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2019年11月10日 (日)

Stephen Bishop 「We’ll Talk About It Later In The Car」(2019)

スティーヴン・ビショップは、長い沈黙を破って『Be Here Then』(14年)をリリースした後、ライブ盤やオリジナル・アルバム『blueprint』(16年)を続けて出すなど活発なカムバックを果たしたようだ。そんな復活を裏付けるように新作アルバムが出た。

ところで、ビショップは映画の主題歌や挿入歌を多く提供している。それらも優れた楽曲やヒット曲も多く、オリジナル・アルバムとはまた別の魅力がある。

ビショップがボーカルを担当した映画『Tootsie』(82年)の「It Might Be You」(作詞はアランとマリリン・バーグマン夫妻、作曲はデイブ・グルーシン)は、映画と共にヒットして代表曲になった。ビショップの作曲による「Separate Lives」(映画『White Nights』85年)はフィル・コリンズとマリリン・マーチンのデュエットで大ヒットした曲。ビショップの自作でボーカルも務めた「Somewhere In Between」(『The China Syndrome』79年)や、「One Love」(『Unfaithful Yours』84年)、「If Love Takes Away」(『Summer Lovers』82年)など、他多数の楽曲を残している。

オリジナル・アルバムの発表が途絶えていた期間、映画主題歌からも遠ざかっていたが、去年久しぶりに映画音楽の主題歌も発表した。

オンライン映画配信の大手ネットフリックスが制作したリメイク映画『Benji』の主題歌「Almost Home」という曲で、作曲家カート・ソーベルとの共作。ソーベルは、エミー賞の受賞歴もある映画音楽を手掛ける作曲家。サントラとして配信されたバージョンは、デワイン・ウィットモア・ジュニア(Dewain Whitmore, Jr.) が歌っている。ウイットモアはR&B/ヒップホップ系のソング・ライターで、クリス・ブラウンに書いた楽曲はグラミー賞を受賞している。

良い曲でサウンドもウェル・プロデュースされた奥行きのある音像が心に響く主題歌だ。さすがに大手ネットフリックスが手掛けた配信映画で、公表されたクレジットを見ると、編曲とプロデュースはドラム奏者ハービー・メイソンの息子であるハービー・メイソンJRでキーボードで演奏にも参加している。ネーサン・イーストがベースで、印象的なピアノ演奏はランディ・カーバーというトップ級のチームが制作に関わっている。

その楽曲は、「もうすぐ家だね。夢の中を迷っていたのかな。ひとりぽっちで寒かったけれど。でももうすぐ家だね。」と歌われるハート・ウォーミングな歌詞とメロディが印象に残るロマンチックな曲。ベンジーの愛くるしい姿にぴったりくるような胸キュンの歌だ。

ところで、そのサントラと同じオケでビショップが歌うバージョンも配信されているのだが、劇中で使用されたのかどうか。映画は見ていないので不明です。

さて、ビショップの新作スタジオ・アルバムは、その「Almost Home」のセルフ・カバーで幕を開ける。

アルバムに入っている「Almost Home」は、映画のサントラ・バージョンと異なるものだが、アルバム全体のムードを代表するようにピアノ伴奏をメインしたシンプルなサウンド。イントロのピアノ伴奏のコード進行は、アート・ガーファンクルが歌ったビショップの代表曲「Looking for The Right One」を思わせて哀愁的。プロデュースとキーボード演奏は、『blueprints』にも関わっていたジョン・ギルティン。

ビショップはいろいろな人と共作した楽曲も多いが、今回はカントリー系のアーティストとのコラボが特徴的で新機軸のようだ。

「Nora June」は、アレン・シャンブリン(Allenn Shamblin)との共作。「ノラ・ジューン、僕のものになってよ。約束するよ、僕よりいい男なんて見つからない。」と歌うカントリー調のバラード。シャンブリンはナッシュビルの重鎮ソングライター。ランディ・トラヴィス、ボニー・レイットらに曲を提供している。レイットが録音した「I Can’t Make You Love Me」(マイク・リードとの共作)は、ケニー・ロジャース、ジョージ・マイケル、アデールなど多くのアーティストにカバーされている。

「Like Mother Like Daughter」は、ロビン・ラーナー(Robin Lerner)との共作。ラーナーもカントリー系の作詞家で、フェイス・ヒル、ランディ・トラヴィス、ティム・マグロウといったスター級カントリー歌手の楽曲を手がけている。

アルバムには過去に発表していた曲の再演やカバー曲も入っている。

「One In A Million Girl」は、デモ集『Fear of Massage: Demo 3』(03年)に入っていた曲の再演。「Tiny Pillow」は、ビショップが女優シェリー・デュヴァル(Shelley Duvall)に提供した楽曲で、デュバルが子供向けに作ったアルバム『Sweet Dreams』(91年)に収録された。

「Someone Else」は、ジミー・ウェッブの曲で、アート・ガーファンクルが『Watermark』(78年)で取り上げた曲。ビショップは、その『Watermark』のレコーディングにコーラスで参加していた。ビショップによると、コンサートの冒頭で歌う定番なのだという。

「I Don’t Know Enough About You」は、カバー曲でオリジナルはペギー・リーの曲(46年)。

ビショップの書く曲は、ほとんどがシンプルなラヴ・ソングで、ナイーヴな心情を歌ったものが多い。このアルバムもその世界観をじっくりと味わえる佳曲集だ。

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