2015年のベスト3+1
今年聴いたディスクからの独断的ベスト3+1です。
① ヴィンセント・インガラ 「Coast to Coast」
② ブライアン・シンプソン 「Out of a Dream」
③ ジョナサン・フリッツエン「Fritzenized」
次点:ピーセス・オブ・ア・ドリーム「All In」
4作品は、どれも甲乙つけがたい優秀作。アダルト・コンテンポラリーで、ソフィスティケートなメロディー、R&Bテイストなビート、インストルメントの魅惑的なアドリブ・フレージング、アンサンブルのグルーヴ。何と言っても、いずれの作品も、ポップなアレンジメントで、聴いていてワクワクするし、まさに、スムーズ・ジャズの王道スタイルと言っていい「名作」の4枚。
インガラの作品は、ヴィヴィッドな彼のサックスが際立ったところはもちろん、ギター、ピアノ、ブラスセクション、など多彩なサウンド・アレンジメントが素晴らしい。ボーカル曲「Baby I’m Hooked」は、ヒット・チャートを上がってもおかしくないグッとくるポップ・チューンなんだから。インガラの才能に驚嘆する力作。
シンプソンの作品も、非の打ち所がない秀作。流れるような、シンプソンのピアノ・フレージングが、随所で聴けて嬉しい。「San Lorenzo」での、フェンダーの軽快で染みる音色なんて、拍手もの。
フリッツエンの作品は、「色気」のあるピアノ・サウンドが最高に魅力的な秀作。「Sailing Away」は、コーラスを絡めて、艶のあるピアノの色っぽいこと。
ピーセス・オブ・ア・ドリームは、長いキャリアの熟練サウンドに、新人サックス奏者が加わって新鮮な作品になった。ソフィスティケートなビートとメロディーは、クワイエット・ストームを継承する、このユニットの完成形。さらに新作が聴けることを期待したいユニット。
今年は、その他、ボニー・ジェイムス、サックス・パック、マリオン・メドウズ、ケン・ナヴァロ、ウォルター・ビーズリーなど、お馴染みのアーティストの作品はいずれも、グッときた作品。ブラインアン・カルバートソンや、カーク・ウェイラムのライブ盤も「力作」だった。
いずれも色褪せないエバーグリーンな作品が多かったのに、グラミーに一枚も選ばれないなんて。このスムーズ・ジャズを聴いてほしい!
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さて、下記は、共同企画として毎年の恒例になった「Sound of The Breeze」のマスター「洋楽のソムリエ」さんによる、ベスト3+1です。(注:リンクは、当サイトのレヴューです。)
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2015年ベスト・スムーズ・ジャズ・アルバム
1位 『brazilian nights』Kenny G
ケニーGによるボサノヴァ集。ジャズの作品としてかなり知られているものもあり、頑迷固陋(がんめいころう) なドジャズ・ファンから一言ありそうなアルバムではある。しかし、それがどうした!ソプラノ・サックスは元より、彼がテナー、アルトでも”ケニーG”であり、変わらず聴く者を恍惚とさせてくれることを証明する一枚である。2015 年、最高のボサノヴァ・アルバムが誕生した。
2位 『wallflower』Diana Krall
“ ポピュラー音楽ファンに聴いて欲しいスムーズ・ジャズ” があるとすれば、まさにこの作品だ。デイヴィッド・フォスターの編曲にも、
しびれる。ポップス・ファンなら誰でも知っている曲を唄うというのは、恐らく勇気の要ること。それをここまで唄いこなすクラールの技量には、正直驚いた。失礼しました、あなたの巧さにも脱帽です。
3位 『Coast To Coast』Vincent Ingala
彼が演奏する主要な楽器はサックスだ。しかし、ギターやその他の楽器の腕の確かさには舌を巻く。ドラムは、ラスベガスの「”エルビス・プレスリー”ショー」で叩いていたというのだから、それこそ”本物”。アルバムのタイトル曲は、この夏Billboard のスムーズ・ジャズ・チャ―トでも1位を獲得。また、筆者が選ぶ「2015年のベスト・ダンス・ソング」でも第10位だった。
次点 『Out Of Dream』Brian Simpson
洗練されたスムーズ・ジャズ・ピアノのアルバム制作では、もうトップ・クラスの実力者だ。ゲストも豪華なだけではなく、彼らを自家薬籠中の物として”使いこなしている” のが凄いし、またシタタカである。今後暫くは、第1級の傑作アルバムをリリースし続けそう。今最も脂が乗っているアーティストだけに、バンドのリーダーとして来日公演を果たして欲しいもの。
その他の「推奨盤」
昨年、復活のノロシを上げたケン・ナバロの『Unbreakable Heart』は、全盛期を彷彿とさせるデキで、彼を知らない人は、これから聴き始めてもいいだろう。
今年は、”インコグニート” の当たり年だ。もっとも、インコグニートそのものの作品ということではなくブルーイの『Life Between The Notes』とメイサ(リーク) の『Back 2 Love』のこと。スムーズ・ジャズにダンス曲を求める人には、特にお薦めしたい。
独特のグルーヴを持つU-Nam のリリースが無かったことを嘆くあなたにはGroove Ltd. の『First Class』を是非! 女性サックス奏者、シャノン・ケネディとのコラボ作品は、実質ユー・ナム作品だ。
マーカス・ミラーの『Afrodeezia 』は、今年の拾い物のひとつ。「アランフェス協奏曲や「Papa Was A Rolling Stone 」など、それぞれに味があって心地よい。
ボニー・ジェームスの『Futuresoul』も挙げておきたい。理由は、今年のベスト・セラー・アルバムだから。これは、決して皮肉にはあらず。売れるのには理由があるのだ。筆者は、ベスト・セラー作品は努めて買うことにしている。少なくとも、「今を知るため」には必要だからだ。
最後に、珍しく日本制作のものをお薦めしたい。ミカ・サンバ・ジャズ・トリオの『バランス・ゾナ・スル』だ。日本人ピアニスト、Mika によるブラジル録音作品で、スリリングなライヴ感がたまらない。マルコス・ヴァーリも参加している。
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お互いブラインドでセレクトしましたが、ヴィンセント・インガラと、ブライアン・シンプソンが、ダブりました。この2枚は、文句なし、今年のベスト盤でしょう。
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