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2020年8月18日 (火)

トム&ジェリー(サイモン&ガーファンクル)についてのミニ研究(その2)

ポールのソロ・アーティスト名は、トゥルー・テイラー(True Taylor)という名前でした。サイモン親子は出来上がったシングル盤の表示を見て驚きました。てっきり、ジェリー・ランディスだと思っていたのです。2人はプロセン氏にクレームしましたが、そのままになったようです。公式には、ポールのトゥルー・テイラー名義の作品はこの2曲のみです。エルビスのコピーとはいえ、溌剌にシャウトする、10代のポールの純真な歌声が活き活きとしています。

トゥルー・テイラーとは、唐突なネーミングのようですが、ポールの祖父、ポール・サイモン(ポールは祖父の名前を引き継いだ)はオーストリア出身の移民で、職業は仕立て屋(Tailar=テイラー)でした。もしかすると、祖父を由来に、プロセン氏かルーが意図的に付けた名前なのかと勘ぐります。

ちなみに、ポールはジェリー・ランディスという名前を、その後もデモ歌手やソング・ライターとして活動している時期に長く使っています。ポール・ケーンと名乗った時代もあります。今ではそれぞれの名前で、多くの非公式の音源が公表されています。

トムとジェリーの録音曲は、公式には6曲のみです。6曲のうち、「Two Teen-Agers」を除く5曲は2人によるオリジナル曲です。「Hey, Schoolgirl」と「Dancin' Wild」のクレジットは2人の本名になっていますが、他の曲はトム・グラフとジェリー・ランディスというクレジットになっています。

「Two Teen-Agers」の作者は、ローズ・マリー・マッコイ(Rose Marie McCoy)という人。マリー・マッコイは50〜60年代に活躍して、800曲以上を作曲した職業作曲家でした。ナット・キング・コールや、エルビス・プレスリー(「Trying To Get To You」「I Beg Of You」など)、アイク&ティナターナーらに楽曲を提供しています。

「Two Teen-Agers」は、女性コーラスの掛け合いが入ったロカビリー曲です。ポールの声は前面で聴こえますが、女性コーラスに埋もれてアートの歌声は目立たちません。2人のハーモニーが特徴の他5曲と比べると、少し異質な感じがします。トム&ジェリーのために書かれたオリジナルなのか、カヴァー曲なのかは不明です。

トム&ジェリー名義の「Baby Talk」(ジャン&ディーンの曲のカバー)という曲があります。1959年にその曲をリリースした後、ビッグ・レコードは倒産しました。

実は、この時の「トム&ジェリー」は、サイモンとガーファンクルとは別人デュオによる作品です。いわゆる、「トム&ジェリー2.0」というべき別人によるコンビでした。

その「別人トム&ジェリー」は、1962年と63年に、シングル2枚を別のレコード会社からリリースしています。作者のクレジットは、S.Prosen-T.Layton-J.Darceyの3人になっています。プロセン氏と共作者となっているトム・レイトン(Tom Layton)とジェリー・ダーシー(Jerry Darcey)が、別トム&ジェリーの二人組のようですが経歴は不明です。プロセン氏が仕組んだ、トム&ジェリーの夢よもう一度という奇策だったのでしょうか。

1967年にポールとアートは、プロセン氏を訴えています。プロセン氏が、トム&ジェリー時代の音源をLPレコードで発売しました。ジャケットには、成長したサイモン&ガーファンクルの写真を使用して、あたかも新しいアルバムを思わせたからです。判決を下したニューヨーク州最高裁判所は、「トム&ジェリーの音源の所有権はプロセン氏にあるが、広告などのプロモーションでサイモン&ガーファンクルの名前や写真を使用してはならない。」というものでした。結果として、発売済みのLPはリコールすることになったようです。それ以外に、プロセン氏が業界の表舞台に登場することは無かったようです。

サイモン&ガーファンクルは後年、「Hey, Schoolgirl」をコンサートのレパートリーにしていました。ライブ音源はいくつかの公式アルバムで公表されています。CD3枚組のベスト集「old friends」(1997)に、1969年のライブ音源「Hey, Schoolgirl/Black Slacks」(メドレー後半の曲「ブラック・スラックス」は、ジョー・ベネットとザ・スパークルトーンズというティーンズ・バンドの曲で、「Schoolgirl」と同時期のヒット曲です。)が納められています。2003年の再結成ツアーのライブ盤「Old Friends/Live On Stage」(2004)では、「Hey, Schoolgirl」を歌い、ゲストのエバリー・ブラザースを迎えて「Bye Bye Love」を共演しています。

現在はトム&ジェリー時代の音源は、多種のCD/デジタル配信で流通されています。ポールの、トゥルー・テイラー、ジェリー・ランディス、ポール・ケイン名義の古い音源や、アートのアーティー・ガー名義の音源なども、今では容易に聴くことができます。ただし、中には「別人トム&ジェリー」の音源も混ざっていることがあるようです。

 

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