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2011年8月 3日 (水)

Cindy Bradley 「Unscripted」(2011)

どこかの控え室なのか。マンハッタンの会員制高級ジャズバーか、はたまたクラブ系ジャズクラブなのか。シャンデリアの下で、スレンダーな足を組んで、ソファに沈み、クールにこちらを見つめる女性がこれから始まるセッションのパフォーマーなのか。ちょっと姉御っぽいこの女性、右手のトランペットを武器に、近藤等則ばりにバリバリ吹きまくるのか。

1曲目の始まりのプレリュード。足音が近づいてきて、クラブのドアを開ける。さあ、今夜のギグが始まる。

バリバリブローかと思いきや、聞こえてきたのは、打ち込み系のダンシングチューンだ!ファンキーなベースのリフの周りを飛び回るミディアムトーンのトランペット。かっこいい。4曲目と5曲目は、スタンダードのミディアムスローバラードを、沁みるミュートプレイで泣かされる。

8曲目の間奏で、ラジオのチューニングを合わせて、かすかに聞こえるのは、ホール&オーツの「I Can't Go For That」ではないか。その予感を受けて、9曲目と10曲目は、ジャジーなビートナンバーが続く。

そして、一転、11曲目はバラードプレイ。ソロプレイの間奏を挟んで、今晩のギグの幕を閉じる13曲目は、美しいオープンプレイ。目をとじたら、静かな海岸に立って、夜が明ける地平線が見えるではないか。

アルバムのタイトル「Unscripted」とは、おそらく「台本無し」の意味だろう。コンセプトは奥が深そうだ。
勝手に、曲目を「超訳」してみると(前奏間奏曲を除いて)。

(2)「大型移動機関に乗って」(Massive Transit)※バスか電車か飛行機かに、乗って大都会へ向かうイメージか。

(4)「あしあと」(Footprints)※ウェイン・ショーター作曲。マイルス・デイビスの「Miles Smiles」で演っている。

(5)「恋の味をご存知ないのね」(You Don't Know What Love Is)※コルトレーンの「バラード」の演奏が有名。この訳題は、大橋巨泉さんが付けた邦題(らしい)。

(6)「乗り越えて」(Lifted)

(7)「新しい日」(New Day)

(9)「いつかのブルー」(Deja Blue)※Deja Vu(既視感)にかけている(?)

(10)「通知書」(Pink Slip)※解雇通知書を意味する(らしい)

(11)「逆らえないもの」(Inevitable)

(13)「もう一度だけ」(One Moment More)

何かが見えてくるではないか、アルバムの意図が。「困難に打ち勝つ人生」なのか、「明日があるさ」と、語ってくれている演奏なのかも知れない。勝手にストーリーを思い浮かべて、最後の曲の「美しさ」が際立って聞こえてくる。

女性トランぺッター、シンディ・ブラッドリーのニュー・アルバム。ボーカルトラックが無いのがいい。最近のスムース系は、定番のようにボーカルが数曲入るのが多いけど、インストだけの勝負する意気込みを感じる。シンディは自身のウェッブサイトで、このアルバムについて、「人生のリアリティーがテーマ。人生に台本なんか無いもの。」とコメントしている。

彼女は1977年生まれで、若干34歳。メジャーデビューは2009年の前作「Bloom」で、これが2作目。アメリカン・スムース・ジャズ・アワードの「ベスト・ニュー・アーティスト」にも選ばれてる。

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