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2013年9月の7件の記事

2013年9月29日 (日)

Oli Silk 「Razor Sharp Brit」(2013)

オリ・シルクは、1979年英国生まれのキーボード奏者。大学の友人であったベース奏者ダニー・シュガーと組んだフュージョン・バンド「Sugar & Silk」で、2000年にデビュー作「Fact or Friction ?」をリリース。2002年には2作目「Duality」をリリース。その後、オリはソロ奏者に転じて、スムーズジャズのメジャー・レーベル「トリピン&リズム・レコード」から、「So Many Ways」(2006)、「The Limit's the Sky」(2008)、「All We Need」(2010)、の3枚のソロ作品をリリースしている。

この最新作品は、彼の現時点のベスト作品に間違いない。そして、スムーズジャズの作品として、このアルバムは今年の傑作の1枚だろう。かつての、ボブ・ジェームスや、リー・リトナー、デイブ・グルーシンなどが、70年80年代に残した作品が、今やフュージョン・ジャズの名盤と評価されるなら、やがて何十年か後に、2010年代のスムーズジャズを振り返る時が来たら、この作品は間違いなく代表作の1枚と評価されるに違いない。

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2013年9月24日 (火)

Jessy J 「Second Chances」(2013)

ジェシーJは、デモを聴いたポール・ブラウンに見出される。ポールは、デビュー作「Tequila Moon」(2008)をプロデュース。次作の「True Love」(2009)、「Hot Sauce」(2011)、とすべてポールがプロデュースや演奏に深く関わっている。いずれも、ポールが作るサウンドの特色の、アダルト・オリエンテッドなR&Bムードに加えて、メキシコ系のジェシーならではのラテン路線をブレンドした洗練されたスムーズジャズ作品だ。

ポール・ブラウンの秘蔵っ子と言っていいジェシーだが、よくありがちな方向性として、今回のこの新作「Second Chances」は、ポール・ブラウンが関与しない初めての作品になった。「Second Chances」というタイトルには、「諦めずにチャレンジする」意味を込めたと、ジェシー自身がライナーに記している。「2」をテーマにして、その数字がタイトルに入っている曲が、全10曲中6曲もあるのも面白い。ポール・ブラウンはいないけれど、共演しているのは、ジェフ・ローバーやノーマン・ブラウンなど大御所で、過去作品と遜色は無い内容だ。

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2013年9月23日 (月)

Patrick Yandall 「Soul Grind」(2013)

パトリック・ヤンダルの前作「Acoustic Dreamscape」は、アコギ1本のなかなか趣のあるいいアルバムだった。そして、彼の新作は、久しぶりにオーケストレーション・サウンドをバックに彼のギターが堪能できる秀作。

彼の自作曲11曲に加えて、カバーを3曲演っている。そのカバー3曲は、マイケル・ジャクソンの名曲M4「Human Nature」に、ラリー・カールトンのM6「Room 335」と、M14「Josie」はスティーリー・ダン。いずれも、コメント不要の名曲で、どちらかといえば「ベタ」な選曲。普通は、これだけビッグな曲をカバーすれば、アルバム中のハイライトになって、その他の曲が埋もれてしまうもの。でも、パトリックのメロディー・メーカーとしての才能は、そんなビッグなカバー曲がある中、自作曲がけっして劣らず、いずれもすばらしい楽曲で、肩を並べている。

ギター・プレイヤーとしてのパトリックは、スムーズ・ジャズ系ギタリストでもトップ・クラスだけれど、作曲の才能はもっと注目されてもいい。この新作は、その楽曲の質の高さと、演奏を含めたアレンジの素晴らしさで、ポップ・インストルメンタル・アルバムとしてトップ級。

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2013年9月22日 (日)

スムーズなシングル盤⑭

ピアノ・プレイヤーによる新作シングル3曲。

以前紹介した、グレッグ・マニングの「Dance With You」は、秀逸なポップ・インスト・チューンで、けっこうヘビロテで聴いたお気に入り曲だった。ちなみに、同曲のサックスは、ミンディ・エイベアーです。さて、彼の新曲「Groove Me」は、前作がさらにパワーアップした8ビート全開のスピード感溢れる作品。テーマメロディーはキャッチーだし、ベースやエラン・トロットマンのサックスがファンキーで、リピートしたくなるヒット性のポップ・チューンだ。でも、コンテンポラリー・ジャズ・リスナーには、中盤に出てくるグレッグのピアノのインプロビゼーションに注目してもらいたい。オン・ビートで疾走感あるアドリブプレイは、ジャズファンも唸るはず。早くフル・アルバムを出して欲しいなあ。

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2013年9月16日 (月)

Jeff Golub「Train Keeps a Rolling」(2013)

ジェフ・ゴラブのデビューは1988年。いままで、すでに13作品のアルバムを出している、26年のキャリアを持つギタリスト。アタックがやや強い音色を弾く人で、ロックやブルース系寄りのコンテンポラリー・ジャズ・ギタリスト。前作の「The Three Kings」(2011)は、ブルース界の3人の”キング”、BBキング、フレディ・キング、アルバート・キングへトリビュートした、ディープでゴージャスなブルース作品だった。

そのジェフ・ゴラブの新作。ジャケットの彼はどこかワイルドな感じで、今までの貴公子なイメージとどこか違う。題名も「Train Keeps a Rolling」だから、タイトル表現の、電車の引き込み線をバックにした撮影だろう、と。寄り添う犬は、あれっ「盲導犬」?。ワイルドに見えたジェフは、サングラスをかけている? 

そう、うかつにも、知らなかった。ジェフは、前作アルバムの録音を完了した後、2011年の7月に、視神経の障害で視力を失ってしまう。「The Three Kings」のレコーディング中に、すでに右目の障害が始まっていたが、誰にも語らず演奏したそうだ。そして、その後、両目の視力を失ってしまう。

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2013年9月 8日 (日)

Pieces of a Dream 「In The Moment」(2013)

かつて、ピーセス・オブ・ア・ドリームが、グロバー・ワシントン・ジュニアに見出されてデビューしたのは、彼らがまだ10代の1976年だった。編成はジャズのピアノトリオで、出身であるフィラデルフィアのソウルや、ゴスペルのテイストを持った、新しいコンテンポラリージャズのバンドだった。

かつて、1970年後半からソウル系ラジオ番組から人気を博した「クワイエット・ストーム」なる音楽ムーブメントが、いわゆるメロウで都会的な音を指すジャンルになった。ジャズでは、CTIレーベルの音や、グロバー・ワシントン・ジュニアあたりが代名詞となったのは、その後のいわゆるスムーズ・ジャズの展開に続いたのかもしれない。日本のFM番組「クロスオーバー・イレブン」は、いわゆる「クワイエット・ストーム」を持ち込んだ先駆的な番組だったのだろう。アメリカでは今も「クワイエット・ストーム」な深夜の音楽番組が多くあるようで、そういった背景の違いが、スムーズ・ジャズの日米の人気の違いなのかもしれない。

さて、ピーセス・オブ・ア・ドリームのデビュー以来、長いキャリアを経たこの新作は、20作目を数える。現在のバンドの中心メンバーは、デビュー以来の、ピアニストのジェームス・ロイド、ドラムスのカーティス・ハーモンの2人。このサウンドは、まさに前述した「クワイエット・ストーム」のメインストリームでなかろうか。スゥイートなソウルテイスト、メロウで、シブくて、ジャズの艶っぽさもあって、ゴスペルやストレート・ジャズがブレンドされている。彼らの演奏する音やメロディーに、ラムゼイ・ルイスや、グローバーや、ルーサー・ヴァンドロスあたりがデジャブのように聴えるのは錯覚だろうか。20作目を経て、彼らの原点回帰の作品なのかもしれない。

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2013年9月 1日 (日)

Lebron 「Shades」(2013)

新人サックス奏者、レブロン(本名レブロン・デニス)のデビュー作。彼のサックスプレイも、サウンドも、好感の持てる作品。アーバンなサウンドで、カラッとしたR&Bテイスト。中間音を中心に柔らかな音色に終始するサックスプレイも、耳に心地いい。思い浮かぶのはジェフ・カシワや、ダーレン・ラーンユージ・グルーブ、時にはケニーG、といったメジャーなサックスプレイヤーだし、サウンドはいかにもの黄金律のスムーズ・ジャズ・バイブレーション。デビュー作にしてこの完成度だから注目のアーティスト。

シングルのM3「Groove City」のようなキャッチーなハイライトチューンもあって、アルバム全10曲が、心地よいバイブレーションで繋がっている。アルバム全体がスムーズに同期しているサウンドデザインに、このアーティストのコンセプトが感じられる。あえて、ジャズ的なアドリブや感情移入を押さえて、リスナーに心地いいサウンドとバイブレーションを届けてくれる。

プロデューサーはダーレン・ラーン。「Groove City」では、ポール・ブラウンがギターで客演。同じレーベル(カットモア・レコード)のニコラス・コールが参加しているのはM5「Kiss and Tell」。ほとんどの作曲はダーレン・ラーンによるもので、3曲がレブロンとの共作。ダーレンのサックスもM2「Double or Nothing」で参加していてレブロンとのファンキーなデュエットプレイが聴ける。最後のM10「Turn It Up」が、アルバムの中では一番ファンキーでパワフルなナンバー。この路線で、次回の作品はもっと弾けたサックスが聴きたい。

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