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2020年1月18日 (土)

Ramsey Lewis & Urban Knights 「VII」(2019)

60年を超えるキャリアを有するジャズ界のレジェンド、ピアノ奏者のラムゼイ・ルイスは御歳84才で、すでに引退表明をしています。この新作はキャリアの終点を飾る作品になるかもしれません。このアルバムのライナー・ノーツにも、自ら「このアルバムがリリースされる頃には、私はリタイアしているだろう」と述べています。

ルイスにとって記念碑的な作品ということに加えて、「アーバン・ナイツ」の名義を冠した作品としては、14年ぶりの7作目というのが大注目です。

アーバン・ナイツは、95年に『Urban Nights』(GRPレーベルから)をリリースしたスター・ユニット。ルイスを筆頭に、グローバー・ワシントン・ジュニア(サックス)、オマー・ハキム(ドラムス)、ヴィクター・ベイリー(ベース)という当時のジャズ/フュージョン界のトップ・スターが集結して、プロデュースはモーリス・ホワイト(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)というドリーム・チームでした。

その後、アーバン・ナイツ名義のアルバムは、2005年の『VI』まで6作品が作られましたが、ラムゼイ・ルイス以外の1作目のメンバーが再び集結することは無く、作品ごとに参加メンバーが変わりました。97年の2作目『II』こそ、ジェラルド・アルブライトナジージョナサン・バトラーら、1作目に劣らない実力派の布陣でしたが、それも一度切り。

『III』以降はレーベルがナラダ・ジャズに移り、ケヴィン・ランドルフ(キーボード)やケニー・ギャレット(サックス)、カルヴァン・ロジャース(ドラムス)、シャレー・リード(ベース)など、作品ごとにメンバーが変わります。6作目『VI』(05年)では、ラムゼイ・ルイスも演奏に加わったのは2曲(全11曲中)のみ。ちなみに、ルイスの実息であるフレイン・ルイスが、2作目からプロデューサーとして制作を手掛けています。

さて、この新作もフレイン・ルイスのプロデュースで制作されました。新生アーバン・ナイツのメンバーは、ヘンリー・ジョンソン(ギター)、チャールズ・ヒース(ドラムス)、ティム・ガント(キーボード)、ジョシュア・ラモス(ベース)の4人。ギター奏者のジョンソンは、『V』『V I』に参加しています。

この新作で、再びアーバン・ナイツの名前を復活させたのはマーケティング意図かもしれませんが、ルイスの演奏を際立たせる役割に成功しているように思います。若手のリズム・セクションと、枯れた味わいのルイスの演奏は、熱量こそ隔たりがありますが、悠然とプレイするルイスの貫禄に引き込まれます。

演奏曲目は、ルイスの過去レパートリーと新旧のカバー曲で構成されています。ルイスの77年のアルバムのタイトル曲で代表曲の1つ「Tequila Mockingbird」。ルイスの過去アルバム『With One Voice』(05年)から「Trees」、『Songs from The Heart』(09年)からは「Sharing Her Journey」と「The Spark」の2曲。アーバン・ナイツのファーストから「The Rose」(モーリス・ホワイト作曲)。

カバー曲は、ジョン・コルトレーンの「Dear Lord」、ビートルズの「And I Love Her」、チック・コリアの「Armando’s Rhumba」、スティングの「The Shape Of My Heart」。かつて『Live at the Savoy』(82年)に入っていた「Baby What You Want Me To Do」(ジミー・リード)は、真骨頂のシカゴ・ブルースで、ルイスの粘着性のある演奏を聴かせてくれます。

「The Spark」や「I’ll Never Forget You」と「And I Love Her」は、ルイスのピアノが堪能できる演奏。他の演奏陣も曲ごとに聴きどころを披露しています。「Baby What You Want Me To Do」ではギターのジョンソン。「Armando’s Rhumba」ではベースのラモス。「The Shape Of My Heart」では、正統派女性ジャズ・シンガー、ディー・アレキサンダーがゲストで歌っています。「The Rose」では、新世代ジャズ・シーンで注目のトランペット奏者モーリス・ブラウンが客演していて、オクターブ奏法を駆使するジョンソンと奏でるメロウなインタープレイが聴きどころです。

「Tequila Mockingbird」は、エネルギッシュなドラムスが素晴らしい演奏ですが、CDで聴いたかぎり、ピークで音が割れる箇所があって残念でなりません。

冒頭を飾る「Dear Lord」と、最後の「Trees」は、ルイスのピアノ・ソロで、どちらも短いですが深く感銘をうける演奏です。願わくば、もう一枚ソロ演奏アルバムをリリースして欲しいなあと思います。

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