2021年10月 9日 (土)

Ronny Smith 「Coastal Sunset」(2021)

ロニー・スミスは、メロウな音質、ウェス・モンゴメリー直系のオクターヴ奏法、クールな熱量も味わいのあるギター奏者です。R&B/ファンク/ジャズのテイストでグルーヴを展開する演奏は、派手さはなくても好感度が高いアーティストです。

新作は、リラックスしたムードが伝わる秀作です。

前作『Raise The Roof』(2020)はユー・ナムが運営するレーベル<スカイ・タウン・レコーズ>からのリリースでしたが、今作は以前に作品を発表していた独立系レーベル<パシフィック・コースト・ジャズ>に復帰しての発表です。そのことも影響しているのでしょうか、どこか羽を伸ばしたような演奏が前作との違いを感じます。

自作の10曲は、数曲でリズム・セクションが入りますが、多くはギターにキーボード、ベース、プログラミングのワンマン演奏で仕上げています。フィーチャー・ゲストとして、サックス/フルート奏者ジョン・レケヴィチ(John Rekevics)やベース奏者ジョセフ・パトリック・ムーア(Joseph Patrick Moore)が参加しています。

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2021年9月26日 (日)

Tom Braxton 「Lookin' Up」(2021)

ウェイマン・ティスデイルは、1985年から1997年までNBAで活躍したプロ・バスケットボール選手でした。音楽にも情熱を傾けて、スムーズジャズ・ベース奏者として8枚のアルバムをリリースしました。

しかし骨ガンに冒されて、右脚切断にいたる闘病のすえに2009年に還らぬ人になりました。今でも話題にのぼることが多い、スムーズジャズ・ファンの記憶に焼きついているミュージシャンです。スラップ(またはチョッパー)がトレードマークのベース奏法は、エネルギッシュなグルーヴ感に溢れています。

サックス奏者トム・ブラクストンは、長年に渡りティスデイルのサイドマンを努めました。ソロでリリースしたアルバム『Bounce』(2005)は、ティスデイルがプロデュースした作品です。ティスデイルは自作曲を提供して、ベースだけでなくギターやキーボードも演奏しています。

ブラクストンは、アルバム『Endless Highway』(2009)に「ウェイマン・ティスデイルとの思い出に捧げる」とクレジットを入れています。その中の曲「That Wayman Smile!」は、ウェイマンを思わせるスラップ・ベースをフィーチャーした演奏で、ふたりの交友関係を忍ばせる印象深い曲です。

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2021年9月12日 (日)

Chris Geith 「Invisible Reality」(2021)

クリス・ガイス(もしくはギース)はイタリア育ちでミラノの音楽学校に通い、ニューヨークのマンハッタン音楽学校を卒業したキーボード奏者です。

2000年代になりMP3方式のデジタル音楽配信が普及すると、インディーズのアーティストでも自主的に作品を発表できるようになりました。ガイスは、自主制作したデビュー・アルバム『Prime Time』(2006)で当時の配信サービスで広く注目を集めました。

その後も主に自主制作で、『Timeless World』(2008)『Island Of A Thousand Dreams』(2010)『Chasing Rainbows』(2014)『Well Tempered Love』(2016)などのアルバムを発表しています。演奏家としても、ピーター・ホワイト、ユージ・グルーヴ、スティーヴ・オリバー、ヴィンセント・インガラらと共演をしています。テレビ、ラジオやコマーシャルへの音楽提供の活動もしているようです。

この新作アルバムは、自身の作曲した15曲を収めた力作です。ガイスのピアノ演奏を主役に、全てのサウンドと録音ミックスにいたるまでひとりで手掛けています。

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2021年9月 5日 (日)

Mark Jaimes 「Hear At Last」(2021)

イギリス出身のギター奏者マーク・ハイメスは、かつてミック・ハックネル率いるシンプリー・レッドのメンバーとしてツアーやレコーディングに参加していました。アルバムとしては『Blue』(1998)から『Stay』(2007)への一連の作品や、近作『Blue Eyed Soul』(2019)のクレジットにも登場しています。

ソロ活動としては、スムーズジャズ系のアーティスト、リック・ブラウン、ブライアン・カルバートソン、ピーター・ホワイト、カーク・ウェイラム、ユージ・グルーヴらと共演を重ねています。なかでもオリ・シルクとの共演は常連のようで、近作『6』(2020)ではほぼ全曲で演奏に加わっていました。

本作がソロ名義でのデビュー・アルバムですが、輪郭が際立つスリック(なめらかな)なフレージングを発揮した充実作です。アシッドやR&Bの味付けにポップなオリジナル楽曲も素晴らしい佳曲ぞろいで、派手さを強調しない洗練された音づくりは好感度が上がります。

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2021年8月22日 (日)

JJ Sansaverino 「Cocktails & Jazz」(2021)

ニューヨーク育ちのギター奏者ジョー・”JJ”・サンサヴェリーノは自らのキャッチ・フレーズとして、”ベンソン・ミーツ・サンタナ”とかかげています。そのフレーズがあらわすように、ジャズにR&B、サンバにサルサなど多様な要素をミックスした音楽が特徴です。

2枚目のアルバム『Waiting For You』(2014)を以前当サイトで紹介しましたが、その後『International Groove』(2018)を発表して、本作は4枚目のアルバムとなります。総勢およそ30名のミュージシャンを起用して、作曲・編曲・プロデュースまで陣頭指揮をふるった力作になりました。

全10曲がそれぞれオリジナル・カクテルをテーマにした構成になっています。CDジャケットも凝っていて、各カクテルの写真とレシピが載っています。実際に、カクテルを作って味わうこともできるというわけです。

カクテルは色々なお酒をミックスして作るように、本作も参加ミュージシャンの持ち”味”をシェイクして作りあげた粋なコンセプトを思わせます。サンサヴェリーノ自身のギター演奏も活躍しますが、参加ミュージシャンをフィーチャーしたオーケストレーションがとても素晴らしいサウンドです。

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2021年8月15日 (日)

Will Sumner 「Ocean Street」(2021)

ウィル・サムナーは、ロサンゼルス出身のギター奏者です。ミネアポリスでキャリアをスタート、デビュー作『Tropic Zone』(1980)を発表しました。後年、南カリフォルニアに移住して、現在はサンディエゴ郡のカールスバッドを拠点に活動しています。ソロ・アルバムは通算8作品をリリースしています。ギター奏者ですが、ドラムス、ピアノ、ヴァイオリンなどを演奏するマルチ・プレイヤーです。作編曲家としても、映画やテレビなどの映像作品やコマーシャルの音楽を手がける活動もしているようです。

サムナーはあるインタビューに答えて、影響された音楽としてベンチャーズやビーチ・ボーイズのサーフ・ミュージックを挙げています。過去アルバムは、『Pier Groove』(2013)『Endless Sumner』(2020)『Coast Drive』(2003)『Ride the Wave』(2020)という具合に、海やビーチをテーマにしています。拠点のカールスバッド市は太平洋岸に位置するリゾート地だそうですから、自身のビーチ・ライフから生まれる音楽なのでしょう。

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2021年7月24日 (土)

Brian Simpson 「All That Matters」(2021)

ブライアン・シンプソンの新作は、スティーヴ・オリバーとのコラボ作品「Unified」(2020)をはさんで、ソロ名義としては「Something About You」(2018)以来の9作目となるアルバムです。輝くようなピアノの音粒が際立つ充実作です。

近作では常連の、ニコラス・コール、スティーヴ・オリバー、オリバー・ウェンデルらとのコラボで構成された全10曲。従来と変わらぬ路線とはいえ、それぞれとの共演が円熟度を増してサウンドの完成度に反映されているようです。

ゲストの、ナジー(フルート)、スティーヴ・アラニーズ(サックス)、ロン・キング(トランペット)、ジム・ピサノ(サックス)、ヤロン・レヴィー(ギター)らのソロ演奏も聴きどころになっています。特に、初めて聴くアーティストですが(※)、スティーヴ・アラニーズ(Steve Alanis)のサックス演奏は、輪郭が鮮明な奏音に思わず引きつけられました。

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2021年7月11日 (日)

Ryan Montaño 「Truth Journey」(2021)

ライアン・モンタノは、米国ニューメキシコ州アルバカーキを拠点に活躍するトランペット奏者です。デビュー・アルバム「Something Happened Tuesday」(2013)に続いて、コンスタントに新曲シングルを発表している新鋭アーティスト。

本作は、発表済みのシングル6曲を含んだ最新アルバムです。サックス奏者ダーレン・ラーンが、プロデュース/ミキシングや楽曲共作でサポートしています。

モンタノは同時に、コマーシャルや映画にも出演する俳優やファッション・モデルもこなし、クリエーターとして映像作品を制作するなど、多彩な才能を発揮するマルチ・タレントです。

音楽家としては作曲編曲に情熱を傾けていると述べているように、本作は多彩な曲想と洗練されたサウンドが際立つ会心作です。

サウンド作りは、おそらく一緒に活動するバンド・メンバーが中心で、ユージ・グルーヴ、ブライアン・ブロムバーグ、ヴァンデル・アンドリュー、フィル・デニーらトップ級のミュージシャンもゲスト参加しています。

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2021年7月 1日 (木)

Craig Sharmat & Neil Andersson 「Strings」(2021)

今作は、ふたりのギター奏者、クレイグ・シャーマットとニール・アンダーソン(もしくはアンデション)が、ストリングスをバックに共演したイージー・リスニング・ムードの素晴らしい作品です。

クレイグ・シャーマットは、ソロ名義で4枚のスムーズジャズ・アルバムを発表しています。同時に、作曲・編曲家/プロデューサーとして、映画、TV番組、アニメーションなどの映像作品でも活躍する音楽家です。

ニール・アンダーソンは、60年代のロック・バンド<ファビュラス・ウェイラーズ(The Fabulous Wailers)>の在籍からプロのキャリアをスタートしています。一方で、ファインアートの画家としての道を歩み、多くの受賞歴を有している美術アーティストでもあります。

1993年に、ジプシー・ジャズ・バンド<パール・ジャンゴ>の結成メンバーとなり、20年間におよぶレコーディングや演奏活動に参加しました。現在アンダーソンは「名誉メンバー」となりバンドの活動には参加していないようですが、<パールジャンゴ>は現在も活動中(5人組)で15枚目となる最新アルバム『Simplicity』(2020)をリリースしています。

ジャンゴ・ラインハルトの伝統的スタイルと音楽を継承する、いわゆるジプシー(またはマヌーシュ)ジャズのギター奏者として、アンダーソンは”レジェンド”というべき名手でしょう。

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2021年6月13日 (日)

Marion Meadows 「Twice As Nice」(2021)

マリオン・メドウズの新作は、クリスマス・アルバムをはさんで「Soul City」(2018)からは4年ぶりのオリジナル・アルバムです。「Soul City」は大半がボーカル曲の作品だったので、インストゥルメンタル中心としては「Soul Traveller」(2015)以来の作品となります。

プロデュースを、ポール・ブラウン(5曲)、クリス・デイヴィス(4曲)、ジェフ・ローバー(1曲)が手がけています。フィーチャー・ゲストに、スティーヴ・オリバー(ギター)、ゴスペル/ワーシップ系シンガーのドネリー・スモールウッド(ボーカル)らが参加しています。

ポール・ブラウンが、メドウズのアルバムをプロデュース/共演するのは初めてのようです。スムーズジャズ界の看板のようなふたりが、初めてのコラボとは意外です。ブラウンらしい都会的でメロウなサウンドに、メドウズのサックスが違和感なく溶けこんで、洗練された音像の上質感は素晴らしい。

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«Merlon Devine 「Soul Jazz」(2021)