Matt Marshak 「Urban Folktales」(2011)
青空の下をドライブする時は、疾走感たっぷりのビートはっきりのアルバムを聴きたい。夜には、静かに一人で飲むなら、摩天楼にささやき通るような、スロウでメローな演奏を聴きたい。
ところが、初めから終わりまで、期待通りのバイブレーションが続くアルバムはなかなかないもの。メローな曲に酔っていると、次の曲は突然、青空を突き破るようなファンクチューンが出てきたりして、スキップで飛ばしたり。TPOに合わせて、お気に入りの曲を編集したりする。でもなあ、そんなの面倒だ。同じビートとバイブレーションが続くグッド・ミュージックのアルバムを見つけたい。
マット・マーシャックは、ニューヨーク出身のギタリスト。2001年にデビューアルバムを出してから、この新作が6作目。「この作品は、初めから終わりまで同じバイブレーションで通した、初めてのテーマ・アルバムだ。夜中のシティ・サウンドを表現したかったんだ。」と、彼自身がコメントしているとおり、これは夜にピッタリのミュージック。
同じバイブレーションをキープしながら、ギターの奏法と音色を駆使して作った、万華鏡のような作品集。ワウワウ・エフェクトとエコーで、夜を演出しているような、M-1「Teddy P」とM−6「For So Long」。ポップチューンのような、キャッチーな、M-4「Tell Me How You Feel」とM−5「A Silent Knowing」。チョーキングを効果的に使ってブルース・フィーリングたっぶりの、M−7「Piece By Piece」。
ワンツー・ワンツーのスロービートにメローノートを繰り返す、M−8「Harlem River Drive」。オクターブ奏法が冴え渡るクールな、M−9「Cackalaky Cool」。スチール弦のアコースティックサウンドでさわやかな、M-10「Time For Takeoff」。オルガンやホーンセクションが加わって、ワウワウがファンキーな、シカゴのR&Bバンドのような、M−11「Glen Burnie」と、最後を飾るM−13「Dancing With My Daughter」。
これなら、編集いらず、夜に聴き通せるスムース・ジャズの決定版。もう、今年ベスト候補の一枚かな。
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