Jim Kimo West 「Moku Maluhia: Peaceful Island」(2018)
第61回グラミー賞が発表された。先日、ノミネート作品を紹介した「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門は、スティーブ・ガッドの「Steve Gadd Band」が受賞。およそ80に迫る、膨大なカテゴリーを網羅するグラミー賞だが、純粋たるスムーズ・ジャズ系の作品もアーティストも、今回(も、)ほとんど見当たらない。ジャズやポップスの亜流とでも、思われてるのだろうか。売上が物差しのビルボードの方では、昨年度の「ジャズ・アルバム」のベスト・リストには、ボニー・ジェイムス、ブライアン・カルバートソン、デイブ・コーズ、といったスムーズ・ジャズの作品とアーティストが、上位に入っているのに。アカデミー委員は、どのカテゴリーでも、多様性や社会的な影響力を含めた、芸術性を視点に選んでいるのだろう。スムーズ・ジャズのように、分かりやすくて、BGMとしても日常的な音楽は、陽が当たらないということなのか。
とは言え、グラミー賞の各部門のノミネートや受賞リストから、スムーズ・ジャズでなくとも、興味深い作品を見つけるのは楽しくもある。これは、そんな、印象的な作品。
「ニュー・エイジ」部門のノミネート作品で、残念ながら受賞は逃したけれど、素晴らしい作品だと思う。ギター奏者ジム・キモ・ウエストの、全曲スラック・キー・ギター演奏によるソロ作品。スラック・キー・ギターは、ハワイ音楽で広く使われるオープン・チューニングでの奏法。ウエストは、そのギター奏者として、10枚を超えるソロ・アルバムを出している。
ウエストはソロとしては、スラック・キー・ギター奏者だが、実は、そのソロ活動を始める以前から、パロディ音楽の奇才アル・ヤンコビックを支えるギター奏者(スラック・キー・ギターではありません)であり、長年に渡り、ヤンコビックをサポートしている人。ヤンコビックの最近作に至る作品はもちろん、コンサート、ビデオの制作にも参加している。ちなみに、ヤンコビックは、今回のグラミー賞で、「Best Boxed or Special Limited Edition Package」という、限定ボックス・セット・パッケージ作品を対象にした部門で、見事に受賞の栄誉に輝いた。受賞作品は、15枚のCDから成る「Squeeze Box: The Complete Works of Weird Al Yankovic」で、彼の全作品をまとめたボックス・セット。
さて、ウエストのこの作品だが、スラック・キー・ギターの調べが、繊細に響きわたり、視野が爽快に広がるリラクシング・ミュージック。チェロや、尺八が絡むアンサンブルの曲も印象的で、なんとも平和な安らぎに満たされる。ギターの際立つ音像も優れている。ヤンコビックのパロディ音楽とは、まるで違うというのも面白い。いや、どこかに共通点があるのかな。
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