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2019年11月 3日 (日)

Spyro Gyra 「Vinyl Tap」(2019)

スパイロ・ジャイラの6年ぶりの新作はカバー演奏集。今作のメンバーは、不動の4人、ジェイ・ベッケンスタイン(sax)、トム・シューマン(key)、フリオ・フェルナンデス(g)、スコット・アンブッシュ(b)と、新加入のドラム奏者ライオネル・コーデュー。前任のドラム奏者リー・ピアソンは前作1作のみで交代となった。コーデューは、ラウル・ミドン、スペシャルEFX、キエリ・ミヌッチ、チャック・ローブなどのレコーディングに参加しているセッション・ドラマー。

前作『The Rhinebeck Sessions』(13年)はメンバー5人だけによるインタープレイがスリリングな作品だった。今作のライブ的な演奏も前作を凌ぐ続編を思わせる。著名なポピュラー曲を分解して再構築するアプローチは、オリジナル曲と遜色のない創意を発揮した秀作。ジャズ寄りに重点を置いたインタープレイも外連味など見せない情熱的な演奏だ。

アルバム・タイトルの<ビニール>が意味するように、かつてのアナログ・レコード時代をテーマに取り上げた選曲が並ぶ。「Sunshine Of Your Love」(クリーム)、「Can’t Find My Way Home」(ブラインド・フェイス)、「What A Fool Believe」(ドゥービーブラザース)、「The Cisco Kid」(ウォー)などの70年前後の骨太なロックを題材にしたのは、意外に見えてもソリッドな演奏には最適な選曲。

1曲目「Secret Agent Mash」は特に聴きごたえがある曲。<マッシュ>と題して、「Secret Agent Man」(ジョニー・リバース)と「Alfie’s Theme」(ソニー・ロリンズ)を<マッシュ・アップ>させた演奏。サックスのイントロは「Alfie’s Theme」のメロディーのようで、そこから「Secret Agent Man」への連続性が秀逸な編曲。「Alfie’s Theme」のオリジナル・バージョン(オリバー・ネルソン編曲)を彷彿とするアンサンブル(トランペットのゲスト客演はスキップ・マーティン)が中盤から4ビートでスウィングするのもエキサイティング。パワフルなビート・アンサンブルは、ロリンズやアート・ブレイキーのハード・バップをモダンにしたようでクールな演奏。

「Sunshine Of Your Love」では、ファンキーなジャズ・バンド曲の様な変身に驚かされる。「Carry On」(クロスビー・スティルス&ナッシュ)は、直球勝負のような8ビートのロック演奏が爽快。「What A Fool Believe」や「You’ve Got to Hide Your Love Away」(ビートルズ)も、超ポピュラーな主旋律は外さずに、メロウなクロス・オーバー演奏に再構築して素晴らしい。

ちなみに、スパイロ・ジャイラの過去アルバムはデビューから前作まで32作品に及ぶが、クリスマス曲集の『A Night Before Christmas』(08年)を除いて、全曲カバー演奏というのは初めてだろう。カバー演奏自体も珍しいことで、『Dreams Beyond Control』(93年)に入っている「Patterns in the Rain」(ジョン・マーティン)、『20/20』(97年)の「Sweet Baby James」(ジェイムス・テイラー)、『A Foreign Affair』(11年)の「Last Call」(ダニー・オーキーフ)、といった3曲ぐらいしか見当たらない。その3曲がいずれもシンガー・ソング・ライターの曲というのも興味深い。

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