Tom Grant and Phil Baker 「Blue Sapphire」(2019)
トム・グラントは、70年代後半のデビューからフュージョン/クロスオーバーの音楽シーンで活躍してきたキーボード奏者。ソロ・アルバムは20作を超える。ライトでコンテンポラリーな音楽性はスムーズジャズの先駆者の1人といえる。近年は、自己のレーベル、nu-Wrinkle レコードから定期的に作品を発表している。アンビエントな作品を出したり、コマーシャルな路線とは一線を画す姿勢で音楽を追求しているようだ。この新作は、ベース奏者フィル・ベイカーとのコラボ・アルバム。
フィル・ベイカーは、サイド・マンとしてジノ・バレリなどとの共演を経て、2003年からはジャズ・オーケストラのピンク・マルティーニのメンバーである。グラントの作品にも長年、演奏や制作に参加していた。中でもグラントのアルバム『Tune It In』(2000)は、2人が楽曲の共作と共同プロデュースをコラボとして手がけた作品だった。今回の新作は、両名の名義を冠した初めてのアルバムで、<リユニオン>がコンセプトになっていると想像する。
2人の共通点は、オレゴン州ポートランド。ポートランドはグラントの出身地で、ベイカーが所属するピンク・マルティーニの活動拠点でもある。今作のゲストの多くがポートランドのミュージシャンで、ポートランドの音楽シーンから、グラントとベイカーの旧知の音楽家が一堂に会したよう。