Jay Soto 「On The Verge」(2018)
ジェイ・ソトは、2005年のデビュー・アルバム「Long Time Coming」から活躍しているギタリスト。この新作で、通算7枚目だから多作ではないけれど、スムーズジャズ・ファンなら押さえておきたい、ツウ好みのアーティストだ。
デビュー作品は、ポップな楽曲が満載で、彼のギターのフレージングは爽快で、ドライビング・ミュージックにピッタリといった趣きの佳作だった。2枚目の「Stay Awhile」(2007)では、ジェフ・ローバーやポール・ブラウンといった一流どころをゲストに迎えて、さらに都会的で洗練されたサウンドを作り上げた秀作で、今聴いても古さは感じない、ベスト級のスムーズジャズ作品。クリアなシングトーンと、アクセントのオクターブのパッセージが、疾走感と清涼感を感じるグルービーなギター。そして、ポップでキャッチーな楽曲がこの人の特徴で、3枚目の「Mesmerized」(2009)も、そのスタイルが発揮されたスムーズジャズの秀作だった。
4枚目の「Morning Glory」(2013)は、彼のピアノ演奏による、ニューミュージック・スタイルの異色の作品。残念ながら、ここでは彼のスムーズジャズ・ギターは聴けない。初期の3枚のスムーズジャズ作品からセレクションされたベスト・アルバム(2013)の後、6作目の「Veritas」(2015)は、またも異色な作品で、全編シンフォニックなオーケストレーションをバックに、ナイロン・ギターを演奏した作品。しばらくは、そんな異色の作品が続いたので、初期ようなスムーズジャズ・スタイルの作品を待望していた。
さて、この新作は、なんと、彼自身の歌が中心のボーカル・アルバム。全12曲中、インストは2曲で、10曲がボーカル曲。全曲、彼のオリジナル曲で、70年代後半から80年代のAORやソフト・ロックの路線を踏襲するメロディーとサウンドだ。TOTOや、ケニー・ロギンス、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー、といった懐かしい曲想を彷彿とする曲の数々。彼の歌もなかなかで、歌声はバリー・マニロウ似の感じがするが、どうだろう。
貴重なインストの2曲、M3「Yours Truly」、とM7「Got Groove」は、必聴のスムーズジャズ・トラック。特に「Got Groove」の、スピードのあるパッセージが素晴らしい。歌もいいけれど、この人のギターをインストで、たっぷり聴きたい。次作は、原点回帰の全曲インストの作品を出して欲しいなあ。
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