2022年1月16日 (日)

訃報:Nick Colionne 「Finger Painting」(2020)

シカゴ出身のギター奏者ニック・コリオーネが、1月1日に死去したそうです。

米国の報道(電子版USA Todayなど)によれば、12月31日イリノイ州エルジン市の病院に緊急入院して元旦の早朝に永眠したとのことです。享年は公表されていませんが、55歳前後と思われます。

コリオーネは 『It's My Turn 』 (1994)でデビュー、マイナー・レーベルなどから複数の作品を発表しました。初等学校の音楽教師を15年勤めた経歴もあり、教師のかたわら音楽活動をしていたようです。

2011年に大手のトリピン・リズム・レコードに所属すると、 『Feel The Heat』 から 『Finger Painting』 (2020)まで5作品を発表しました。(過去記事『Influences』

今春には新作 『Just Like That』 がリリース予定でしたが、発表を前に帰らぬ人になりました。

ウェス・モンゴメリーやジョージ・ベンソンの影響を受けたスタイルで、セミアコでクールにスケール・フレージングを弾きこなすオーセンティックなプレイヤーです。

» 続きを読む

| | | コメント (2)

2022年1月 9日 (日)

Dan Siegel 「Faraway Place」(2021)

ピアノ/キーボード奏者ダン・シーゲルの新作は、1980年のデビュー作から数えて22作目のアルバムです。コロナ禍のレコーディングとして例にもれず、リモートを活用して制作されたようです。タイトルの「離れた場所」とは、そんな状況を印したのでしょうか。

40年のキャリアでも異例とはいえ、多彩な曲と秀逸な演奏が並んだ充実した作品です。

参加したミュージシャンは、ブライアン・ブロムバーグ(ベース)ヴィニー・カウリタ(ドラムス)アレン・ハインズ(ギター)レニー・カストロ(パーカッション)エリック・マリエンサル(サックス)スティーヴ・ガッド(ドラムス)ら、過去作品でもお馴染みの顔ぶれです。

全11曲はシーゲルのオリジナル曲ですが、練ったアイデアを細部に盛り込んだ曲想や編曲が新鮮です。

ホーン・セクションでビートを際立たせた曲。ストレート・ジャズのアンサンブルによる演奏。そしてユニークなのは、ストリングスやコーラスを従えてクラシック音楽をモチーフにした曲です。

» 続きを読む

| | | コメント (0)

2021年12月30日 (木)

2021年のベスト3+1

今年紹介した作品の中から選んだ、個人的なベスト作品です。

 

 

  1. Dave Koz and Cory Wong 『The Golden Hour
  2. Tony Saunders 『All About Love
  3. JJ Sansaverino 『Cocktails & Jazz

次点 Gary Honor 『Momentum

 

世界のコロナ流行がおさまらない状況でも、多くのアーティストがリモートやワンマン演奏を駆使して作品を制作しました。

デイヴ・コーズとコリー・ウォンのコラボ作品は、貴重といえるスタジオ・ライブの熱量が沸く傑作。ウォンが指揮するサウンド・プロダクションと、コーズの弾けるサックスが有機的に共鳴した名演奏です。

いまやスムーズジャズのベース奏者は多士済々の趣きですが、トニー・サンダースはベース演奏はもとよりサウンド・プロデュースの才能に注目したいアーティストです。本作は、フロント楽器としてのベース演奏が躍動して、サウンド全体のグルーヴが発揮された充実作です。

JJサンサヴェリーノの作品は、緻密な編曲とトップ級のミュージシャンを集めて制作した才能の集積といえる作品です。バー・カクテルのコレクションをテーマにしたコンセプトも秀逸です。

ゲリー・オーナーの久しぶりの作品はリモートで制作されたようですが、グルーヴのドライブ感がリアルに迫る力作です。オーナーのパワフルなサックス演奏はテンションが上がります。

 

» 続きを読む

| | | コメント (4)

2021年12月29日 (水)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

前記事に続いて、残りの2作品を紹介します。

4. Randy Brecker & Eric Marienthal『Double Dealin'』

ランディ・ブレッカー(トランペット/フリューゲルホルン)とエリック・マリエンサル(サックス)の、初めてのコラボ作品。プロデュースはジョージ・ウィッティ (キーボード)で、作曲/共作からバック・サウンドまで手掛けて本作の要になっています。数曲に、ジョン・パティトゥッチ(ベース)とデイヴ・ウェックル (ドラム)が参加しています。

マリエンサルは、チック・コリア・エレクトリック・バンドのメンバーとして80年代後半にキャリアをスタートしましたが、その時のバンド・メイトがパティトゥッチとウェックルでした。かたやウィッティは、ブレッカー・ブラザースのサポート・メンバーでした。70・80年代のフュージョン・シーンを盛り上げた顔ぶれが集まりました。

「Double Dealing'」は、ワウワウ・エフェクトのブレッカーとパワフルなマリエンサルが激突するベスト・トラック。
「Fast Lane」は、パティトゥッチとウェックルが固める鋭利なリズム・セクションと、ふたりの吹奏も尖ったインター・プレイが圧巻です。
「You Ga (Ta Give It)」は、ブレッカー・ブラザースの『Detente』(1980)に入っていた曲。ディスコ・ビート的なグルーヴに乗って、ふたりが交わすファンキーなバトルが聴きどころ。

現在進行形のスリリングなフュージョンが躍動する名演奏の作品です。

 

» 続きを読む

| | | コメント (3)

2021年12月26日 (日)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ①

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門賞のノミネート5作品が選ばれました。下記に3作品を紹介します。残りの2作品は、後日紹介します。

受賞作は、2022年1月31日(アメリカ時間)に発表される予定です。

1. Rachel Eckroth『The Garden』

レイチェル・エックロスは、シンガー・ソング・ライターとしてクロス・ジャンルなソロ作品を発表しているアーティスト。ジャズにもアプローチしたのが近作『The Blackbird Sessions Vol.1』で、ご主人のベース奏者ティム・ルフェーヴル (Tim Lefebvre)とのデュオでジャズのスタンダードを歌っています。

本作は、おそらく初めてのインスト・アルバム(1曲はボーカル入り)で、全曲でキーボード演奏を披露した意欲作です。

共演するアンサンブルは、ルフェーヴルに加えて、サックス奏者ダニー・マッキャスリン(Donny McCaslin)、ギター奏者ニア・フェルダー(Nir Felder)、ドラム奏者クリスチャン・ユーマン(Christian Euman)ら、いずれも気鋭のジャズ・ミュージシャンです。

「Vines」は、4ビートのビーバップからフリーにへ展開するジャズ演奏。エックロスのエレピ演奏が聴きどころです。「The Garden」は、スリリングなインタープレイと達者なアコピが交差する個性的な佳曲。「Oil」は、プログレッシブ・ロックのようで未知の自然界をイメージさせる独特の音楽世界です。

アバンギャルドな音像と伝統的なジャズも融合して、物語性に引き込まれる魅力的な作品です。

 

 

» 続きを読む

| | | コメント (5)

2021年12月25日 (土)

Kenny G 「New Standards」(2021)

ケニー・Gの新作は、『Brazilian Nights』(2015)以来約6年ぶりとなるオリジナル・アルバムです。50・60年代のスタンダード曲をオマージュしたオリジナル曲集です。

制作には、長年にわたるサポートの常連ウォルター・アファナシエフ(曲の共作とキーボード)、前作にも参加していたジャズ・ピアノ奏者サム・ハーシュ、ポップスや映画音楽の作編曲家として著名なピアノ奏者のランディ・ウォルドマン、マイケル・ジャクソンやTOTOのセッション・マンで知られたキーボード奏者グレッグ・フィリンゲインズ、多くの映画音楽を手掛けているウィリアム・ロスら、熟練の音楽家が集まりました。

自作と共作による全11曲、いずれもムーディーなバラード曲で、季節がらホリディ・アルバムのような華やかさも感じます。サウンドは、ストリングスやピアノ主体のオーケストレーションがさりげない存在感で、ケニーのサックス(テナー、アルト、ソプラノ)を引き立てています。

» 続きを読む

| | | コメント (0)

2021年12月12日 (日)

Dave Koz and Cory Wong 「The Golden Hour」(2021)

デイヴ・コーズの新作は、新世代ファンクのギター奏者コリー・ウォンとの熱量あふれるコラボレーション作品です。

ウォンは、ミネアポリスを拠点に活動する気鋭のアーティストです。2016年ごろからファンクバンド、ヴォルフペック(Vulfpeck)にリズムギター奏者として参加、パーカッシブなカッティング・ストローク奏法で一躍注目されました。自身のバンドを従えたソロ活動にとどまらず、ジャンルを超えて活躍しています。

コーズとウォンは、以前から共演を重ねてきました。2018年にコラボ・シングル「Koz Nod」をリリース。ウォンのアルバム『Elevator Music for an Elevated Mood』(2020)では2曲(「Restoration」「Watercolors」)にコーズが客演しています。

ウォンも演奏に加わったヴォルフペックのライブ盤『Live at Madison Square Garden』(2020)では、コーズがマンドリン奏者クリス・シーリとゲスト参加した演奏「Smile Meditation」(2015年のデビュー・アルバム『Thrill of the Arts』の曲)が記録されています。

» 続きを読む

| | | コメント (2)

2021年11月28日 (日)

Till Brönner 「Christmas」(2021)

ドイツのトランペット奏者ティル・ブレナーの新作は、ピアノとベースとのトリオ演奏(デュオも数曲)によるクリスマス・アルバムです。

ピアノのフランク・カステニアー(Frank Chasteiner)とベースのクリスチャン・フォン・カペヘンクスト(Christian Von Kaphengst)は、ブレナーの多くの作品に参加しているサポートの常連です。気心の知れた関係がにじみ出るように、3人のアンサンブルは暖かいムードが伝わります。ブレナーは大半の曲でフリューゲルホーンを吹いていて、やわらかい音色が一段と幸福感を膨らませる好演になっています。

ブレナーのクリスマス・アルバムは今作が2作目です。かつての『The Christmas Album』(2007)は、フォン・カペヘンクストとの共同プロデュース作品で、カステニアーも演奏に加わっていました。その3人で再びクリスマス・アルバムを作ったというのも興味深いところです。

» 続きを読む

| | | コメント (0)

2021年11月21日 (日)

Adam Hawley 「Risin' Up」(2021)

ギター奏者アダム・ホーリーの4作目の新作は、息もつかせないギター演奏が圧倒的な秀作です。ホーリーはプロデューサーとしても売れっ子ですが、自作ではギター奏者としての実力を聴かせてくれます。ビート・ナンバーを中心にしたオリジナル曲も佳曲揃いで、アルバムを充実させています。

フィーチャー・ゲストに、スティーブ・コール(サックス)、ヴィンセント・インガラ(サックス)、ライリー・リチャード(サックス)、ジュリアン・ヴァーン(ベース)らが参加しています。ホーン・セクションを、マイケル・スティーバー(トランペット)、デヴィッド・マン、ドナルド・ハイズが手がけているのも注目です。

ゲストのソロの印象がかすむほど、ギターがパッセージを弾きまくります。速弾きにストロークを織り交ぜて、スタミナたっぷりのランナーのように疾走します。

» 続きを読む

| | | コメント (0)

2021年11月 7日 (日)

Vincent Ingala 「Fire & Desire」(2021)

サックス奏者ヴィンセント・インガラの7枚目となる新作は、賞賛の意味を込めて、ポップスのカテゴリーでも評価されるべき「ポップ・インストゥルメンタル」の傑作だと思います。

全ての演奏と作編曲を自身で手がけるスタイルはいつも通りですが、今回は徹底してワンマンで作られています。ゲストも、ウォルト・ジャクソン(トランペット)がひとりクレジットされているだけです。コロナ禍の事情でのレコーディングと想像できますが、サウンドは完成度を極めたようです。

オリジナル楽曲はどの曲も素晴らしく、ヒット・ポップスを並べたような充実のラインアップです。パレットに彩るようなゴージャスなサウンドと、軽快な質感はこの人ならでは。サックス演奏はもちろん、ギターのシャープなカッティングや、ベースのメロディアスなフレージングなど、音像の細部に耳が引きつけられます。

» 続きを読む

| | | コメント (2)

«Gary Honor 「Momentum」(2021)