなみに『He Sang She Sang』は、カナダのグラミー賞とたとえられるジュノー賞の2022年度アダルト・コンテンポラリー・アルバム部門のノミネート作品に選ばれています(受賞はマイケル・ブーブレ『Higher』でしたが)。

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2024年3月 3日 (日)

紳士の呼び名でたたえたいラムゼイ・ルイスの生涯『Gentleman of Jazz: A Life in Music』by Ramsey Lewis, with Aaron Cohen (2023)

キーボード奏者ラムゼイ・ルイスは、2022年9月12日に87年の人生に幕を閉じました。生涯にわたり故郷シカゴを拠点に70年にせまるキャリアを重ねて、80アルバムをこえるリーダー作や参加作品を残しました。

本書はルイスのオーラル・メモアール(口述回顧録)で、共著者アーロン・コーエン(Aaron Cohen)が2年以上にわたる本人へのインタビューをまとめたものです。残念なことに、ルイスは本書を手にする前に旅立ちました。多くの関係者へのインタビューも交えて、クラシックを学んだ幼少期からジャズの世界での活躍、時代ごとの作品や音楽活動を中心に、家族のことも触れて語りつくしています。

コーエン氏いわく、60/70年代のジャズ界には破天荒な音楽家が多く、波乱に満ちた人生を過ごした数々のレジェンドが歴史に刻まれています。そんな中で、ルイスは愛する家族や仲間に囲まれて地域の音楽教育にも貢献するなど、紳士的で幸福な人生を送った稀有な存在でありました。

本書の面白さはやはりルイスが明かす名盤や名演奏、共演した音楽家との交流のエピソードの数々です。

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2024年2月17日 (土)

Jayson Tipp 「Table For One」(2023)

1992年に結成されたアンダー・ザ・レイク(UTL)は、長期のブランクやメンバー変更をへて現役で活動する5人組ユニットです。ラフでソリッドな音が魅力で、スリル感をともなうエネルギッシュなアンサンブルです。

近年作品の『Your Horizon Too』(2020)や『Old Friends, New Groove』(2021)は、その持ち味に磨きをかけた秀作です。

今回、オリジナル・メンバーであり中心人物のキーボード奏者ジェイソン・ティップが、キャリア初のソロ・アルバムをリリースしました。

UTLではサックスとギターがフロントをになう演奏曲が多く、リーダー的存在とはいえティップは主にエレピやオルガンでサイドを固めている印象でした。本作ではほぼ全曲アコースティック・ピアノを披露して、今までの印象をいい意味でくつがえしています。

ティップの自作(共作も)によるどの楽曲も明るく、ポップな味つけもあり好感度がグッと上がる会新作になりました。

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2024年2月 3日 (土)

Steve Oliver 「A New Light」(2023)

ギター奏者スティーヴ・オリヴァーの新作は、ほぼ全曲でキーボード奏者マイケル・ブローニングがサポートした作品です。過去にも『Radiant』(2006)がブローニングの全面的参加による作品でしたから、17年ぶりとなるふたりのコラボが注目です。

「Skyway」や「Sunkiss」はふたりだけで作り上げたトラックで、オリヴァーらしい晴れやかなメロディを爽快なサウンドで表現した佳曲。

「A New Light」は、こちらもデビュー作から共演しているサックス奏者ジェフ・カシワが客演した曲。シンセを背景にアコピやギターの複数のフレージングを交差させて耽美な景色を描いた曲です。

「New Heights」は、ラリー・アントニオ(ベース)とヴィニー・カウリタ(ドラム)の強力なリズム隊が引きしめるサウンド。オリヴァーの幻想的でスピード感のある技巧パッセージが光る好演です。

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2024年1月20日 (土)

Justin-Lee Schultz 「Just In The Moment」(2023)

南アフリカ出身のキーボード/ギターなどマルチ楽器奏者ジャスティン・リー・シュルツは、13歳にしてリリースしたデビュー作が話題になった注目のアーティストです。

デビュー作『Gruv Kid』(2020)は、ボブ・ジェイムス、ジョナサン・バトラー、ナジー、ジェラルド・アルブライト、ピーセズ・オブ・ア・ドリームなど豪華なゲストとの共演にも臆せず奔放に才能を発揮した充実作でした。

ソロ名義2作目となる本作は、ほぼ全曲がジャスティン自身のオリジナル楽曲で、半数以上の曲では4歳年上の実姉ジェイミー・レイ・シュルツによるドラム演奏以外の全ての楽器(鍵盤、ギター、ベース等)をこなしたワンマン・サウンドで作り上げています。その他は、ポール・ブラウンがひきいるバンド・アンサンブルで、デイヴ・コーズやリチャード・エリオットも客演した演奏です。

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2024年1月 5日 (金)

第66回(2024)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

•『Jazz Hands』Bob James

キャリア60年越えを誇る大御所ボブ・ジェームスの新作は、ヒップホップ界からのアーティスト、ラッパー/歌手のシーロー・グリーンやターンテーブルリストのDJ・ジャジー・ジェフとの共演が話題となった久し振りのソロ名義アルバムです。

グリーンのボーカルをフィーチャーした「Jazz Hands」や、ジャジー・ジェフとキーボード奏者カイディ・テイサム(Kaidi Tatham)との共作「That Bop」は、ヒップ・ホップやブロークン・ビーツといった新潮流と融合してみせたハイライト曲。

近年のツアーで同行しているリズム隊、マイケル・パラッツォ(ベース)とジェイムズ・アドキンス(ドラムス)が今作でサポートを固めていますが、「The Alchemist」(パラッツォ作)はその3人の美技によるリリカルなポストモダン的ジャズ・アンサンブル。「The Otherside」のアコピや、「Mophead」でのフェンダー演奏は、長年聴きなれたジェームス印すいぜんのフレージングがひかります。

サックス奏者デイヴ・コーズが客演した「Come Into My Dream」や、ライヴ録音の「Sea Goddess」ではサックス奏者トム・ブラクストンが加わって、スムーズジャズ・ファンなら聴きのがせない好演。84歳にしてなおダイナミズムを失わない音楽性を発揮した傑作です。

 

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2023年12月29日 (金)

2023年のベスト3+1

2023_best

今年はパンデミックも終息に向かい、リモートでなくリアルなアンサンブルの録音作品が増えてきたように思います。

恒例とはいえ順位をつけるのはおこがましいけれど、個人的なヘビロテを基準に選んでみました。私の2023年ベスト3+1です。

① Andy Snitzer 『A Beautiful Dream
② Skinny Hightower 『Mind Over Matter
③ Euge Groove 『Comfort Zone
次:Four 80 East 『Gonna Be Alright

アンディ・スニッツアーは、鳴ったとたんに空気感が変わるサウンドが秀逸な作品。明るさが増した作風の変化も感じられて、今まで以上に好感度が高まりました。タイトル曲は出色の1曲でアルバムの価値を印象づけています。

スキニー・ハイタワーは、豪快なピアノ演奏がとにかく圧巻。発揮するエネルギーとグルーヴが、底知れない逸材を証明した作品です。

ユージ・グルーヴは、リズム・セクションとのリラックスしたアンサンブルを武器に、かつてないほどに吹きまくる隙のないフレージングに脱帽。熱量に加えて、この人らしいエレガンスが心地いいことこの上なしのキャリアでベスト級の作品。

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2023年12月27日 (水)

Nils Wülker 「Rays of Winter Sun」(2023)

ドイツのトランペット奏者ニルス・ヴュルカーの新作はEPサイズのアルバム(デジタル配信のみのようです)で、冬をテーマにしたオリジナル4曲と2曲のクリスマス定番曲のカバーが収められています。

ピアノ奏者ティム・アルホフ(Tim Allhof)とベース奏者スヴェン・ファーラー(Sven Faller)を従えて、アコースティックでリリカルなアンサンブルを展開しています。ヴュルカーは半数の曲でフリューゲルホルンを演奏して、暖かみをしのばせた柔和な奏音が心に沁みます。

インタープレイは平穏な空気を漂わせて、曲名のイメージを描写するかのようです。「Rays of Winter Sun」(アルホフとのデュオ)や「First Sight of Snow」(トリオ演奏)は、雪や冬景色が広がり幸福感がわきあがる抒情的な好演です。

ジャズ・スタンダードの「A Child Is Born」で始まり、ドイツ讃美歌の「Macht hoch die Tür」でしめくくる構成は、おだやかなクリスマス・ムードを引き立てます。

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