2022年7月 3日 (日)

Norman Brown 「Let's Get Away」(2022)

ギター奏者ノーマン・ブラウンの13枚目となる新作は、ポール・ブラウンのプロデュースによる作品。

ノーマンの『Celebration』(1999)を始まりに、作品のたびに何曲かはポールがプロデュースや客演で関わるほどの鉄板のコンビです。とはいえアルバムまるごとをポールがプロデュースした作品となると『Just Chillin'』(2002)だけで、それ以来20年ぶりということになるようです。

ポールの手腕でアーバン・ジャズのサウンドに貫かれて、ノーマンのギターはソフトでメロウな音色が冴え渡ります。

サポートには、ルー・レイン(Lew Laing)、ウイリー・モリス(Wirlie Morris)、シェーン・テリオ(Shane Theriot)、ジェフ・カルーザス(Jeff Carruthers)、ジェラルド・マッコーリー(Gerald McCauley)といった、いずれもキーボードやベース/ギターなどマルチ演奏や作曲を手がける新鋭アーティストを起用しているのが注目です。それぞれがノーマンとポールと楽曲を共作、曲ごとに中心になりサウンドを作り上げています。

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2022年6月19日 (日)

Najee 「Savoir Faire」(2022)

サックス奏者ナジーの新作は、ジャケットで着こなす色あざやかなシャツように、多彩な聴きどころが満載の充実作品です。

ベテランから新鋭まで多様なアーティストとのコラボレーションやセッション、オリジナルからカバー曲にいたるバラエティな選曲、ソフィスティケートで洗練されたサウンド、隅々まで魅力的な内容です。

「Dr.Dolittle」は、70年代後半から活躍しているジャズ・ピアニストのフランク・ウィルキンスを迎えた、ウィルキンスのオリジナル曲の演奏です。ナジーのリリカルなソプラノが主役ですが、ウィルキンスのファンキーなピアノ・ソロも光っています。

「Valentine Love」は、70年代に活躍したベース奏者マイケル・ヘンダーソン作の名曲(オリジナルはヘンダーソンとジャン・カーンのデュエット)。ソウルフルなボーカルは、80年代に活躍した女性R&B歌手のアリソン・ウィリアムズ。ナジーの、シルキーでも艶のあるソプラノ演奏が絶品です。

「Bottom to the Top」は、多くのセッションで活躍するベース奏者デヴィッド・ダイソンのオリジナル曲。ナジーは中盤からテナーに替えてフルートを演奏しています。ダイソンのダイナミックなチョッパーに目が覚めます。

新鋭キーボード奏者マーク・ハリスIIとのコラボは、ハリスのオリジナル曲「Luna」。闊達にはねまわる個性的なハリスのピアノと、おおらなナジーのフルートがからんだ痛快なインタープレイです。

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2022年6月 5日 (日)

Nils Wülker 「Continuum」(2022)

ドイツのトランペット奏者ニルス・ヴェルカーの新作は、ミュンヘン放送管弦楽団(Munich Radio Orchestra)との共演による作品です。主席客演指揮者パトリック・ハーン(Patrick Hahn)指揮による総勢60名のオーケストラと、リズム・セクションがパノラマをくり広げる名演集です。

オーケストラは自然界を彩るように響き、ヴェルカーの演奏(トランペット、フリューゲルフォン)は躍動する生命力を思わせます。

楽曲はヴェルカーのオリジナル楽曲10曲で、スウェーデン出身の音楽家ハンス・エーク(Hans Ek)が編曲を手がけています。 4曲は前作『GO』(2020)からの選曲、加えて新曲が6曲。新曲の2曲は、クレイグ・アームストロング(Craig Armstrong)との共作です。

スコットランド出身のアームストロングは、映画音楽からシンフォニーの作曲編曲や指揮にピアノ演奏など広範囲に活躍する音楽家です。ヴェルカーの過去作品でも共演しています。

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2022年5月15日 (日)

Zolbert 「Focus」(2022)

ゾルバート(本名アルベルト・ゾルタン Albert Zoltán) は、ハンガリーで活躍するサックス奏者です。

2013年ごろから、ジャズ・コンテストの受賞や多くの演奏パフォーマンスでハンガリーのジャズシーンで注目を集めたようです。

レコーディング作品は、デビュー作『One』(2015)と『Inside Out』(2017)の2枚のスタジオ・アルバムに、ライブ演奏集『Live』(2018)を発表しています。

スタジオ・アルバムの制作では、同じくハンガリーのスムーズジャズ・ユニット、ピート・プロジェクトのリーダーであるピーター(ピート)・フェレンツ(Péter Ferencz)がプロデュース、演奏、楽曲共作で強力なサポートを務めています。

今回の新作も、フェレンツを筆頭に、ハンガリーのミュージシャンを布陣にして制作されました。

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2022年5月 5日 (木)

Darren Rahn 「Rock The World」(2022)

サックス奏者ダレン・ラーンの本作は、デビュー作『Soulful』(2004)から数えて7枚目となる新作です。

6枚目の前作『Hymns from the Heart』(2018)は、伝統的な賛美歌やゴスペル曲を、セルフ・ダビングによるピアノとのデュエットで演奏した作品。イースター(復活祭)を祝して制作したというスピリチュアルな企画作品で、ヒーリング・ムードにひたれる秀作です。

そして今作は、路線的には5枚目の『Sonic Boom』(2016)以来久しぶりのエネルギッシュなサックス演奏とサウンドが聴ける作品です。キャッチーなオリジナル曲も佳作揃いで、隙のない力作です。

サポートでは常連のふたりメル・ブラウン(ベース)とタレル・マーティン(ドラムス)に加えて、アダム・ホーリー(ギター)ポール・ジャクソン・ジュニア(ギター)アレン・ハインズ(ギター)らが演奏を固めています。フィーチャー・ゲストに、デイヴ・コーズ(サックス)ブライアン・ブロムバーグ(ベース)ブライアン・カルバートソン(ピアノ)らも参加しています。

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2022年4月23日 (土)

Andy Snitzer 「Higher」(2020)

サックス奏者アンディ・スニッツアーの新作(リリースは2020年10月)は、前作『American Beauty』(2015)からおよそ5年ぶりの作品です。

その間も、ジェフ・ローバー・フュージョン(JRF)に参加した『Prototype』(2017)と『Impact』(2018)では存在感を発揮していました。両アルバムの全曲でスニッツアーの演奏が聴けますが、楽曲はすべてジェフ・ローバーのオリジナル(ジミー・ハスリップとの共作を含む)で、スニッツアーの曲が無かったのが残念でした。JRFのスリリングなアンサンブルで、スニッツアーのオリジナル曲が聴いてみたかった。

さて今作では、スニッツアーはオリジナル新曲10曲を披露しています。特徴的ともいえるアンニュイなメロディーやソリッドなサウンドに、今回はポップな味わいが増しています。もちろんソウルフルなサックス演奏も際立つ秀作です。

本作はパンデミックの期間にリモートやダビングを駆使しての制作だったようです。キーボード奏者のアラン・マレット(Alain Mallet)が共同プロデュースを務めてキー・パーソンになっています。マレットは、かなり以前からスニッツアーの作品に参加するサポートの常連です。

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2022年4月10日 (日)

ポップス界の名プロデューサー、リチャード・ペリーの回顧録:『Cloud Nine : Memoirs of a Record Producer』by Richard Perry(2021)

リチャード・ペリーは、1970年代〜80年代に数多くのヒット・アルバムを生み出した、米国ポップス界を代表する人気プロデューサーです。本書はペリー自身による自伝で、手がけたヒット作品を中心に私生活も振り返った回顧録です。

題名の「クラウド・ナイン」とは至福をあらわす決まり文句ですが、ペリーが23歳で始めたレコード制作会社「Cloud Nine Productions」にも命名した言葉です。半世紀を超えるプロデューサー人生が、事業も私生活も成功に彩られた至福の歩みであったことを物語っているようです。

私自身個人的にも愛聴してきたニルソンの『Nilsson Schmilsson』(1971)やカーリー・サイモンの『No Secrets』(1972)、アート・ガーファンクルの『Breakaway』(1975)に加えて、バーバラ・ストライザンド、リンゴ・スター、ポインター・シスターズ、レオセイヤー、ダイアナ・ロス、ティナ・ターナー、ロッド・スチュワートらそうそうたるスター達とのレコード制作に関わるストーリーの数々に引き込まれます。

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2022年4月 3日 (日)

Kim Scott 「Shine!」(2022)

フルート奏者キム・スコットの5枚目となる新作です。前作『Free to Be』(2019)の路線を引きついで、安定感の増したサポート陣とのアンサンブルに、スコットのフルートが優雅に飛翔する秀作です。

前作同様に主な演奏は、ケルヴィン・ウーテン(キーボード、プロデュース)を中心にショーン・マイケル・レイ(ベース)、ジェームズ・”PJ”・スプラギンズ(ドラムス)、エリック・エシックス(ギター)らが固めています。

ゲストに、グレッグ・マニングアダム・ホーリーブレーク・アーロンジョナサン・バトラーらが参加しています。

冒頭を飾る「Back Together Again」(マニングとの共作)は、疾走感のあるリズムに乗ってフルートが飛び回るキャッチーなナンバー。「Shine!」(ホーリーとの共作)はゆるめのテンポに、ギター(ブレーク・アーロン)と交差するクールな佳曲。

「Off The Top」(ウーテンとの共作)は常連メンバーとのアンサンブルが光る、エネルギッシュな表情も見せるスコットのフレージングが絶妙の好演です。

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2022年3月27日 (日)

Daryl Beebe 「Better Together」(2021)

デトロイト出身のサックス奏者ダリル・ビービの本作は、躍動感あふれる痛快な作品。

ビービの録音作品のスタートは、幼なじみだというサックス奏者ハリー・パットン(Harry Patton)と組んだゴスペル・ユニット<パートナーズ・イン・クライスト(Partners in Christ)>でした。アルバムは「The Covenant Project」(2006)と「Called」(2010)の2作品を発表しています。

その後、ソロとしてアルバム「The Daryl Beebe Project: Seasons Change」(2018)を発表。本作がソロ・アルバムの2作目になります。

サックスのスタイルはパワー・ブロウが特徴で、ソウルフルでエネルギッシュな演奏です。

キャッチーな「Road Trip」はヒット性充分のハイライト・チューン。グルーヴィーに飛び跳ねるテナー・サックスに思わず引き込まれます。かたやソプラノ・サックスでムードを盛り上げるのがミディアム・バラードの「Uninhibited」。

「Breathe」はメロウなソウル・チューンで、艶のある奏音でドライブするフレージングが聴きどころ。

「Unmasked」は自身のサイトでの紹介によると、コロナ禍のいまを引き合いに「マスクを着けていたらお互いを分かり合えないけれど。たとえマスクを着けていても微笑みの眼差しを忘れずに。」とメッセージを込めた曲。リズム・セクションのソリッドなビートをまとってスイングするサックスの疾走感がすばらしい好演です。

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2022年3月20日 (日)

Freddie Fox 「Limitless」(2020)

1200x1200bf60テネシー州出身のギター奏者フレディ・フォックスは、1980年代後半にサックス奏者ウォルター・ビーズリーのアルバム参加を始まりとして主にサイド・マンとして活躍しています。ナジーやマリオン・メドウズ、シンディ・ブラッドリー、ティム・ボウマン、ランディ・スコット、リン・ラウントゥリーなど多くのアーティストのクレジットに登場するスムーズジャズの世界に欠かせないギター奏者です。

ソロ・アルバムは『Freddie Fox』(2003)『Feeling' It』(2009)をリリースして、10年ぶりの本作が3枚目になります。

奥さまは、80年前後のディスコ全盛期に活躍した歌手のイヴリン・"シャンペン”・キングです。イヴリンは、「Shame」(1977)や「Love Come Down」(1982)などダンス・チャートでヒット曲を放ったディーバでした。2007年には12年ぶりとなるアルバム『Open Book』をリリース。フォックスが演奏や曲共作でサポートしていました。

さてフォックスの本作ですが、共作を含むオリジナル曲を中心にした11曲から成っています。サポート陣は、ボビー・ウェルス(キーボード)マイケル・ブローニング(キーボード)ブランドン・レーン(ベース)らを中心に、アレックス・アル(ベース)マイケル・ホワイト(ドラムス)らがリズムを固めています。奥さまのイヴリンもコーラスやリード・ボーカルで参加しています。サックス奏者マリオン・メドウズも「Sunshine」でソロ演奏を披露しています。

多彩なポップス・アルバムのように、ソフィスティケートなサウンドで貫かれたアダルト・オリエンテッドな作品。フォックスのギターは過度な主張の無い、自然体の心地いい演奏を聴かせてくれます。

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