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2013年4月28日 (日)

Martin Taylor & Tommy Emmanuel 「The Colonel & The Governor」(2013)

トミー・エマニュエルは、オーストラリアのギタリスト。彼の技巧は、チェット・アトキンスをして、最高のギタリストとして評され、チェットから「Certified Guitar Player」(c.g.p.)の称号を授かった、オーストラリアを代表する英雄的ギタリスト。音楽活動は、1979年のデビューアルバムから20作以上のアルバムを出している。

かたや、マーティン・テイラーはイギリスのギタリスト。ステファン・グラッペリとの共演から始まり、チェット・アトキンスやデイビット・グリスマンなど共演して、1981年以来ソロ作品は30作品近くにおよぶ。彼も、イギリスで功績のある文化人や芸能人に与えられる大英帝国勲章、MBE(Member of the Most Excellent Order of the British Empire)を受けていて、名前の後にその略称を付けられる。

という訳で、ジャケットに記された2人の名前の後の省略記号は、それぞれの称号を表してる。勲章の「プライド」を見せつけるような、胸を張ったようなポートレートに、アルバムタイトルも「The Colonel & The Governor(大佐と総督)」と大仰。

けれど、マジではなくて、2人の表情はユーモアたっぷり。トミーはスチール弦のアコースティックギターを弾き、スタイルは(超テクの)フィンガーピッキングを駆使する。彼はアコギファンの間では「神様」と称されているとか。マーティンはセミアコを弾き、チャーリー・クリスチャンから、ウエス・モンゴメリーに繋がる正当派のジャズギタリスト。ステファン・グラッペリが、ジャンゴの再来として見出したとか。その2人が組んだデュエットアルバムは、とにかく、ジャケットの2人の表情同様、ハッピーなギターデュオの演奏だ。

ジャンゴのような、マヌーシュスタイルの「Bernie's Tune」や「Heat Wave」の、2人で疾走するスウィングは素晴らしいし。「I Won't Last a Day Without You」は、カーペンターズの名曲のカバーで、あの美しいメロディーを逸脱しないで、2人のギターのブギーで解釈するのだからびっくり。「Jersey Bounce」は、40年代のベニーグッドマンで、コードストロークのスウィングが楽しい。「Secret Love」は、トミーのハーモニクスに注目のバラード。マーティンのオリジナル曲「True」は、とりわけ「美しい」演奏で、景色が見えるような、この2人のギターのなんと「沁みる」ことか。

このアルバム、録音も素晴らしい。2人の息づかい、いやギターの指使いが見えるような、リアルな録音。ギター2本の演奏だけれど、時にダイナミックで、メローで、音と静寂の対比が映像のように聴こえる。ジャズとかカントリーとか、ジャンル分けは無用、とにかくグッド・ミュージック。

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