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2019年10月20日 (日)

Tom Grant and Phil Baker 「Blue Sapphire」(2019)

トム・グラントは、70年代後半のデビューからフュージョン/クロスオーバーの音楽シーンで活躍してきたキーボード奏者。ソロ・アルバムは20作を超える。ライトでコンテンポラリーな音楽性はスムーズジャズの先駆者の1人といえる。近年は、自己のレーベル、nu-Wrinkle レコードから定期的に作品を発表している。アンビエントな作品を出したり、コマーシャルな路線とは一線を画す姿勢で音楽を追求しているようだ。この新作は、ベース奏者フィル・ベイカーとのコラボ・アルバム。

フィル・ベイカーは、サイド・マンとしてジノ・バレリなどとの共演を経て、2003年からはジャズ・オーケストラのピンク・マルティーニのメンバーである。グラントの作品にも長年、演奏や制作に参加していた。中でもグラントのアルバム『Tune It In』(2000)は、2人が楽曲の共作と共同プロデュースをコラボとして手がけた作品だった。今回の新作は、両名の名義を冠した初めてのアルバムで、<リユニオン>がコンセプトになっていると想像する。

2人の共通点は、オレゴン州ポートランド。ポートランドはグラントの出身地で、ベイカーが所属するピンク・マルティーニの活動拠点でもある。今作のゲストの多くがポートランドのミュージシャンで、ポートランドの音楽シーンから、グラントとベイカーの旧知の音楽家が一堂に会したよう。

 

主なゲストは、ピンク・マルティーニのメンバーで男性シンガーのティモシー・ニシモトや、ネオ・ソウル・シンガーのジャロッド・ローソン、女性シンガーのシェリー・ルドルフに、グラントとデュエット・アルバム『Side By Side』(05年)でコラボした女性シンガーのバレリー・デイら。いずれも出身や活動がポートランドのアーティストだ。

演奏サポートでは、ギター奏者ティム・エリス(2015年12月に他界)、ジャズ・ピアノ奏者ランディ・ポーター、トランペット奏者ポール・マジオ、サックス奏者ティム・ジェンセンら、いずれもポートランドで活躍している人たち。

全15曲のうち、2曲は2人の共作、グラントの曲が6曲、ベイカーが7曲、という構成。

グラントの曲はポップなモチーフが特徴で、ベイカーの曲はフォーキーで牧歌的な景色感を見せてくれる。2人の曲が自然な起伏で並んだ構成も秀逸で、2人でマルチな楽器を駆使して作った音像は引き込まれるような深みがあり、多彩な景色を見せてくれる素晴らしいアルバム。

1曲目の「Sugar Lips」(グラント作)は、エキゾチックなメロディに惹きつけられる曲。アルバム・タイトル曲「Blue Sapphire」(ベイカー作)は、欧州的な味わいを感じる曲想にグラントのピアノとスキャットが印象的。「A Thousand Yeasterdays」(ベイカー作)は歌詞付きのボーカル曲で、歌っているのはジャロッド・ローソン。スティール・ギター(ラス・ブレイク)や、アコースティック・ギター(ベイカー)の調べがカントリーのバラードを思わせる美しい曲。「Malibu Morning」(グラント作)では、ペルー出身のセッション・ギター奏者ラモーン・スタグナロのアコースティック・ギターがフューチャーされたサウンドがキャッチーで爽快。

「You Look Says It All」は、グラントの過去アルバム『The View From Here』(93年)に入っていた曲の再演。グラントはボーカリストでもあるが、ここでも味わいのあるリード・ボーカルを聞かせてくれる。メランコリーな曲調は往年のAORの趣がたっぷりのいい曲だ。

「Mysterious Smile」は2人の共作曲で、『Tune It In』に入っていた曲の再演。グラントは、ソロ・アルバム『Life Is Good』(2010)でも再演していて、お気に入りのナンバーなのだろう。今回のバージョンではベイカーのベース・ソロがフューチャーされているのが必聴。「Dive Bar」も2人の合作。ピアノにコーラス、ファズなギター、ブラス・セクションなど多彩なサウンドに力強さを感じる。

ちなみにジャケ買いしそうな印象派を思わせる絵画は、マリー・スザンヌ・ガーヴィーというアーティストの作品で、この人もポートランドで活動している人。グラントのお気に入りなのだろう、この人の作品を最近度々ジャケットに採用している。

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