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2013年6月 1日 (土)

Bob James & David Sanborn 「Quartette Humaine」(2013)

ボブ・ジェームスが、デビット・サンボーンとコラボした「Double Vision」(1986)は、フュージョンの「名作」。なんと、その時から27年を経て、その2人が再演したのが、新作「Quartette Humaine」。

まず、「Double Vision」を久しぶりに聴き直してみた。当時、あきるほど聴いたはずなのに、今でも色あせない名演。サポートしたのは、マーカス・ミラー(ベース)、スティーブ・ガッド(ドラムス)の最強リズム隊。デビッドのサックスは、「泣き」で鳴らしていた人気絶頂の頃。このボブとのコラボでは、潤いが伝わってくるような音色がクール。名作「Touch Down」から、一連のタッパンジーのフュージョンヒット作品を連発していた、ボブジェームス。この作品でも、彼のフェンダーエレピサウンドが、ポップなビート感が最高。マーカスの重量級チョッパーベースは、当時のフュージョンのスタイルで、今聴くとちょっと懐かしい。

さて、この新作のメンバーは、ドラムスが同じスティーブ・ガッド、ベースはジェームス・ジナスで、カルテットコンボによる、ジャズフォーマットの演奏。その「音」は、27年前の「Double Vision」にあらず、一発撮りライブのようで、ときに室内楽的で、精緻で上質なコンテンポラリージャズ。主役は、もちろんデビットとボブだけれど、必聴は、スティーブ・ガッドのドラムス。ブラシワークがすばらしい。ブラシのスラッシュとヒットワーク、シンバルとハイハットの多彩なドラミングテクニックは、まるでオーケストレーションのよう。スティーブのドラムスが、このカルテットの「音世界」を広げている。録音も秀逸なので、彼のドラムスを聴くだけでも、この作品は価値がある。

1曲目「You Better Not Go To College」や、3曲目「Sofia」は、特に鳥肌もの。ブラシのスラッシュワークが、こんなに胸に染み入るなんて、涙もの。ジナスのベースも、よけいな「おかず」を入れないけれど、さりげないシンコペーションノートが現代的。デビッドのサックスは、コブシを廻して絞りこんだり囁いたり、「湿り気」の熱唱ならば、ボブのピアノはそれを「中和」する清涼水のよう。このカルテットのアンサンブルは、モードではない、ちょっとビーバップ的なスウィング感があって、それでいて現代的なジャズの解釈にあふれている。

この作品は、デイブ・ブルーベックとポール・デスモンドへのトリビュートがテーマらしい。「黄金のカルテット」と言われた、ブルーベックカルテットのリズム陣は、名手ジョー・モレロのドラムスが不可欠だった。まさしく、スティーブ・ガッドが、ジョー・モレロなのか。この作品は、フュージョンとかジャズのジャンルを超えて、ボブ・ジェイムスとデビッド・サンボーンの27年後の「アナザー名盤」。

「Double Vision」は、グラミー賞を受賞したっけ。この「Quartette Humaine」も、遜色なしの候補作品になるに違いない。次は、ボブ・ジェイムスとアール・クルーの再演が実現しないだろうか。過去3枚のコラボで、最後は1992年の「Cool」だから20年も前。再演を切に願いたい。

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