Lebron 「Undeniable」(2019)
サックス奏者レブロン・デニース(アーティスト名はレブロン)の新作。
レブロンは、実父はサックス奏者だったが、12才の時にアール・クルーのコンサートに行き、その時に聴いたサックス奏者マイケル・パウロに魅せられてサックスを始めたのだという。出身地アリゾナの消防隊員だったという異色の経歴で、救急救命士の資格を持っている。消防隊員を、スムーズ・ジャズ・アーティストに「発掘」したのはサックス奏者ダーレン・ラーン。ラーンが、レブロンをトリピン・アンド・リズム・レコードに推薦してデビューに至った。デビュー作「Shades」(2013)は、ラーンのフルサポートによるフレッシュな作品だった。2作目の「New Era」(2015)も、ラーンが協力した佳作。そしてこの新作が3作目。
今回は、ダーレン・ラーンのクレジットは見当たらず、マイク・ブルーニングがプロデュースを手がけた。ブルーニングの手腕によるメロウなサウンドに、レブロンのリリカルなサックスが印象的な作品。アルバム10曲中7曲を、ブルーニングが楽曲の作曲と共作、キーボード等の演奏、プロデュースを務めている。ブルーニングは、シンディ・ブラッドレイ、マリオン・メドウズ、マイケル・リントンなどのプロデュースや作編曲演奏でサポートしているキーマンだ。特に、シンディ・ブラッドレイの一連の作品には深く関わっている。(他3曲はマット・ゴディーナのプロデュース)
オープニング曲「Issa Party」は、同じレーベル所属のトランペット奏者リン・ラウントゥリーが客演した都会的なムードの曲。続く2曲目「Feels Like ’84」も、アーバンなムードの流れを切らさない、キャッチーでソフィスティケイトな佳曲。レブロンの華麗で上品な音色とフレージングを際立たせているのは、ブルーニングのプロデュースの妙だろう。
「No Need For Words」は、スロウなバラードで、レブロンのアルトが美しく響く。客演のシンディ・ブラッドレイとの掛け合いが聴きどころ。「Undeniable」は、チル・アウトなムードの曲。こういう曲調でのリリカルなソプラノ・サックスがいい感じ。「Green Light」は、ちょっとファンキーなテイスト。レブロンはテナーとアルトを吹きこなしている。「Sooner Than Later」は唯一のカバー曲。ラッパー、ドレイクの曲。アルバムのメロウなムードに違和感なく溶け込んでいる。
レブロンの演奏はそつがなく素晴らしい秀作だが、プロデュース力がサウンドの完成度を高めているという印象。レブロンの個性という点では、もっとアピールできる何かがあるに違いない。さらなる進化を期待したいサックス奏者だ。
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